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他人が自分をどう思っているか気にしすぎて、悩んだことはありませんか?
例えば、上司のちょっとした表情や友人の返信の遅さに不安を感じ、自分で否定的な物語を作り上げてしまったり。
そのような悩みを解決するヒントを教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、How To Stop Obsessing Over What Other People Are Thinking(他の人が考えていることを気にしすぎるのをやめる方法)。
起業家(リーダーシップと人間関係のコーチ)の Teresa Lodato(テレサ・ロダート)さんのプレゼンです。
否定的な物語:TEDの説明
We need to stop relying on negative presumptions and the stories we believe others are telling themselves about us. Instead, Teresa Lodato shows us how we can form genuine connections by challenging assumptions with powerful questions, approaching each situation with a clear and open-minded curiosity.
私達は他人が自分をこんなふうに思っているとネガティブな推測や物語を作りあげることに頼るのをやめなければなりません。
そうする代わりに、テレサ・ロダートは、パワフルな質問を使って証拠のない前提を疑い、明確で開かれた好奇心をもって状況にアプローチし、真のつながりを築く方法を教えてくれます。
収録は2024年5月、動画の長さは10分27秒。英語字幕あり。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
わかりやすい構成のプレゼンで英語も聞き取りやすいです。
高校時代の片思い
高校生のとき、マイクという野球をやっていた男の子が好きでした。
学校では、彼に出会えそうな道を歩いたり、彼のロッカーのそばで待っていたりいろんなことをしました。
でも、彼は私に気づかず、話しかけてくれることもほとんどありませんでした。
こんな時、誰もがするように、私は、彼が私に対してどう思っているか、なぜ、いつも私を無視するのか、自分で物語を作りました。
彼は私にはもったいないから、私にはかっこよすぎるから、私は彼と並んで歩くに値しないから。
そんなふうに考えたんです。
この物語は、その後数年、私の恋愛のトーンを決めました。
自分が誰かのパートナーになるのにふさわしいと思えるまでずいぶん時間がかかったんです。
相手には相手の事情があった
20年後、高校の同窓会でマイクに会いました。そのとき私は、昔、どうして私を無視したのか彼に聞いてみたんです。
そしてわかったのは、彼はその頃、脳震盪(のうしんとう)をわずらっていたということ。病気のせいで、成績や野球は影響を受け、彼は、学校で起こるどんなことにも意識を向けるのが難しい状態でした。
彼は病気の症状や不安で頭がいっぱいで、私のことが見えなかったそうです。
他人の考えを推測してしまう
こういうことはよくあります。
誰かに出会うと私達は即座に2つの物語を作ります。
1つは、この人がどんな人か。もう1つはこの人が自分のこをどう思っているか?
この2つの物語が、その人との付き合い方を決めます。
相手が自分のことを好きで、自分の価値を認めてくれていて、自分と話したがっていると信じれば、前向きな付き合いができるんです。
一方、相手が自分に無関心だ、敵意があると感じると、自分も相手に同じ気持ちを向けます。
私がマイクに感じたのもこんな気持ちでした。
自分でネガティブな物語を作っていたんです。彼が私のことを気に留めないのは、私に価値がないからだ、と。
でも実際は、私は彼が本当に考えていたことなんて何ひとつ知らず、彼がどんな状態だったのか、想像することもできませんでした。
物語を作ってはいけない
ほかの人が自分をどう思っているのか、勝手に物語を作るのをやめなければなりません。
代わりに、相手のことや、相手の人生で起こっていることに、興味を持つべきなんです。
そうすれば、もっと深くて意味のある人間関係を築くことができます。
ネガティブな物語を作るのは、私達の脳です。
脳はもともと、ネガティブなことを考えるようにできているんです。
人の脳は、目の前に展開される新しい情報に基づいて判断するより、過去の体験をもとにして予測をしてしまうとたくさんの研究からわかっています。
脳にもともとあるネガティビティバイアス(negativity bias)が、相手が自分を否定的に思っているという推測と合わさると、ゆがんだ物語が生まれ、真の人間関係を築く妨げになります。
ネガティビティバイアス
ネガティビティバイアスは、気まぐれな感情ではなく、脳にしっかり組み込まれています。
このバイアスのせいで、世界に対する見方や人付き合いが大きくゆがみます。
多くの人は、ネガティビティバイアスがあることを知っていますが、その威力は自分が思うよりずっと強力なんです。
ネガティビティバイアスという言葉は、ポール・ロジンとエドワード・ロイズマンという研究者によって作られました。
彼らはこのバイアスには4つの要素があるとしましたが、最初の、そしてもっとも基本的な要素は、ネガティブの勢力(negative potency)です。
できごとや感情はネガティブでもポジティブでも、同じインパクトがありますが、ネガティブなできごとのほうが、深い意味を持ちます。
私達はネガティブなことを記憶し、何度も考えます。それは頭の中に残ってしまうのです。
このような思考は、自己充足的予言(self-fulfilling prophecies)となって現れます。
気づかないうちに、自分で作り上げたネガティブな物語が正しいと思える証拠を探し始めてしまうのです。
ネガティビティバイアスによって、他人が自分を嫌っていると思い込んでしまうと、さらに問題が悪化します。
ではどうしたらいいのでしょうか?
