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最終更新日: 2019.03.15

先送りをしない人生を生きるために、目標ではなく恐怖を明確にすべき理由:ティム・フェリス(TED)

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2018年、最初のTEDは、行動する人になる方法を教えてくれるプレゼンを選びました。

タイトルは Why you should define your fears instead of your goals(なぜゴールではなく、恐怖を明確にするのか?)邦題は、目標でなく恐怖を明確にすべき理由。

プレゼンターは 投資家、作家のティム・フェリス(Tim Ferriss)です。



目標を立てる代わりに恐れを明確にする

新年に「今年の目標」を立てる人も多いでしょう。

毎年目標を立てているのに、数年前とあまり代わり映えしていないのなら、今年は、目標を立てる代わりに、自分の恐れていることを明らかにしてみると、いつもと違った年になるかもしれません。

捨てることを先送りしている人にもおすすめの動画です。

TEDの説明:

The hard choices — what we most fear doing, asking, saying — are very often exactly what we need to do.

How can we overcome self-paralysis and take action?

Tim Ferriss encourages us to fully envision and write down our fears in detail, in a simple but powerful exercise he calls “fear-setting.”

Learn more about how this practice can help you thrive in high-stress environments and separate what you can control from what you cannot.

難しい選択– 私たちが恐ろしくてできないこと、たずねないこと、言わないこと–それこそがたいていの場合、私たちがしなければならないことです。

身動きできない状態からどうやって行動を起こすか?

ティム・フェリスが、自分の恐怖をきっちり思い起こし、文字にすることをすすめます。「恐怖設定(fear-setting)」というシンプルだけどパワフルなワークです。

このワークが、ストレスの多い状況で生きることや、自分のコントロールできることとできないことを区別するのにどれほど役立つか、学んでください。

収録は2017年4月。動画の長さは12分。日本語字幕があります。英語やほかの言語の字幕、または字幕なしがいい型はプレイヤーで調節してください。

☆トランスクリプトはこちら⇒Tim Ferriss: Why you should define your fears instead of your goals | TED Talk | TED.com

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

躁うつに悩む人生だった

1999年、大学4年のときダンスレッスンを受けた直後、それはもう幸せだったのですが、その10日後には、真剣に自殺を考えていました。

死ぬ計画を綿密にたてました。実行に至らなかったのは、ただただ幸運な偶然が重なったからです。

後になってみると、たまたまそうなっただけ、という事実がとても恐ろしいと思いました。

だから自分の気分のアップダウンをコントロールする方法をいろいろと試してみました。

ふつうの人は、一生に6回から10回、ひじょうにうつうつとする体験をします。私は双極性障害(そうきょくせいしょうがい)です。遺伝的なものです。

これまで50回以上、うつになり、そこから多くのことを学びました。

そこで、成功する方法を伝えるより、自分を傷つけてしまう行動や、身動きできない状態を避ける方法をお伝えすることにしました。

精神的な不安定さを防ぐツールですが、同時に、ビジネス上の意思決定にも役立っています。

そのツールとは?

それは、ストイシズム(ストア哲学)です。退屈に聞こえますよね。





ストア哲学が鍵

スタートレックのスポック船長を思いだすかもしれません。雨の中でじっと濡れそぼっている牛、とか。

ビル・ベリチックのようなすばらしいフットボールのコーチを思い浮かべたりはしないでしょう。NFLのトッププレーヤーのあいだでは、精神的に強くなるために、ストイシズムが広まっているのですが。

建国の父のことも思い浮かべないでしょう。トマス・ジェファーソン、ジョン・アダムス、ジョージ・ワシントンといった人たちです。

彼らはストイシズムを学んでいました。ワシントンはストイシズムの演劇を開催したほどです。

なぜ、行動する人たちは、大昔の哲学に興味を持ったのでしょうか? 

