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集中力が続かない人におすすめのTEDの動画を紹介します。
タイトルは、How to Get Your Brain to Focus (脳をフォーカスさせる方法)。
講演者は、生産性の研究をしている、 Chris Bailey(クリス・ベイリー)さんです。
脳を集中させる:TEDの説明
The latest research is clear: the state of our attention determines the state of our lives. So how do we harness our attention to focus deeper, get distracted less, and even become more creative? Chris Bailey, author of the recent book Hyperfocus, talks about how our ability to focus is the key to productivity, creativity, and living a meaningful life.
最新の研究ではっきりしていること:私たちの集中状態が、人生の状態を決めます。
では、どうしたら、もっとしっかり集中できるでしょうか? あまり気が散らず、クリエイティブにすらなる方法は? Hyperfocusの著者、クリス・ベイリーは、集中力が、生産性、創造性、さらに意味のある人生の鍵だと語ります。
収録は2018年12月、動画の長さは16分。日本語字幕があるので、軽めの抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ベイリーさんは編み物が好きなんですね。
モニター漬けの生活
数年前、自分の行動に、居心地悪さを感じました。
朝起きたその瞬間から、夜寝るまで、モニターばかり見ていることが気になったのです。
朝、私を起こすのはスマホです。そのまま私はベッドに座って、料理のビデオやインスタグラムをチェックしつつ、いろいろなアプリを行ったり来たりします。
朝食を作る時間になると、ベッドから出て、オムレツを作りながら、隣に置いたiPadを見ています。仕事の時間になれば、これまた、いろいろなモニターを見ながら作業。
重要な仕事をしながらも、あっちの画面、こっちの画面とチェックするのに忙しく、絶え間のない通知音に邪魔されます。
もっとも邪魔をする悪魔のようなデバイスはスマホです。私はほかのどのデバイスよりも、スマホに無駄に時間を使っていました。
そこで、1ヶ月間、スマホを使うのをやめる実験をしました。
スマホを使わない実験
1日30分だけあれば、用事はすむだろうと考え、その30分の間に、スマホでしなければならないことをするようにしました。地図を調べたり、母に電話したり、音楽やポッドキャストを聞いたり。
実験中、どんなことが起きるか観察しました。
前より刺激の少ない生活に慣れるまでに、1週間、かかりましたが、いったん慣れたら、いろいろ興味深いことが起こりましたよ。
まず、私のアテンションスパンが長くなりました。実験する前より、比較的、楽に、集中状態に入れるようになったのです。
さらに、ぼんやりしているときに、いろいろなアイデアが浮かぶようになりました。
将来について、いろいろな計画や考えを思いつくようになったのです。1つのデバイスを使うのをやめただけで。
技術と集中力の関係に興味を持つ
数年前にしたこの実験がきっかけで、気を散らせるものが多い現代社会で、どうしたら集中できるのか、しっかり研究することにしました。
何百ものリサーチペーパーを読みましたし、専門家に話を聞き、自分を使って、さらにいろいろ実験しました。
人の集中する能力に、技術(テクノロジー)はどんな影響を与えるのか?
これを知りたかったのです。
アテンションスパン
リサーチによると、パソコンで仕事をしているとき、とくに、そばにスマホを置いているとき、私たちが1つのことに集中していて、別の何かに意識を向けるまでの時間は、たった40秒です。
Slack(スラック、ビジネス向けのチャットをするアプリ)なんかを開いているとこの時間は35秒になります。
アテンションスパンが短い原因は、気が散るからではありません。気が散るのは、もっと根深い問題の症状にすぎないのです。
気が散る根本的な理由は、脳が過剰に刺激を受けすぎた状態でいるからです(overstimulation)。
いつも刺激をたくさん受けていると、脳は、気を散らすものを求めます。脳は、ソーシャルメディアやメールなど、さまざまな情報の断片が、大好きなのです。
ノヴェルティバイアス
私たちにはノヴェルティバイアスというバイアスがあり、目新しいものを得ると、ドーパミンが出て、楽しい気分になります。
気が散ることを求めてしまうだけでなく、何か新しいものを見つけることを、脳が奨励するのです。
これは、今の私たちの心の状態です。
こんなふうに、過度に刺激を受け続けた状態のまま、いろいろなデバイスの刺激を受けています。
