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自己欺瞞(じこぎまん)に関するTEDトークを紹介します。
自己欺瞞は、自分で自分をだますことで、本心に反しているとうすうすわかっている行動を無理やり正当化しようとすることです。
自分をだますことはごくふつうにあることですが、やりすぎると、ストレスがたまります。
タイトルは、Honest liars — the psychology of self-deception(正直な嘘つきたち~自己欺瞞の心理学)
心理学者の、Cortney Warren(コートニー・ウォーレン)さんの講演です。
自己欺瞞:TEDの説明
By providing content, resources, and connections, Dr. Cortney Warren’s goal is to support anyone who is brave enough to live a more conscious life. For when we are honest about who we really are, we have the opportunity to change.
コンテンツ、リソース、つながりを提供しながら、コートニー・ウォーレン博士は、より意識的な人生を生きようとする勇気のある人のサポートをめざしています。
自分が何者なのか、正直になることで、変わる機会を得られます。
動画の長さは13分48秒。日本語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
嘘の実例がたくさん出てくるので、とてもわかりやすいですね。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
人は自分自身をだます
人間は自分をだますことが得意です。自分で自分に間違ったことを信じさせ、真実を信じることを拒否します。
私が自己欺瞞について考えるようになったのは、大学院生のときですが、大きく気持ちがゆさぶられました。
自己欺瞞はどこにでも、誰にでもあります。
きょう食べたものや身長や体重など、ささいな嘘を自分につきます。
目指していることについても嘘をつきます。「今夜は、ワインを1杯しか飲まないわよ」。実際は3杯は飲むとわかっているのに。
社会的なことでも嘘をつきます。「配偶者以外には、決して性的感情をもったことがない」。そうすべきではないとわかっているからそうしているのに。
人生の重要な選択についても嘘をつきます。なぜ、この人と結婚したのか、なぜこの仕事についたのか。愛が一番の理由であることはめったにありません。
私も自分をだましてきた
私は恋愛において、自分をたくさんだましてきました。取り残されるのが怖かったのです。
だから、今でもあまり認めたくない数々の行動をしました。
じりじりしながら電話をまったり、彼が「こここにいる」と言った場所に本当にいるのか、確かめに行ったり、私を愛しているのか繰り返し聞いたり。
以前はこんな話はできませんでした。自分でその行動を認めることができなかったから。
私たちが自分に嘘をつくのは、本当のことを認めて、その結果起こることにちゃんと向き合う心理的な強さがないからです。
でも、自己欺瞞について理解するのは、充実した人生を送るのに、もっとも効果的です。
自分の本当の姿を認めたら、変わることができるのですから。
自己欺瞞は幼いときから始まる
私たちは、ごく小さなときから自己欺瞞を始めます。
周囲の状況を見て、自分に関することや、自分の環境について結論づけます。それが正しても正しくなくても、その結論は、私たちのアイデンティティに影響を与えます。
大人が自分について一番嘘をつくのは、子供の時、体験した辛さが、今の自分にどれほど影響を与えているか、ということにおいてです。
たとえば、父親に無視される状況で育ったとき、自分に何かよくない面があるせいだと思ってしまうかもしれません。私は賢くない、かわいくない、運動ができない、と。そして、人々に愛してもらうために、完璧でなければならないと思い込んでしまうのです。
大人になって、誰かに、欠点を指摘されると、ものすごく不安になりますが、その気持ちのもとになっていることは否定します。
子供のとき容姿についてからかわれたから、自分は醜いと感じたのかもしれません。感情的な痛みに対処するために、食べることを学び、大人になってから、適正な体重をキープするのに苦労します。おなかがすくから食べているわけではないからです。
両親が喧嘩するのを見て、口論を避けることを学んだのかもしれません。だから、ネガティブな感情になっていることを認めることが難しい。