学究的なことに思えるかもしれませんね。

私は、別のアプローチを取ることをおすすめします。ストレスの多い状況の中で、よりよい決断をするために、ストア哲学を、システムとして使うのです。

紀元前300年ごろ、アテネで、ゼノンという人が、「ストア」と呼ばれた柱廊のまわりを歩きながら、講義をしました。

これがストア学派の始まりです。

ギリシャ・ローマ時代には、さまざまなことを行うときの体系として、ストア哲学が使われました。

ですが、このプレゼンで取り上げたいのは、自分でコントロールできることと、コントロールできないことを区別し、コントロールできることだけにフォーカスできるようにすることです。

これができると、感情的に反応することがなくなり、スーパーパワーとなるのです。

感情的な反応とは、試合中にパスを受け損なった自分に対して怒っているうちに、試合そのものに負けたり、部下の小さなミスに激怒した結果、部下を失ったりすることです。

落ち込みすぎて命を失う大学生も感情にふりまわされています。

恐怖設定というワークを思いついた

コントロールの仕方はいろいろありますが、今回は、2004年に私の人生を様変わりさせた方法をお伝えします。

2つのことがきっかけで見つけました。

1つは、同年代の親しい友だちが、突然、すい臓がんでなくなったこと。もう1つは、結婚するつもりでいた恋人にふられたことです。

彼女は私にこんな額を残していきました。

「仕事は5時に終わるもの」(”Business hours are over at five o’clock.”)と描かれた額です。

机の上に置くためにくれたのです。私が健康でいられるようにと。

というのも、そのころ、はじめて自分のビジネスを立ち上げたばかりで、1日に14時間、毎日働いていたんです。興奮剤を使いながら。寝る時は鎮静剤です。それはもうひどいものでした。

すっかり身動きできない状態だったので、答えを見つけるために、シンプリシティに関する本を買いました。

この本にのっていた小セネカの言葉が私の人生を大きく変えました。

“We suffer more often in imagination than in reality.”(人は、現実よりも想像の世界でより苦しむ)。

その後、彼の書簡を読み、 “premeditatio malorum”という練習を知りました。

最悪なことを先に考えておくトレーニングです。

自分が恐れていること、行動を邪魔しているものをビジュアライズすることによって、麻痺を克服し行動に出られるようにします。

私は、気が散りやすいので、考えをまとめるために、紙に書くことにしました。そして、ゴール設定ならぬ、恐怖設定というワークを考え出しました。

紙に3ページ書くだけの、簡単なワークです。

1ページめ:もし私が~したら?

恐怖設定1ページめ

最初のページには、”What if I …?”(もし私が~したら)を書きます。

自分が恐れていることです。心配事の種になっていたり、先延ばしの原因になっていること。

たとえば、誰かをデートに誘ったり、逆に縁を切ったり、昇進をリクエストしたり、仕事をやめたり、会社を始めたり。どんなことでもあてはまります。

私の場合は、4年間で、最初のバケーションをとることでした。1ヶ月ロンドンで休暇を過ごしたらどうなるか? 

友だちの部屋をただで使えたのです。

自分を仕事から切り離すか、会社をたたんでしまうか。

■恐れを明らかにする(Define)

最初の列は「定義する」で、それをしたら起こりうる最悪のことを書きます。

10個から20個書き出してください。

2つ、例をあげると、1つめは、「ロンドンは雨で、うつになる。すべてが時間の無駄となる」。2つ目は、「税務署からの手紙を見落として、監査を受け、会社がつぶれる」。

■回避策を考える(Prevent)

真ん中のコラムは「回避する」です。

起こりうる最悪のことを防ぐ方法、あるいは、少しでもましな状況にするためにできることを書いていきます。

1つめは、携帯用のブルーライトを持っていき、朝15分間使う。このライトを使うとうつ状態からまぬがれます。税務署対策としては、郵便を受取る住所を会計士の住所に変えておきます。

■解決策を考える(Repair)

3つめのコラムは「修復する」です。

最悪のことが本当に起きたら、どうするか?

ロンドンの雨の場合、スペインに行って、太陽の光をあびる。税務署の手紙をなくしたら、友だちの弁護士やその道に詳しい人に電話をして、対処法を教えてもらう。

自分より知性ややる気が劣っている人が、これまで、似たような問題を解決したことがあるんじゃないのか?

