悩む人

TEDの動画

最終更新日: 2020.02.15

問題の前で立ち止まったままでいるか、それとも前に進むか(TED)

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問題や困難の前で立ち往生している人に、問題を乗り越えて目に進むを教えてくれるTEDの動画を紹介します。

タイトルは、Staying stuck or moving forward(立ち止まったままでいるか、前に進むか)。プレゼンターは、セラピスト、ライフコーチ、コンサルタント業に長くたずさわっている、ラニ・ネルソン・スラッコ博士(Dr. Lani Nelson-Zlupko)です。

Zlupkoの発音に確信がありませんが、たぶんPは発音しないと思います。



ずっと立ち止まっているか、前に進むか? TEDの説明

通常、動画の下に内容に関する説明がありますが、この動画には、ズラッコ博士の経歴がたくさん並んでいるだけで、内容にふれたものはありませんでした。

その中から、この先生の信念だと思われる箇所を紹介します。

Dr. Nelson-Zlupko works as a bridge between scientific findings and real life people.

She resists the notion that people’s problems are rooted in personal flaws, or that standard talk therapy is sufficient for change.

She believes skills can and do transform mood, behavior, relationships, and organizations.

ネルソン・スラッコ博士は、科学的な発見と生身の人間の架け橋となっています。

博士は、人々の問題は、個人的な欠点に根ざしているとか、変わるためには、一般的なセラピーだけで充分、という考えに反対しています。

ちゃんとスキルがあれば、気分、行動、人間関係、企業までもが変わると考えているのです。

収録は2014年8月、長さは15分。字幕はありませんが、スライドが参考になるでしょう。

動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

問題を解決すれば、よりよい自分になれる

問題があると、人々は私のところにやってきます。

個人的なこと、家族のこと、仕事に関すること、企業にかかわることなど、問題はさまざまですが、自分で解決できないときに、やってくるわけです。

私は人々が問題を解決する手助けをするのが大好きです。

問題を乗り越えることは、その問題は最初からなかったのだというふりをすることではありません。

適正に問題を乗り越えることができたとき、私たちはより強く、自分らしく、なりたかった自分になれるのです。

過去30年間、人々を助けるのに役立つ重要な見識や洞察の発見がなされました。

こうした見解をみなさんにシェアしますね。





立ち往生しているデボラとキース

まず、まったく異なる問題をかかえている2人の人間を紹介します。

なぜ、この2人は、袋小路にはまっているのか、どうしたら前に進むことができるのか考えてみてください。

子どもたちに手を焼くデボラ

デボラは、意気消沈しています。毎日同じ問題に直面しているのです。

彼女の朝は「母親の誓約(マミー・プレッジ mommy pledge)」をすることから始まります。

マミー。プレッジ、たぶんご存知でしょう。

「きょうこそ、私は子供たちを怒鳴らない」というものです。

デボラの子どもたちは、言うことをききません。朝食に出したものを食べようとしないし、用意した服を着ようとしないし、カーシートにのせようとするとわめきながら抵抗します。

デボラは、子どもたちを押さえつけるだけでなく、言葉で説き伏せなければなりません。

ほどなく、がまんできなくなり、デボラは、子どもたちにとってよくないとわかっている言葉を叫んでしまうのです。

「なんで、あんたたちはそんなに悪い子なの!? なんてモンスターなの。あんたたちぐらいの年の子はそんなことしないわよ。ママはもううんざり!」

子どもたちを寝かしつけたあと、デボラは泣いてしまいます。

私、何がいけないんだろう。子供たちにあんなふうに怒鳴るなんて、なんて母親なの? 私の子どもはどうして言うことを聞かないんだろう?

なかなか昇進できないキース

キースは仕事熱心なプロです。賢くて勤勉。同僚ともうまくやっています。

ところが、3年連続、昇進できませんでした。

今年、会社は、大量に人員を削減しています。

「僕の気持ちは、不満から恐怖に変わっています」、こうキースは言います。

もし、上司が僕の価値を認めなかったら? もし解雇されたら? 家や家族はどうなってしまうんだろう?

問題にフォーカスしすぎるから抜けられない

袋小路にはまる人の特徴の1つは、問題にばかり目が行ってしまうレンズ(problem focused lens)を使っていることです。

問題にフォーカスした質問をします。

私のどこが悪いんだろう。

事態が悪い方向に進んだら、何が起きるんだろう。

問題にフォーカスした質問をしたら、どうなるかおわかりですね?

