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病気や怪我、加齢による衰え、仕事の失敗。
思いどおりにならない現実を前に、なんとかしようともがいて疲れている人に見てほしいTEDトークを紹介します。
タイトルは Giving in without giving up – a story of finding gratitude everywhere(あきらめずに、身をゆだねる~感謝はどこにでも見つかる)。
スピーカーは、元スキーインストラクターで、現在は人材採用業界の経営者として活動する Blake Wittman(ブレイク・ウィットマン)さん。
抵抗するのをやめて現実を受け入れると、心がラクになるだけでなく、今の自分に合った次の道が見えてくる。そう教えてくれるトークです。
全身を骨折しても、機嫌よく過ごした人
収録は2023年10月。動画の長さは16分半です。日本語の字幕はありませんが、英語の自動字幕があります。
■TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
雪だと思ったら岩だった~全身15か所を骨折
ブレイクは19歳のとき、オーストリアでスキーインストラクターの資格を取りました。180人が受けて、受かったのは50人という試験です。
その26年後、2022年3月に、彼はスキーで事故に遭います。
雪があるはずの場所に高速ですべっていったら、実際は岩だったんです。
岩と凍った地面に何度も体を打ちつけ、ヘリコプターで運ばれ、3週間昏睡状態になりました。
15か所を骨折。折れた箇所は合計でその倍近くあり、CT画像を見た外傷チームが驚いたほどです。
首、肩、左のあばら骨のほとんどを折っています。
両脚は骨が砕けました。
数日後、命に関わる感染症にかかり、緊急手術を受けました。
肺には穴が開き、昏睡のあいだに肺炎を2回起こしています。
目が覚めると、左半身が麻痺していました。何十種類ものスポーツをこなしてきた筋肉質の体は、55キロまでやせていました。
座る、立つ、歩く、食べる。基本的な動きを一から学び直すところから、リハビリが始まりました。
ブレイクは、その期間のほとんどを、けっこう機嫌よく過ごしました。
彼は、立ち直るまでの道のりを3つの段階に分けて説明します。
第1段階・落ちる~体の力を抜いて、身をゆだねる
私たちは、転ぶな、失敗するな、と言われて育ちますが、落ち方は誰も教えてくれません。
うつ状態になるとき、燃え尽きるとき、仕事を失うとき、離婚するとき。こんなとき、どうすればいいのかは、習わないままです。
気をつけていても落ちるときは落ちます。
ブレイクは、落ちているとき、抵抗するのをやめました。
止まろうとせず、体を突っ張らせず、力を抜きました。
医師から、あの落ち方なら死んでいてもおかしくなかったと言われました。助かった大きな理由は、抵抗しなかったからだと彼は考えています。
I didn’t give up, I gave in.
(あきらめたのではありません。身をゆだねたのです)
あきらめる(ギブアップ)は、うまくいかないから努力するのをやめること。
身をゆだねる(ギブイン)は、抵抗するのをやめること。
似た言葉ですが、中身は別ものです。
軍隊やパラシュート降下の訓練でも落ち方の指導があります。目的は落ちるのを止めることではなく、怪我を最小限にすることです。
退却が、いつも失敗とは限りません。
朝鮮戦争のさなか、オリバー・スミス少将の部隊は、4倍の中国軍に囲まれました。
そのまま踏みとどまれば全滅するので、彼は中国軍の一角を突破して、部隊を港まで撤退させました。
数日後、なぜあきらめたのかと記者に聞かれた少将は、退却しているのではない、別の方向に前進しているだけだと答えています。
勝てない戦いにしがみつくのをやめると、別の方向に進むための力が残るのです。
第2段階・受け入れる~起き上がれた日、病院でいちばん幸せだった
昏睡から目覚めた彼が見たのは、動かない左半身と、両脚に10センチのねじで固定された金具でした。
喜べる状況ではありません。それでも彼は、気持ちが沈んでいく一方にはなりませんでした。
ブレイクは、思うようにならない体を、そういうものとして受け入れました。
抵抗しなかったぶん、目に入ってきたのは、昨日できなかったことが今日できた、という小さな喜びです。
何週間も体を動かせず、床ずれの痛みが昼も夜も続き、3か月近くシャワーも浴びられませんでした。
そんな状態でも、初めて自分の力で起き上がれて気分が悪くならなかった日、彼は病院でいちばん幸せな男でした。
自力で寝返りが打てるようになった日には、見舞いに来た人全員に実演してみせました。
付き添いなしでトイレに行けた日には、興奮して妻に電話をかけています。
彼はずっとベッドにいましたが、周囲の患者は入れ替わりました。
ブレイクは隣の患者や看護スタッフによく話しかけました。
どこの出身か、何年ここで働いているのか、1日に何人の患者のお尻をふくのか。
相手のことを知るほど、この人たちに世話をしてもらっているのだと実感できました。
こうして、たくさんの瞬間に深く感謝できたのです。
この段階を通らなければ、彼は行き場のない怒りを抱えたまま止まっていたかもしれません。
第3段階・進化する~元に戻るのではなく、別の山を登る