こう考えてみると、答えは「イエス」です。

2ページめ:やってみることで得られるメリット

2ページめには、これを実際やったり、少しでも成功したら、得られる利益を書きます。

恐怖を感じているときは、前向きに考えないものです。これからそれをやることで、自信がついたり、スキルが身についたりしないか、考えてみます。

感情的、経済的、その他のメリットはないのか、と。

10~15分、時間をかけてください。

3ページめ:やらないことで支払う代償

3ページめはもっとも大切なので、飛ばさないでください。「行動を起こさないために支払うコスト」です。

何か新しいことをやってみようとするとき、人は、うまくいかないことを考えるのがとてもうまいです。

たとえば、昇給を頼むとか。

みんながやらないのは、行動を起こさず現状にとどまることで支払う代償を考えることです。

もしこれをやらないとしたら、自分の人生はどんなふうになるのか考えます。6ヶ月後、1年後、3年後はどんなふうになっているか。

ここでも、感情的、経済的、肉体的影響などを細かくみていってください。

私がやってみたら、恐ろしい未来が見えました。仕事はうまくいかず、人間関係もこわれてしまう。

行動しないことは、もう自分の選択ではなくなったのです。

以上3ページが恐怖設定です。

全部書いてから、それぞれのインパクトを数字の1から10で表します。

もし旅行に行ったら、1~3程度の一時的で小さなリスクがあるけれど、8~10に相当するポジティブで人生を変えるほどのメリット、それも半永久的なメリットがある。

だから、私は旅行に行きました。

想像していたような悪いことは何も起きませんでした。多少のトラブルはありましたが、仕事漬けから抜け出すことができたのです。

結局、1年半、世界を旅行することになり、その体験が、私の最初の本につながり、それが、このプレゼンにつながりました。

3ヶ月に1回、この恐怖設定をやっています。そのおかげで、大きな成功をおさめたり、大惨事を防ぐことができています。

この方法は万能ではありません。根強い恐怖というものもありますから。

ただ、このように細かく分析せずに、結論を出すべきではないのです。困難な状況が簡単に改善されたり、難しい決断が楽にできるとは言いませんが、ましになるのは確かです。

適当に決めてはだめ

最後に、現代のストア主義者である、ジャージー・グレゴレクを紹介します。

オリンピックの重量上げで4回チャンピオンになった人であり、政治難民で、詩を出版したこともある62歳の男性です。

彼はポーランドの「連帯」のメンバーでした。「連帯」は政府が暴力的に押さえつけていた、非暴力的な社会グループです。

彼は消防士としての仕事を失いました。メンターである司祭は誘拐され、拷問を受け、殺されて川に捨てられました。

その後脅迫を受け、彼は妻と一緒にポーランドから逃げ、各国を転々とし、アメリカにたどり着きました。

何も持たず、床に寝ていました。

今はカリフォルニアのウッドサイドに住んでいます。とてもよいところです。私がこれまでに出会った1万人以上の人のうち、成功や幸せという面でみたら、上から10番に入る人です。

数週間前、彼に、ストア哲学を読んだことがあるか、テキストで聞いてみました。

するとなんと2ページの返事が届いたのです。彼はふだんはとても寡黙です。

彼はストア哲学をよく知っているだけでなく、これまでの人生で重要な決断をしたときや、自分の原則と倫理のもとに行動を起こそうとしたときは、ストア哲学の考え方を使い、恐怖設定と似たようなことをしていた、というのです。

びっくりしましたね。

テキストは、次の2つの言葉で締めくくられていました。

1.ストア主義者の人生ほど美しい人生は想像できない。

2.適当な決断は、困難な人生をもたらし、困難な決断は、楽な人生をもたらす。(Easy choices, hard life. Hard choices, easy life.)

困難な決断、つまり、恐怖のせいでやれないことこそ、私たちが、やるべきことなのです。

大きな挑戦や問題は、楽な対話をすることでは解決できません。自分の頭の中でしているときも、誰かと話しているときでも。

ご自身に問いかけてみてほしいのです。

いまのあなたは、目標を明らかにすることより、恐怖を明確にすることのほうが大事なのではないか?

