寝ている女性

TEDの動画

最終更新日: 2021.11.27

睡眠と日中の生産性の関係(TED)夜しっかり寝ることは昼間の生産性をあげること。

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自ら好んで睡眠を削っている人に見てもらいたいTEDトークを紹介します。

タイトルは、The Science of Sleep (and the Art of Productivity) 睡眠の科学(と生産性の技術)。プレゼンターは生物学者のマシュー・カーター(Matthew Carter)博士です。

睡眠の重要性と、なぜみな睡眠をないがしろにしているのか、どうしたら、もっと睡眠を大事にできるのか、という内容です。



睡眠の科学と生産性の技術、TEDの説明

We know we NEED sleep, but do we fully understand how sleep can make or break our lives? Matt Carter reveals the truth behind how our horrible sleep habits may be keeping us from reaching full potential.

みな、睡眠が必要だと知っていますが、いかに睡眠が、人生を左右するか、ちゃんとわかっているでしょうか?

マット・カーターは、睡眠に関する悪習慣のせいで、私たちは、自分のポテンシャルを発揮できないと語ります。

収録は2018年1月27日、動画の長さは18分20秒。英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に





睡眠不足の人がたくさんいる大学

自分が高校3年生、または高3の子供をもつ親だと想像してください。これから大学の下見に行きます。

最初に行った学校は、何もかもがすばらしく、人々も親切です。しかし、たばこを吸っている人が多いことに気づきます。

みな、たばこを吸っており、たばこの匂いがします。ランチを食べにダイニングホールへ行くと、生徒たちは、どれだけたばこを吸ったか自慢しあっています。

「いい学校だけど、喫煙の量を自慢しあい、たくさんたばこを吸ったことを祝っているなんて、変だ」とあなたは思います。

次に見に行った学校も、やはりすばらしく、人々はフレンドリーです。しかしこの学校ではジャンクフードを食べる人がたくさんいます。

みなジャンクフードを食べていて、ジャンクフードの包み紙がそこら中にあります。生徒たちは、どれだけジャンクフードを食べたか自慢しあっています。

3つ目に訪問した学校は、やはりすばらしく、人々も親切です。しかし、誰もが疲れた顔をしています。パソコン作業をしながら居眠りをしているし、授業中寝ている生徒もたくさんいます。

私は喫煙者であふれる大学や、ジャンクフードまみれの大学は見たことがありません。ですが、睡眠不足の人がたくさんいる大学はめずらしくありません。

たいていの高校や大学がそうです。とくに学期の終わりあたりは。

睡眠不足に寛容な社会

いつも睡眠不足でいることは、喫煙やジャンクフードの食べすぎと同じように健康によくないのに、多くの生徒は、わざわざ、睡眠不足の学生がたくさんいる大学を進学先として選びます。

そういう学校の生徒はしっかり勉強し、生産性が高く、すばらしいことを達成しているように思えるからです。

私は、10年に渡って睡眠に関する生物学や神経学を研究していきました。ウィリアムカレッジの研究所で、ネズミを使って研究しています。

睡眠がいかに、ネズミの脳や体内に影響を与えるか調べているのです。

父親、教師、たくさんの勤勉な同僚をもつ人間として言えるのですが、いまの社会は、睡眠不足であることにとても寛容です。

寝不足の人は学校だけでなくどこにでもいます。バスや地下鉄の中で、眠そうな人、居眠りをしている人を見かけます。実際、多くの人は、疲れた顔をしています。

睡眠不足を自慢する人

もっとおかしいのは、そうなることを選んでいる人もいて、しかも、あまり寝ないことを自慢する人がいます。

仕事をたくさんやって、大事なことをいっぱいして、ものすごく生産性が高くなければ、睡眠不足にならないからです。

仕事に関する委員会で、夜、3~4時間しか寝ないと自慢する人たちに出会ったこともあります。

数ヶ月前、フェイスブックで、こんな投稿を見ました。「人生を振り返って、たっぷり寝た夜のことを思い出す人はいない “No one looks back on their life and remembers the nights they had plenty of sleep,” 」です。たくさんの「いいね」がついていました。

つまり、夜たっぷり寝ていたら、人生のすばらしい可能性を見逃し、やれるはずのことをやれない、というわけです。

睡眠がいかに体にいいか知っていても、睡眠不足であることを、自慢するのでしょうか?

