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後継者がいないから、両親の墓は納骨堂にしようと思っているが、この決断で本当にいいのか、疑念が消えない、という相談メールをいただきました。
この記事で回答しますね。まずメールをシェアします。Kさんからです。
納骨堂で本当にいいのだろうか?
件名:後継者のいない家の、お墓について
いつも筆子さんのブログを楽しく読ませていただいております。
合理性と温かさが同居した文章が、とても心地よく胸に響きます。
父と母が相次いで亡くなり約一年になります。その間ずっと悩んでいるのですが、筆子さんなら良い考え方を示してくださるのではないかと、勇気を出してご連絡させていただきました。
うちは両親+娘3人の家庭でしたが、娘のうち2人は既に亡くなっております。
残る私(56歳)も田舎の長男に嫁いでいるため実家を継ぐことは考えられず、私の子供も女子のみです。
父は転勤族で父の家の墓は父の弟が継いでいるため、自分たち用の墓を購入する必要があります。
しかし両親ともにさほど宗教心のある方ではなく、父も母も「海に散骨してくれればいい。または納骨堂で」と言っておりました。
おそらく本音半分、残る半分は私や孫に面倒を残したくないという気持ちだと思います。
ありがたく、言われる通りに納骨堂(合祀墓)に入れようと思っているのですが、自分の中で「本当にそれで後悔しないのか?」という疑問が消えません。
お忙しいところを恐縮ですが、筆子さんならこんな場合、どのように考えますか?
ブログ内で十分ですので、お返事をいただけたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。
Kさん、はじめまして。お問い合わせありがとうございます。
いつもブログを読んでいただき、ありがとうございます。
ご両親が相次いで亡くなられたのですね。それはさみしいですね。
Kさんが知りたいことって、お墓を継ぐ人がいないとき、どういうお墓にしたらいいのか、ということでしょうか?
それとも、自分の意思決定に自信がないときの対処法や、後悔しない決断の仕方でしょうか?
どちらかわからないので、両方答えておきますね。
その人の価値観にあったお墓を選ぶ
もし私がKさんだったら、言われた通りに散骨するか、納骨堂に入れるよう努力します。
努力してもかなわないときは、別の方法を考えます。
ご両親とも、もう亡くなられているので、今さら話し合うことはできませんよね?
その背後に、どんな意図があったにせよ(意図があったのかどうかも、自分の解釈にすぎませんし)、親はそう言ったのだから、故人の意思を尊重するのがベストだと考えます。
ただし、私はどちらかというと「お墓はいらない」と思うほうであり、自分が死んだあとも、今のところ「別にどうでもいい(生きているときのほうが大事)」と考えています。
Kさんは、全く違った価値観の持ち主かもしれません。ご自身の価値観にあった方法を選んでください。
お墓は、故人の終の棲家ではありますが、生きている人のためのものだと思います。
生きている人のこころの拠り所ですよね? Kさんが、自分のライフスタイルと価値観にあったお墓を用意すれば、疑念に悩まされることもないのでは?
ちなみに、ご両親にとって最適なお墓は、Kさんにしか選べません。私が、面倒を見るわけではないですからね。
では、以下に、自分の価値観にあったお墓を見極めるヒントを書きます。
自分の決断に確信が持てないときは?
Kさんは、「本当にそれで後悔しないのか?」という疑問が消えないそうですね。
そのように、自分の意思決定にいま1つ自信が持てないときは、以下のように考えてみてください。
大前提:先のことは誰にもわからない
どんなに考えても、自分がこの先、後悔するかどうか、なんてことはわかりません。
その時にならない限り。
なので、あまり、「後悔しそうだ」と恐れないほうがいいと思います。
先のことは誰にもわからないので、いま、この場で「完璧な決断」をすることはできません。
それに、人間を何をしてもしなくても、後悔することを探しだしたら、いくらでも後悔することが出てきます。
疑念の正体を明らかにしてみる
「これでいいのかなあ?」と思うときは、どうして自分がそう思うのか、いったい何に納得できないのか、その疑念を1つひとつ具体的に文章にしてください。
Kさんが、何を悩んでいるのかよくわかりませんが、たとえばこういうことでしょうか?
・従来の形のお墓を立てないと、いけないような気がする(なぜ?)