セネカの言葉を忘れないでください。

「人は、現実よりも想像の中で、より苦しむ」

//// 抄訳ここまで ////

単語の説明

Stoicism ストア哲学

ヘレニズム哲学(ヘレニズムの時代にアリストテレスから発展した哲学)の一派。

ヘレニズム哲学は幸福を追求することを大事にしています。

ストア派では、外的な刺激に、刹那的に反応する人生を送っていると、人は不幸になると考えています。

世俗的な欲望から自分を解放することで、本当に自由になれるのです。

延々と議論するのではなく、行動することが大事だとも考えています。学んだ考えを、実生活に生かさなければ意味がないのです。

だから、世界的なリーダーの中に、ストア哲学を愛好する人が多いのでしょう。

詳しく知りたい方は、このような本を読んでみるといいと思います。

表紙クリックでアマゾンに飛びます。

ストア哲学では、どんなに物を持っても幸せになれない、とか、他人の目を気にするのは愚かなこと、と考えているので、ミニマリストの生き方を希望する人には、共感できることが多いのではないでしょうか。

アメリカのミニマリスト、ピーター・ローレンスも、ストイックであれば、どんなことにも動じない心が持てて、平安になる、と言っていました⇒ミニマリストの部屋公開~最小限のモノで生活して40歳でリタイヤした男

片付けないでいるリスクって何?

当ブログの読者の悩みの多くは、「片付けられないこと」だと思います。

片付けられない最大の理由は、片付けないからです。行動しないから、いつまでたっても片付かないのです。

小さな行動でも始めれば、もう「片付けられない」と悩むことはなくなります。

多くの人が、片づけ本や断捨離本、雑誌、インターネットを読むことに時間をあてて、行動を先延ばししています。

この気持、よくわかります。私も、「英語の学び方」といった本やブログを読むことに時間を費やし、実際に、語学する時間がなくなる、というパターンに何度も陥りました。

そのほうが楽だからです。

楽なのですが、楽なことばかりしていると、自分の望む状況にいつまでも近づきません。

「今年こそ断捨離する!」「汚部屋脱出!」と新年に書き初めする予定なら、代わりに恐怖設定をやってみるといいかもしれません。

例を書いてみます。

お題:もし私が元旦から断捨離を始めたらどうなるか?

■定義(最悪の事態)

1.正月そうそう片付け始めるなんて、空気が読めない、と周りの人に思われる。

2.やってもたいして片付かない

・・・全然最悪じゃないですね。

■回避策

1.今年から人の言うことを気にしない自分になる

2.何もやらない前から決めつけない

■修復プラン

1.周りの人が思うことは自分ではコントロールできないと納得する

2.また明日さらに片付ける

1ページめはこんな感じになるでしょうか。

片付けることで得られるメリットや、片付けないままでいると、どんなふうになるかは、過去記事にたくさん書いています。

メリットは先日も書いたばかり⇒ミニマリストの生き方ってどんな感じ? どんなメリットがあるの、と疑問に思う人へ。

汚部屋の弊害の例⇒気をつけて。ガラクタが感情に与える悪影響を見過ごしてはいけない

片付けないリスクの見極めは、できるだけ丁寧にやります。イヤなことから目をそらさないのがこのワークのコツです。

う~ん、これは効きそうですね。ほかにも、やりたいのにやれていないことがあったら、お試しください。

~~~~
ティム・フェリスは、2011年にこんな本を書いて、ベストセラーにしています。

The 4-Hour Workweek(邦題:「週4時間」だけ働く。)

タイトルやサブタイトルを読むと、おちゃらけた本かと思うかもしれませんが、600ページ以上あるワークブックです(私は読んだことありません。2018年、読んでみるかもしれません)。

ニューリッチ(先送りの人生プランを捨てて、いまを生きる人。労働時間は短いが、お金はしっかり稼いでいる)になるための本なので、長い労働時間にあえぎながら、堅実に働いている人は反感を持つかもしれません。

ですが、プレゼンを見るとわかるように、彼は悩み多き人なのです。

いろいろ悩みつつ、自分を実験台にして、いまのライフスタイルに行き着きました。その影にストア哲学があったのです。





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