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いくらお金があっても幸せになれない理由を教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、Why money can’t buy happiness(なぜお金では幸せが買えないのか?)
心理学者のDaniel Sachau(ダニエル・サコー)さんの講演です。
お金では幸せを買えない:TEDの説明
It’s true money can’t buy happiness, but do you know why? Dan Sachau studies life satisfaction and discusses the link between money and happiness. This talk looks at the problem of rising expectations and identifies ways to manage happiness.
お金で幸せを買えないのは本当です。でも、その理由を知っていますか?
人生における満足を研究しているダン・サコーが、お金と幸せの関係について語ります。
このトークは、人の期待が増えていく問題を検証し、幸福を管理するための方法を見つけます。
収録は2022年の3月。長さは15分40秒。自動生成される英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
サコーさんは家が好きなのか、ほしいと思う家のレベルがどんどんあがっていく説明がすごく長いですね。ここはあっさり訳します。
お金と幸せの関係
「お金では幸せを買えない」と聞いたことがありますよね?
心理学者、社会学者、経済学者の研究が、お金がないと人々はみじめになるが、基本的なニーズが満たされれば、余分なお金が、より高い満足をもたらすことはないと、証明しています。
この話を聞くと、皆さんは「私もそのリサーチに参加したい。そしてお金をいっぱいください。そうしたら、幸せかどうか教えます」と言うかもしれません。
でも、この手の研究は何回か行われています。宝くじに当たった人は、当たったときは、すごく幸せですが、1年後は、ふつうの人たちより少し幸せなだけなんです。
期待の役割
過去20年の間、私は、どうしてそうなるのか、その答えを探してきました。
お金は幸せな気分にさせてくれるはずなのに、なぜそうならないのか?
理由はいろいろありますが、鍵となるのは「期待」です。
私達の満足度は期待にかかっています。物理的なものや収入、ステータスが、自分の期待より大きいと幸せを感じるんです。
期待より少ないと、不幸で、期待どおりだと、まずまず居心地がいいのです。
ラチェット効果
お金で幸せを買えないのは、私達の期待がエスカレートするからです。いったんエスカレートすると、その逆は簡単には起こりません。
これを「ラチェット効果」と呼ぶ人もいます。
ラチェットは、ボルトの上に置くレンチの1つで、カチッ、カチッ、カチッと一方向に制限して、動かすものです。
期待がエスカレートする例1:車
私達の期待にもラチェットがあります。
私が初めて手に入れた車は1962年製のフォルクスワーゲンのビートル。この車を手に入れたとき、それはもう幸せで、熱心にワックスをかけました。
本当にハッピーでしたが、それは友人のジョニーの車を見るまでの話。彼は、1968年製のフォルクスワーゲンのビートルに乗っており、この車は毎回ちゃんとエンジンがかかり、暖房もありました。
彼の車を見るやいなや、私はもっといい車を手に入れるべきだと思ったんです。
ところが、その後、べつの友人のトランザムに乗る機会があり、いったんトランザムに乗ったら、もうフォルクスワーゲンに戻る気にはなれませんでした。
期待がエスカレートしたんです。
期待がエスカレートする例2:ミネソタの湖のほとりにある家
数年前、学生を連れて、ミネソタの湖に行きました。景色が素晴らしいところで、金持ちやセレブ、レコードのプロデューサー、庶民も住んでいます。
ここでボートを借り、湖をくだって、ある家を見ました。
「ああ、あんなキャビンがこの湖にあるのってすばらしい。週末にゆっくりできるな」。こんなふうに楽しい想像をしました。
でも、少し先に行くと、別のもっといい家が見えてきて、「こっちのほうがいいな。屋根も窓も素敵だし、アンティークな雰囲気もいい」と思ったんです。
つまり、最初に見た家より次の家のほうがよく見え、そっちを欲しくなりました。
次に見えた家は、もっと大きな家。今度はこちらがよくなりました。これこそ、自分にぴったりの家だと。
このあと何が起きたか想像がつきますよね。前より素敵な家を見るたびに、そちらのほうがよくなったんです。
新しいとか、もっと大きいとか、設備がいいとか。私達の眼の前に出てきた家は、だんだん大きくなり、写真のフレームにおさまらないほど。
前よりもっといい家を見るたびに、その家のすばらしいところを思いついて、その家が欲しくなったんです。
キャビンで満足できたはずなのに
朝のうちは、小さなキャビンが欲しかったのに、いろんな家を見ているうちに、ものすごく大きな家が欲しくなってきて、最後には一番大きな家が欲しくなりました。
エスカレートしたんです。
おもしろいことに、最初は「夢のキャビン」に思えた家は、実は、最後に見た一番大きな家の浮き輪をしまっておくための小屋でした。
このように、車や住宅への嗜好はエスカレートします。
そして私は考えました。「次のレベルの何か、つまり、これさえあれば本当に幸せになるだろうと思える商品がはたしてあるのだろうか?」と。
最高級のものを求めて
きのうの朝、YouTubeでいくつか検索しました。
‘finest’(最高級)、‘nicest’(一番いい) ‘best’(ベスト)という言葉で探したんです。
すると、車がたくさん出てきました。最高級の車、最高級のロールス・ロイス。
ロールス・ロイスを買うお金があるのに、突然、YouTubeの動画が、「あなたは、最高のロールス・ロイスを持っていない。もっといいものが必要だ」と言うんです。
家もたくさん出てきました。考えてみると、今、自分が住んでいる家に不満を抱かせることに特化したネットワークのチャンネルがあるんですよね。
家や庭を見せる番組ってそうじゃないですか?
