コインを乗せた手

TEDの動画

経済的依存の本当の代償(TED)

自分のお金は自分で管理したほうがいいと教えてくれるTEDの動画を紹介します。

タイトルは、The true cost of financial dependence(経済的依存の真の代償)。

会計士のEstelle Gibson(エステル・ギブソン)さんのスピーチです。

邦題は、「経済的依存による本当の損失」



経済的依存の代償、TEDの説明

Giving up control of your finances — voluntarily or otherwise — can leave you powerless and, in some cases, confined to a cycle of abuse. In this personal talk, accountant Estelle Gibson shares her own story of recovering from financial dependence and provides actionable advice to empower others who desire the freedom that comes with being responsible for your own money.

自分の財産の管理を放棄することは、自主的であろうとなかろうと、あなたを無力にし、場合によっては、虐待のサイクルに閉じ込めてしまいます。

この個人的なトークで、会計士のエステル・ギブソンは、経済的依存から抜け出した自身の体験を語り、実現可能なアドバイスで、自分のお金に責任を持つことから得られる自由を求めている人々を力づけてくれます。

収録は2019年の10月。動画の長さは8分36秒。日本語字幕もあります。

☆トランスクリプションはこちら⇒Estelle Gibson: The true cost of financial dependence | TED Talk

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

簡潔でわかりやすいプレゼンです。





父が一人で家計を管理していた

私の家では父が、お金の管理をすべてしていました。

ところが、なぜか、私が8歳か9歳のとき、父は、私にお金に関するものを見せてくれるようになりました。

台所のテーブルで、父に通帳を全部見せてもらいました。まだインターネットがない時代。小さな通帳にすべての情報が詰まっていました。

通帳を見せながら、父はどんなふうに口座にお金を貯め、支払いをしているのか、教えてくれました。

そしていつも最後に、「お母さんには内緒だよ」と言ったのです。

なぜ、父がこんなことを言ったのか、今もってわかりません。でも8歳の女の子にとって、それは、「何も言うな」という意味でした。

16歳で自分の通帳を持つ

数年後、私が初めて仕事をしたとき、父に、「小切手(給料)を持ってきなさい。銀行に預けておくから」と言われました。

でも、昔、父が教えてくれたことを思い出し、私は、「自分の通帳がほしい」と言いました。

驚いたことに、父は、私の通帳を作ってくれ、私は16歳のときから、自分のお金の管理を始めました。

その後、大学に進学し、公認会計士としてのキャリアを開始しました。

学生ローンに新しいアパート、新しい仕事。

借金してはそれを返し、また借金をして、返すというローラーコースターのような生活が始まりました。

払いきれない請求書

さらに何年かたち、私は結婚し、思いがけず離婚もし、手元には、自分では買えなかった家と払いきれいない請求書が残りました。

皆さんは不思議に思うかもしれません。

人々のお金の管理をする教育とスキルのある人が、どうしてこんなことになるのか、と。

実は、私は、子供の頃に教わった、1人の人間だけがお金を管理するという事態に逆戻りしていたのです。

自分の経済力を他人に手渡し、経済的に依存していました。

経済的依存とは?

経済的依存とは、誰かが、お金のために、別の誰かの仕事や状況に依存し、囚われたと感じることです。

依存には2つの形があります。自分で選択してそうなる場合と、選択の余地がなくてそうなる場合です。

誰かが自ら選んで、自分の経済能力と関与を他の誰かに委ねることがあります。

個人的にも、ビジネスの関係においても、ある人が、お金の管理にかかわりたくないので、その責任を、配偶者やパートナー、会計士や経営者などの専門家に委ねる場合です。

私の状況はこれでした。

夫にお金の管理を任せきりだった

1日中、他人のお金の管理をしていたので、夫が私たち夫婦のお金の管理に興味があり、得意であることに、安堵しました。

自由だ! と思いました。

16歳のときに初めての仕事について以来、初めて、自分のお金の管理に責任を持たなくてよくなったのです。

でも、私は気づいていませんでした。

自分が自由だと思っていたことは、実は依存だったのだということに。

私の間違いは、自分たちのお金が状況に、関わらず、理解もしていなかったことです。

あなた自身も経験したことがあるかもしれません。もしくは有名人やプロのスポーツ選手が、家族や友人などにお金の管理を頼った結果、無一文になる、破産する、裏切られる話を聞いたことがあるでしょう。

選択の余地なく依存する場合

選択の余地なく、依存している人は、囚われたと感じています。

不満のある仕事を続けていたり、嫌がらせを受けていたりしても、その状況から抜け出すことができません。

病気、離婚、その他の悲劇的な状況のせいで、誰かに経済的に依存するしかなく、家族や友人の家に身を寄せる人もいます。

年老いて自分の面倒を見られなくなり、他人に頼るしかなくなった人、家やお金、その他の資産を手放すことになった人もいます。

経済的虐待とは?

