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毎日忙しくてイライラしている人、大きな不安をかかえている人に見てほしいTEDトークを紹介します。
タイトルは How Mindfulness Transforms Us(どんなふうにマインドルフネスが私たちを変えるか)
プレゼンターは Jo Pang (ジョー・パン)さんです。
彼は、マインドフルネスの専門家で、スラローム・コンサルティングという会社で、企業にコンサルティングをしています。
マインドフルネスは、簡単にいうと、今起きていることに意識を向けることです。
13分ほどの短い動画で、内容もいたってシンプルですが、マインドフルネス入門として、とてもいいプレゼンだと思います。
どんなふうにマインドフルネスが私たちを変えるか:TEDの説明
Jo speaks to everyday problems and how difficult it is to be happy – “Considering that everything dies, leaves or disappears”.
Come on a short journey to experience self-awareness and understand how powerful the practice of meditation can be to live a healthy/happy life.
ジョーは、日常の問題や、幸せでいることがいかに難しいか語ります。「どんなことも、死ぬか、去るか、消えてしまう」ので、難しいのです。
セルフ・アウェアネス(自分のことを知ること)の短い旅に参加してください。健康で幸せに生きるのに、瞑想はとても効果があることを理解してください。
収録は2018年の4月。動画の長さは13分半。字幕はありません。動画のあとに抄訳を書きますね。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
あなたは誰ですか?
「あなたは誰ですか?」
この質問にどう答えますか?
「本当の自分を生きていますか?」
私は、マインドフルネスのクラスを、この質問からよく始めます。
ペアになってもらい、1人が質問をし、もう1人が、3分で答えるワークをします。
1回めの質問に対して、多くの人は、外側の階層を答えます。仕事や趣味、友達のことなど。
どれも、とても大切なことですが、根っこの自分とは関係ありません。
そこで、また同じ質問をしてもらいます。2回めは、もう少し、幅広いレベルで答えてもらいます。
「なんでこんなクラスを受けることにしちゃったんだろ」とみな、ちょっと不安になっていますから、過去につらかったことや、不安なこと、苦しんでいることについて語ります。
それでも、ほとんどの人は、まだ、自分は誰であるのか、ちゃんと答えていないことに気づきます。
けれども、3度めの質問はしません。
自分が誰であるのか、その答えは、2つの階層のまだ下の、立ち入ったことのない場所にあり、それを言葉にするのは難しいからです。
瞑想で楽になった
私は、25年間、本当の自分をないがしろにし、苦しみながら生きました。
怖かったし、ほかの人を傷つけたくなかったし、自分のことを十分愛していなかったから変わることができなかったのです。
瞑想を始めるようになって、気分が楽になりました。
そして、本当の自分のせいで、痛みを感じるのではなく、本当の自分との関わり方のせいで痛みがあるのだと気づきました。
マインドフルネスを通して、2つの階層を越えたところにある、素の自分をそのまま受け入れることができるようになりました。
そのおかげで、想像もしていなかった平安や幸せを感じられるようになったのです。
きょうは、マインドフルネスがどんなふうに皆さんを変えるのか、4つの段階から成るフレームワークをお伝えします。
私の経験から学んだこと、そして、2500年以上に渡って人々が行っていたことがベースになっています。
■外側にあるものが人を幸せにするのではない
最初のステップは、マインドフルネスの入り口です。
恋人ができたとか、サウスウエスト航空(筆子注:ほかの航空会社とちょっと飛行機の乗り方が違います)のボーディングを体験することになったという興奮は、心の中の平安や幸せをもたらしはしません。
少しのあいだは幸せですが、そのうちその状態に慣れ、べつのものを探し始めます。どんなことも終わりがあるか、こわれるか、死ぬからです。
幸せでいるのが難しいのも無理はありませんね。自分と幸せのあいだに、いつも何かがあるからです。
たくさんの人が、生涯にわたって、何かが少なければ、何かが多ければ、何かがたくさんあれば、私は幸せになる、と信じ込んでいます。
