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どうしたら100歳を超えるまで生きられるのだろう? 条件を知りたい、なんて人も多いかもしれません。
今週のTEDは地球上で長生きする人々が住んでいる場所(ブルーゾーン)を研究しているダン・ベットナー(Dan Bettner)さんの講演です。
タイトルは How to live to be 100+ (100歳以上まで生きる方法)。邦題は「100歳を超えて生きるには」。
2009年のプレゼンでちょっと古いのですが、いまも充分参考になります。
100歳を超えて生きるには? TEDの説明
To find the path to long life and health, Dan Buettner and team study the world’s “Blue Zones,” communities whose elders live with vim and vigor to record-setting age. In his talk, he shares the 9 common diet and lifestyle habits that keep them spry past age 100.
長寿と健康への道を見つけるために、ダン・ベットナーはチームを組んで、世界のブルーゾーン、つまり、元気で長生きしている人が記録的にたくさんいる場所を研究しています。
このプレゼンで、彼は、100歳以上まで生きるための食事法やライフスタイルを9つ紹介します。
収録は2009年の9月、プレゼンの長さは19分33秒。日本語字幕があります。字幕なし、英語字幕、その他の言語の字幕がよい方は、プレイヤーで調節してください。
動画のあとに、抄訳を書きます。
☆トランスクリプトはこちら⇒Dan Buettner: How to live to be 100+ | TED Talk
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ダンはナショナル・ジオグラフィックのライターですが、しゃべるのもとてもうまいです。
人の寿命の9割は生活習慣で決まる
デーニッシュ・ツイン・スタディという調査によると、人の寿命を決めるもののうち、10%だけが、生物学的なもの、遺伝子です。
残りの90%はライフスタイルで決まります。
そこで、私たちは、ブルーゾーン(長生きの人がたくさんいる場所)を研究し、長生きできるライフスタイルを見つけることにしました。
平均的なアメリカ人に長生きの秘訣を聞いても答えられないでしょう。
サウスビーチダイエットやアトキンスダイエット、USDAフードピラミット、おプラ・ウィンフリーが言ったことなどを聞きかじっているだけです。
長生きする方法に関して、情報がありすぎて、よくわからないのです。
マラソンをすべきか、それともヨガ? オーガニックの肉を食べたほうがいいのか、豆腐を食べるべきか。
サプリメントやホルモンを摂るべきか。生きる目的があるほうがいいのか、それともスピリチャリティ?
人と交際するほうがいいのかな?
こんな状態です。
私たちはナショナル・ジオグラフィックと国立エイジング研究所の専門家とチームを組みました。
元気で長寿の人がたくさんいると統計で出ている4つの場所を特定し、出かけていきました。
そして、人々がどんな暮しをしているのか調べ、長寿の秘訣を見つけました。
長生き法に関するよくある誤解
長生きするコツは最後にお伝えしますが、まず、長生きに関するよくある誤解を紹介します。
誤解その1:努力すれば100歳まで生きられる
違います。アメリカでは100歳まで生きる人は5000人に1人です。
老人の数はどんどん増えてはいるものの、100歳まで到達するのはむずかしいのです。
人はそこまで長生きにできていないのです。人間は、プロクリエイティブサクセス(procreative success、繁殖を成功させること)を達成するようにできています。
つまり、子供が生まれ、その子供が子供を産み、次の世代を作れば、もう役割を終えるのです。
哺乳類は皆、同じです。
ですから100歳まで生きるには、ライフスタイルに気をつけるだけでなく、遺伝的なくじにも当たる必要があります。
誤解その2:加齢を遅らせたり、逆にしたり、止める方法がある
これも違います。
老化する理由は実にたくさんあります。
脳に酸素を送ることをやめれば、数分で脳の細胞は死に、2度とよみがえりません。
テニスをしすぎて、膝をいため、軟骨をだめにすると、こわれた軟骨は戻ってきません。
動脈は詰まるし、脳にもゴミがたまってアルツハイマー病になります。
人は35兆の細胞をもっていて、これが、8年に1回、入れ替わっています。入れ替わる時、いくつかの細胞はダメージを受け、こわれた細胞がたまっていきます。
それも急激に。
昔はビートルズやイーグルスのレコードがありました。
それをカセットテープに録音していて、そのテープからまた別のテープに録音することを繰り返しているうちに、いつのまにか、テープそのものがゴミになる感じです。
65歳の人は、12歳の人より125倍早く老化しているのです。
90歳までは元気に生きられる
では、老化を止める方法は何もないとしたら、なぜ私はこんなところにいるのでしょう?