このことを知って、別の実験をしてみることにしました。
スマホをやめて、アテンションスパンが伸びたから、もっと刺激の度合いを下げたらどうなるのかな、と思ったのです。過度に刺激を受けている状態から、刺激があまりない状態にしてみました。
退屈する実験
刺激があまりない状態とは、退屈している状態です。
意図的に退屈するために、ブログの読者に、もっとも退屈なことは何か聞いてみました。そして1日1時間だけ、すごく退屈になってみたのです。
たとえば、
初日:iTunesの利用規約を読んでみた。
4日目:エア・カナダの手荷物受取所に電話し、担当者が出るまで待った(ずっと保留状態)。
19日目:円周率の最初の1万桁にあるゼロの数を数えた。
24日目:1時間、時計をじっと眺めた。
ほかに27の退屈なことをしました。
退屈したら起きたこと
すると、スマホをやめた実験をしたときと同じことが起きたのです。
刺激の少ない生活に慣れるのに1週間かかりました。
休暇を取って、完全に静かな気分になれるまで8日かかるというリサーチがありますが、今は、もっと長い休暇が必要ですね。
そして、アテンションスパンが伸びました。気を散らすものが減ったからではなく、脳が過度に刺激を受けない状態(あまり興奮していない状態)だったので、気を散らすものを、求めたいと思わなかったからです。
もっとうれしかったのは、いろいろなアイデアや計画を思いつくようになったことです。これは、前より、ぼーっと思い巡らす機会が増えたからです。
トールキンの言葉に、「さまよい歩く者が全員、道に迷っているわけではない」というのがありますが、集中についても、これと同じことが言えます。
すごくいいアイデアを思いついたときのことを考えてみると、それは、特に集中していなかったときだと思います。
シャワーをあびている時とか。
頭の中に渦巻いていた、いろいろなアイデアが結びついて、思いもよらなかったことを思いつきます。
ぼんやり思い巡らすモード
意図的に思考をさまよわせるモードを、私は、『集中散らばしモード』(scatter focus)と呼んでいます。
このモードにいるとき、ふだんより、いろいろなアイデアや計画を思いつくと、リサーチでわかっています。
何かに意識を向けるのをやめると、その意識はたいてい、3つのことを考えます。
過去について、現在について、未来について、この3つです。
しかし、実際は、過去についてはそんなに考えません。過去について考えるのは全体の時間の12%ほどです。
現在については、28%。メールを書いていてうまい言葉を思いつかないとき、そのへんを歩いてみると、脳は別の角度から、この問題を考えて、いい言葉を思いつきます。
未来について脳が考える時間は、ぼんやりしている時間の48%です。だから、朝、シャワーをあびているときに、これから始まる1日について考えたりするわけです。
これは、脳の未来に対するバイアス(prospective bias)です。思考がぼんやり散歩していると、これが起きます。
12%、 28%、 48%を足しても100%になりませんが、残りの時間は、時間に関係があることは考えていません。
思考を散歩させる
いずれにしても、思考をぼんやり散歩させてみてください。
簡単だし、集中も必要ありません。
私は編み物をしているとき、この状態になります。
編み物が趣味なので、飛行機でも、電車でも、ホテルでも編んでいますが、気持ちが落ち着き、いろいろなアイデアが浮かびます。アイデアをメモできるように、隣にメモ帳を置いています。
長めにシャワーをあびるのもいいし、お風呂に入るのもいいでしょう。オフィスで会議室に行くとき、スマホを持たずに歩いてもいいです。列の中で待つとか、マッサージしてもらっている時に、ぼんやりするのもいいですね。
するとクリエイティブになります。思いついたアイデアを書き留めるために、メモ帳を手元に置いてください。
リサーチした結果、集中するために、基本的なことを2つ変える必要があるとわかりました。
もっと余白をもたせる
世の中では、もっとがんばろう、と言われますが、がんばってはいけません。
私は怠け者ですが、だからこそ、いろいろなアイデアが浮かぶと思っています。
これ以上、予定を入れなくてもいいのです。もう充分入っています。むしろ、やりすぎています。やりすぎているから、思考が散歩する余裕がありません。
悲しいことです。
だって、ぼんやり考えごとをしているときにこそ、いい計画を思いつくのですから。
もっとスペースが必要です。
ハイウエイで車がうまく流れるのは、車が速く走るからではありません。車間距離が充分あるから、交通がスムーズに流れるのです。
私たちの人生や仕事も同じです。
脳に刺激を与えすぎない
気が散るから、集中できないと考えるのは誤りです。気が散るのは、脳が、常に過剰な刺激を受け、興奮しているからです。
2週間、こんなチャレンジをしてください。
脳の興奮度を少し下げるチャレンジです。そして、自分の注意力がどんなふうに変わるか、観察してください。
どんなふうに集中できるようになるか? どれだけアイデアや計画が思い浮かぶか?