問題にフォーカスした答えが見つかります。これはリサーチからわかっています。リサーチャーバイアスと呼ばれるものです。

もし「なぜ、あなたは問題をかかえているんですか?」と、誰かに問われたら、私は、これまでの人生をあらゆる面からふりかえって、問題が生じてしまった理由を探すでしょう。

子供のころまでさかのぼって、あらゆる問題を探そうとするでしょう。

このような行為は、どうしてこんな問題が生じたのか、理由をさぐるために情報を得るという点では有益かもしれません。

ですが、2つのリスクがあります。

1つ目は、問題を過大評価しすぎてしまうこと。よくあることですね。

2つ目は、問題の乗り越え方に意識が向かないことです。

さまざまなリサーチからわかっていることですが、問題についてえんえんと語ることは、助けにならないどころか、害になるのです。

問題について語りすぎるとかえって害になる

もちろん、問題を解決したいときはその問題について話さなければなりません。それが何なのか明らかにし、理解する必要がありますよね。

これは問題を乗り越える重要な最初の一歩です。

ですが、収穫逓減(しゅうかくていげん ☆後述する単語の意味を参照のこと)が始まるポイント(point of diminishing returns)があるのです。

神経科学で言えば、ニューロンのワイヤリングのせいで、害になる現象が起きる状態。

行動心理学なら、自分がなくしたいと思っている行動を強化してしまう状態。

生化学的には、体内でネガティブな生化学物質を活性化してこねくりまわしている状態です。

これは助けにならないどころか、害になります。自分にとっても、周囲の人にとっても。

問題をかかえているたくさんの人々を調べて、どんな人がいつまでも1つの問題で悩んでしまうのかわかっています。

問題に悩み続けてしまうのは、問題そのもののせいではありません。

その人が、その問題にこだわりつづけるか、それとも前に進むのか、で決まります。

人生を破滅させるできごとなんてない

誰もがすでにわかっていることを、リサーチが裏付けてくれています。

すなわち、人生を破滅に導いてしまう悲しいできごとや、危機的な状況なんてない、ということです。

私たちは、想像を絶する大変な状況にあって、なお元気に生きている人々をたくさん見ています。

その中には、うまくやっているだけでなく、強くて、充実していて、豊かになっている人がいますね。

逆の状態の人もいます。

他の人が乗り越えている問題の前でいつまでも立ち止まっている人たちです。

問題をかかえているたくさんの人を調べてみると、どんな人が立ち止まってしまうのかわかります。

困難を乗り越える人の行動も調べられます。

どんなプロセスを経たのか、どんなポリシーや習慣をもっているのか、どんな行動をしたのか?

困難を乗り越えるプロセスは誰でも取り入れることができます。学ぶことができるのです。

問題を乗り越える方法

問題を乗り越えるプロセスを、私はこう呼んでいます。

ターン(turn )、ラーン(learn)、前進する(move forward)。

もしある問題にあまりに長くこだわっていたら…。

「あまりに長くこだわっている状況」とは、その問題のせいで、自分自身を誇れない状況です。

より弱くなっていたり、恐れていたり、切羽詰まっていたり、怒りを感じていたり、苦い思いをしているなら、あなたはその問題の前で長く立ち止まりすぎています。

長期間、問題に拘泥していたら、その問題から下がって、違う方向を向くべきです。

違う方向を向き、問題を乗り越える方法を学び始めるのです。

世間にはたくさんの方法があります。実験や経験に裏付けされた対策であり、問題を解決したい人に役立ちます。

こうした戦略があることを知り、それを学び始め、前に進むだけでいいのです。

問題を乗り越える第一歩:逆の方向に進む

長年かかえていた問題を乗り越え、前に進みたいという人に、私は、矢印の方向に進め(Get on the arrow)、と言います。

この矢印とはなんでしょうか?

この矢印は、問題をかかえていたとき見ていた方向と、180度逆の方向を向いています。

そちらへ向かうのです。

問題をかかえて私のところにくる人は、自分が人生の何を嫌っているのかよくわかっています。

そんな人に私はこう聞きます。

「じゃあ、あなたは何がほしいの? どんな状態を体験したいの?」と。

「…ええっと、この状態にはいたくないんです」

今の状態から抜け出すために、どんな状態がいいのか明らかにしましょう。

デボラは、子どもたちの行動を、静かに効果的に正すことを学ぶべきです。

そんなこと学べるのでしょうか?