実は、科学的には、人の身体は90歳まで生きられるのです。女性はもう少し長生きできます。
ですが、アメリカの平均寿命は78歳。
あと12年、伸ばせる可能性があります。しかもこの12年は慢性的な病気に煩わされない12年です。
この12年を手にするには、実際に、長生きの人がいる文化を調べてみるのがベストだと思いました。100歳まで生きる人がたくさんいる場所であり、中年の死亡率が低い場所です。
長寿の街その1:イタリアのサルディーニャ島
最初のブルーゾーンはイタリアの海岸から125マイル(約201キロ)離れた場所にある、サルディーニャ島です。
島全体ではありません。高地にあるヌオロ県というところです。
ここの男性はアメリカの10倍、100歳以上の男性がいます。
100歳まで生きるだけでなく、ひじょうに元気です。102歳の人が、バイクに乗って仕事に行き、木を切り、自分より60歳若い男性を腕相撲で負かしたりします。
規則的な生活
この場所の歴史は、青銅器時代にまでさかのぼります。土地がやせているので、羊を飼って暮してきました。
規則的で、あまり肉体に負荷のかからない活動です。
プラントベースの食事
食べ物はほとんどプラントベース(plant-base 植物主体)で、野原に持っていけるようなものです。
食べているのは以下のようなものです。
カルタ・ミュジカと呼ばれる、デュラム小麦から作った発酵させない(イースト菌を使ってふくらましていない)パン
草を食べて育った動物から作ったチーズ(オメガ3脂肪酸が豊富)
カノナウというワイン(ふつうのワインよりポリフェノールの量が3倍多い)
本当の秘訣は、どんな社会を作っているかにあります。特に高齢者の扱い方が違います。
アメリカで、人の社会的価値がピークに達するのは24歳ですよね? 広告を見ればわかります。
お年寄りが大事にされる街
ところがサルディーニャでは、年をとればとるほど価値があがるのです。
バーに行くと、若者の水着姿のカレンダーではなく、「今月100歳になった人」というカレンダーがあります。
高齢の人がいると、平均寿命が4~6歳ほど伸びますが、子どもたちやその家族にもよい影響があります。
子どもたちの死亡率や病気になる率が低いのです。これは「おばあさん効果(grandmother effect)と呼ばれています。
長寿の街その2:日本の沖縄
次のブルーゾーンは東京から800マイル(約1287キロ)南にある沖縄諸島です。
沖縄には161の小さな島がありますが、本島の北部が、世界でも長生きする人が多い場所であり、長寿の女性がもっとも多い場所です。
疾患のない長寿を誇っています。長生きして、ある日寝ているあいだに死ぬのです。
ここに住む人は、平均的アメリカ人より7年長生きです。アメリカより、5倍、100歳を超えた人がいます。
アメリカ人に多い死因である、大腸がんと乳がんの発生率は5分の1で、心臓病は6分の1。
どんな暮らしをしているのでしょうか?
腹八分で食べすぎない
ここでも食べ物はプラントベースです。有色野菜をたくさん食べています。またアメリカ人の8倍の量の豆腐を食しています。
特徴的なのは食べ方です。食べすぎないのです。
小さな皿を使い、食卓に食べ物を置きっぱなしにせず、カウンターで必要な分を取って、テーブルに運びます。
3000年前に生まれた孔子の言葉を大事にしています。「腹八分ダイエット(腹八分だけ食べる)」です。
おなかが8割いっぱいになったら、食べ終わるというものです。[筆子注:動画では間違えて20%と言っています]。
おなかから脳に、満腹感が伝わるまで30分かかります。8割のところで止めて満腹にならないようにしています。
模合(もあい)というシステム
サルディーニャと同様に、沖縄にも、長寿をもたらしている社会構造があります。
孤独は人を殺します。15年前、平均的なアメリカ人はよい友だちを3人もっていましたが、いまは、1.5人です。
沖縄に生まれると、人生をともにする6人の友達に恵まれます。「模合(もあい)」というグループがあるのです。
模合に入ると、幸運は分かち合い、悪いことが起きると、たとえば、子供が病気になったとか、親が亡くなったりすると、助けてくれる人がいます。
これは模合のグループの写真です。この5人は、97年、一緒のグループで、平均年齢は102歳です。
生きがいを持つ人々
アメリカでは、大人の人生を2つに分けます。仕事をする生産的なときと、リタイアしたあとの2つです。
リタイア後はのんびり暮らすというイメージがありますが、沖縄では、引退(retirement)という言葉はありません。
かわりに、一生関係のある、「生きがい」という言葉があります。
大雑把に訳すと、「その朝、自分が起きる理由」です。
この102歳の空手の達人にとって生きがいは、空手の道を進むこと、この100歳の漁師の生きがいは週に3回、家族のために漁を続けることです。
