ページに広告が含まれる場合があります。
自制心(セルフコントロール)を鍛える方法を教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、How to improve self-control? Five simple rules to form good habits(いかに自制心を高めるか? よい習慣を築く5つのシンプルなルール)。
社会心理学者で東洋大学の教授である尾崎由佳さんのプレゼンです。
自制心を鍛える:TEDの説明
Have you ever wished you had more self-control? This is a problem that universally bothers a number of people. Dr. Yuka Ozaki will explore the root cause of “the reason why we fail to control ourselves” and introduce five simple rules – that can be easily incorporated into our daily life – to find out “how we can practice better self-control”.
もっと自制できたらいいなと思ったことはありませんか?
これは、大勢の人の共通の問題です。尾崎由香博士が、なぜ自制できないのか、その原因をさぐり、日常生活で簡単にできる自制心を鍛える方法を見つけるための5つのシンプルなルールを紹介します。
プレゼンの長さは15分、英語字幕あり。動画のあとに抄訳をつけます。
尾崎さんは日本の大学の先生なのに、なぜ、ゼミの学生(じゃなくてもいいのですが)が、日本語の字幕をつけないのか不思議です。
講演の内容はセルフコントロールに興味がある人にとって、そこまで目新しくありませんが、とてもうまくまとまっていると思います。
なかなか自制できない私たち
私は自制心を専門に研究している社会心理学者です。
私たちは、行動、思考、感情をコントロールすることに手こずっています。
食べすぎたり、飲みすぎたり、やるべきことがあるのに先延ばしをしたり。
感情を爆発させて、人間関係に問題が起きることもあります。
セルフコントロールの失敗は誰にでもあり、それが、私達を人間らしくしているとも言えます。
人類はずっと、自制心のなさと戦ってきました。古代ギリシャのアリストテレスもこの問題について詳しく論じています。
人々は、自分を律する方法を探し求めて、さまざまな戦略を使ってきました。
オデュッセウスのセルフコントロール
これはホメロスの叙事詩『オデュッセイア』の有名な場面を描いた絵です。
物語の主人公であるオデュッセウスが左側に立っています。彼は、セイレーンの歌を聞きたいと思って海に出ました。
船に侵入しようとしている美しい女性がセイレーンです。セイレーンは美しい声で、船乗りたちを誘惑しては、海に引きずりこむ怪物です。
オデュッセウスは、セイレーンの誘惑に抵抗するために、自分をマストに縛り付けさせ、船乗りたちには耳栓をするよう命じました。
その結果オデュッセウスも船乗りも海に飛び込まずにすみました。
このように、物理的に気持ちや行動をコントロールすることは有効な解決策ですが、常にこんな生活を送るわけにはいきません。
ではどうすれば、行動、思考、感情を制御しながら、快適で幸せな生活を送れるでしょうか?
実はこの質問は、自制心を発揮したいとき、最初に自問するべき問いではありません
まずは、なぜ自制できないのか、問いかけるべきです。
セルフコントロールに失敗する理由を理解することが重要なのです。なぜ自制できないのか、この点をより理解すれば、成功への鍵が自然に見つかります。
セルフコントロールに失敗する理由
失敗する理由を5つあげます。
1.)誘惑が多すぎる(Abundance of temptations )
2.)重要なゴールを達成するためのコミットメントが不足している(Lack of commitment to important goals)
3.)自分の中にある葛藤に気付いていない(Lack of awareness to inner conflicts)
4.)自分の中にある葛藤を解決することが困難(Difficulty in resolving inner conflicts)
5.)衝動を抑える意志の力が不足している(Lack of willpower to suppress impulse)
心理学の研究によれば、どれも、セルフコントロールにとって致命的ですし、いくつかの要素が組み合わさって自制力を発揮できません。
一番大きな原因を特定することも簡単ではありません。とはいえ、解決策はあります。
ここにあげた理由に焦点を当て、自制心を向上させる方法を、学者たちは深く研究してきました。
それぞれについて、効果的な戦略を紹介しますね。
1.誘惑が多いなら
誘惑に取り囲まれていると自制心を発揮するのは困難です。シンプルな解決策は、誘惑を減らすこと。
消費したくないもの、たとえばポテトチップス、ビール、タバコが身近にあるなら、ゴミ箱に捨ててしまいましょう。
スマホを使いすぎたくないなら、引き出しや目に見えない場所に置きましょう。
言うは易く行うは難しですが、誘惑を目にする機会を減らすことは、セルフコントロールの失敗に対する究極の防止法です。
2.重要なゴールに向かってコミットできないなら
大切なゴールなのに、忘れてしまった結果、やってしまったことや、やらなかったことを後悔することはよくあります。
この現象を防ぐ効果的な方法は、リマインダーを作ることです。大切な目標を忘れないためにちょっとしたリマインダーをよく見るところに置いてください。
たとえば、結婚指輪は、パートナーシップに対するコミットメントを思い出させる古くからあるリマインダーです。
スマホにリマインダーを入れておきましょう。自分がすべきこと、またはするべきでないことを思い出させるイメージを壁紙にするといいですよ。
たとえば、「もっと運動をして、スマホを見る時間は減らす(more exercise, less screen time)」とか。
3.内なる葛藤に気付いていないなら
内なる葛藤とは、「やりたい、だけどすべきではない」とか、「やりたくない、だけどやらねばならない」といった、相反する気持ちがあることです。
私たちは言い訳をして、こうした葛藤をないことにしようとします。
たとえば、「1度ぐらいならたいしたことじゃない」とか、「今やる必要はない、あとでやればいい」など。
でも言い訳を始めるとろくなことになりません。
言い訳に屈するのはあまりにも簡単ですが、この問題にも解決法があります。
自分の行動を振り返る習慣をつけましょう。
寝る前の数分間に、その日にやったこと、やらなかったことを思い出してください。
やるべきだったのにやらなかったこと、逆に、やるべきではなかったのに、やったことはなかったか?