夜、しっかり寝ることは、喫煙しないことや、栄養のあるものをバランスよく食べるのと同じくらいメリットがあるのですが。

ここ10年で睡眠に関してたくさんのことが発見されました。それを知らない人が多いことに驚かされます。

いくつか睡眠のメリットをお話しします。

寝ると成長ホルモンが分泌される

寝ているとき、脳の下の下垂体から成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは、起きているときより、寝ているときのほうがずっとたくさん出ます。

成長ホルモンは、筋肉と骨をつくり、脂肪を分解します。

筋肉や骨をつくったり、脂肪を分解するの錠剤を飲みたいと思う人は、何人いますか? この手の錠剤を売れば、何十億ドルも稼げるでしょう。

ちゃんと寝れば、ただでそうした錠剤を手に入れられるのです。

何時間もジムでレーニングしているのに、夜、しっかり寝ていないという人に会うたびに不思議に思います。

ワークアウトしているときに筋肉が大きくなったり、体重が減ったりするのではありません。そういうことは、みな、寝ているときに起きているのです。

多くの人はこのことを知りません。

睡眠によって免疫系がアップする

免疫システムを形成する物質は、血液の中を回っていますが、起きているときよりも、寝ているときに、変化します。

寝ているときに、そうした物質が、ウィルスやバクテリア、その他の微生物を見つけ、炎症や病気にならないようにするのです。

だから、睡眠不足のときは、病気にかかりやすくなりますし、病気のときは、しっかり寝るのが得策なのです。

これ以外にも、睡眠不足の人は、高血圧や心臓病、糖尿病、肥満になるリスクが高いです。

また、心配性やうつになるリスクもあがります。睡眠不足のときは、集中できないし、意識が散漫になりがちです。

国立睡眠財団によれば、アメリカでは、睡眠不足の労働者のせいで、生産性がおち、毎年、600億ドル(6兆5千億円ぐらい)以上の損失が出ています。

寝不足の時の気分は最悪

こうしたことはすべて重要ですが、もっと大事なこともあります。つまり、寝たりないと、最悪の気分になります。

すごく疲れて、目を閉じそうになります。まぶたがとても重いのです。

このような講演の最中は、頭がこっくりこっくりしてくるし、一瞬寝てしまい、脳の向こうのほうで、「いまは寝ちゃだめ!」という声がきこえ、はっと起きたりします。

私にも経験があります。これは私の最悪の写真です。最高の皮肉とも言えます。

睡眠のメリットについて語る講演の内容を、ひと晩中まとめていて、昼間疲れて寝ているのですから。これは、昨夜の写真じゃないですよ。

とにかく、睡眠不足のときは、気分が最低なのです。

睡眠をしっかり取るとパフォーマンスが向上する

いいニュースもあります。

慢性的に睡眠不足の人が、毎晩しっかり寝るようにすると、生き返ったような気分になります。元気になり、活力にあふれ、気分は若返り、なぜもっと早く、こうしていなかったのかと思うのです。

科学的な裏付けもあります。

私の同僚が、スタンフォード大学の運動選手を使って睡眠の研究をしました。特定の選手に、数週間、しっかり睡眠をとらせたところ、そうしなかった選手にくらべて、すべてのパフォーマンスがあがりました。

スピードも、力も向上しました。ミスをする回数は減り、脳しんとうを起こす頻度は落ちたのです。つまり、ずっとうまくその運動をできるようになったのです。

教室でも同じ結果です。よく寝た生徒たちの独創性は向上し、問題解決能力はあがり、テストの点も成績もあがりました。

睡眠をコンスタントにしっかり取るようにすると、あらゆるパフォーマンスが向上するのです。

日中、もっとたくさんのことを達成したいと思っているせいで、夜しっかり寝ない人が、ちゃんと睡眠をとると、前より生産性があがります。起きている時間は減っても、ずっと生産性があがるからです。

ちゃんと寝たほうが、生産性があがるということを証明する研究もたくさんあります。

なぜ社会は睡眠を軽視するのか?

睡眠のメリットがこれだけ出ているのに、なぜ、ちゃんと寝る人が少ないのでしょうか?

喫煙やジャンクフードは、短期的な報酬(reward リウォード)があります。すぐに満足できることを求めて、人々はタバコを吸ったり、ジャンクフードを食べたりします。

しかし、睡眠不足には、そんな報酬はありません。

それなのに、なぜ睡眠を削るのか、たくさんの人に聞いてみました。その理由は、3つに集約されます。

1)忙しい社会に生きていて、もっとたくさんのことをしたいと思っているから。

2)ストレスが多いから。ストレスや心配ごとのせいで、寝られない。

3)夜、ガジェットをさわることをやめられないから。みな、スマホ、タブレット、パソコンを見るのが大好きで、あらゆるアプリが、私たちの寝る前の時間を占拠する。

このような問題にどう対処すべきでしょうか?