エイジング研究所が用意したアンケートの中に、「あなたの生きがいは何?」という質問があります。
彼らは、自分の生きがいをよくわかっていました。
この102歳の女性の生きがいは、曾曾曾孫を抱くことです。
2人は101歳、年が違います。
曾曾曾孫を抱くのはどんな気持ちかたずねたら、「天に登るような気持ちだね」という答えが返ってきました。
すばらしいですね。
長寿の街、その3:カリフォルニアのロマリンダ
ナショナル・ジオグラフィックの編集者は、アメリカにあるブルーゾーンも見つけてほしいと言ってきました。
そこで、セブンスデー・アドベンチストが集まっているカリフォルニアのロマリンダ周辺を見つけました。
一生涯をかけて、小さな規律を守る
アドベンチストは、保守的なメソジスト教徒です。金曜の日没から土曜の日の出までが安息日です。
彼らは、5つの小さな習慣を守っており、これが、長寿の秘訣なのです。
アメリカの女性の平均寿命は80歳ですが、アドベンチストの女性は89歳。男性の場合は、11歳も開きがあります。
このコミュニティーはさまざまな人種で構成されています。共通点は、生涯を通じて、とても細かい生活習慣を守っているところです。
聖書にならい、豆と種、緑の野菜を食べ、肉はとりません。
週に24時間、どんなに忙しくても、何もかもやめて、神と向き合うことや、教会のつきあい、信仰に関係のある、自然の中の散歩に時間をとっています。
すごいのは、たまに行うのではなく、生涯を通じて、毎週続けることです。
どれも、そんなにむずかしいことではありませんし、お金もかかりません。
信頼できる人間関係を築く
アドベンチスト同士で、ともに時間を過ごすことも多いので、アドベンチストのパーティに行っても、ウイスキーをがぶ飲みしたり、マリファナを吸う人なんていません。
その替わり、次のハイキングの行き先を相談したり、レシピを交換したり、祈りを捧げます。お互いに、深く影響し合っているのです。
アドベンチストの元気なお年寄り
97歳のエルズワース・ワラムもこんな環境で生きてきました。彼は大金持ちですが、フェンスを作るのに業者が6000ドルかかると言うと、自分で作ってしまいます。
彼はいまも、毎月20時間、外科医として、心臓手術も行っています。
エド・ローリングスは103歳のカウボーイ。朝は水泳をし、週末は水上スキーを楽しみます。
104歳のマージ・ディートンは、朝、ウエイトを使って筋トレをし、フィットネスバイクをこぎ、1994年式のキャデラックでハイウエイに繰り出します。
彼女はいまだに、7つの組織でボランティアをしています。
私はこれまでヘビーな冒険を19回していますが、マージと車を飛ばすほどドキドキする冒険はありません。
「他人は、まだ会ったことのない友達なのよ」と彼女は言います。
長生きする9つの秘訣
さて、これまで紹介した3つの文化の共通点は何でしょうか?
彼らの暮らしで似ているポイントを9つにしぼりました。ほかにもう2つブルーゾーンを調べてだした共通項です。
1.日常生活の中で動く(Move Naturally)
皆、特に運動はしていません。私たちが考えるような運動は、です。
その代わり、生活の中でよく動いています。
100歳の沖縄の女性たちは、毎日30~40回も、床に座って、また立ち上がっています。
サルディーニャの人たちは、上に高い家に住んでいるので、階段の上り下りをよくします。
店や教会、友達の家へは歩いていきます。ボタンを押したら仕事をしてくれるような便利な道具は使っていません。
ケーキを作るときは、自分の手をつかって生地をこねます。
意識的に運動するときは、楽しいことだけをします。よく歩きます。
ウォーキングは、認知の衰えを防ぐと証明されているたった1つの方法です。みな、庭いじりもよくします。
2.静かに過ごす時間を持つ(Downshift)
人生に対する正しい見方をしていて、そのように生活しています。
休憩する時間を取っています。サルディーニャの人やセブンスデー・アドベンチストは神に祈り、沖縄の人は、先祖のために祈ります。
忙しすぎたり、ストレスがいっぱいだと、炎症反応(inflammatory response)が起こり、アルツハイマー病から心臓病までさまざまな病気の引き金となります。
1日15分、静かに過ごすと炎症を抑えることができます。
3.生きるに値するものをもつ(Purpose Now)
彼らは、生きる目的を表す言葉を持っています。沖縄の人には「生きがい」です。
生涯でもっとも危険な時期が2つあります。1つは生まれたとき。そしてリタイアしたときです。
生きるに値するものをもち、そのように暮らしていたら、7年余分に生きることができるのです。
4.少しだけワインを飲む(Wine @5)
長生きするための決まった食事法はありません。
