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自分の描いている人生プランを親に納得させる方法を教えてください、という問い合わせをいただきました。
シンプルライフやミニマリストに全然関係ない質問ですが、この記事で回答を試みます。
まずメールを紹介しますね。エルさんからです
母を説得するにはどうしたらいいですか?
件名:はじめまして。いつもブログを読ませていただいております。
私は山形県出身で、東京で一人暮らしをする大学一年生なのですが、将来の親の介護や、実家に帰って暮らすことについて、まだ先のことだということは十分わかっておりますが、今から考えてしまっています。
私は将来、教員になりたいと思っていますが、自分の希望としては東京で就職し、一生一人暮らしをしたいです。
親の老後は、多少高額でも構わないので、きちんとした施設に入ってもらい、金銭面で援助をするのが理想です。
わたしは一人っ子なのですが、親の介護はしたくありません。
夫の親の介護はもってのほかなので、結婚もしたいと思いません。子供は好きですが、自分の子となると育て上げる自信がないので欲しいと思いません。その分、自分と親のために貯金をしたいです。
親は私のことを大切に育ててくれていますが、進路に反対が多く、それをずっと引きずり、何かあるたびにいつも進路選択のことで叱られています。
そして、家族が喧嘩をするところを幼い頃からたくさん見せられてきたので、家族を作ることにあまり良い印象を抱くことができません。
ただ、現実はそううまくいかず、母は、わたしが高校生の時までは、どこで就職しても、どこにお嫁に行っても構わないと言っていましたが、大学生になってからは、実家に戻って来て欲しいと言うようになりました。
そして、介護施設では、いくらプロとはいえ、入居者を怪我させてしまうような事故も発生していると聞いたらしく、施設入居は考えていないようです。
私はせっかく生まれて来たからには、時間はできるだけ自分のために使いたいです。自分で稼いだお金を親のために使うことは嫌だとは思いません。むしろ、それで介護生活が免れるのなら、そうしたいです。
父はあまり私に介護して欲しいという気持ちはなさそうなので良いですが、就職しても1人で暮らしたいこと、将来は自宅で介護しないこと、この2点について母を説得するにはどうしたら良いでしょうか?
親子関係が険悪にならない方法はありますか?
こんなに大事に育てられて、こんなことを考えている私はひどい娘だと日々反省しておりますが、家族に労力や時間で尽くすことがもともと好きではない私が介護することは、最終的には親に失礼になると思うのです。
そして、「自分たちは最後までこの子の幸せを願って生きた」と思ってほしいです。迷惑をかけて申し訳ないという気持ちにはなって欲しくないのです。
私の都合のよいわがままでしょうか。
ご意見よろしくお願いします。
エルさん、メールありがとうございます。
たまにエルさんのような若い方から、相談をもらうことがあります。みんな、ずっと先のことを心配しています。
先日も、東京で1人暮らしをしている23歳の方(パートをしていて生活がギリギリ)から、将来つきたい職業があるが、その仕事につくための貯金が貯まるのか不安です、という質問をいただきました。
結婚できるかどうか心配な人、結婚したくないから、ずっと1人でいたいという人からもメールをもらうことがあります。
皆さん、まだ何も起こっていない前から心配しています。先のことを考えすぎじゃないですかね。
エルさんは、いつも私のブログを読んでくださっているのですよね?
それならば、私が常日頃、ブログで主張していることをご存知だと思います。すなわち
- 他人の思考や行動はコントロールできない
- 未来に起こるできごとはコントロールできない
- 自分や周囲の状況が変わらないと思ってはいけない⇒人は変わり続ける。未来の自分に対する心理:ダン・ギルバート(TED)
- 過ぎ去った過去を悔やんだり、どうなるかわからない未来のことを心配するより、いまの生活を充実させることに尽力したほうがいい⇒マインドフルネスで実現する。今この瞬間を生きて幸せになる4つの方法。
- 相手のある人生相談に的確に答えるのは難しいため、送ってこないでほしい
- 人生相談の回答はすべて以下の2つの記事に書いている
⇒この先どうしたらいいのかわからないと悩んだらこれを読んでください。
⇒人生で解決すべき問題の優先順位のつけ方。何から始めたらいいのかわからない人へ。
以上のことを納得しているという前提で、進路に関して、親を説得するコツを6つ紹介します。
1.説得を始める前に良好な関係を築いておく
このメールだけでは、エルさんとお母さんの関係がよくわからないのですが、説得を試みる前に、できるだけ良好な関係を築いてください。
絆が深ければ、親は子供がかわいいので、たいていのことは許すのではないでしょうか?
