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全然使っていない不用品だけど、捨てると何もかも失いそうで怖い、自分がなくなってしまいそうな気がするというお便りをたまにもらいます。
こんな気持ちがあるのは、所有物に自分のアイデンティティを過度に結びつけているからです。
「ものは自分とは違います。捨てても自分は残ります」と筆子が言っても納得できないわけです。
この記事では、人がものに自分を象徴させてしまう理由、ものにアイデンティティを求める危険性をお伝えし、もの以外の何かに自分を見出すことを提案します。
もの以外のものにアイデンティティを見い出せば、「これを捨てると自分がなくなる」という不安は消えます。
そうすれば、断捨離も進むので、もっと暮らしやすい環境いなります。
豊かな想像力がものと自分を一体化させる
人間には豊かなイマジネーションがあり、これが自分と所有物を強く結びつけます。
誤解を恐れずに言ってしまうと、神様って現実にはいないですよね?(信仰をお持ちの方、クレームのメールを送ってこないでくださいね)。
でも、想像力のある人間は、必要だったから神様を作り出しました。
私達は共通の物語(神話)を作って、共同体の一体感を高めてきました。
誰かの死を目の当たりにして打ちひしがれたときや、死の恐怖を感じたとき、神様にこころの慰めを求めました。
科学では説明できない未知のできごとに対する答えや、生きる目的や意味を宗教に見いだしてきました。
人々が自分のニーズを満たすために作り上げた宗教は、とても大事なものとなり、私達は信仰をベースに進化や発展をとげ、文化を育み、戦争をして罪のない子どもを殺すことまでします。
そのぐらい、人の想像力は強力なんです。
参考記事:
天国のバナナ、人類の最大の強みとは?:ユヴァル・ノア・ハラリ(TED)
だから、もし、「学生時代の教科書やノートを捨てちゃうと、自分がなくなってしまう」「OL時代の服を捨てちゃうと、楽しかった青春が消えてしまう」と強く思ったとしても、それは幻想です。
今度そんなふうに感じたら、「もしかしたらこの気持ちは、人間ならではの豊かすぎる想像力のせいではないか?」と疑ってください。
想像力を働かせるのはいいことですが、そのせいで、わざわざ暮らしにくい思いをする必要はないと思います。
所有物と自分は違う
実際問題として、「この部屋にあるすべてのものは私の一部だ」と思ったとしても、ものが自分自身を完全に表すことはできません。
なぜなら、人は常に変化するからです。
私達は少しずつ年をとり、趣味や嗜好、考え方が変わります。環境も変化します。
たとえば食べ物の好みは変わりますよね?
昔すごい甘党だった人(筆子)が、甘いものを食べなくなることがあるし、昔、コーヒーをばかばか飲んでいた人(筆子)が、カフェインを避けるようになることもあります。
音楽やインテリアの好みも変わります。若い頃の私は、いつも洋楽のチャートをチェックして、そのとき流行っている曲を聴いていましたが、最近は、クラシック音楽やただの雨の音を聴くほうが好きです。
環境も変わりますよね? 私はつい1ヶ月前までは、元夫と住んでいましたが、今は一人暮らしをしています。住環境だけでなく仕事環境も変わりました。
前より今のほうが、仕事時間が長いです(前より熱心に仕事をしています)。1人になったから、もっと稼ぐ必要ができた、という理由もありますが、仕事を邪魔する人がいなくなったので、仕事する時間が増えたんです。
私だけでなく、どんな人も時間の経過とともに、趣味や嗜好、価値観、リスクに対する考え方、生活環境が変わります。その人の核となる部分は変わらないかもしれませんが、人によっては、様変わりします。
人は変わり続ける。未来の自分に対する心理:ダン・ギルバート(TED)
未来の自分が何を求めているかなんて今の自分にはわからない(TED)
一方、ものはものだから、何も変わらないんです。変わることがあるとすれば、劣化するぐらい。
常に変わっていく自分と、何も変わらないものと同一視するのは無理があると思います。
私は変わりたくないから、決して変わらないものを持ち続けたいという気持ちがあるときは(ユーミンの歌に出てきそうなシチュエーションです)、自分の一部だと感じるものを持っていてもいいでしょう。
ですが、今の生活に不満を感じるなら、変わるほうを選ぶべきです。
ものじゃないものにアイデンティティを見出す
多くの人はものにアイデンティティを見出しています。たとえば、
・大きな家に住む私・高級車に乗る私は人生の成功者だ/金持ちだ/人々のうらやむ対象だ
・ブランドものの服を着る私は成功者だ/仕事ができる/金持ちだ/センスがいい/◯◯さんの所属する世界の住人だ/皆のあこがれの的だ
・こんな本を書棚に並べている私はインテリだ/教養がある/リーダーにふさわしい
・こんな食器を使う私はインフルエンサーとしてふさわしい/ずば抜けてセンスがいい/丁寧な暮らしをしている人だ
そういう気持ちが自信を与えてくれることもあるので、ものに自分を表してもらうのは必ずしも悪いことではありません。
ですが、ものが象徴している自分と本当の自分との間にギャップがありすぎると、ストレスが増えます。
本当の自分ではないイメージだけが、あたかも自分であるかのように、とことことあなたの前を歩いていくからです。
だから、ものではない何かでアイデンティティを表したほうがいいと思います。
ちょっと考えてみれば、いろいろなものがあなたのアイデンティになります。
・生き方や信念、価値観
自分が大切にしている価値観は日々の決断や行動に影響を与えるので、立派なアイデンティになります。例:誠実さ、正義感。
・趣味や興味
余暇の過ごし方が、あなた自身を表します 例:特定のスポーツ、アート、音楽、読書
・仕事やキャリア
仕事は自分のスキルや経験を通じて、自己実現を図る場なので、ダイレクトにアイデンティティになります。働き方もその人のアイデンティティになります。
・人間関係
どんな人とどんな付き合いをするかは、自分という人間をよく表します。
・夢や目標
めざしているものがあれば、それが、日々の行動を決めるので、それはあなたそのものです。
ほかにも宗教・信仰、文化的背景、出身地など、アイデンティとなるものはたくさんありますが、どれもものではないのでかさばりません。
アイデンティの見直しも簡単です。自分の心と向き合うだけです。
向き合うときは、いつも言っていますが、紙に気持ちを書き出してください。時間もお金もかかりません。
きょう筆子が言いたいこと
ものにアイデンティティを見出すことには限界があるし、ときに、とても危険なことです。
本当の自分ではない自分を作り上げるために、化粧品や服にお金を注ぎ込んでしまう恐れもあるし(その結果買い物依存にエスカレート)、ガラクタを大量にためこんでしまう可能性もあります。
だから、ものではない生き方や興味などで自分を表してはどうでしょうか?
それは目に見えないので他人からはわかりにくいです。ですが、他人にわかってもらうより、自分が納得できるかどうかのほうが重要です。
もの以外のものにアイデンティティを見出したほうが、幸福度があがりますよ。
■関連記事もどうぞ⇒自分がなくなってしまいそう:物を手放すことに対する不安と恐怖(その7)
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ものに依存せず、自分の好きなことや、大切にしている考え方、生き方などで自分自身を表すことをおすすめしました。
「これを捨てると私がなくなる」という恐怖を感じることが多いなら、ぜひこの考え方を取り入れてください。
そうすれば、もっと安心してものを手放すことができますし、すっきり暮らせるようになります。