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卒業後の進路、転職、結婚など、難しい決断で迷うことはよくあります。そんな難しい選択を簡単にする方法を教えてくれるTEDの動画を紹介します。断捨離中、捨てる、捨てないで悩むときにも参考になります。
タイトルは How to make hard choices (どうやって難しい決断をするか?)
邦題は、難しい選択の仕方。スピーカーは哲学者のルース・チャン(Ruth Chang)です。
「難しい選択の仕方」TEDの説明
Here’s a talk that could literally change your life. Which career should I pursue? Should I break up — or get married?! Where should I live? Big decisions like these can be agonizingly difficult. But that’s because we think about them the wrong way, says philosopher Ruth Chang. She offers a powerful new framework for shaping who we truly are.
このプレゼンは文字通りあなたの人生を変えてしまうでしょう。
どの仕事につくべきか?別れるべきか、結婚するべきか?どこに住むべきか?
このような大きな選択をするのはとても難しいです。しかし、それは私たちが間違った捉え方をしているからだ、と哲学者のルース・チャンは言います。
チャンは、私たちが本当の自分になるための、とても強力な考え方を提案します。
2014年5月にニューヨークで行われたプレゼン。長さは14分41秒。日本語字幕です。動画のあとに抄訳を書きます。
※トランスクリプトはこちら⇒Ruth Chang: How to make hard choices | TED Talk | TED.com
※TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
難しい選択とは?(導入)
近い将来、皆さんが直面しそうな難しい選択を考えてみてください。
●芸術家になるか、会計士になるか?
●都会に住むか、田舎に住むか?
●ベティとロリータのどちらと結婚するか?
●子供を作るか、作らないか?
●病気の親を引き取るべきか、引き取らないか?
皆さんの思い浮かべた難しい選択は、ご自身にとって重大なことでしょう。
難しい選択をするのはとても苦しいものに思えます。
ですが、人は難しい選択や、それが人生に果たす役割を誤解しているのです。難しい選択について理解すれば、私たちの持っている潜在的な力を発見することができます。
何が選択を難しくするのか?
選択を難しくするのは、選択肢同士の関係性です。
簡単な決めごとは、片方の選択肢がもう一方の選択肢よりあきらかによいのですが、難しい選択になると、帯に短したすきに長しで、どちらがよいのかなかなか決められません。
どちらがよいのかわからないのでとても悩むのです。
難しい選択は大きなことばかりとは限りません。
朝食のメニューを決めるのも難しいです。食物繊維の豊富なシリアルにするかチョコレートドーナツにするか。
選択するポイントを「健康によいほう」とすれば、シリアルですが、「美味しさ」にこだわるなら、ドーナツです。
どちらがよいとは、言い切れません。
小さな選択だってそれなりに難しいのですが、ちゃんと選択できていますから、大きくて重大な選択もできるはずです。
安全なほうを選んだら自分らしさを失った
自分の頭が悪いから決められないと考えてはいけません。
私、大学を卒業するとき、進路で迷いました。哲学にするか法律の道に入るか。
哲学は大好きでしたが、貧しい移民の家に生まれた私は、一生肘掛け椅子に座って、ただ考えごとだけをするのは、ぜいたくすぎると思いました。
そこで、紙の真ん中に線を引き、それぞれのメリット、デメリットを書いていきました。
こんなふうに思ったものです。
それぞれの道を選んだ先にある人生がわかればいいのに。神様かネットフリックスが、将来の展開をDVDにして送ってくれれば、決められるのに、と。
2つを比較して、どちらがよいかわかれば決めるのが簡単になるんじゃないかと思いました。
しかしDVDはなかったし、どちらがいいかわからなかったので、私は、人が難しい選択をするときによくすることをしました。
安全なほうを選んだのです。
就職が難しい哲学者ではなく、弁護士になりました。しかし、自分は弁護士向きではないとわかりました。自分自身でいられなかったのです。
ベストの選択肢はない
その後、哲学者になりました。そして、難しい選択について研究しています。
だからこそ、私は皆さんにこう言います。難しい選択をするとき、多くの人が未知のことに恐怖を感じるのは、選択に対して誤解しているからです。
決めるのが難しいとき、以下のように考えるのは間違っています。
●自分の頭が悪いから、どちらがいいのかわからない。
●どちらがいいのかわからないから、もっともリスクのない選択をする。
たとえ、それぞれの選択肢に関する情報をすべて持っていても、やはり決めるのは難しいのです。
それは、私たちが無知だからではなく、そもそも、最良の選択がないからです。
もし、ベストの選択がないとしたら、2つの選択肢は同じようによいと言えます。
では、難しい選択とは、どちらの選択肢も同じくらいよいのだ、と言えるでしょうか?