瞑想にくる人々は、この「これが~でさえすれば(if only)」と考える、終わりのないサイクルから、一歩出て、今の自分の状態 - 自分は誰であるのか、いま自分が何を持っているのか – に向き合おうとしているのです。
大事なのは実践
実際にやってみましょう。
ピアノの弾き方を話したからといって、みなさんがピアノの名手になれるわけではありません。同様に、マインドフルネスの話をしたからといって、みなさんがマインドフルになったりはしませんからね。
脳はそのようには働きません。
神経の可塑性(neuroplasticity)があるので、脳は、使っていけば、そのように発達していきます。
瞑想を使ったマインドフルネスを実践すると、脳はよりマインドフルになり、思いやりを感じるようになりますよ。
だから実践が大事であり、マインドフルネスは哲学や魔法ではないのです。誰にでもできることです。
では始めましょう。まず目を閉じてください。心の中に意識を向けます。
自分が感じていることを感じます。この体の中にいること、このスペースにいること、いまこの瞬間にいることを感じます。
呼吸に意識を向け、息を吸って、はいて、また吸って、はきます。呼吸はいつも、この瞬間にあるので、いつでも、戻ることができます。
呼吸に意識を向け続けます。
集中をそぐ考えに気づくかもしれません。そんなときは、自分の考え(mind)が向かう先を見守り、呼吸に戻ります。
本当の自分がいる場所に戻ることを学んでください。
もう1回、呼吸に意識を向けて、目を開けてください。
気分がよくなった人もいるでしょうし、瞑想している時間を持て余していた人もいるでしょう。
平安を邪魔する考えに気づく
瞑想をしているときは、いま、この瞬間にいようとしますが、それを邪魔する、いろいろな感情や考えが頭に浮かぶでしょう。
そのうち、気持ちが落ち着いてくるのがわかります。
日常生活では、気が散ることが多いため、そういうものに気づけないのです。
邪魔をする思考や感情に気づき、そこから洞察を得て、手放します。するとスペースができます。
スペースがあると、より賢い場所から反応することを選ぶことができます。
夏の日の体験
ある夏の日、車の中がすごく暑かったことがあります。
自分のいらだちや、わきあがってくる不満に気づきました。ふだん瞑想をしているので、そういう考えに支配される前に、気づくことができたのです。
その数ヶ月前、そのとき体験していたのと同じ体験をするためにお金を払っていたことに気づく心の余裕がありました。
サウナと同じだと気づいたら、私のものの見方はすっかり変わりました。
自分の苦しみのもとは暑さではなく、その暑さに抵抗しようとする気持ちだと気づいたのです。
文句をいったりイライラする代わりに、不快や不満に気づき、その感情が通り過ぎていくのを見ていました。
自分の感情や思考にあまりふりまわされないようになると、本当の自分がいる3番目の階層により近づくことができます。
親切で賢くて思いやりのある自分のいる場所に。自分の本当の価値がある場所に。
本当の自分というものに親しんでいくうちに、感情や思考にからめとられる前に流すことができます。
穏やかでやさしい本当の自分を見つける
瞑想をし、静かでおだやかな気持ちになり、その場にいると、本当の自分が少しずつ見えます。喜び、思いやり、平安が見つかります。
この体験は自分とつながること、生きていること、深い喜びの1つです。
本当の自分に気づけるようになると、自分のすべての階層が変わっていきます。
ごく簡単な実践が、私の人生のいろいろな面を変えていくとは、想像もしていませんでした。食べ方、話し方、仕事や日々の習慣が変わりました。
こうした変化は、新年だから起きるのではなく、こんな自分は嫌だという気持ちや、これを持てはじぶんは幸せになれるといった思い違いから来るのでもありません。
変化は、自分の中の聡明で思いやりのある場所から来るのです。
本当の自分と折り合いをつけた
瞑想のおかげで、私は自分に対する思いやり(セルフ・コンパッション)と、洞察を得て、自分がトランスジェンダーであることに折り合いをつけました。
私の脳は、男性として成長しましたが、体は違うメッセージを送っていました。
家族に打ち明けたあと、母が私の子どものころの日記を持っていたことを知りました。
2歳のときから数年間、私は、両親に、自分は男の子だと言っていたのです。
両親が、「あなたはいい女の子よ」と私にいうと、私は、泣き出して「自分はいい男の子だ」と言いはりました。両親は私のことをとても頑固だと思ったでしょう。
日記を読みながら、はじめてショートヘアにしたことを思い出しました。まわりからどう思われているか感じたことや、数十年後には失ってしまった気持ちを。
「自分はいつもそうだったんだ」とわかったら、痛みを感じるところから変えるのではなく、痛みに対する思いやりからくる聡明な場所から、変えることが正しいのだと気づきました。
このとき、マインドフルネスは、自分はこうあるべきだ、と言われる前の、本当の自分に戻るための行いだとはっきりわかりました。