ネズミも睡眠不足になる

ネズミを使った研究から、洞察を得ました。

どんな動物も人間と同じように、睡眠を必要としていて、人間と同じように、寝不足にすることもできます。

ネズミの睡眠を奪うのは簡単です。ちょっとストレスを与えればいいのです。

新しいルームメートを与えたり、べつのケージに移したりすれば、ストレスを感じて、慣れるまでは睡眠不足になります。

YouTubeやメールの代わりは、ペーパータオルです。ペーパータオルを丸めて、ケージに置くと、ネズミは、何時間もこれで遊んでいます。

ペーパータオルの形を調べたり、蹴り回したりして、何度も何度も遊び、気づくと就寝時間を過ぎています。

つまり、私たちは、寝るようにできている一方で、ストレスがあったり、エキサイティングなことがあると、睡眠を削ってしまうのです。

ネズミがペーパータオルで遊んでいるとき、脳内でドーパミンが出ています。人がスマホの画面をスクロールしているときも、同じです。

フェイスブックやメールをチェックするたびに、脳内でドーパミンがでて、それが眠りにつくのを妨げるのです。

ネズミより、もっと複雑な生活をしている人間は、この問題をどう解決すべきでしょうか? 私たちは、10年前にはなかったガジェットのおかげで、すぐに楽しい興奮を得られます。

3つアイデアがあります。

もっとしっかり寝る社会にするには?

1)社会全体で睡眠を大事にする

睡眠をとることを健康的なことと捉えます。就職試験で、睡眠が少ないことを自慢するべきではないし、徹夜した学生をほめたたえることもやめます。

社会全体で、もっと睡眠に意識を向けます。

数週間前に医者に行き、生活習慣をチェックする問診票に答えました。健康的な習慣の長いリストが書かれていました。

家に煙探知機はあるか、シートベルトをするか、毎日ビタミン剤を飲んでいるか、というたぐいの質問です。

しかし、毎日6~8時間寝ているか、という質問はありませんでした。

奇妙だと思いましたね。私たちは、睡眠を健康の問題として扱うべきです。喫煙やバランスのいい食事をとるのと同じように。

2)就寝する方法を再び学ぶ

アメリカでもっとも上手に寝る人たちは誰だと思いますか?

子供です。子供を寝かせるのは、ちょっと手こずりますが、いったん寝てしまうと、子どもたちは本当にぐっすりと、質のいい睡眠をとります。

親たちが、ちゃんと寝るように、子供をベッドに送り込むからだと思います。

歯を磨いてやり、水をあげ、パジャマに着替えさせ、ライトの灯りを落とし、読み聞かせをします。こうしたことを30~40分やることによって、子どもたちの寝る準備が整います。

そしていったん寝るとぐっすり寝ます。

もし、私たちが自分がやっているのと同じことを子供にやらせたらどうなると思いますか?

まぶしいモニターを子供に与え、「なんでもいいからこれで30分遊びなさい」と言ったら? 子どもたちは2時間ぐらいそれで遊んでしまい、寝ないと思います。これは、とても有害です。

私たちも、子どもたちと同じように就寝するべきです。6歳のときやっていことを思い出すのです。

人は高校生になる頃には、寝る方法を忘れてしまうようです。

大人になると、心配ごとをしたり、ガジェットと遊んだりしても、すぐに寝てしまうと思い込んでいるのです。

3)昼間の生活を充実させる

子どもたち以外で、質のよい睡眠をとるのがうまいのは、朝の目覚めを大事にしている人です。

タイムマネジメントや生産性をあげるスキルのある人は、日中、バランスよく過ごしているので、夜、しっかり眠ります。

生産性アップやタイムマネジメント法の本はたくさんあるし、ネットでも情報を得られます。

しかし、朝の目覚めをよくするのは、自分が朝型なのか夜型なのか知るのと同じぐらい簡単なことです。

もっとも生産性があがる時間、逆に仕事をするのに向かない時間を自分で見つければいいのです。

人それぞれで違います。

人は、寝るのが楽しいから寝るわけじゃありません。夜、しっかり寝ると、翌日、スッキリと目覚めることができ、さらに、昼間、より生産性があがり、やりたいことを効率的にできるから、そうするのです。

私は、睡眠の研究をしていたのに、生産性の向上をめざせば、睡眠に関するよい習慣を持てると気づくまでに時間がかかりました。

学校では、性教育、栄養に関すること、ドラッグの危険性を学んだのに、就寝の仕方や、夜しっかり寝れば、昼間、もっとたくさんのことができるとは教えてもらいませんでした。