日々の振り返りをするのを嫌がる人もいます。もうしてしまったことを考えても仕方がないと言って。
でも、この振り返りを続けると、見過ごしていた葛藤がたくさんあったことに気付いてびっくりしますよ。
私と仲間の研究で、大学生に、1週間、毎晩9時に振り返りをしてもらいました。
9時に、LINEでメッセージを送り、振り返りを促したのです。その日の行動、特に後悔している行動について考え、次回どうしたらよくなるかも考えてもらいました。
日々の振り返りの効果は絶大でした。
多くの生徒は、自分の中にある葛藤について洞察が深まったし、自制する自信がついたと報告しました。
いい変化に気付き、これからも、振り返りを続けたいと言った学生もたくさんいます。
4.内面の葛藤を解決することが難しいなら
相反する感情があるとき、解決することが難しく、ときには、どちらにも決められないことがあります。
この問題を解決する方法の1つは、望ましい行動に対して、適切な報酬を用意して、モチベーションをあげることです。
ジョギングに行くべきなのに、家でテレビを見たいと思うとき、よりよい行動をするために、報酬を考えておきましょう。
たとえば、ジョギングを終えたら、1時間テレビを見るとか。
5.衝動を抑える意志の力がないなら
意志の力は生まれつきだと考える人がいます。でも、そうではありません。
意志の力はトレーニングによって強くできると、心理学の研究からわかっています。
ウエイトを使って、筋力をあげるのと同じです。
意志の力は使えば使うほど強くなります。
私のチームは、日常生活でできるセルフコントロールの練習を使って、意志の力を強化できると証明しました。
大学生のグループに、できるときはいつも、5分早く行動するよう言ってみました。こうするためには、自制力の練習が必要です。
このトレーニングを2週間続けたら、実験に参加した学生は、前よりも衝動を抑えるのがうまくなりました。
意志の力が強化されたのです。
ほんの少しメンタルの力を要するものなら、なんでも練習に使えます。楽器の練習や、何かを握りしめることなどでも。
こうした小さなトレーニングを生活の中で行えば、意志の力は本当に強くなります。
やってみることが重要
もし、自分の行動をうまく制御したいなら、きょう紹介した方法を試してください。すべてを1度に行う必要はありません。
まずは、1つか2つ、自分の問題にもっとも関係のあるものや、もっとも取り組みやすいものを選んで始めましょう。
何をするにも、やってみて、それを続けることが重要です。
やろうとすればするほど、やりやすくなり、日常生活の中で、セルフコントロールを助けるよい習慣が身につきます。
//// 抄訳ここまで ////
自制心に関係のあるほかのプレゼン
セルフ・コントロール(自制心)の秘訣:ジョナサン・ブリッカー(TED)
脳の実行機能を高める方法(TED)~衝動買いを抑制したいあなたに。
人生で成功したいなら自制心を持て~マシュマロ・テストに学ぶ成功法則(TED)
自分の行動をコントロールできるという幻想:人の行動とドーナツ(TED)
なぜ運動するのを面倒に感じるのか?あるいは断捨離を始められないのか?(TED)
心のパフォーマンスを最適化するには?~チンプパラドックス(TED)
何でも変えられる。意志のちからより、スキルを使おう(TED)
その日の行動を振り返る
尾崎さんが紹介してくれた自制心を強化する方法はどれも効果があると思います。
私がやってみようと思ったのは、毎晩の行動の振り返り。
いつも、朝、日記とモーニングページを書いていて、夜、何かを振りかえることはあまりしていません。
夜は眠くて、頭が働かないのですが、これを機会に、お風呂からあがったあと、軽く振り返りをしてみます。
実験に参加した大学生は、たった1週間で効果を実感したそうなので、まずは今週1週間やってみますね。
忘れないように、机の上に「振り返り」と書いた付箋も貼りました。
誘惑に負けて、やるべきではないことをやってしまったり、やるべきことをやれない日々が続いているなら、あなたも、その日、うまくいったことと、失敗したと思ったことを振り返るといいかもしれません
このとき、あまり自分をジャッジして責めないほうがいいです。
淡々と振り返って、「次はどうしたら同じ失敗をしないか」を考えてみてください。
うまくいったらまたメールで教えてください。
私も効果を実感したら、記事でお伝えします。