進路選択のことで、よく叱られるそうですが、それはいったいなぜなのでしょうか?
具体的に、何を叱られているのでしょうか?
いまの大学に進学したことを「まずい選択だ」と言われているのでしょうか?
それとももうすでに、卒業後の就職先について、もめているのでしょうか?
しかし、卒業後はすでに成人しているわけですから、自分で自由に職業を選べばいいと思います。もちろん、親に賛成してもらい、応援してもらうほうが気分はいいですが、原則、自分の自由にできるのでは?
ただし、経済的に自立する必要はあります。
2.説得したい内容について、親になじんでもらっておく
突然、親に話を持ちかけず、その内容について、今から、ご両親に情報を与えておいてください。
たとえば、ある日突然、外国人の恋人ができたらから、結婚して外国に行く、と親に言うと、親はびっくりしてしまい、「なんですと? そんなの絶対反対よ!」と拒絶反応を起こす可能性があります。
それよりも、前前から、恋人を親に紹介し、とてもいい人だとわかってもらい、結婚するかどうかはわからないけど、もしかしたら、そうなるかもしれない、そうなると外国に行くこともあるかもしれない、ということを、親に知らせておくわけです。
エルさんの場合、卒業後は、東京で就職して1人暮らししたい、という自分の気持ちをご両親に軽く話しておくとよいです。
ただ、介護のことは、今話すタイミングじゃないと思います。タイミングについては次の3番で書きます。
3.できるだけベストのタイミングに説得する
交渉ごとは相手が機嫌のよいときや、心の余裕があるときにすべきです。
ご両親がほかのことで、いっぱいいっぱいのときは、しないほうがいいです。
また、交渉にふさわしい時期というものがあります。
エルさん、まだ19歳ぐらいですよね? ということはお母さんは40代~50代でしょう。この年代は、どちらかというと、介護する側であり、自分が介護されることなんて、あまり考えていないと思います。
親の介護をするのは、まだ30年ぐらい先のことですから、今は説得するタイミングではないのでは? それともお母さんはすでに、病気かなにかで、介護が必要な状態なのでしょうか? 実際、介護施設について、話があったようですが。
お母さんの側に心の準備ができていないと思われますが、いかがでしょうか。
それと、エルさんだって、30年後もいまと同じ気持ちでいるとは、まず考えられません。
エルさんは、教職につきたい、ずっと1人暮らししたい、とメールに書かれていますが、来年の今頃も、そんなふうに考えているとは限りませんよ。
自分の気持ちも、周囲の状況もどんどん変わるので、あまり物ごとを決めつけるべきではないと思います。
「親の介護なんてまっぴらごめん」と思って、遠い未来のことを心配しているあいだに、お母さんかお父さんが突然病気になって、いともあっさり亡くなってしまうことだって、ありえます。
4.なぜそうしたいのか、説得力のある理由を伝える
なぜ、卒業後は東京で1人暮らししたいのか、なぜ自宅で介護をしたくないのか、それぞれ、説得力のある理由を添えて交渉してください。
メールには、親の介護をしたくない理由は書かれていますが、1人暮らしをしたい理由は書いてないですね。
きっと何かあるのだと思いますが、ご両親が納得できる理由を提示してください。
エルさんが介護をしたくない理由としてあげられている
1.)自分の時間は自分だけのために使いたい
2.)家族に労力を注いだり、時間を使うことが嫌いな人間が、家族の介護をするのは相手に失礼にあたる
3.)親には、「自分たちは最後までこの子の幸せを願って生きた」と思ってほしい。迷惑をかけて申し訳ないという気持ちにはなって欲しくない。だから介護はしたくない。
この3つ、私には全く説得力がありません。
まず、1番について。
なぜ、自分の時間は自分だけのために使いたいのでしょうか? 家族と一緒にご飯を食べたり、出かけたりするの、嫌いなんですかね。
この世界に1人だけで生きている人間なんていませんから、他人のために自分の時間やリソースを使うのを避けていると、結局、幸せにはなれないんじゃないでしょうか? あえて、不幸せになる道を行こうとする、その気持がわかりません。
2番について。
介護をするとき、心からやりたくて介護しなければ、失礼だからやるべきではない、という意味ですか? 介護が楽しくてやっている人なんていないと思います。でも、自分の大事な親だから介護するんじゃないですか?