そこで、最近、ウィリアムカレッジで、睡眠の科学と、生産性の技術を教えるコースを提供しました。誰も登録しないんじゃないかと心配しましたが、ふたを開けて見ると大盛況でした。

学生たちは、睡眠や生産性について学ぶことに興味があったのです。

いま、このコースで教えたことを、キャンパスやコミュニティ全体に伝え、睡眠をしっかりとることを誇れる文化を作りたいと考えています。

確かに、人生を振り返ったとき、夜しっかり寝た日のことを、思い出す人はいません。しかし、逆もまた本当です。

誰も、自分が疲れ切っていた日を思い出しません。

自分が昼間、眠りこけているこの写真は嫌いですが、おもしろいことに、この日、何をしていたのか、覚えていないのです。写真があるから、こんな日があったと覚えているだけで。

私は元気で充実した人生を送った日のことを覚えています。疲れ切っていた日のことではなく。

そのように、日中の時間を最適化することを私は選びました。そうして、家族や友達とのすばらしい体験を楽しむのです。

誰もが、夜しっかり寝て、よい1日のために目覚め、その目覚めが、よい眠りをもたらすことを願っています。

//// 抄訳ここまで ////

睡眠に関するほかのプレゼン

なぜ人は眠るのか?睡眠の大切さを忘れていませんか?(TED)

アルツハイマー病を予防するためにできること(TED)

しっかり眠ることが大切なもう一つの理由(TED)

なぜデジタル機器の画面を見て過ごしていると幸せから遠のくのか?(TED)

ただ忙しいのと生産的であることの違い(TED)

睡眠に関する記事のまとめ⇒睡眠不足や不眠に悩むなら読んでほしい眠りに関する記事のまとめ。

寝ているときは思ったより重要

寝る時間を犠牲にする人、睡眠不足でも平気な人は、寝ているときは、「人生の活動休止時間」だと思っているのでしょうね。

しかし、睡眠中、脳は老廃物を掃除し、記憶を整理し、生命の維持に必要な物質を出しています。

つまり、メンテナンスしているわけです。

このことは、科学的な難しいコンセプトを知らなくても想像つきます。

起きているときは、次々と新しい情報や刺激が入ってくるので、脳はそれをプロセスするのに忙しく、メンテナンスなんてする余裕はありません。

特に、いまは、スマホですきま時間をうめる人が多いので、脳に負担を強いていると思います。

目をとじ、音もあまり入ってこない、寝ているときこそ、メンテナンスに最適な時間なのです。

夜、しっかり寝ないと、ゴミだらけの脳(あるいは汚部屋のような脳)で突っ走ることになります。

まあ、すでに何度も記事に書いたことですが、身を持って思い知らないと(大きな病気をするとか)、なかなか睡眠時間を確保しようという気にはならないかもしれません。

あれもこれもやりたい、と欲張る人が多いですし。

私は睡眠時間が少ないと、翌日ダラダラしてしまう、という傾向を発見しました。

毎朝、その日やることや、それをやる時間帯を割り振っていますが、寝不足の日は、その予定を無視して、どうでもいいことをネットで調べてダラダラ読んだりするのです。

それは、もう生産性が落ちます。

そこで、眠いときは、30分ぐらい昼寝をして、まともな脳になるよう修復をはかっています。

*****

健康番組で、これが健康にいい、と特定の食品が紹介されると、みな、こぞって買って、スーパーの棚がからになります。

ですが、一番健康にいいのは、しっかり睡眠をとること、明らかに体に悪いもの(ジャンクフード、高度に加工された食品、砂糖など)を摂らず、栄養のあるものをバランスよく食べること、そして、適度に運動することです。

しかし、こういうあたりまえの健康法は、メディアでは強調されません。

あたりまえすぎて、おもしろみ(ありがたみ)がないし、みながこれをしてしまうと、健康にいい食品やサプリ、健康グッズ、健康番組も健康法の本も需要がなくなるからです。

これは、部屋の片付けにもいえることです。中途半端に収納グッズや収納本を買うより、いらない物をががーっと一掃してしまえば、片付けや整理整とんの悩みから半永久的に解放されます。

しかし、みながそうしてしまうと、物が売れなくなるし、収納家具や収納グッズ、片付け関係のセミナー、本、雑誌、整理収納の専門家の需要がなくなるため、困る人もたくさんいます。

一番の解決策というのは、ほんとうにごくあたりまえの、マスコミでは話題にならない、しかし、よけいな物のいらない、お金のかからない方法なのです。





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