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年をとるとバランスをうまく取れなくなりますが、バランスを鍛えておけばこの状態を改善できると教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは Your socks may hold the key to aging better(あなたの靴下が、よりよく年をとる鍵を握っているかもしれません)
理学療法士(フィジオセラピスト)の Carole Blueweiss (キャロル・ブルーワイス)さんの講演です。
老化を防ぐ鍵:TEDの説明
Many of us assume that the risk of falling is an inevitable part of growing older. Carole Blueweiss, a doctor of physical therapy, explains why aging and frailty are not synonymous. She challenges us all to work on our balance now, so the last years of our lives don’t have to be the worst – they may even be the best.
老化すれば転倒のリスクがあがるのは仕方がないと多くの人が思っています。
フィジカルセラピーの医者であるキャロル・ブルーワイスは、老化と脆弱になることは同じではないと説明します。
彼女は、私達に、今、バランスを取る練習をするようすすめます。そうすれば、最晩年が最悪にならないどころか、むしろ最良になるかもしれません。
収録は2024年の5月、動画の長さは10分、まだアップされて間もないので字幕はついていません。動画のあとに抄訳を書きます。
シンプルで短い講演ですが、とても重要な話です。
どんなふうに靴下を履いている?
今朝、どうやって靴下を履きましたか?
座って? 壁にもたれて? 片足立ちして?
この質問の答えが、皆さんの最晩年が最悪になるか最良になるか決めるかもしれません。
65歳以上の人にとって、転倒は怪我や怪我から派生する死をもたらすよくある理由です。
多くの人は、年をとると、弱くなってしまうと考えていますが、加齢と脆弱になることが違うとしたらどうでしょう?
母のエピソード
息子がまだよちよち歩きしていたとき、私の母は、しゃがんで息子を抱きかかえ居間に歩いていき、息子と一緒に床に座っておもちゃの電車で遊んでいました。
息子が立ち上がれば母も立ち上がって、家中、息子のあとをハイヒールを履いて追いかけていました。
私は履かないハイヒールを優雅に履いて動いていたのが私の母でした。
数年後、母が電話で、バランスを取りそこなって転び、腕の骨を折ったと言ったので、母に付き添って病院に行きました。
医者は母の腕を直してくれましたが、誰も、母のバランスについては聞きませんでした。
私は、25年、理学療法士をしていますが、今、考えてみると、あのとき、医者も私も、なぜ母が転んだのか、その原因についてもっと考えるべきでした。
母は、転倒するずっと前から、バランスを取ることができなくなっていたと思います。
今、母は87歳で、どこに行くにも青いローリングウォーカーを使っています。
いつ、母がバランスをくずして転ぶかわからないので、いつも誰かが付き添っています。実際、母はよく転びます。
バランスを取ろうとしないとその能力が衰える
毎年、65歳以上の6人に1人が転倒します。
投薬や病気、床のマットですら投薬の原因になりますが、皆さんが思っている以上にそうならないよう予防できます。
着替えをしたり、座ったり立ち上がったり、歩いたりする日常の活動が、バランスを鍛えるのに役立つんです。
靴下を履こうとしてよろけると、次は壁に寄りかかったり、足が疲れるから座って履こうと思いますよね?
でも、筋肉を使わないと筋力がなくなるように、バランスを取ることも練習をしないとその力が衰えるんです。
使わないものは失う
「使わないとなくしてしまう(If you don’t use it, you lose it)」という言葉をご存知ですよね?
これは、バランスを取る能力にもあてはまります。30代からバランスを取る力が衰えるのですが、誰もそのことを教えてくれません。
その代わり、有酸素運動やストレッチはいいと言われ、加齢には筋トレが重要だという研究がたくさんなされています。
こうしたことはみな重要で、やるべきです。ただ、バランスのトレーニングはあまり話題になりません。
筋肉を使うから筋力がつきます、バランスについても同じアプローチをするべきではないでしょうか?