デジタル機器に時間を無駄に使うのを防ぐアプリがたくさんありますので、そういうものを利用しましょう。
すると、自分の時間の使い方がわかるし、デバイスに時間を使いすぎなくなり、もっとアイデアが浮かびます。
ネットを断ち、退屈を見つける
毎晩、つながりを断つ習慣をつけましょう。
私は、夜の8時から朝の8時までは、全くインターネットを使いません。
また、婚約者といっしょに、毎週日曜日を、テクノロジーの安息日にして、デジタルな世界とのつながりを断ち、リアルの世界とつながっています。
1日1時間も退屈する必要はありませんが、1日に、数分でも、退屈な時間を見つけてください。
ソファになって何もせず、思考がどんなふうに散歩するか、みてください。ぼんやりしているあいだに、すばらしいことを思いつきます。
集中の状態が人生を決める
集中する方法についていろいろ調べた結果、わかったことは、集中の状態が、人生の状態を決めるということです。
いつも気が散っていたら、過剰な刺激を受ける脳ができあがり、さらに、気が散る人生になります。すると、どっちの方向へ行ったらいいのかわからなくなり、焦ってしまいます。
しかし、刺激のレベルを下げれば、気持ちはもっと落ち着き、生産性や集中力、創造力が向上します。しかも、もっといい人生になるのです。
//// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
bloop 電気機器の発する短く低い雑音
attention span アテンションスパン。集中力が続く時間。
novelty bias ノヴェルティバイアス。新しいものを好み、探し求める心的傾向。私は、「新しもの好きバイアス」と呼んでいます。脳が買い物を好むのは、ノヴェルティバイアスがあるからでしょうね。
prospective 予想される、将来の
クリス・ベイリーさんの著書、Hyperfocusです。
別の著書は、翻訳版が出ています。
この本の内容のTEDの講演を、以前記事にしています⇒生産性をあげるためのより人間的なアプローチ:クリス・ベイリー(TED)
退屈やスマホに関するほかのプレゼン
いかに退屈が、すばらしいアイデアをもたらしてくれるか?(TED)
静かにたたずむことが幸せにつながる~ピコ・アイヤー(TED)
ソーシャルメディアはやめなさい:カル・ニューポート(TED)
脳を落ち着かせる
私たちがなかなか集中できないのは、気が散るものがあるからというよりも、脳が常に興奮状態にあるからというプレゼンをお届けしました。
私は、、常に刺激を受けて、興奮レベルの高い脳は、赤くて、まるで、脳全体に炎上が起きているイメージをもっています。
常に興奮しているということは、さまざまな神経回路で、火花がばちばち、起きているということですから。
これを穏やかな緑色や涼し気な青にする、というイメージを持つとわかりやすいのではないでしょうか?
私も、一時期、すぐに、スマホを手にしていたときがありましたが、スマホの危険性を学び、実際に、自分でも、用もないのに、クセで手にとることに気づいたから、今はむやみやたらには使わないようにしています。
スマホは文字が小さいから、読みにくいですし。この点、老眼が幸いしています。
いったん、スマホに、ソーシャルメディアやニュースメディアのアプリをダウンロードすれば、開けるたびに、どこまでもタイムラインが続きます。
そこに出てくる新たな情報を求め続けることが、クセになってしまうと、時間はなくなるし、疲れるし、集中できなくなるし、目が悪くなるし、ろくなことがありません。
睡眠時間も含めて、スマホをまったくさわらない時間を作ることを意識するといいでしょう。
スマホで、何か新しいニュースをチェックすることより、まともな脳で生きていくほうがずっと重要ですから。
まあ、大人は自己責任ですが、まだ脳が成長している段階にある小さな子どもやティーンエイジャーへのスマホの影響を考えると心配になりますね。
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部屋に物がありすぎるのも、脳への過度な刺激になるので、物をためこむのはほどほどにしたほうがいいですよ。
仕事中のデスクも、目の前の光景もすっきりしているほうが、私は集中できます。
私がよくブログのネタを思いつくのは、歩いているとき、スロージョギング、ミニトランポリンしているときです。
お風呂に入っているときは、ブログのことなんて考えていないのに、突然、あそこ、間違った漢字を書いてしまったかも? とか、あそこ、変だったかも、と誤字脱字やミスに気がつきます。
おもしろいですね。