簡素な暮らしの家事手帖

ミニマリズムの参考書

村川協子「簡素な暮らしの家事手帖」の感想。老いてからでは間に合わない

村川協子さんの「簡素な暮らしの家事手帖」を読みましたので、感想をお伝えします。サブタイトルは「老いを心豊かに生きる知恵」となっています。

2011年の春に大和書房より出版された、わりと小ぶりのうすい本です。全部で206ページですし、活字の組みも大きいのですぐに読めました。

著者の村川協子さんは、婦人之友社の「友の会」の講師として300回以上講演した方です。



友の会とは?

「友の会」は1930年に婦人之友社の羽仁もと子さんの考え方に賛同した主婦が集まって作った団体です。要するに、愛読者が作った会です。「全国友の会」というのが正式な名前です。

みんなで情報交換しながら、家計簿の付け方や家事を学んでいるようです。

羽仁もと子さんは、日本初の婦人女性記者で、1903年に婦人之友という雑誌を作った人。明治36年です。ご主人の吉一さんと一緒に作りました。

翌年の1904年に日本で初めての「家計簿」も発行し、予算を立てて、家庭経済をまわすことの重要性を、全国の主婦に伝えました。

それまで家計簿はなかったみたいですね。大福帳みたいなのにつけていた人はいたかもしれませんが。現在もこの家計簿は発行されています。聞くところによるとすごく項目が多いらしいです。

羽仁もと子さんの思想は、「よい家庭はよい社会をつくる」です。

私は婦人之友社から12年前(2003年)に出版された「シンプルライフをめざす基本の家事」という本を持っています。その本には、友の会の会員は、2万5千人とあります。10年前ですから、今はもっと増えているでしょうね。

この本についてはこちらの記事で少し説明しています⇒鍋とフライパンを公開~料理が苦手な節約系ミニマリスト主婦の場合(写真つき)

さて、そんな、家計簿をつけたり、家事をするのが趣味みたいな人たちが集まっている「友の会」。村川協子さんは、結婚してすぐにこの友の会に入会。その後、講師になったわけです。カリスマ主婦と呼んでいいと思います。

なかなか一般人には真似できません。村川さんの言うようにできなくても落ち込むことはないです。

村川さんはもう1冊本を書いています。PHP研究所から出ている「心をこめて手早くできるアイデア家事の本」です。

この本のレビューはこちらに書いています⇒村川協子の「アイデア家事の本」で学んだ家事の効率化の3つの柱~ミニマリストへの道(24)

2005年に出た本なので、当時著者は75歳です。失礼な言い方になりますが、この本はとても75歳のおばあさんが書いているとは思えませんでした。

かなりシステマティックな家事が展開されている本です。

私はどちらかというと、前作のほうが好きです。今回の本は、前作の延長線にあるので、「そこまで驚かなかった」と言ったほうが正しいかもしれません。

「簡素な暮らし」ではないと思った

この本を書いたとき、村川さんは81歳。ご主人は91歳です。

75歳当時と生活はそんなに変わっていませんが、ご主人が90歳の時、免許を返還したり、ご自身が、ちょっと病気になられたとあったので、多少、スピードダウンした印象を受けました。

前作では、いかにも効率的にバリバリ家事をしていましたが、もう少しゆったりと生活を楽しんでいる様子が感じられます。

前作を読んだ時は、私は家計に全く興味がなく、読み飛ばしてしまったので記憶がないのですが(すでに本は断捨離済み)、今回は家計管理について丁寧に読みました。

第1章に毎月の予算があり、各項目の内訳や、著者の工夫やポリシー、節約のしどころなどを読むことができます。

本のタイトルは「簡素な暮らし」ですが、個人的に簡素とは思えず。

予算の合計は書いてないのですが、食費、光熱費、住居費、衣服費、保険・衛生費、娯楽費、教養費、特别費・交際費、公共費をすべて足し算すると合計21万1千円です。

持ち家で、住居費は3万円、光熱費は2万円です。築36年なのでリフォーム代がかかるそうですが、家賃がないのは大きいです。村川さんは花が好きなので、住居費に1ヶ月3千円のお花(生花)代を計上しています。

たぶんこれ以外に、予期せぬ出費のために予備費も計上していると思いますが、それは書かれていませんでした。

「特别費の4万円にに入っているのかな」と思ったのですが、これは孫やひ孫へのプレゼント代です。お子さんが2人いて、孫が5人、ひ孫が3人。誕生日、入学祝い、卒業祝い、就職祝い、結婚祝いをするのが「本当に楽しみ」と書かれています。

