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最終更新日: 2019.03.27

あなたは与える人、それとも奪う人?:アダム・グラント(TED)

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職場や人生において、成功したい、と思っている人の参考になりそうなTEDの動画を紹介します。

タイトルは、Are you a giver or a taker?(あなたは与える人ですか、奪う人ですか?)。プレゼンターは組織心理学者のアダム・グラント(Adam Grant)です。

「与える人」と「奪う人」—あなたはどっち? という邦題がついています。



奪う人と与える人。TEDの説明

In every workplace, there are three basic kinds of people: givers, takers and matchers. Organizational psychologist Adam Grant breaks down these personalities and offers simple strategies to promote a culture of generosity and keep self-serving employees from taking more than their share.

どんな職場にも3つのタイプの人がいます。ギバー、テイカー、そしてマッチャーです。

組織心理学者のアダム・グラントは、それぞれの性格を分析し、与える文化を育て、利己的な従業員が取りすぎないようにする方法を教えてくれます。

givers (ギバー)は与える人、takers(テイカー)は奪う人、matchers(マッチャー)は与える分と取る分(ギブアンドテイク)のバランスを取る人です。

self-serving は利己的な、という意味。

職場における人間の分析ですが、社会全般で使える考え方です。

収録は2016年の11月。長さは13分ほど。日本語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。

彼はたくさんジョークを言っていますが、そこは割愛します。

☆トランスクリプトはこちら⇒Adam Grant: Are you a giver or a taker? | TED Talk | TED.com

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

パラノイアがいるのはテイカーがいるから

私は、組織心理学者として、さまざまな職場に出向き、時間を過ごしてきました。どこにでもパラノイア(妄想にとらわれている人)がいます。

パラノイアが生まれてしまうのは、テイカーがいるからなのです。

テイカーは、私利私欲に走る人。いつも「あなたは私に何をしてくれるの?」と考えている人です。

その逆は、ギバーです。「何か私にできることはありますか?」とアプローチしてくる人です。

ご自身のことを考えてみてください。誰でも、与える時、奪う時ってありますよね。人と一緒にいるとき、どちらが多いかでその人のスタイルが決まります。

ギバー、テイカー、マッチャーの3種類

あなたがギバーかテイカーかわかるちょっとしたテストがあります。

■ナルシストテスト

ナルシストテスト

ステップ1:自分のことについて考えてみてください。

ステップ2:ステップ2に到達できたら、あなたはナルシストではありません。

このテストに科学的な裏付けはありませんが、このマンガを見て、笑うまでに時間がかかった人ほど、テイカーだと思います。

もちろん、テイカー全員がナルシストとは言いません。与えすぎて燃え尽き症候群になった人の可能性もあります。

このプレゼンではふれない別の種類もテイカーもいます。サイコパス(精神病質者)です。

両極端なギバーやテイカーが、職場にどのぐらいいるのか興味をもち、世界中で、さまざまな産業に従事する3万人の人々を調べました。

その結果わかったのは、ほとんどの人は、その中間だということです。マッチングを選択する人です。マッチャーは、ギブとテイクのバランスを取ろうとします。

あなたが私に何かしてくれたら、私もあなたに何かをしましょう、という人たちです。

このやり方は人生において安全に見えます。ですが、もっとも効果的で生産性のある方法でしょうか?

その答えは、「たぶん」です。





もっとも成績の悪い人たちのタイプは?