幼いときに学ぶことは、人それぞれ違いますが、大人になって自分に嘘をつくとき、子供のとき学んだことが、形となって表れるのは同じです。
自我を守るための嘘
自己欺瞞について理解するとき、人間に関する心理学の理論が助けになります。
フロイドは、「自己欺瞞は、自分のエゴを守るメカニズムだ」と説明しました。自分をだますのは、自分を傷つけるかもしれない情報から、自我を守る方法なのです。
たとえば、
否定:事実を信じることを拒否する。毎日お酒を飲んでいるのに、「お酒の問題なんて何もないわ」と言う。
すごく嫉妬しているのに、パートナーに、「嫉妬なんてしてないわ」と言う。
正当化:自己弁護する言い訳を作り出す。
「あなたが、私を公平に扱ってくれたら、あなたに怒鳴ったりしないわ」と言って、怒鳴ることを正当化。
「喫煙が体に悪いのは知っているけれど、リラックスできるから」と言って、喫煙を正当化。
認知のゆがみのよる嘘
認知行動療法では、認知のゆがみが、自分をだますことにつながると説明しています。
極端な思考:「クッキーは全く食べないか、一箱まるごと食べてしまうかのどちらか。だって、1枚でもクッキーを食べてしまったら、ダイエットが台無しだもの。だから食べ続けても同じことよ」。
感情的決めつけ:自分が感じていることが、現実を正しく反映していると考えること。
「私は傷ついたわ。だから、あなたは私に何か悪いことをしたに違いない」。
「私は馬鹿みたいに感じる。だからは私は馬鹿なんだ」。
過剰な一般化:1つのネガティブなできごとを、無限につづく敗北のスパイラルだと考えること。
ひどい別れ方をしたあとに、「私は一生一人ぼっちなんだ」と考える。
仕事で昇進できなかったあと、「今後、仕事で成功することなんて決してないんだ」と考える。
人間には当然のことを否定する
実存的な観点から見ると、私たちは、自分自身をあざむいて、「人間であること」という根本的な現実に向き合わないようにしています。
以下は、人間として避けられないことです。
死:私たちは皆死ぬ。
究極の孤独:1つの肉体をもった1人の人間として生まれる。
無意味さ:自分で人生に意味づけをしない限り、人生は無意味なもの。
自由:選択の自由があるから、私たちは自分自身について責任がある。
このような現実に向き合うのを避けるため、私たちは、自分に嘘をつきます。
「私がこんなふうなのはそういうふうに育ったからだ」。こう言って、自分の選択に責任を取ろうとしない。
「ニュースになるような悪いできごとは私には決して起こらない。だって私は特別で、害悪から守られているから」。
「遺書は書かないわ。だって、私は若いもの。死にやしないんだから」、こう言って、死ぬ運命を否定する。
内在化された文化的規範がつかせる嘘
多文化やフェミニズムの心理学では、自分の中にある文化的規範の影響を指摘します。
自分が本当に信じていることではなく、文化的に条件づけされたことが真実だと思うのです。
文化的にそうすべきだから、という理由で妥協することはありませんか?
外見、体重、収入、結婚、子供、宗教について、そうすべきだと思っているから、または、それが正しいと信じているから、そうしなければ、と思っていませんか?
以上の人間の性質に関する理論は、私たちが、毎日どんなふうに自分をだましているのか理解するのに役立ちます。
自己欺瞞の代償
自己欺瞞は、大きな傷みや後悔を引き起こします。
嘘をつくために、私たちは、自分や他の人にとって、ためにならない選択をします。
薬物、アルコール、食べること、買い物、ギャンブル、盗み、嘘。人を捨てたり、自分の感情のお荷物を一番愛している人たちにぶちまけたり。
惨めで、周囲の人に大きな害を与えていても、人は変わらないことを選ぶかもしれません。
人生を振り返って後悔するのはとてもつらいことです。なぜなら、過去にした選択を変えることはできないから。
最初にお話ししたとおり、私は恋愛でとても苦しみました。安心できなかったのですが、それは恋人のせいだと信じていました。
彼がもっと電話してくれさえしたら、もっと私を愛してくれさえしたら、私はもっと安心できる、と思っていました。
実際は、私を安心させるために彼ができることなど何もなかったのです。私の不安は、彼には全く関係なかったから。
私が安心できなかった理由は、子供の時、「人はいつも私から離れていく」と学び、その信念にそった選択をして生きてきたからです。
自分が何者であるのかについて、自分自身で完全に責任をもたないと、私たちは自分や周囲の人を傷つけてしまいます。
もっと正直になるために
では、どうしたらいいのでしょう?
どうしたら、自分が自分に嘘をついていると認めることができるのか? どうすれば、もっと正直な嘘つきになれるのか?
