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最終更新日: 2024.11.1

愛着理論は愛の科学(TED)

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愛着理論(attachment theory アタッチメント理論)について説明しているTEDトークを紹介します。

タイトルは Attachment theory is the science of love(愛着理論は愛の科学)。

セラピストの Anne Power(アン・パワー)さんのトークです。

愛着理論は、幼少期の親子関係がその後の人間関係や心理発達に影響を与えるという理論です。



愛着理論:TEDの説明

Attachment theory now has a global reach through social media and provides insights and
support to individuals, parents, couples and professionals who provide care. This talk tells
the story of attachment theory’s emergence in 1950s London and provides three key takeouts from John Bowlby’s thinking:

• All behaviour makes sense in context
• Security enables curiosity
• Learning to regulate our feelings gives us new opportunities in relationships.

愛着理論はSNSを通じて、世界中に広がり、個人、親、カップル、ケアギバーに洞察とサポートを提供しています。

このトークは、1950年代にロンドンで愛着理論が生まれたこと、そして、ジョン・ボウルビーの考え方から学べる3つのことを紹介しています。

・すべての行動には文脈を知れば理解できる
・安全が好奇心を促す
・感情を調整することを学べば、人間関係で、新しいチャンスを得られる

収録は2023年11月、動画の長さは13分15秒。動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

アンさんはカップル専門のセラピストですが、とても落ち着いた話し方をする方なので、セラピストにぴったりの方ですね。





愛着理論はロンドンで生まれた

皆さんにお話するのは、100年前にロンドンで生まれた考えです。

その後、何千と研究され、今日、世界中のSNSで話題になっています。

それは愛に関するものです。

愛について、今さら新しい話なんて何もないと思うかもしれませんが、これは、ロマンスではなく科学です。

愛着理論では、愛を進化の過程で設計されたと考えています。「愛着」は、2人の人間の密接な絆のことです。

一緒にいればお互いに安全で、離れると途方にくれるような関係です。

25年のセラピストの体験と、65年のわたしの人生経験から、愛着理論を理解すれば、愛し方や愛され方に大きな違いを生み出せると信じています。

このトークで、愛着に関する3つの重要なポイントをお伝えします。

愛着理論の起源

まず、この理論の歴史からお話します。

1930年代、ロンドン北部で活動していた精神分析のエリートグループに、ジョン・ボウルビー(John Bowlby)という新しいメンバーが参加しました。

彼は、科学的すぎたので、このグループにうまく入り込めませんでした。

しかし、その後、20年~30年の間に、彼の理論は世界中の大学で研究されるようになり、21世紀になって、ニュースに登場するようになり、育児や人間関係のあり方に影響を与えています。

ボウルビーは、すべての行動は、その人が置かれている状況や過去の経験という文脈の中で理解できると考えました。

こう考えれば、好奇心が芽生え、自分自身だけでなく周囲の人の行動も尊重できます。

ボウルビーは、この考えをもとに親子の絆について理解しようとしました。

サルの赤ん坊の実験

これは1930年代のある実験の写真です。

サルの赤ん坊が母親から引き離され、おりに入れられました。

おりには、ミルクが出る金属の母親と、ミルクは出さないけれど、柔らかい布の母親がいます。

サルの赤ん坊は、いつも、布の母親にくっついていて、お腹がすいたときだけ、金属の母親のところに行きました。

この実験からボウルビーは、幼い生き物はケアギバー(世話をしてくれる人)に愛着をもつと気づきました。

安全や快適さを与えてくれる人に愛着をもちます。サポートしてくれるものに愛着を感じるのは赤ん坊だけではありません。

私たちはみな、困ったとき、癒やしてくれるものに向かいます。

ボウルビーは、この愛着が、種の生存を実現し、進化の過程で私たちの中に深く刻まれた行動だと考えました。

人間の子どもも同じ

彼のチームの研究から、サルの赤ん坊だけでなく、人間の乳幼児も、与えられた状況で、一番世話をしてもらえるように行動するとわかりました。

ここに赤ん坊がいる2つの家庭があるとしましょう。

私が、大声で泣き叫んだときだけ、うつ病の母親が立ち上がるとしたら、私は、何を学ぶでしょうか?

隣の家の赤ん坊の母はべつの性格の持ち主です。このお母さんは、感情を扱うのが苦手です。

すると赤ん坊は、母親にかまってもらうためには、自分の感情を押し殺したほうがいいと学びます。

愛着理論では、最初の子どもを、感情を増殖させる傾向がある不安型愛着の持ち主と考え、もう1人の子どもは、逆に感情を抑える回避型愛着だと考えます。

今育児をしている人は、自分のやり方を考えるでしょうし、自分が幼かったとき、母親がどんな感情の問題をかかえていたか、考えるかもしれません。

幸い、2人の赤ん坊のその後の人生は、ごくふつうです。

しかし、もし彼らが、充実した人間関係を持ちたいと思うなら、幼いときに学んだことを、アンラーン(unlearn 今まで学んできたことを一度ゼロにし、再び学び直す)すべきかもしれません。

1950年代に、愛着理論は既製の組織には受け入れられませんでした。当時の病院では、子どもの患者のそばに親が付き添うことを許しておらず、面会は日曜日に1時間だけと決められていました。

スタッフは自分たちのやり方が間違っているとは思っていなかったので、ボウルビーのチームが、2歳の女の子の患者を研究することを許可しました。

彼女が一人ぼっちで病室にいるモノクロの写真は、とても心が痛むもので、その後、病院のルールは変わりました。

安全が学びを実現する

愛着理論のもうひとつのポイントは、安全な環境が学びを実現するということです。

安全で自信を感じているときは、自由に何かを学び探求することができます。

でも、脅威を感じているときは、学ぶことはできません。

公園に女の子がいるところを想像してください。大きな犬がやってきて、怖がらせたら、この子はどうするでしょう?