たくさんの組織にいる大勢の人を研究し、それぞれの生産性を調べました。医学生の成績とか、営業マンの収入とか。

すると、意外なことに、もっともパフォーマンスの悪いのはギバーなのです。もっとも仕事が進まないエンジニアは、他人のためにいろいろやってあげる人です。

人の仕事で忙しすぎて、自分自身の仕事をする時間やエネルギーがなくなるのです。

「人を助けたい」という言葉に強く共感する医学生は、もっとも成績が悪いのです。つまり、ちゃんと卒業できた人は、人を助けたいとは思っていないということになりますね。

セールスの世界でも、人に与えたい、と願っている人は、営業成績が悪いのです。

「なぜ、こんな結果になったんですか?」と聞いてみたら、「お客さんのことを第一に考えているので、こんなひどい商品を売ることができないんです」という返事が返ってきました。

とはいえ、ギバーにもいい面があります。ギバーが自分を犠牲にするから、組織はよくなります。

その証拠がたくさんあります。チームや組織において、人が他人を助け、知識をシェアし、教え合えばあうほど、その組織のパフォーマンスはあがります。

利益、顧客満足度、従業員の定着率、すべて上昇します。しかも、経費は少なくなります。

つまり、ギバーは、人を助けることに時間を費やし、そのチームの結果に貢献しています。ただ、残念なことに、個人的には、悪い目を見ているのです。

このようなギバーが、個人的にも成功できる、職場の文化を作る方法をお話しますね。

もっとも成績のいいタイプとは?

さて、もっともパフォーマンスが悪いのはギバーでした。では、もっともパフォーマンスのよいのはどんな人たちでしょうか?

テイカーではありません。

テイカーは、たいていの職業で、上るのは早いのですが、落ちるのもすぐです。マッチャーの影響を受けるからです。

マッチャーは「目には目を」と考えるているので、テイカーを見たら、罰をあたえるのが自分のミッションだと思うのです。すると正義が勝つわけです。

ほとんどの人はマッチャーなので、テイカーは、自分のしたことの報いを受けます。

すると、最良のパフォーマンスをするのはマッチャー、ということになりそうですが、それは違います。

どの仕事でも、最良のパフォーマンスをするのは、ギバーなのです。

大勢のセールスマンの収益を調べてみました。ギバーは、最低ランクと最高ランクの両方にいます。

エンジニアの生産性や医学生の成績も同じです。

ここでこんな疑問がわきます。「より多くのギバーのパフォーマンスをあげるには、どうしたらいいのか?」

その方法をお話しますね。

ビジネスだけでなく、NGO、学校、政府にも通用するやり方です。

ギバーのパフォーマンスをあげるには?

ギバーの成績をあげる方法が3つあります。

1.ギバーの本質を認識する

まず、ギバーはとても大事な存在であることと、気をつけないと燃え尽きてしまうことを認識します。

ギバーを守る必要があるのです。

この点について、ビジネスで大きな成功をおさめている、アダム・リフキンから学びました。

リフキンは、自分のビジネスをどんどん展開しつつ、ほかの人を助けることにも、ずいぶん時間を費やしています。

彼の秘密は、5分の親切(five-minute favor)です。

「ギバーになるのに、マザー・テレサやガンジーのようにふるまう必要はない。ほんの小さなことで、他人の暮しに大きな価値を追加できる方法を見つければいいんだよ」。彼はこう言います。