でも、これは違いますよね?
どちらも同じくらいよいなら、コインを投げて、裏か表かで決めればいいのですから。しかし、これはできませんね。
職業、住む場所、結婚相手をコインを投げて決めるなんて。
難しい選択の選択肢に優劣はないが、同じほどよいわけでもない
難しい選択における選択肢が同じくらいよいと言えない理由は他にもあります。
ここに2つの仕事があるとしましょう。投資銀行家とグラフィックアーティストです。あなたは、どちらの仕事を選んでもかまいません。
この2つを比べるとき、さまざまなポイントがあります。
仕事のおもしろさ、経済的安定があるか、子育てする時間をとれるか、など。
簡単には優劣のつけられない2つの仕事です。
ここで、片方の選択肢の条件を少しよくします。銀行が月給に500ドル上乗せしたとしましょう。お金が増えたことが、銀行の仕事をより魅力的にしたでしょうか?
そうとも言えません。
サラリーがあがったことは、銀行の仕事を前よりよいものにしましたが、アーティストよりよいか、という点では充分ではないかもしれないのです。
しかし、片方の仕事の条件をよくしたのに、一方の仕事よりよくないなら、最初から、この2つの仕事の「良さ」は同じくらいではなかったと言えます。
難しい選択のときは、優劣をつけられないのに、同じほどよい、とも言えないのです。
何かが間違っています。
もしかしたら、選択する行為自体に問題があるのではないでしょうか?つまり、もともと比較することはできないのかもしれません。
しかし、これも違います。
実際に比べているのですから。
2つの仕事のメリットを比べています。これは、数字の9と目玉焼きを比べるのとは違います。
2つの仕事の総合的なメリットを比べることはちゃんとできますし、実際、私たちはよくやっています。
重さを比べるように、仕事を比べてはいけない
選択で困るのは、私たちの価値に対する思い込みのせいなのです。
正義、美しさ、優しさという価値を、私たちは、長さや重量と一緒にしています。
価値に関係のない比較を考えてみましょう。たとえば、2つのスーツケースの重さを比べます。
この場合、可能性は3つだけです。
●片方より重い
●片方より軽い
●同じ重さ
重さは数字で表せるから、3つの可能性しかないのです。
しかし価値は違います。科学の世界にあるものは数字で測れても、価値が問題になっているときは、そんなことはできません。
こうあるべきだ、こうすべきだと考えている時、長さや重さを比較しているのだと思い込んではいけないのです。
価値を比較している時は、良い、悪い、同じという関係性ではなく、それとは別の4つめの関係性が必要です。
私はその関係性を「互角だ on a par」と呼んでいます。
選択の理由は自分の中にある
選択肢が互角なら、どちらがより重要か選ぶことができますが、片方がもう一方よりよいとは言えないのです。
2つの選択肢は、同じ価値の領域に同時にあるけれど、とても異なっています。
だから、選択するのが難しいのです。
難しい選択をこのように理解すると、自分でも知らなかった自分を発見することができます。
私たちは理由を作り出す力があるのです。
簡単な選択しかない世界を想像してみてください。常にベストの選択肢がある世界です。
最良の選択肢があればそれを選ぶのがふつうです。そのような世界では、私たちは外側の理由を優先するようになります。
与えられた理由にもとづき、趣味、住む場所、仕事を選ぶなんて馬鹿げていますね。
現実には、私たちは互角の選択肢を前にして、自分で基準を定める力を発揮して、選ぶ理由を作ります。
互角の選択肢からどちらかを選ぶ時、驚くべきことがおきます。
自分自身を選択の理由にできるのです。
私の立つ場所はここ。私はこういう人間で、銀行家を目指している、と。
難しい選択をするとき、与えられた理由によって決めるのではありません。
自分で作った理由によって決まるのです。
あちらではなくこちらを選ぶ人間になると決めて選択し、そういう人間になろうとします。