彼らは、毎日少しお酒を飲みます。
5.プラントベースの食事をする(Plant Slant)
プラントベースの食事をしています。肉を食べないわけではありませんが、豆やナッツをたくさん食べています。
6.腹八分(80% Rule)
食べ過ぎません。
7.大事な人たちを優先する(Love Ones First)
家族を優先し、子供や年老いた両親の世話をします。
8.つながっている(Belong)
彼らは、信頼でつながったコミュニティの中にいます。
月に4回、こういう人たちと時間を過ごせば、4年から14年平均寿命が伸びます。
9.よい影響を与える人たちとつきあう(Right Tribe)
重要なのは、適切なグループの人たちと交わっているということです。
生まれたときからそういうグループにいたり、意識的によい影響を与える人たちとコミュニティを作っています。
フラミンガムの研究によれば、自分の親友のうち3人が肥満だと、自分も肥満になる可能性が50%あがります。
不健康な人とつきあっていると、時間をかけて影響を受けるのです。
友達が、楽しみは身体を動かすことだと思っていたり、少しだけお酒を飲んだり、健康的な食事をしたり、活動的で、人と信頼関係をきずいていたりしたら、自分の生活にも大きな影響があります。
ダイエットはうまくいきません。歴史上どんなダイエット法も、人口の2%以上の人には、効果がありません。
長生きに関しては、手っ取り早い方法などないのです。
友達とのつきあいが、長い、長い冒険であり、1年、1年、自分の人生に価値を与えてくれるものなのです。
///// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
procreative 生殖の、繁殖の
cartilage 軟骨
trillion 兆
exponentially 急激に
unleavened イースト菌などのパン種を使っていない、ふくらんでいない
salient 突出した、目立った
ground zero 中心地
模合 金銭的相互扶助の習慣。
swill (お酒を)がぶがぶ飲む
Jim Beam ジム・ビーム バーボン・ウイスキーの銘柄。
roll a joint マリファナのたばこを作る(紙で巻いて作ります)。
heresy 異端、反論
downshift 低速ギアに切り替える⇒ラクな仕事に移る、生活のギアを切り替える
ダン・ベットナーは何冊か著作があります。こちらは最新刊のThe Blue Zones of Happiness 翻訳はないようです。
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友達と健康は同じくらい大事
元気なお年寄りがたくさん出てきましたね。
長生きの秘訣の9つ、すでに知っている人もたくさんいると思います。
おもしろいのは、よい影響を与えてくれる人たちとつきあう、というところです。朱に交われば赤くなるのは、中高生だけではないのです。
自分の身近にいる人は、何年もかけて、じわじわと自分のライフスタイルに大きな影響を与えます。
もちろん、周囲の人を反面教師として、健康的なライフスタイルを築くこともできるかもしれません。ですが、これはそんなに簡単なことではありません。
私は、以前、夫の影響を受けて、たくさんポテトチップスを食べていました。その後、「ジャンクフードばかり食べとったらいかん」と思い、食事法を改善しました。
基本的にジャンクなものは食べないようにしましたが、それでも、夫が買ったポテトチップスやクッキーが家にあると、ふとしたはずみで食べてしまうことがあったのです。
家になければ食べなかったのに。
昔、ツービート(漫才コンビの名前)が、「赤信号みんなで渡れば怖くない」と漫才でよく言っていました。
これはまったくそのとおりで、ほかの人がやっていると、自分も「まあ、いいか」と思ってやってしまうことは、本当にたくさんあります。
良くも悪くも、人間は社会的な影響をいとも簡単に受けてしまうのです。
食事から仕事の仕方、着るもの、お化粧、買うもの、持つ物など、生活習慣のすべてに渡ってインパクトを受けます。
自分の望む生活に害のある悪しき人間関係とは距離をおく、というのも、大きな健康法の1つではないでしょうか? 炎症反応も抑えられます。
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前回、TEDの記事は長すぎますかね、と書いたところ、「そんなことないです。今のままでいいです」というメールがたくさん届きました。
先週の記事⇒砂糖漬けの生活から抜けだし健康になる5つの方法(TED)
そんなわけで、今週も長い記事となりました。
健康に生きるのは、ひじょうに重要なことだと思うので、時間を見つけて少しずつ読んでいただければうれしいです。