人に誰かを紹介したり、知っていることを教えたり、ちょっとしたフィードバックをしたり、といったことです。

「よし、仕事が認められていない人を見つけよう」と思うことでもいいのです。

5分の親切をすることは、ギバーにとって、他人との境界線をひき、自分を守るのにとても大切なことです。

2.助けを求めやすい環境を作る

ギバーが成功しやすい文化を作るには、ごく普通に人に助けを求めることができる環境を用意することです。

人々がほかの人にたくさん頼みごとをする場です。

成功したギバーは、ときには受け取る人になってもいいのだ、とわかっています。

会社の経営者なら、こういう環境を作りやすいですね。

病院を調べたとき、あるフロアでは、看護婦たちが、さかんに人に助けを求めていました。

別のフロアでは、ほとんどそういことをしていませんでした。

手助けを頼むことがごく普通であるフロアでは、人の手伝いをすることだけが仕事である看護婦が1人いました。

こういう役割の人がいると、「人に頼むのは恥ずかしいことではない。自分がだめなわけではない。助けを求めるのはむしろ奨励されているんだ」と看護婦たちは考えます。

人に助けを頼むのは、ギバーの成功や幸福を守るためだけに重要なのではなりません。

より多くの人にギバーの行動を促すのに必要不可欠なのです。

というのも、データによれば、職場で行われる手助けのうち、75~90パーセントは、誰かに求められたから起こっているのです。

けれども、多くの人は、人に頼みません。

無能だと思われたくないし、誰に頼んでいいのかわからないし、他人の重荷になりたくないからです。

しかし、誰も助けを頼まなかったら、人助けをしたいと思っているギバーは不満をつのらせます。

3.テイカーを雇わない(テイカーを排除する)

もっとも重要なのは、誰を職場に迎え入れるかということです。

はじめは、ギバーの多い環境を作りたいなら、たくさんギバーを雇えばいい、と考えていました。

ところが、1人のテイカーがその組織に与えるネガティブな影響は、1人のギバーが与える影響の2倍~3倍なのです。

腐ったりんごが1つあると、樽の中全体のりんごがだめになりますが、よい卵が1つあったところで、それが12個のよい卵にはなったりはしないのです。

1人テイカーがいるだけで、ギバーは手助けするのをやめます。

「ヘビやサメばかりの中で、どうして自分が貢献しなければならないのか?」と思ってしまうのです。

一方、ギバーを1人、チームに入れても、善意が満ちるわけではありません。みな、「よかった、彼が全部やってくれる」と思うだけです。

ですから、人を雇用するとき大切なのは、ギバーをたくさん雇うことではなく、テイカーを雇わない、ということなのです。

それがうまくできたら、ギバーとマッチャーだけになります。

ギバーは、結果の心配をしなくてすむので、心いくまで手助けできるし、マッチャーはその状況に合わせます。

テイカーの見極め方

では、どうやったら早めに、テイカーを見つけることができるでしょうか?

テイカーを見つけるのは難しいのです。特に初対面のときは。

人当たり(agreeableness)にだまされてしまいます。人当たりのいい人は、温かくてフレンドリーです。いい人なのです。

人当たりのいい人がギバーで、人当たりの悪い人はテイカーだと思っていましたが、データを分析したところ、人当たりとギブアンドテイクには関係がない、ということがわかりました。

