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スティーブ・ジョブズ(1955-2011)が2005年6月12日、スタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチをご紹介します。
スティーブ・ジョブズは皆さんご存知ですね。アップル社の創業者の1人で、1980代以降のコンピューター業界をひっぱっていった革新的な人物です。アップル社はiPhoneを作った会社です。
スタンフォード大学卒業式の式辞:スティーブ・ジョブズ
この式辞はこの日、大学を卒業して社会に巣立っていく若者へのはなむけの言葉です。彼の考える人生において大切なこと、そして生きるアドバイスが、自分の体験を交えて淡々と語られています。
もう10年前の式辞になりますが、何度見ても気持ちをゆさぶられます。
一般にいかに人生を生きるか、という文脈でとりあげられることが多いスピーチですが、ミニマリストや、シンプルライフをめざして断捨離している人には聞き逃せない哲学が語られているのを発見しました。きょうはその点についてお伝えします。
ひじょうに有名なスピーチなのでご存知の方も多いと思います。聞いたことがない方は、動画をごらんください。14分33秒です。お時間のない方は、動画のあとに、要約を書いていますからそちらに進んでください。
日本語字幕つきの動画です。
☆もっとたくさんプレゼンを見たい方はこちらからどうぞ⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
☆このスピーチで英語の勉強をしたい方はこちらへ⇒TED Lesson / Steve Jobs’ 2005 Stanford Commencement Address, Lesson1(スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学での伝説の講演) | Langrich Library 原文、語彙の注釈などあります。
スピーチは3つに分かれています。
1.点と点をつなげる:今やってることは将来どこかでつながると信じる。
2.愛と敗北:自分が愛する、素晴らしいと思う仕事をするべきである。
3.死:自分の心と直感にしたがって生きること。
まとめ:ハングリーであり続け、愚かであり続けてください(Stay hungry, stay foolish)
1.点と点をつなげる:今やってることは将来どこかでつながると信じる
ジョブズは、大学をドロップアウトすることに決め、必須科目ではないカリグラフィーのクラスを受け多いに魅せられました。退学を決めていなかったら受けることのなかった授業です。
そのときは、それが何かの役にたつとは思えませんでしたが、10年後、カリグラフィーのクラスで学んだことが、マッキントッシュの美しいフォントにつながりました。
それは後になってわかったことです。
今、自分がやっていることが、将来どこかでつながると信じることが大切。たとえ自分のやっていることが、多くの人が歩く道からはずれていても、自分の心の声に従い、信じることだけが、将来大きな違いを生み出すのです。
2.愛と敗北:自分が素晴らしいと思う仕事をするべきである
実家のガレージで、ジョブズがウォズニアックとアップル社を始めたのは20歳のとき。会社は順調に大きくなり10年後、従業員4千人、年商20億ドルという大企業になりました。
ところが、30歳のとき、ジョブズは自分の会社を首になります。自分で雇った取締役たちと意見が合わなかったのです。それまで人生のすべてをかけて打ち込んできた仕事を失った彼は呆然としました。
しかし、あとになって考えると、失業してかえってよかったのです。
首になったから、彼はずっと成功者でいなければならない重圧から逃れ、また一から始める身軽さを手に入れました。つまりずっと自由になったのです。
その後彼は、NeXTやピクサー(トイ・ストーリーを作った会社)という会社を作り、人生の伴侶も得ます。業績不振だったアップル社がNeXTを買収したので、またアップル社に舞い戻りました。NeXTが開発した技術が、アップル社を再生させます。
もしアップルを首になっていなかったら、ジョブズは新しい技術も、妻も得ることができなかったでしょう。
どんなに最悪のことが起こっても、信念を失わず前に進んだのがよかったのです。彼が続けてこられたのは、一にも二にも自分の仕事が好きだったから。
だから、自分が素晴らしいと思える仕事をやるべきなのです。もしまだ見つかっていなかったら、見つかるまで探し続けます。
3.死:自分の心と直感にしたがって生きること
このスピーチをしている前の年、ジョブズはすいぞうがんの診断を受け、あと3ヶ月から半年の命と宣告されました。このとき彼は死を強く意識しました。
その後検査をしたら、治療できるがんだということが分かったのですが。
一度、死に大きく近づいた彼は「人は全員、死をまぬがれない」と警告します。同時に、死は人生における最良の発明だとも。なぜなら「死」は変化を起こすもの(change agent)だから。死は古いものを取り去って、新しいもののために道をあけるのです。
この日卒業する学生は「新しいもの」。でもいつかは年老いて死にます。人生の時間は有限なのです。時間がないのだから、常識や人の言うことに左右されず、自分の人生を生きるべきです。
人生において何よりも大事なのは、自分の心や直感に従う勇気を持つことです。
まとめ:ハングリーであり続け、愚かであり続けてください
ジョブズが若いころ、全地球カタログ(The Whole Earth Catalog)という雑誌がありました。
1960年代にタイプライター、ハサミ、ポラロイドカメラで作られていた内容の濃い情報誌です。この雑誌の最終号の裏表紙に、「ハングリーであり続け、愚かであり続けてください(Stay hungry, stay foolish)」と書かれていました。
ジョブズは、自分はいつもそうありたいと思い、きょう卒業した人たちにもそうあってほしいと言って、スピーチを締めています。
何度も死と再生を体験したジョブズが語る、説得力のあるスピーチです。
物を捨てることは毎日死ぬこと
久しぶりにジョブズのスピーチを聞いて、筆子は死とモノを捨てることは似ていると思いました。
シンプルな暮しを求めて、断捨離することは、そのたびに自分が死ぬことなのかもしれません。
もちろん実際に死ぬわけではありません。古いものを捨てる、手放すことは、殺すことに似ているのです。死は新しい物を生み出すから、断捨離している人は、物を手放すたびに、新しい「何か」を手にしているのではないでしょうか?
この世の中は、古いものがなくならないと、新しいものは登場しません。古いものを取っ払う、つまり捨てないと、新しいものは生まれないのです。共存している期間はありますが。
だからこそ、もう終わっていたり、古かったり、いらない物は断捨離すべきなのでしょう。新しいものを手に入れるために。
人生はいつも変化しています。ガラクタで、その変化を停滞させてはいけません。
進化、成長、発展、進歩といったものは、常にそれまであったものを捨てたり、否定することで生まれます。少しずつ積み上げていくものもありますが、AがA’になったら、その2つは決して同じものではありません。
きのうの私ときょうの私が違うように。
死が人生の最高の発明なら、「捨てること」も生活において、最良のやり方だという気がします。
もし前に進みたかったら、「捨てる」という行為は避けて通れないと筆子は思うのです。
捨てて身軽になっていけば、ジョブズの言う、自分の心や直感に気づくことができそうです。
やりたいことが見つかったら、たとえそれが世間の常識からはずれていたり、時流に合わなくても、自分自身を信じて、やり続けるべきなのでしょう。
この道はきっとどこかにつながっていると信じて。
ハングリーであり続けること、愚かであり続けることは、いつも挑戦を続けることにほかなりません。変化を恐れずに。
そうやって、前に進み続けるのが、人生の醍醐味かもしれませんね。