本当の自分に戻ることが、外側には見つけることのできない、深い階層の幸せをもたらしてくれます。
本当の自分は光り輝いている
タイにこんな昔話があります。僧侶たちが、新しいお寺に、とても大きな粘土の仏像を持っていくことになりました。
仏像を動かそうとしたら、思ったより重く、落としてしまい、粘土の一部がこわれました。そのとき、粘土の下に金色のものが見えたので、よくよく調べたら、その仏像は金でできていたのです。
その昔、ビルマの軍隊が、街に侵略してきたとき、仏像を守るために、粘土をかぶせたのです。
私たちも同じです。
生きているうちに、自分を守ろうとするために、本当の自分を何層もの粘土を重ねて隠してしまいます。
そのうち、自分が金であることを忘れます。
粘土は、過去の異物にすぎず、いまの自分とは違うことに気づきません。
マインドフルネスの実践で、粘土を捨てて自分の本質に近づいていきます。粘土や苦痛を、金である自分に変えるのです。
これは私にとってとても重要なことです。
粘土まみれだと、ストレスや戦い、苦痛に足をとられ、金である自分に近づくことができません。
ほかの人の苦しみのために何かできる思いやりのある自分に近づくことができません。
粘土でできた言葉や行動、つまり恐怖や痛みから生じる言葉や行動は大きな害を及ぼします。
トランスジェンダーの人のうち40%以上が、自殺しようとします。
そういう人間だからそうするのではなく、世界ではまだまだ自分の本質に目をむけず、自分自身や他人に対する思いやりを持てない人がいるからです。
これはこの社会がまだ解決法を学んでいない、不必要な痛みの1つです。
まずは自分に向き合う
ある日、世界中の政府が集まって、「さあ、いまから、より調和した開けた世界にしましょう」と決めるから、世界の平和や幸福が実現するのではありません。
小さなことから始めるべきです。
まず、自分自身の中で、実践し、積み上げ、それから運転中、ほかの車に割り込まれたときに、また実践します。
どんなときも、実践するチャンスです。このように世界と向き合うことができれば、次第に変えていくことができます。
//// 抄訳ここまで ////
■マインドフルネスに関するほかのプレゼン
暮らしにマインドフルネスを取り入れてより自由になる(TED)
悪い習慣を断ち切る簡単な方法(TED)マインドフルネストレーニングのすすめ。
幸せは自分の心の中にある、幸せをアウトソーシングしてはいけない(TED)
『必要なのは10分間の瞑想だけ』~物より心が大切です(TED)
いやな気分こそ大事にして、自分の感情とうまくつきあう(TED)
強い心を持つ3つの方法。考え方の悪習慣を手放せばメンタルを強くできる(TED)
セルフコンパッション(自分にやさしくする)の実践で人生を変える(TED)
外側にあるものを集めても仕方ない
先日、快適な暮らしをするために、高価なベッドが必要だと思ってしまう、という質問をいただきましたが⇒本当に必要なものと、欲しいだけのものを区別する方法を教えて。
外にあるものを買い替えていっても、幸福度はたいして変わらないと思います。
特に、すでに生活するうえでの基本的なニーズが満たされているときは。
物で心の平安を得ようとすると、パンさんの言っている「これさえあれば幸せになれる」と、次々と物を追い求める終わりのないサイクルに入ります。
外側にあるものは、物理的なものに限らず、社会的な地位や、人々の評価なども含まれます。
どんなに評価をされようとも、自分が満足できなかったら、つねに、「もっと、もっと」という気持ちになります。
外側にあるものを追い求めるのではなく、自分の中に入っていく。本当の自分、光り輝いている自分を見つける。
それが心の平安をもたらす鍵である。
そのために瞑想をしよう、というのがパンさんの伝えたいことです。
資本主義の世の中なので、「これがあれば、あなたはもっと幸せになれる」と売り手側はいいます。
ですが、私たち、もう十分、物を買ったり、集めたりしています。
物を集めて幸せになれるなら、とっくの昔にそうなっていたでしょう。
物集めはそろそろ卒業して、本当の自分でいられる時間や場所を増やしていくといいかもしれません。
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プレゼンの中に、Let it go というフレーズが出てきました。
この言葉、マインドフルネスやミニマリズムの話によく出てきます。
直訳は、「それを(どこかに)行かせる」ですが、意味は、文脈によって、 ほっておく、そのままにしておく、あきらめる、手放す、忘れる、こだわるのをやめる、といろいろです。
ようするに、手出しをせず、それが行きたいところに行かせる、関与しない、あらがわない、自然にまかせる、ということです。
何事も執着しすぎないほうが、おだやかに生きられます。