できます。

子どもたちに、もっと協力的になってもらう必要があります。

その方法も学べます。

キースはもっと自分のことを評価してもらい、昇進を手にする必要があります。

このようなことは学べるのでしょうか?

キースはそういうことが生まれつき苦手ですが、学ぶことはできます。学習して、そういう事態を手にすることができます。

オール・オア・ナッシングの考え方のワナ

次にすべきことは、オール・オア・ナッシングの思考に、はまらないことです。

オール・オア・ナッシングの二極化とはこんな状態です。

「私はよいママ」「私は悪いママ」

「私のよい子供を持っている」「私は悪い子供を持っている」

「私の上司は私が大好き」「私の上司は私を憎んでいる」

こんなふうに考えるのは非生産的だし、まったく成長をもたらしません。この二極化は、あなたを問題から解放しません。矢印の方向にむかいましょう。

どんな分野においても完璧な人なんて私は知りません。どんな分野においても完全に失敗している人も知りません。

私たちはみな、矢印の方向に向かっています。みな、日々、ほんの少しだけよい人間になるように、いつも学んでいるのです。

だからこう言うべきです。

「私はこどもたちをたくさん怒鳴ってしまう」「明日はもっと効果的にできる方法を学びたい」。

キースはこう言いました。

「僕がやるべきことは、これですね。

自分は3年連続で昇進できなかったから、今週ある重要な会議に出られるようにして、そこでしっかり自分の才能をシェアしよう」。

誰でもちょっとした障害にぶつかるもの

わたしたちは障害(bump、バンプ、突起物)にぶつかるものです。

私のクライアントは、「バンプじゃないです。大惨事です」と言いますが、笑っちゃいますね。

言葉に気をつけるべきです。ただのバンプなんです。

障害にぶつかったら、こう考えなければなりません。それは一巻の終わりでも、完全な破滅でもないのだ、と。

逆に「機会」だと考えてください。

みなさんがいま直面している問題は、バンプなんかに感じられないことはよくわかっています。

バンプの前で、苦しい思いをしている人たちがいるのもよくわかっています。

ですが、みなさんに知ってほしいのです。これは選択(オプション)であり、宣告ではない、ということを。

どんなにあなたのバンプが大きくて深刻でも、乗り越えられます。それだけでなく、その向こうに行けば、もっと豊かになれる、と思ってほしいのです。

問題解決を妨げる3つの考え方

問題を解決したいとき邪魔になる3つの考え方があります。

こんな考え方をすると、いつまでも問題とともに過ごすことになりますよ。

1)エゴ

私は特別、という考え方。

私の問題は特別だから、いくらたくさんの人を対象にリサーチしてわかった方法だとしても、私には効果がないわよ。私の問題はほかの人のとは全然違うのよ、と考えること。

2)恐怖

うまくいくわけがない、そんなことできない、私の問題は解決しない、こんなふうに考えること。

恐れがあると、自分の問題は、永遠に続く、壊滅的で、致命的だ、と考えてしまう。

3)プライド

私は向きを変えたり、学んだりする必要はないわ。だって、私、みんな正しくやっているもの。

私は、毎日行くべきところに行って、やるべきことをやっている。

私は何もせず、問題のほうがどくのを待つわ。

子供のほうが私の言うことをきくことを学ぶべきよ。上司のほうが、変わるべきなのよ、という考え方。

プライドには2つの問題があります。

まず、何もかも適正に行っていたら、いま問題によって苦しんでいるわけがありません。

次に、自分の人生のことなのに、ほかの人に主導権を握らせるのはよくありません。

問題があって、そうはなりたくない自分でいるのなら、向きを変えて、新しい方向に進むべきです。

謙虚に向きを変え、学ぶことができたら、すばらしいできごとが起こります。

あきらめないことが肝心

何ごとにも我慢強さが必要です。

自分の望む結果を得るために、いろいろな方法を何度も試してください。

自分が大事だと思うことで、こうあってほしいと思うことがあるなら、時間をかけないと実現しません。

望む結果を手に入れるまで、忍耐強くあるべきです。

自分を苦しめている問題を乗り越えるために、忍耐強く努力したら、どんな世界がおとずれるか、気づいていますか?