なぜ親が病気になったとき、看病したくないのでしょう? その時間、別の誰かに看病してもらい、自分はほかのことをやっていても、楽しくないと思うのですが。
エルさんは、親を大事に思う気持ちとか、親孝行したいという気持ち、ないんですか?
3番について。
子どもに介護してもらった親が、必ずしも「迷惑かけてごめんね。本当に申し訳ない」と思うとは限りません。
もしかしたら、「この子がいてくれてよかった、私は幸せ者だ」と思うかもしれません。実際、私は娘が私の手助けをしてくれるとそう思います。
お父さんもお母さんも、人生の最後の時間を子供と一緒に過ごすことができてすごくうれしいかもしれません。
それに、認知症が進んでいれば、誰に介護されているかとか、自分が病気だとか、そんなこともわからないでしょう。
エルさんは、「介護とはこういうもの」という強い決めつけがあるように思います。
さらに、親がどう思うかは親の自由にさせてあげるべきです。繰り返しますが、他人の思考はコントロールできないし、コントロールしようと思うべきでもないのです。
エルさんだって、卒業後は1人暮らししたい、親の介護はしたくない、という希望があるわけですよね。そうした自分の考えを親に尊重してもらいたいと思っています。
それならば、エルさんも、ご両親がどんなふうに考えるかは、ご両親の好きにさせてあげるべきではないでしょうか?
最低でも、このような疑問や問いかけに答える用意をして、説得を始めてください。
5.親にとってのベネフィットも提示する
ベネフィットとは、利益やメリットのことです。
自分にとって都合のいい話ばかりではなく、こうすることが親にとっても恩恵があるのだ、ということを知らせてください。
すると説得しやすくなります。
詳しくはこちらをお読みください⇒人を説得する方法はあるか?断捨離を邪魔する家族との対話の進め方。 「ステップ5:相手にとってのメリットを強調」のところです。
「私がお母さんの介護をしないと、お母さんは、最後まで私の幸せを願って生きられるよ」なんてのはベネフィットにならないと思いますが、いかがでしょうか?
また、「介護をしない代わりにお金を渡します」というのもベネフィットにならないでしょう。実際、いま、お金はないでしょうし、仮にあったとしても、親にとっては、「手切れ金を渡された」と思うだけではないでしょうか?
もしベネフィットを何も提示できない場合は、交換条件を出す、という方法もあります。たとえば、東京で1人暮らしを続けることと、介護をしなくてもいいことを許してくれたら、これから月々30万円仕送りします、とか。
これが交換条件になるかどうかはわかりませんが、エルさんは、ご両親にお金以外は渡したくないのですから、今後は、ご両親に経済支援をすることぐらいしかできないですよね。
6.反対されても根強く交渉する
以上のポイントに気をつけて、丁寧にお願いし、反対されたら、そこであきらめず、何度も交渉してください。
もちろん、常に説得力のある理由や、相手にとってのベネフィットを強化するべきです。
なお、親子関係が険悪にならない方法をお探しですが、表面的な波風の立たない方法を模索するより、自分の気持ちを率直に伝えるほうがよいと思います。
それでお母さんが怒ったり、ショックを受けたとしても、それはそれで仕方がないです。何ごとも犠牲はつきものです。
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率直に言って、私には、エルさんが、なぜそんな先のことを心配しているのかよくわかりません。
人生はこの先、何があるかわからないから、おもしろいんじゃないでしょうか? 何もかもが自分の筋書き通りに運んだら、つまらないですよ。
その筋書きが、ひじょうに狭い視野のもとで、書かれたものであるなら、尚さらです。