両親のもとに逃げていきます。恐怖は彼女に本能的な行動をさせます。

愛着理論では、この子どもは、両親に対する安定した愛着を持っているから、両親のそばに行けば、体内の化学物質の構成が変わり、またもとしていた遊びに戻れると考えます。

不安から安心に向かう道は、大人にも存在しています。

愛着を持っている人を信頼していれば、触れたり、テキストを交換したり、見たりするだけで、癒やされます。

安全だとまた感じれば、脳は元通りに機能し始めます。

大人のカップルと愛着理論

愛着理論は大人のカップルにも影響を与えます。

ボウルビーは、愛着は、生涯必要だと説いていましたが、彼は、親と乳幼児の絆にフォーカスしていました。

彼のあとに続いた研究者たちは、大人同士の絆も研究し、子どもと同じように愛着が働くと発見しました。

すなわち、2人の人間は、守ってほしいときにそばに行きたがり、引き離されると抵抗します。それが、ちょっとしたいさかいでも、死別という永遠の別れでも。

子どもと同じように絆が強固なら、愛着の2つの機能がはたらきます。

それは安全な場所と、成長のプラットフォームです。安全であるからこそ学びが可能になります。

先にそれぞれ違う愛着をもつ赤ん坊の話をしました。回避型は、感情を抑え込み、不安型は逆に感情を出そうとします。

もしこの2つの型の持ち主がカップルになったらどうなるでしょう?

スーザン・ジョンソンがその研究をしましたが、この場合、2つの愛着型が、お互いのトリガー(愛着しているものに、走って逃げていくきっかけ)となり、苦しむサイクルにはまって抜けられなくなります。

ジョンソンは、不安が強いパートナーを「追求する人」、回避しようとするパートナーを「引きこもる人」として、新しい地図を作りました。

この地図を見ると、隠れていたものがわかります。

2人の人間の苦々しいやり取りの裏にあるのは、この2人を結びつけている貴重で傷つきやすい感情なのです。

お互いが自分の地図を読む取れば、特定の状況でのパートナーの行動を理解できます。

相手を責めることをやめたとき、学ぶことが始まります。安全な場所は学びを実現しますから。

これは、シングルの人にもいいニュースです。自分の愛着のパターンを知っておけば、将来、深い人間関係を築く準備が整います。

子どもがいる人にとっては、その子が幼くても、もう成人していても、愛着理論を理解しているとつながりを深め、修正が必要なときも役立ちます。

ゆっくり進もう

愛着のパターンを知ることと、それを変えることは別の話です。

困難なとき、スピードを遅くしてください。安全と学びにゆっくり近づくのです。

人生で私たちが遭遇するいちばん大きな障害は、愛着しているものを失うことです。

誰かと死に別れたり、裏切られたり、拒絶されたときに。

典型的なトリガーは自分の中から生まれます。それは、意地悪な自己批判です。

愛着を持っている人が、そばにいないとき、こうした障害をどう乗り越えるか?

自分を注意深く見ることを学ぶと、難しい感情に対処する大きな助けになります。

不安や恐れを抱いたとき、呼吸も心拍も速くなります。アドレナリンが分泌されます。

このとき、スローダウンすることを学べば、自分の感情に好奇心をもち、尊重できます。

そうすれば、「戦うか逃げるか反応」のメカニズムを理解でき、いきなり攻撃したり、引きこもったりしなくてすむのです。

まとめ

すべての行動は特定の文脈において、説明することができます。安全であれば学ぶことができます。安全な場所を作るためにゆっくり進みましょう。

ゆっくり呼吸して落ち着きましょう。

性急な反応をしなければ、好奇心をもち、もっとオープンな態度で他者とやりとりできます。

オープンな態度は、自分の不安を認めることですが(vulnerability)、それこそが、深い人間関係の核心です。

だからこそ、愛着理論は愛の科学と言えるのです。

/////抄訳ここまで////

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愛着理論についてもっと知りたい方へ。

安心できる状態を作る

愛着理論を知っておくと、よりよい対人関係を築くのに役立ちますが、トークの最後で言われているように、自分自身との関係も改善できます。

幼少期のトラウマや過去の愛着に関する問題が、現在の感情や行動に影響を与えているならば、その問題の対処にも役立ちますね。

自分の愛着パターンを理解すれば、日頃の行動に対する洞察が深まるので、ストレスマネジメント、節約、買い物習慣の改善などシンプルに暮らす上で重要な要素に効果を発揮するでしょう。

どのような状況で不安を感じ、何に安心を求めているのか分かれば、ストレスがかかりやすい場面や、買い物に依存しがちな状態に気づくことができますから。

「安心したい」という気持ちが、ものを所有することにつながるので、どうすれば安心できるのか考えれば、本当に必要なものだけを持つ生活をしやすいのではないでしょうか?

パワーさんのトークを参考にして、ご自身の感情と行動のパターンについて考え、よりシンプルに、だけど内面的には豊かな日々を実現してください。





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