歩くだけでバランスは鍛えられる
バランスについては、問題が生じてから改善しようとします。筋トレや有酸素運動、ストレッチは積極的にやるのに、バランス力を鍛えることは後回しです。
きょう私は皆さんに、もっと積極的にバランスを鍛えることをお勧めします。
歩くだけでもバランスのトレーニングになります。歩行は片方の足でバランスを取ることを交互にしています。足を踏み出すたびに、転倒を防いでいて、これは綱渡りをする時とたいして変わりません。
綱渡りをする人は、常にバランスを調整して落ちないようにしてます。
皆さんの脳と身体は、1日中、綱渡り師のように、調整をしているんです。
たとえば、歩道を歩く時、たくさんの亀裂の上を歩いていますが、特に気づかず歩き続けます。このとき足首は、ひねったり、転んだりしないように、細かい調整をしているんです。
誰かに誤って後ろから押されたとき、私達は前に踏み出します。これも、転ばないための方法です。
視覚や目に頼ってバランスをとってるので、暗闇の中ではバランスを取りにくくなります。
私は皆さんに、よろよろすることで、両足でしっかりバランスを取る方法を学んでほしいと思っています。
だから、でこぼこした地面や、障害物はむしろありがたいものと考えるべきでしょう。
転倒のシニアへの影響
今日、転倒防止がとても重要視されています。
転ぶと、股関節骨折や頭部外傷といった深刻な怪我をしてしまう可能性があるからです。
シニアにとって、このような怪我をしたあとの人生は、決して前と同じではありません。
でも、こんな状態にならない方法があります。
転倒の多くは防止できるという研究がたくさんあるし、脆弱になることも、避けることができるんです。
加齢に伴う問題、たとえば筋力の低下、姿勢の変化、バランスの問題は、突然起きるわけではありません。気づかないうちに、もっと前に始まっています。
楽な道を選ぶ私達
子供のときは走りまわり、何かに登り、転んで立ち上がってジャンプをしましたよね。
あなたが最後にジャンプをしたのはいつでしょう?
皆さんの多くは、前よりずっと座る生活をしていると思います。
私もそうです。年をとるにつれて、私達は肉体的に以前のように挑もうとせず、居心地が悪いと感じることは避けようとする傾向があります。
空港で階段とエスカレーターがあったら、多くの人がエスカレーターを使います。
スーパーでは、買い物かごを持たず、ショッピングカートを使うでしょう。
このように、楽なほうを選んでいると、知らないうちに、バランスを取る力が衰え、私の母のようにある日、問題となって表れるのです。
最近の子供たちはスマホを使うため、昔より若いうちから座っているので、もっと早くに問題が表れるでしょう。
自分でバランスを鍛えよう
では、どうすべきか?
まずソックスを履くとき、座らないことから始めてください。安全のために椅子を横に起いてから、立って履きましょう。よろけて前に踏み出しても大丈夫です。それがバランスを鍛えます。
もし、危険だと思っったら、壁を使ったり、座ったりしてもかまいません。でも、私達は座る必要がないときに座ってしまうんです。そうやってバランスを取る力を衰えさせてしまいます。
バランスをうまく取れるように、自分を鍛えなければなりません。もちろん、加齢により身体は変わり、動きに対する感じ方も変わるでしょう。
パーキンソン病のような神経変性疾患にかかることもあります。
でも、私達は自分が思っている以上に状況をコントロールできます。バランスを改善するのに遅すぎることはありません。
バランスをうまく取れるようになると、自信という贈り物を得られます。
恐れることなく動ける自信でし。自分のやりたいことを自信を持ってできます。
私の母は理学療法を楽しんでいて、療法士たちがあまり負荷をかけてくれないと文句を言っています。
母は、今でも、自分に挑もうとしていて、私はそんな母が大好きです。
皆さんも、明日、靴下を履く時、自分に挑んで、バランス力を鍛えてください。
1度に1足ずつ。そうすれば、人生の最後の年が最良の年になるかもしれないのです。
//// 抄訳ここまで ////
運動や健康に関するほかのプレゼン
ウォーキング・ミーティングのススメ。健康にいいし仕事もはかどる(TED)
ダイエットしないで健康になる方法(TED)~生活習慣を変えよう。
毎日やっていることが人生の質を変える
シンプルなトークですがいろいろな洞察を得られます。たとえば
・65歳以上になると転倒リスクがあがる
・年をとったからといってバランスを取る力が衰えるわけではない。鍛えれば、その力を維持できる
・日々の練習がバランス力を保つのに役立つ。歩行や靴下を履くといったシンプルなことでもトレーニングになる。
・バランスを取る力は30代からすでに衰え始める
など。
私が学んだのは、
「年をとったら身体が弱ってもしかたがない」とあきらめて、何もしないでいるのは自分のためにならない。日々、ちょっとしたトレーニングを心がければ、バランス力は失われない
という点です。
靴下は多くの人が毎日履きますよね?
ストッキングの愛用者は履かないかもしれませんが。
このように毎日やっていることは、積み重なって、自分の身体や人生に大きな影響を与えます。
だから、座ってばかりいないで、適度に動き、難しい動作に挑戦するのはとても意義のあることです。
高いお金を出して、ジムに行かなくても、ふだん座りすぎないようにして、ときどき歩いて、ソックスを履く時は片足立ちでやってみるだけで、人生の質が変わりますよ。