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昔、理科の時間に習った酸性とアルカリ性。今回はこの2つ性質の違いをお伝えします。
私はふだんナチュラルクリーニングをしています。
ナチュラルクリーニングとは、化学薬品がたくさん入った洗剤ではなく、身近にある、比較的安全なものを使って、掃除をする方法です。エコ家事とも呼ばれています。
洗浄剤としてよく使うのは、水、重曹(ベーキングソーダ)、石けん、お酢です。おもな手法は、酸性とアルカリ性の汚れをそれぞれ中和させること。
基本知識として、酸性とアルカリ性とは何であるのか、今一度確認しておくと、より効果的にナチュラルクリーニングができます。
酸性とアルカリ性を決める物は水素イオン
酸性、アルカリ性とも水溶液(特定の物質が溶けている水)の性質を表す言葉です。
小学生のとき、理科の時間にこんな実験をしたこと、覚えていますか?ビーカーにいろいろな水溶液を入れて、リトマス試験紙を突っ込み、色が変わるのを調べる実験です。
あまりにこの実験が有名なせいか、リトマス紙の色が変わるから、酸性やアルカリ性なんだ、と思ってしまいがち。ですが、水溶液が、酸性やアルカリ性だから、リトマス紙の色が変わります。
その水溶液が酸性か、アルカリ性かを決めるのは、液体の中に入っている水素イオンです。
水素は風船なんかに入っているとても軽い気体です。酸素と化合すると水になります。
イオンは、スーパーの名前にもなっていますが、電気を帯びた原子のこと。原子とは、物質の基本単位です。
原子は陽子(+)と電子(-)というものから成っています。ふだんは陽子と電子の数が一緒なので、電気的に中性であり、電気を帯びていません。
ところが、ほかの原子とくっつくと(化合すると)、電子を失ったり、よけいにもらったりして、電気をおびます。
原子が電気を帯びるしくみはこちら⇒静電気が発生する理由とその対策
物によっては、電子を失って、陽子がたくさん残り、プラス(正)の電気を帯びます。これは陽イオン。ほかの原子から飛び出した電子をもらって、マイナス(負)の電気を帯びるものもあり、これは陰イオンと呼ばれます。
水に溶けているものによって、水素イオンができたり、水酸化物イオンができます。水素イオンが入っている水溶液は酸性、水酸化物イオンがん入っている水溶液はアルカリ性です。
酸とは、水に溶けると電子がとれて(電離、またはイオンができること)水素イオンを生じるもの、アルカリとは、電子をもらって水酸化物イオンができるもの、と言えます。
ちなみに、水は水素イオンと水酸化物イオンが同じ量だけあり、中性です。
化学的なことはそんなに詳しく知らなくても家の掃除はできます。とりあえず、酸性、アルカリ性、中性はだいたいこんなものだ、とわかっていれば大丈夫です。
酸性、アルカリ性、中性の違いとは?
酸、アルカリの度合いを示す指数として、pH(ピーエイチ、ペーハー)というものがあり、0から14まで数字がついています。
0に近いほうは酸性、7は中性、7より大きな数字はアルカリ性です。
以下にそれぞれの性質の特徴を簡単に書きます。
酸性の特徴
酸性の溶液の中では水素イオンが発生しています。
酸性と書くぐらいですから、なめると酸っぱいです。青色のリトマス紙を入れると赤くなります。pH7より小さいものが酸性です。数字が小さくなればなるほど、強い酸性。
釘などの金属を入れてみると、泡(水素)が出ます。
酸性物質の代表は、塩酸、硫酸、お酢、レモン、オレンジなどの柑橘類(クエン酸)、梅干し、ワイン、炭酸水、胃液など。
アルカリ性の特徴
水酸化物イオンが発生します。
味は苦かったり渋かったりします。手でさわるとぬるぬるします。
赤色リトマス紙を入れると青くなり。pHは7より上。数字が大きくなればなるほど強いアルカリ性です。
アルカリ性の物質の代表は、豆腐をつくるにがり(塩化マグネシウム)、洗剤、アンモニア、重曹(ベーキングソーダ、炭酸水素ナトリウム)。
塩素系の漂白剤をさわると手がぬるぬるしますが、漂白剤の中に、水酸化ナトリウムという物質が含まれているからです。
水酸化ナトリウムはとても強いアルカリ性で、タンパク質を分解する働きがあるため、さわると手がぬるぬるするのです。
私の夫は、よく漂白剤で手を洗っていますが、大丈夫なのでしょうか?