・納骨堂では、ほかの人と一緒だから、両親の魂がやすらかに眠ることができないのではないか?
・自分が生きているあいだだけでも、(管理者に任せるのではなく)墓石を掃除したり、お墓にお花を備えたりしたい。死んだあとの管理は、自分の子供に頼めばいいし。
・納骨堂に入れるのはなんとなくかわいそうな気がする(なぜ?)
・これが我が家の墓だ、と言えるものがないと寂しい
・両親が生きた証をしっかり残したい
思いつくまま書いてみました。
こんなふうに、どうして、納骨堂に入れることをためらっているのか、なぜ、先々後悔しそうな気がするのか、ためらっている要因を明確にし、それぞれの考えの妥当性を吟味してください。
簡単に言うと、自分の感じていることや、考えていることをもう少し掘り下げてみる、となります。
ほかの選択肢を選んだらどうなるか?
納骨堂や合祀墓(ごうしぼ)を選ばないとしたら、どんな選択になるのか、こちらも考えてみます。
その選択をしたとき、どんなことが起きるのか、どんなことをしていくことになるのか、具体的に考えてください。
納骨堂でなければ、ふつうにお墓を立てることになりますよね?
その場合、どこに立てるのか? 墓石はどのぐらいの物を買うのか? いつ買うのか? お金は誰が用意する? お墓参りは自分がするのか、それとも誰かに管理を委託するのか?
自分で墓参りするのなら、いつ行くのか? どんなタイミングで行くのか?
こんな感じで、仮に、いまとは違う選択をした場合、今後、自分がしていくことを思い描いてみます。
別のオプションを実践することを想像してみると、「やはり、合祀にするのが現実的だ」と思うかもしれないし、「ふつうにお墓を立てるのも、充分ありかも」と思うかもしれません。
いずれにしろ、今のような、「疑念にかられただけの状態」から抜け出せると思います。
自分の目的を考える
両親のお墓選びに関して、自分がもっとも大事にしたいもの、これだけはゆずれないと思うもの、達成したいこと(ゴール)などを考えてください。
そのゴールが達成できれば、形はどうなってもいいですよね?
たとえばこんなゴールが考えられます。
・あくまで故人の意思を尊重する
・できるだけ経済的にすませたい
・思いついた時に、すぐに行ける場所に両親の骨を収めたい
・100年たっても、200年たっても、誰かに両親の墓を供養してもらいたい
・両親の宗派が指定している方法をとりたい
・伝統的な「我が家の墓」と呼べるものを残したい
・あくまで自分がしたいようにしたい(この場合、自分が本当にしたいことがわかっている必要があります)
人は何かをするとき、必ず何らかのゴール(意図)があります。
それが何か、できるだけ明確にし、それを叶える方向で決断すれば、「これでいいのかなあ」と不安にさいなまれることもないでしょう。
なお、すでにご姉妹は亡くなっているそうですが、お墓選びに関係のある近親者の方とは、話し合って合意を得ておいてください。
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大がかりな葬式やお墓は必要でしょうか? シンプルな葬儀はこんな感じです。
カナダでの子育て体験、英語の習得法、孤独死に関することなど読者の質問に答えます。 孤独死に関する質問で、死後の処理についてふれています。
最適な意思決定をする方法に関する記事はこちら
決断する力をアップする。自分で決められない理由とうまく決める方法(TED)
感情的な反応から賢明な思考にシフトさせ、最良の決断をうながす方法。
2つのうち、どちらがいいのかわからない? 迷わず選ぶ方法を教えます。
もう迷わない。いらない物をバシッと捨てられる決断力をつける方法。
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先日、歯の治療方針に関する相談メールをいただきました。
どんな治療をするか、はたまた、どんなお墓を用意するか、そうした個人的なことを決めるための情報を、もっともたくさん持っているのは、自分自身です。
自分でも気づいていない本音を含め、とてもメールひとつに、そのすべてを書ききることはできません。
自分の考えていることを、1つひとつ丁寧に見ていくこと(メタ認知)が、よりよい決断をするベストな方法ではないでしょうか?
考えすぎて煮詰まったら、コインで決めてもいいかもしれません。表が出たらA案、裏ならB案とし、コインを放り投げて握ってください。
コインがA案を指し示したとき、「う~ん、でも…」とためらったら、B案を選べばいいのです。