最初のステップは、自分で気づくことです。
自分自身を観察します。
何かに感情的に強く反応したら、いったん、立ち止まってください。
自分の言っていることと、行動が一致しないときにも立ち止まります。
不合理なことを考えているときも、止まってください。
そして、「これは私について何を語っているのか?」と自問するのです。
多くの人は、誰かや、自分の身に起こった何かを乗り越えようと膨大な量のエネルギーを使っています。
自分のせいで、葛藤が起きているとは考えようとしません。
何かや誰かについて、未解決の問題があるときも、立ち止まりましょう。
「この状況に対する私の反応は、私について何を語っているのか?」と自分に聞きましょう。
自分により正直になり、自覚が深まれば、私たちは自分の選択について、もっと責任を持つようになります。
「私は不安なのだ」、ということを認めることができたら、そして、不安は誰にでもありますが、私たちは、その不安に対して何かするか、しないのか、という選択に向き合います。
どちらを選ぶにしても、私たちは、自分の不安が引き起こす結果に、より責任を持つようになります。
その状況について前より理解しているからです。
真実と向き合ったとき、変わるかどうかは、選択です。
生で遭遇する多くのことはコントロールできませんが、そうしたできごとに対する反応には、責任をもつことができます。
その意味で、自己欺瞞に立ち向かう一番いい方法は心理療法です。
しかし、セラピーは、とても否定的に考えられています。「私にはセラピーは必要ない。セラピーは、自分を助けられない狂った人や弱い人のためのものだ」と。
他の人に、弱みをすっかり見せるのは、とても勇気が必要ですが、あなたにその勇気があるなら、セラピーは最高の贈り物となります。
自己欺瞞と向き合うことは一生続く
自己欺瞞と向き合う旅は生涯続きます。
私たちは変化し、世界は、常に自分を理解するための新しいチャンスを与えてくれます。学ぶべきことは常にあります。
私は学者として成功する完璧な道を歩いていました。
2年前、ネバダ大学でテニュア(終身在職権))を得ましたが、6週間後に、仕事をやめ、無職になります。
テニュアがあるのにやめるなんて、大学の教員にあるまじき行為です。
特に私はそうです。私は心理学が好きだし、教えることも、リサーチすることも好きです。大学ではすばらしい経験をしました。
でも、もう学問の世界に情熱を持てません。この真実を認めることは、とてもつらいことでした。
いつもの自己欺瞞や不安と向き合うことになったからです。
他の人をがっかりさせたらどうしよう? 家族はなんて言うかしら? これからどうするの? 生活費を稼げなかったらどうするの? 教授じゃないなら、私はいったい誰なの? 人生がすっかり変わってしまったらどうするの? 人生がまったく変わらなかったらどうするの?
でも、もし学問の世界に残る選択をしたら、私は、大きな心理的代償を払うことになったでしょう。
「真実に向き合ったとき、違う選択ができる強さが自分にはなかった」と認めざるを得なくなりますから。
もっと正直な嘘つきになりましょう。
自分がつく嘘に、より正直になりましょう。
一番充実した人生を送るために、真実を利用しましょう。人生はたった1度ですから。
//// 抄訳ここまで ////
自分自身を生きるのに参考にあるTEDトーク
言い訳を作り出してしまう私たち:あなたに夢の仕事ができない理由(TED)
もう完璧を追い求めるのはやめよう:イスクラ・ローレンス(TED)
女の子に勇気を持つことを教えよう。完璧であることではなく(TED)
人の言いなり(ピープルプリーザー)になるのをやめる方法(TED)
ウォーレンさんの本です。
認知のゆがみについて⇒今すぐ捨てたい根拠のない思い込み:10の認知のゆがみ、その1
真実を歪めない
100%自分を受け入れて、自分に嘘をまったくつかない生活をしている人はいないでしょう。
しかし、重要なところで、大きく自分を欺いていると、嘘の自分と、本当の自分とのギャップが広がり、ストレスがたまるし、かつてのコートニーさんのように、大きな不安をかかえることになるかもしれません。
だから、大事なところでは、嘘をつかないほうがいいのです。
断捨離するときも、真実に目を向け、自分をだまそうとしなければ、もっと不用品から解放されます。
これまで何年も使っておらず、存在すら忘れていた物を、「いつか使うかもしれない」「持っていればそのうち何かに役立つかもしれない」などと考えるのは、真実を歪める行為だと思います。
物を捨てる不安や痛みと向き合うのが嫌だから、嘘をついて、捨てない選択をするわけです。
しかし、これは自分をだます行為なので、あとで代償を払うことになります。
こういうことは、断捨離以外でも、いろいろあるでしょう。
日常、さまざまなストレスが多い人は、時々、「私は自分に嘘をついていないか?」と考えてください。
真実の自分を生きるのは、ときには大きな恐怖を伴いますが、嘘をつき続けるより、ストレスが少ないし、もっと楽しい生活になります。