中性の特徴
酸性でも、アルカリ性でもないもの。あるいは、酸性とアルカリ性が打ち消し合っている状態。pH7。水、砂糖水、塩水など。
その汚れは酸性か、アルカリ性か?
酸性のものと、アルカリ性のものを混ぜると、水素イオンと水酸化物イオンが結びつき、水になります。これを中和と呼びます。
エコ家事では、この性質を利用して掃除をします。
汚れにも酸性、アルカリ性があり、それぞれ逆の性質を持つもので反応させると、中和し、汚れを分解しやすくなります。
漂白剤で手がぬるぬるしているときも、酸性の何か(レモン汁など)を触れば、ぬるぬるが取れます。ただし、強い酸性のものを素手に触ってはいけません。
酸性の汚れ
油汚れ(調理器具、食器)、皮脂、湯あか、手あか、食べこぼし、吐いたもの。酸性のものはギトギト、ベタベタしているイメージでしょうか?
生ごみ、食べものが腐って発する匂いも、酸性です。
消臭の記事参照⇒キッチンの消臭に使える6つの物。ナチュラルで安全な物を使います。
人間の生活で出る汚れは、酸性のものが一番多いです。そこで、たいていの場合、重曹で落ちます。もちろん石けんを使っても落ちます。
昔の人は、灰で食器洗いをしていました。植物を燃やした灰のおもな成分は炭酸ナトリウムや炭酸カリウムで、アルカリ性なのです。
アルカリ(alkali)という言葉は、もとはアラビア語で、海の草の灰という意味です。
アルカリ性の汚れ
石鹸カス、水あか、トイレの尿の汚れ、白っぽいカス(電気ポットの中の白いカスとか。この白いものはカルシウムです)。お鍋の黒ずみ(これは野菜のアクがついたもの)、サビつき。
匂いでは、タバコのヤニの匂い、魚の生臭い匂い。
アルカリ性の汚れには、酸性のお酢やクエン酸を使います。
私はお酢と水を適当にまぜたお酢スプレーを作っておき、それをトイレやトイレまわりににふりかけて、拭き掃除をしています。
お酢について⇒家事も簡単、シンプルに~お酢を使ったエコ掃除と洗濯のアイデア10選
トイレの中の汚れを取るために、重曹をふりかけてこしこしすることもあります。
ちなみに、市販の台所用洗剤は中性(ph6.0~8.0)です。これは、食器のみならず、野菜や果物を洗うことも考えて(私は洗いませんが)、人の口に入っても大丈夫な数値の溶液になっているそうです。
ふつう中性だとあまり汚れは落ちないのですが、市販の食器洗い用の洗剤には、界面活性剤という、水と油をなじませる薬剤が入っているので、油汚れも取ることができます。
界面とは、異なる物質の境界の表面のことです。通常であれば、鎖国している国のように国境はしっかり閉じている感じ。ところが、界面活性剤は、この境界を化学的に活性化させることにより、水と油のように本来は混ざらない物も、うまく混ぜあわせてしまいます。
酸性かアルカリ性かわからない汚れはどうする?
中には、汚れの正体がわからず、それが酸性か、アルカリ性かわからないこともあるでしょう。
世間には、pHメーターという、ペーハー指数を計測できる道具があります。水質検査などに使われますが、たかが掃除をするのにこんなものを買うこともありません。
私はその汚れの正体がわからないときは、こうしています。
●乾拭きしてみる
●水拭きしてみる
●重曹をふりかけて水拭きしてみる
●お酢スプレーをかけて水拭きしてみる
この4つをやっているうちにたいてい取れます。お酢より重曹を先に使うのは、重曹には研磨剤の役割もあり、クレンザーとして使えるからです。
重曹の使い方⇒私のベーキングソーダ(重曹)の使い方7つ。エコな掃除の決定版
重曹は何にかけても大丈夫、というのもあります(表面が傷つきそうなものはだめですよ)。逆に、室内にあるものの中には、酸に弱い素材があるので気をつけてください。
また市販の洗剤にお酢やクエン酸を混ぜると化学反応を起こし、有毒ガスが出ることもあります。安易に市販の洗剤に酸を入れないでください。
酸は、中性で安全な水を使って溶液を作るのがベストです。
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リトマス試験紙の紙の原料は、もともと「リトマスごけ」という苔でだったのでこういう名前がついています。
リトマスごけは、地中海沿岸や西アフリカの海岸に生える苔で、古くから羊毛の染色に使われていたそうです。使っているうちに、あるものはみょうに赤っぽく染まり、あるものは暗い色になる、ということがわかったのでしょうね。
もちろん今のリトマス試験紙は、人工的に合成されています。