1番高いのが食費で4万3千円です。

簡素な暮らしの家事手帖

食費はけちらない。ご飯もたくさん食べる


村川さんは食べものは日々の健康に1番大事だと考えているので食費はけちりません。前作でも思ったのですが、著者はもともと食べることや料理が好きなので、この項目の費用が増えているのだと思います。

実際、「何よりも食事を大事にしてきた」と書いているし、最近の粗食ブームには批判的です。

そのせいか、ご夫婦とも健康のようです。

私は料理が嫌いだから、西式甲田療法とかローフードのほうに行ったと思います。

西式はともかく、料理好きの人はローフードダイエットだと腕をふるうチャンスがありませんから。

私はどちらかというと、「あまり食べるより食べない方が健康にいいのではないか」と思うほうです。ですが、料理好きでたくさん食べても、村川さんのように新鮮な素材から手作りすることを心がければ健康でいられるのかもしれません。

普段着はすべて手縫いしたり、ご主人の散髪は奥さんがやったり、パンは全部ご主人が焼いたりと、節約(というより楽しみなのですが)すべきところはして、使うところには使っています。

メリハリのきいた家計ですが、基本的に「豊かな暮らし」だと思うのは、私が貧乏すぎるからでしょうか?





老いてからでは全く間に合わない

この本を読んで、1番強く思ったのは、「こういう余裕のある暮らしは、80歳になっていきなりやろうとしても無理だ」ということです。

毎月の家計に21万計上できて、これに家賃が入っていないのですから、かなり豊かな生活です。

今のご老人は、たくさん年金がもらえているのかもしれません。

実際私の母も、持ち家で、自分の年金プラス父の遺族年金だか何か知りませんが、それをもらっていて筆子家よりずっと豊かに暮らしています。

父は仕事中の事故で亡くなりましたから、労災保険が適用されました。

村川さんは友の会の講演の仕事はありましたが、基本的に専業主婦です。

国民年金に入っていたかもしれませんが、メインの収入はご主人の年金だと思われます。ご主人は学校を卒業して、1つの会社に定年まで勤めたそうなので、わりと受給額が多いのでしょう。

サラリーマン時代に比べたら、減額したと書かれていますが。

村川さんも、昔は、家を建てたときの費用(2回建てています)と、お子さん2人の教育費の調達が大変だったそうです。当時どこに住んでいたのか知りませんが、お子さん2人を東京に遊学させています。

また、ご主人は長男なので、両親やほかのきょうだいを物心両面で支えた時期が長かったとも。

さらにご主人の両親を自宅で介護した話も書かれていました。

81歳になるまでに、それなりに苦労があったようですが、今は月21万の予算が計上できる、わりと余裕のある暮らしなのです。

著者は、前書きで、ご主人が勤めているころは、収入も多かったが、支出も多かった。将来のために積み立てる必要もあったが、年金の収入のみになったら、生活は簡素になって、わかりやすくなったと、述べています。

「もう何か買い揃える必要もなく、自分の好きなものや、本当に価値のあるものを買い、落ち着いた暮らしができる」、と。

実際、本を読んでみると、自分らしさを大切にしながら生活を楽しんでいる様子です。

これはある種の理想の老後ですね。

しかし、結婚してすぐに友の会に入って、家事や家計の切り盛りを徹底的に研究し、毎日よりよい家事や、家庭経済の切り盛りに精進してきたから、今があるのだと思います。

ご主人がずっと安定した職についていたことも大きいです。

定年後は幸い住む家があり、子供たちも独立してそれぞれの家庭を営んでいることもあって、何かのためにお金を用意する必要がない状況になりました。本を買ったり、音楽会に行ったり、旅行したりと、好きなことにお金を使うことができるようになりました。

シニアライフこそ、本当に好きなことが楽しめ豊かに暮らせる時期ではないでしょうか。この本が心豊かな暮らしへのきっかけになれば望外の喜びです。

こう、村川さんは書いています。

しかし、こうしたシニアライフを送りたかったら、81歳のとき、この本を手にしても全く間に合いません

村川さんは、この本を自分と同じ世代の人に向けて書いてはいないと思います。友の会の後輩たちに向けて書いているのではないでしょうか?

実際、今、老後貧乏にあえいでいる人には、この本は、ほとんど役にたたないかもしれません。それどころか、自分がみじめになって、この本をそのへんに叩きつけたくなる可能性もあります。

私は80歳ではありませんが、かなり敗北感を感じました。

40代や50代の人こそ、この本を読んで、健全な家計管理の大切さや、ものを減らしてスッキリ暮らすことのメリットを学ぶべきです。

まだ間に合います。

心が折れた私も、「もう一度読んでみよう」と決意したところです。





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