これは自分の人生の作者になるとも言えます。
難しい選択に直面したら、どちらの選択肢がよりよいのか、と考えてはいけません。
最良の選択肢はないのですから。
外に答えを求めるのではなく、自分自身の中に答えを見つけるべきです。自分はどんな人間になりたいのか、と。
あなたは、ピンクの靴下を履き、シリアルを食べ、田舎に住む銀行家になると決めるかもしれないし、私は、黒いソックスをはき、都会に住む、ドーナツが好きなアーティストになると決めるのです。
どう選択するかは自分次第です。
難しい選択に直面することは幸運なこと
難しい選択を前に、自分で基準を定める力を発揮しない人は漂流者(drifter ドリフター)です。
私は流されて弁護士になりました。弁護士としての自分を選んだわけではなかったのです。
漂流者は自分の人生のシナリオを世間に委ねます。
報酬と罰の仕組み(ほめられるとか、怖いとか)に影響を受けて、どの道に進むか決めるのです。
自分が何を大事にするか、どんな人間を目指すのか、そこから難しい選択をすることができます。
選択をすることで、そういう人間になるのです。
難しい選択は苦痛の種ではなく、いかに人間がすばらしいのか知ることができる貴重な機会です。
難しい選択をするとき、私たちは、より自分らしい人間になる理由を作る力を発揮できます。
難しい選択は困ったことではなく、とてもありがたい幸運です。
—- 抄訳ここまで —–
選択に関するほかのプレゼン
バリー・シュワルツに学ぶ『選択のパラドックス』(TED)~所持品をミニマムにすると生きやすくなる理由とは?
選択をしやすくするには~シーナ・アイエンガー(TED)。選択肢の海の中で生きる技術。
我々は本当に自分で決めているのか?ダン・アリエリーに学ぶ、選択のミス(TED)
このプレゼンのポイント
まとめると、
●難しい選択をするとき、ベストの選択肢はない。
●重さや長さを比べるように、価値を比べてはいけない。
●自分がどの価値を重要視するかで、選択がきまる。
●自分がどうなっていたいか、どんな人間になりたいかで選択がきまる。
●難しい選択は、自分の力を発揮できるチャンスである。
こうなると思います。
捨てるか、捨てないか?
私にとって、いらない物を捨てると決めることはそんなに難しくはありません。
それはたぶん、すでに「不用品を持たないミニマリストになる」と決めているからでしょう。
それに、「使っていない物は捨てたほうが暮らしやすいに決っている」という価値観が、はっきりしています。
しかし、これまでいらない物をたくさんためこむ生活をしていて、シンプルライフやミニマリズムという考え方に、最近出会ったのなら、私のように考えることはできないでしょう。
それはそれでいいのです。
その人と私は違うのですから。
「私はこういうことを大事に思っているし、こういう人間になりたいから、今日はこれを捨てるのだ」と決めることが大事だと思います。
もちろん捨てない選択をしてもいいです。
しかし、その選択は主体的であるべきです。そうしないと漂流者になってしまうから。主体性を持って決めることで、自分の人生のシナリオを書くことができます。
「いらない物を捨てる、捨てない」なんて、そこまで難しい選択ではないと思いますが、すごく悩むなら、自分がどんな人間になりたいのか、そこを考えてください。
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進路を決めるとき、自分はこういう人間になりたいから、こっちの道を行く、と決めるのは理想的なやり方ですね。
そのほうが決めたあと後悔はないでしょう。家族の意向や世間体などを考慮すると、決めた後ももやもやが残りそうです。
まあ、なかなかそうはいかないかもしれません。
とは言え、人は自分の価値観に従って行動しているときに喜びを感じるもの。自分らしさを裏切るような選択は、なるべくしないほうが幸せにつながると思います。