問題から解放されるだけでなく、怖いものなしの人生になります。

今まで悩んでいた問題を恐れなくなるだけでなく、どんな問題に遭遇しても大丈夫になるのです。

問題解決に使うストラテジーは人それぞれですが、そのプロセスは、誰にでも共通だし、手の届くものです。

どんな問題にぶつかっても、乗り越えることができるし、なりたい自分により近づくことができます。

向きを変えて、学んで、いつも前に進むことにコミットするのです。

単語の意味など

diminishing returns   収穫逓減(しゅうかくていげん)の法則

一定の土地からの収穫量は資本や労働の投入量の増大に応じて、ある点までは増加するが、その点を超えると逆に減少していくという法則。

いわゆる「過ぎたるは及ばざるが如し」状態です。

収穫逓減が始まるポイントは、生産要素を追加すると、収穫の減少が始まるポイントです。

コーヒーの飲み過ぎやお菓子の食べ過ぎ、化粧のしすぎを想像するとわかりやすいかもしれません。

飲み始めや食べ始めはおいしくてハッピーですが、そのうち特に味を感じなくなり、度をすぎると気持ち悪くなります。

spell doom   破滅にみちびく、破滅させる

empirically  実験的に、経験的に

hung-up  心理的なひっかかり、こだわり、抵抗

crop up  突然あらわれる、(問題などが)生じる

問題解決に役立つほかのプレゼン

たくさん書いていますが、7つ紹介します。

強い心を持つ3つの方法。考え方の悪習慣を手放せばメンタルを強くできる(TED)

自分の能力を自分で見限ることの恐ろしさ、できると信じることの素晴らしさ(TED)

人はネガティブ思考を引きずるようにできている話と、そこから抜け出す方法(TED)

感情にふりまわされない秘訣は自分の感情に向き合うこと(TED)

問題を解決するために、まずはトーストの作り方を描いてみる(TED)

いい、悪いと簡単に決めつけられるほど人生は単純じゃない(TED)

ネガティブ思考を直してくれる楽しい質問(TED)

ずっと悩んでいる人はその状態がコンフォートゾーン

最近、読者2人から、「過去によくない行動をしてしまい、その罪悪感に苦しめられている。罪悪感を手放す方法を教えてほしい」というメールをいただきました。

2日前に届いたメールを紹介します。まりさんからです。

件名:罪悪感

50代専業主婦です。

人生ショッキングなことふたつを最近乗り越えたかな?という感じですが、少し法に触れることに罪悪感を抱えています。

過去のことですが苦しくなります。よろしければアドバイスお願いします。

まりさんが何に罪悪感を感じているのかわかりませんでしたが、自分を許すことをおすすめしました。

人間は完璧ではないので、あやまちをおかすことなんていくらでもあります。

そういうあやまちをしてしまった自分、嫌なところがたくさんある自分、そんな自分も、自分として、まるごと受け入れられれば、そんなに苦しむことはないんじゃないでしょうか?

あやまちをしてしまったあとは、そういう自分を受け入れて、少しでもよい方向に変われるよう、成長するために努力するのがベストだと思います。

まりさんはこのあと、事情を詳しく教えてくれました。もう1人の方も、何が起こったか、メールに詳しく書いてくださっていました。

まりさんが罪悪感を感じているのは23年前のできごと。もう1人の方は、今年50歳で、30年前のできごとに罪の意識を感じています。

実は、お2人とも、心療内科のクリニックに行って、医者と話をしているのです。

それなのに、こんなに長く苦しんでいるのは、どうしてなんだろうか、どうしたらいいんだろうか、と考えて、ズラッコ博士のプレゼンを紹介しました。

もうひとり、買物依存に悩んでいる人で、うつもあるため、心療内科にかかっている人からメールをいただいたことがあります。

この方は、「お医者さんは、買物はほどほどにしなければいけないね、と言うだけで、まったく効果がない」と書いていました。

医者と話をしているときも、いつもの自分の思考パターンの中にいるから、何も変わらないのかもしれません。ズラッコ博士の言っている、問題にばかりフォーカスする心的態度でのぞんでいるのではないでしょうか?

あるできごとで延々と悩み続ける人は、それがコンフォートゾーンにいる状態なのでしょう。

「いつも悩んでいる自分が、自分らしい自分だ」と、無意識に思っているのです。

もし、悩むことをやめたいのなら、このコンフォートゾーンから出る勇気が必要です。未知の世界に行くわけですから、怖いと思いますが、これが一番確実ではないでしょうか?

コンフォートゾーンを出たいと思うとき、ズラッコ博士が紹介している戦略が役立つはずです。

*********

収穫逓減の法則は、人生のいろいろな面で見られます。

物を増やしすぎる傾向のある人は、ぜひ覚えておきたい法則ですね。

服をいくら買っても、あるポイントをすぎると、自分の人生にマイナスに作用するのです。





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