否定的な考えに気づく
ネガティビティバイアスを克服する最初のステップはこのバイアスに気づくことです。
こんなバイアスがあるんだと気づかないかぎり、それについて何の対処もできません。
でも、バイアスに気づけば、推測と現実を切り離し、どちらかを選択できます。
自分の勝手な憶測を持ち続けるか? 自分が間違っているかもしれないと思うか?
頭の中で作り上げた物語に疑問をもって、過去の経験をもとに新しいできごとを推測しないことが重要なのです。
思い込みを克服する3つの方法
憶測を克服する鍵は冷静さ、好奇心、そしてつながることです。
冷静になる
冷静さは、建設的なやりとりと明確な思考の基盤です。
静かな気持ちでいることは、ネガティビティバイアスの影響を減らすのに欠かせません。
冷静でいれば、感情を整え、理性的に考え、情報を客観的に処理できます。
好奇心を持つ
2つ目は好奇心を持つこと。他人に、そして自分にも興味を持つようにしましょう。
好奇心を持ち、自動的に作り上げてしまう物語を信じ込まず、相手を理解するようにします。
結論に飛びつくのではなく、相手の気持ちを聞く必要があるのです。
そうすれば他人の行動や意図に関して自分が誤解していることがわかります。
つながる
3つ目はつながることです。
他の人と、活発で意味のあるやりとりをするように努めます。
単なる挨拶を越えて、体験をシェアしもっと深い理解を心がけてください。
そのために、熱心に聞き、思いやりを持ち、相手の幸せに心から興味を持ちます。
つながるとは、オープンで正直なコミュニケーションを取ること。お互いが存分に姿を見てもらい、自分の意見を聞いてもらいます。
それは、他人についてどう考え、反応するかというレベルを超え、自分をどう表現するかにかかっています。
これが私の言いたいことです。
変革とは、他人をどう認識するかだけでなく、自分を他人にどう見せるかに関わっています。
自分が他人とどんなふうにコミュニケーションを取るか、この点に意識を向ければ、そのときはじめて、無意識に着けているマスクを取りはずせます。
知らないうちにつけているマスクは、エゴや社会の期待、他人や自分に対する否定的な考え方で作られていて、本当の自分を隠しています。
自分が作る物語を理解し、手に入れることで、最も自分らしい、真の自分になることができます。
他人や自分について語る物語を変えるのは、深くて思いやりのある人間関係を作る最初のステップなのです。
//// 抄訳ここまで ////
心理的なバイアス・他のプレゼン
心のパフォーマンスを最適化するには?~チンプパラドックス(TED)
ネガティブなセルフトークを変えて、前向きに行動しよう(TED)
人はネガティブ思考を引きずるようにできている話と、そこから抜け出す方法(TED)
筋書きを作っているのはいつも自分
他人が考えていることを推測しないことをすすめるTEDトークを紹介しました。
ちょっと前に、美容師さんがよそよそしい態度を取ると、以前の私なら、自分のせいかなと気にしてしまうところだったというお便りを紹介しました。
こういうことよくあると思いますが、美容師とか店員とかたまたま街で会った人の状況や本当の気持ちなんて、自分には絶対わからないんです。
一緒に住んでいる人のこともわかりませんから。
それなのに、私達は、よく他人の気持ちや状況について、「こうに違いない」と勝手にストーリーを作り上げてしまいますよね。
言ってもわかってもらえないに決まってる、断っても嫌な顔をされるだけで、効果がない、とか。
でも、そういう「~に決まっている」というストーリーは、全部自分が、過去の体験をベースに作っているだけなんです。
しかもその推測は、ネガティビティバイアスの影響を受けています。
自分で作った筋書きのせいで、勝手に落ち込んだり、ストレスをかかえたりするのって馬鹿らしいですよね?
人間関係でストレスの多い人は、あまりにも否定的な物語を作って、しかもそれを信じて疑わないからだと思います。
相手にズバリと聞くか、もっと客観的な物語を作ってみてはどうでしょう?
今よりストレスが減ります。
ロダートさんの言うように、他人がどう思っているかを気にするのではなく、自分がどのように行動し、どう相手と向き合うかを考えるほうにシフトしてください。