つねに、もっといい家、もっと素敵な家を見せます。
住まいに対する嗜好はエスカレートする
住まいについては、何もかもがエスカレートします。
小さな冷蔵庫から、サブゼロ冷蔵庫、ウォークイン冷蔵庫、もっといいストーブ(コンロとオーブンが一体になったもの)、タオルをかけるバーですらエスカレートします。暖め機能付きのタオルバーがあるんです。
素晴らしいんだろうとは思います。1度使うと、もう前には戻れません。前に使っていた室温のタオルには。
バッグ、靴、デザイナー商品、コスメ、切りがありません。
マニキュアだってそうです。値段、いくらだと思いますか? 8ドル、まあ、それがマニキュアに使える値段でしょうね、ところが、267,580ドルのマニキュアがあります。
中に小さなダイアモンドが入っているらしいです。でも、結局、捨てるんじゃないですか。こんなものを買う人は、金持ちなんですから。
コモディティーに対する嗜好もエスカレートする
工業製品だけでなく、コモディティー(原料のまま売買できる商品)も調べてみました。どこにでもある水と塩です。
水や塩はありふれているので、こんなものに欲望がふくらむことはないと思ってんです。
でもありました。ボトル1本、1100ドルの水が。
クリスタルのデカンターに入っていますが、水そのものは1000ドル。
塩はどうでしょう? ぜいたくなモートンソルトは、1オンス(28グラム)
3セント、でも1オンス、36ドルの特別な塩もあるし、エルヴィスの涙から抽出した塩はもっと高価です。
トレッドミルに乗る人生、それとも?
私が言いたいのは、長期的な人生の幸せを得るために、物理的なものやステータスを使うと、好むものに終わりがないということです。
それは残念なことでしょうか? 場合によってはそうです。
見方によっては、がっかりすることであり、自由にさせてくれることでもあります。
ここで2つ選択肢があります。
オプション1:トレッドミルの上に居続ける
次の新しいものを買い、より稼げる仕事につき、もっといいバージョンの品物を買い続けます。そして、また、より大きく稼げる仕事を見つける。これは終わりがありません。
トレッドミルに乗っていると、物質的なものに奉仕することになります。
給料がいいからという理由だけで、好きでもない仕事をし、もっといいもので暮らすために、お金を稼ごうと、趣味をあきらめます。友人もあきらめます。家族からも離れます。
トレッドミルの上を走り続けることは、本当に危険なんです。
心理学者でノーベル賞を受賞しているダニエル・カーネマンは、これを「満足を求めるトレッドミル(satisfaction treadmill)」と呼んでいます。
終わりがないからです。
オプション2:お金や所有しているものから得られることには限界があると認識する。
お金は人を惨めにする可能性がありますが、いくらお金があっても、幸せにはなれません。
だからめざすべきゴールは、最高潮の快感(ecstasy)ではなく、ただ居心地よくあること、安全を求めることです。
そこそこいい人生を送っていて、居心地がいいなら、期待にフタをすべきなのです。
うまくいっているなら、それ以上を求めようとしてはいけません。もっとお金を得るために、もっといいものを手に入れるために、すでにある仕事、愛情、友情を犠牲にするべきではないのです。
分相応に暮らし、節約し、投資をして、起こり得る経済的な嵐を乗り切り、快適でいられるようにするのです。
まとめ
どんなにお金があっても幸せにはなれません。どんなにステータスがあっても、宝石があっても、そんなことは起きません。
物質的なものをどんなに集めても、長期的な幸せは得られないのです。
お金で得られるのは安全です。お金の心配をしない機会を探すべきです。
突然の嵐のようなピンチを乗り切るために十分なお金を貯め、収入の範囲内で暮らしてください。
そうすれば、より幸せに、もちろん、より快適に生きられるでしょう。
//// 抄訳ここまで ////
お金と幸せに関するほかのプレゼン
ガラクタを全て売り払い、借金を返し、旅に出て、自由に生きている男の話(TED)
なぜ人は、物に執着してしまうのか? 物と健全な関係を持つには?
欲望はエスカレートする
ダニエルさんが言うように、人の期待や欲望は大きくふくらんでいきます。
これは、心理学や社会学において、裏付けされていることです。
人は、特定の欲望が満たされると、その瞬間はすごくうれしいんですが、わりとすぐその状態に慣れてしまい、それが当たり前のように感じます。
それこそ、薬物依存みたいに、最初は少量の刺激で満足できていたのに、耐性ができて、次に同じぐらいの満足感を得るためには、前より多いか、強い刺激が必要になります。
ぜいたくをし始めるとどんどんエスカレートします。
だから、いろいろな物を買い集めることで、幸せになろうとするのは、おすすめしません。
もっといいものを、もっとたくさん、もっと、もっとと買い続けても、幸せになれず、ガラクタが増えるだけです。
それは、満足感を追い求めるトレッドミルの上を走り続けることなのです。
先日、アンティークの着物を買い集めることがやめられない読者の相談に回答しましたが⇒今、買わないと買えなくなる。そんな気持ちからものを買うのをやめられないなら
どれだけ買っても絶対満足できないので、やめたほうがいいです。
ものなんてそんなになくても、贅沢品がなくても、私達はわりと機嫌よく暮らせます。
不機嫌な状態が続いている人は、だまされたと思って、トレッドミルから降りてください。