人当たりとは、その人の表面のことにすぎません。その人と接していて、気分がいいかどうか、ということです。

しかし、与えるか奪うかということは、もっと人の心の底から発している行動です。その人の価値観や、他人に対する意図で決まります。

テイカーをしっかり見極めたいなら、四角を2個ずつ描いてください。

ギバーとテイカー

人当たりのいいギバーはすぐにわかります。どんなことにもイエスといいます。

人当たりの悪いテイカーもわかりやすいですね。

人当たりの悪いギバーもいるんです。一見、ぶっきらぼうで強面だったりしますが、心の中では人の役に立ちたいと願っています。

この手のギバーは組織の中で、もっとも過小評価されています。耳の痛いフィードバックをしてくれるからです。

こういう人たちをもっと評価しなければなりません。「あいつ感じ悪いからテイカーに違いない」なんて思ってはいけないのです。

もう1つ、人当たりのいいテイカーというのもいます。詐欺師(faker)ともいいます。

表面上はいい人だけど、裏ではひどいことをする人です。

テイカーを発見するには、面接でこんな質問をするといいです。

「あなたのおかげで、キャリアが根本的に向上した4人の人の名前をあげてください」。

テイカーは、自分より影響力のある人たちの名前をあげます。彼らは強い者にはへつらい、弱い者はしいたげるからです。

ギバーは、自分より下の地位にいる人たちの名前をあげることが多いです。力がなく、自分のためにならないような人たちの名前です。

現実社会では、その人が、レストランのウエイターやウーバー(Uber スマホのアプリで呼ぶタクシー)の運転手にどんなふうに接しているか見れば、わかりますね。

成功することとは、より貢献すること

この3つをすべてうまくやることができれば、つまり、組織からテイカーを排除し、

安心して助けを頼むことができるようにし、

ギバーが燃え尽きるのを防ぎ、人助けをしながらも、野心を持ち自分の成功を追い求めてもいいんだよ、と伝えることができれば、

人々の成功の定義は変わるでしょう。

競争に勝つことがすべてだと思う代わりに、より貢献することが成功なんだと思い至るのです。

もっとも意味のある成功は、ほかの人が成功するのを助けることだと信じています。

そう考える人が増えれば、パラノイアならぬ、プロノイア(pronoia)が生まれます。

プロノイアは、他人が、なんとかして自分を幸せにしようと企てているという一方的な妄想を持っている人のことです。

自分の知らないところで、みんなが、自分をとんでもなくほめている、と思い込みます。

ギバー文化のいいところは、これが妄想ではなくなる、というところです。現実なんです。

私は、ギバーが成功する世界に暮したいし、そういう世界を実現するために、皆さんにも手助けしてほしいと思うのです。

//// 抄訳ここまで ////

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このプレゼンは、実際にチームの1人として仕事をしている人や、チームを率いている人には、いろいろと示唆があると思います。

ギブアンドテイクではなく、ギブアンドギブが成功と幸福への道。しかし、ギブばかりしていると燃え尽きる、というわけです。

アダムさんは、研究結果を著書にまとめており、翻訳(GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代)も出ているので、興味があったら読んでください。

私は読んでいませんが、今年の目標に書いたように、2018年は多読・多聴をする年なので、オーディオブックを聞いてみるつもりです。

オリジナルのハードカバーは320ページ、翻訳は382ページ、オーディオブックは11時間50分です。

さて、ここでは、ビジネスは関係なく、シンプリストやミニマリストになりたいなら、ギバーになるのが手っ取り早い、ということを書きます。

考えてもみてください。多くの人が、家に物をためこみすぎたのは、これまであまりにもテイカーだったからです。

テイカーはこんなことをしています。

◯誰も使っていない物なのに、「捨てるのがもったいない」という気持ちのせいで、本当にそれを使う人、必要としている人の手に渡さないでいます。

捨てる痛みを感じたくないし、買った物への責任を果たすのもいやなので、ただ自分の家に放置します。

◯得をしたい一心で、べつに必要でもないのに、セールで安くなっている商品や期間限定品をどんどん買い漁って家に物をためこみます。

◯とにかく何でも自分の手元に置きたがります。

誰かとシェアしたり、レンタルしたりできるのに、自分が所有しなければ気が済まず、たくさんの物を買って、自分の家の中に囲い込みます。

合言葉は、「モア・イズ・ベター」(多ければ多いほどいい)。

◯自分の物を自分で片付けず、他人におまかせする気でいます。

生前整理すればいいのに、面倒だし、つらいから、自分が死んだあと、ほかの人にやってもらえばいいと思って、自分では片付けません。

◯弱者を搾取して物を増やしています。

安くてかわいい流行の服。その値段の安さには理由があります⇒「真の代償」The True Costはファストファッションの真実を暴く映画 ~これでもあなたは安い服を買い続けますか?

それを知っているのに、さほど必要でもない安い服を買い続けていれば、当然物は減りません。

まめに断捨離して回転させたとしても、地球上のゴミを増やしています。

ファッションにかぎらず、チープな雑貨も同じです。

まあ、先進国に住んでいる人は、みなテイカーと呼べますね。

もしギバーになることを意識すれば、上に書いたようなことは、そう簡単にしなくなります。その結果、身の回りの物は減っていきます。

断捨離しようとがんばっているのに、なぜかいつまでたっても片付かないと思う人は、もっとギバーの行動を取り入れてみるといいかもしれません。





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