最後の段階は、進化することです。
多くの人はこのステップを回復と呼びますが、元の場所に戻るわけではありません。
これから登るのは、自分が落ちた山とは違う山です。
進化にかかる時間は人それぞれですし、一直線に進むわけでもありません。
ブレイクは、リハビリ専門の病院に運ばれたとき、まだ寝たままの状態でした。
ただ、その少し前から歩行器で歩く練習を始めていたので、自分はもう歩けると見せたくなったのです。
担当の理学療法士がついた初日、意気込んで立ち上がったら、3、4歩進んだところで気が遠くなりました。
様子を見にきていた主治医と10人の理学療法士が見ている前で、横にならせてもらうはめになったのです。
その後1か月、彼がどこへ行くにも、誰かが車椅子を引いてついてきました。
5か月後、彼はやっと家に帰りました。
初めて職場に顔を出した日、車椅子を返した日、松葉杖を捨てた日、それぞれに喜びと感謝がありました。
クリスマスに息子から、彼の進化を表す手作りの贈り物をもらった日は、涙をこらえられませんでした。
パリに旅行して、エッフェル塔にのぼるとき、行きは674段の階段を自分の足でのぼりました。帰りはエレベーターを使いましたが。
人からは、もうすっかり元通りですかと聞かれます。
元通りではありません。麻痺は消えても、できないことは今も残っています。
それでも彼は困っていません。もし今25歳で、世界レベルのゴルファーや長距離ランナーを目指しているなら、話は違ったでしょう。
でも、彼がなりたかったのは、世界一うまく人生を愛する人だからです。
立ち直る勇気をくれるほかのプレゼン
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制限があるからこそ素晴らしい物が生まれる:震えを受け入れる(TED)
何歳からでも遅くない。50歳で逆立ちに挑戦した女性の話(TED)
変えられるものは変え、変えられないものは手を放す
ブレイクはとっても前向きな人ですね。
つらい話をしているのに、深刻ぶったところがまったくありません。
彼が言っていた3つのステップ:
・落ちるときは体の力を抜く、抵抗しない
・現実を受け入れる
・進化する
この考え方は、怪我だけでなく、人生で挫折したり、つまずいたりしたときに、とても役立ちます。
考えてみると、私自身も知らないうちにこのステップを踏んでいました。
彼のような大怪我をしたことはありませんが、うまくいかないことは日常茶飯事です。
例えば、ブログを始めて10年以上経ちますが、その間にブログが壊れかけたり、アクセスが減って収益も大きく下がったり、といったことが何度かありました。
ブログが壊れかけたときは、いろいろやってみました。
原因はテーマ(ブログの見た目や動きを決めるひな型)にあったので、設定を変えて、なんとか元に戻したんです。本当に大変でした。
一方、アクセスが減ったときは、なすがままでした。
最初は大きなショックを受けていましたが、検索の順位は私が決められるものではないので、仕方ないなと考えるようになったんです。
やったのは、それまでどおり記事を書き続けることだけです。
最近のできごとで言うと、5月の終わりに始まった耳鳴りがあります。
このときも、最初はジタバタ抵抗しましたが、2週間ぐらいで方向転換しました。
耳鳴りに意識のチャンネルを合わせないようにしたのです。
音は今もしていますが、これは危ないことを知らせる音ではないと自分に言い聞かせているうちに、だんだん気にならなくなりました。
変えられない現実に抵抗しない。とりあえず受け入れる。
こうすれば、無駄なところにエネルギーを使わずに済みます。
抵抗するのをやめるのは、あきらめることとは違います。
テーマの設定は変えられるから変えました。検索の順位は変えられないから手を放しました。
自分でどうにかできることだけを努力するようにしました。
心が折れた私を救ったのは、娘が並べたお皿
私は子供の頃から歯が悪くて、あちこち治療しました。一旦歯が悪くなると、中年を過ぎてから大きな問題となって返ってきます。
20代のころ、虫歯で歯の根を抜く治療をしたところが、20年過ぎて炎症を起こしました。
この炎症を治すために、根管治療を何度かしました。
今でも覚えているのは歯茎を切開した手術です。
麻酔が切れた後すごく痛かったし、右の頬がリスのようにぷっくり腫れあがりました。
痛いのもつらかったのですが、それ以上に心が折れました。
そんなとき、まだ小さかった娘が、台所で家事を手伝ってくれました。
お皿を出して、食卓に並べたりしてくれたんです。
ちょっとしたことですが、本当にうれしかったし、救われました。
最悪な気分のときでも注意して周りを見ると、感謝できることってたくさんあると思います。
人生でつまずくときは、普段は見えていない、そういうありがたいことに気づくいいチャンスなのかもしれません。
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年を重ねるにつれて、去年できたことが今年はできない、という場面が増えていきます。
こんなときも、できたはずのことを取り戻そうとがんばるより、今、そばにある小さな楽しみを見つけて前に進みたいですね。














