選択の余地なく依存してしまうもう1つのタイプは、経済的虐待を受けている場合です。

経済的虐待とは、パートナーをコントロールし、怖がらせるのに使われる虐待行為のパターンです。

被害者は、虐待している相手と夫婦や恋人などの関係にあり、その関係から抜け出すのに必要なお金、情報、リソース、支援を得ることができません。

オールステート財団(Allstate Foundation)には、「紫の財布(Purple Purse)というプログラムがあります。

このプログラムは、家庭内暴力の被害者に経済的な力を与えて支援しています。

財団のリポートによれば、家庭内暴力のうちの99%は、経済的虐待が、被害者をその関係に縛り付けるのに一役買っています。

目に見えない武器

「紫の財布」は、経済的な虐待を、「目に見えない武器」と呼んでいます

目に見える虐待は、あざや傷跡を残しますが、経済的虐待はそういうものは残しません。

経済的虐待や経済的依存は、目に見えない心の傷跡を残します。

絶望感、罪悪感、恥の気持ち、うつ、自信やセルフエスティームの喪失という傷です。

こうした傷は、経済的依存をしていても、誰もその話をしないので、目に見えません。

なぜ話さないのか?

誰も自分の心の傷を見せたくないからです。それに私たちは、家庭、職場、コミュニティで、お金の話をしないほうがいいと教えられています。

経済的依存や虐待に、身に覚えがある人はたくさんいて、皆、それぞれの物語を持っていますが、その話を誰にもしません。

父に、「話してはいけないよ」と言われたとき、私は、この話を誰にもしませんでした。今、ここで話をすることすら、難しさを感じています。

ではどうしたらいいのでしょう? どうやったら、この目に見えない武器を取り除くことができるのでしょうか?

3つの問題を解決できます。

自覚がない⇒自覚する

最初の問題は自覚がないことです。

お金について知ったり、お金を持ったりすることが、必ずしも解決法ではありません。

私のケースでは、私はお金に関する教育を受け、経験もありましたが、それでも経済的に依存してしまいました。

なぜでしょう?

一人がお金を管理するものだと信じ、そうした環境の中で育ったからです。

離婚後、私は、自分の人生を、経済的にも心理的にも建て直す必要がありました。

そこで、あらゆる自己啓発のコースを取り、見つけた自己啓発本は全部読みました。

そのとき、自分の育った家庭のダイナミックス(力学)に気づき、それが、私の経済力の扱い方に影響を与えていたと気づきました。

自分の心のあざや傷跡に気づくとき、経済的依存から自由になり始めます。

ファイナンシャルリテラシーの不足⇒情報を得る

ファイナンシャルリテラシーは、お金に関して、十分に情報を得た上で決断できるスキルを持つことです。

貯金や投資、予算、借金などのトピックを含みます。

2018年、高校のカリキュラムで、ファイナンシャルリテラシーを義務付けたのは、17州だけでした。

最近の研究によれば、アメリカ人のうち66%が、ファイナンシャルリテラシーがありません。

もし、経済的依存状況にあるなら、自分のお金の状況をチェックし、お金について決断をくだし、決断に参加することから始めてください。

経済的に虐待されているときは、自分自身の情報にアクセスしましょう。

銀行やクレジットカードの明細書、社会保障に関する情報、口座のパスワードなどを調べてください。

支援不足⇒支援を受け、与える

最後の問題は、支援を与えたり、受けたりできないことです。

健全なお金に関する習慣を学び、確立する助けになるリソースが、オンラインで無料で取得できるし、地域社会にもあることを知らない人がたくさんいます。

もし、経済的虐待の被害を受けているなら、「紫の財布」のような、無料のリソースもあります。

支援するとは、ほかの人の経済的な依存の話を、ジャッジも批判もせずに聞くことです。

自分自身の体験を語ることも支援の一つです。自分の体験をシェアすれば、ほかの人に力を与え、その人達が、自身のストーリーを書き直すことを許すことができます。

私のストーリーをシェアすることで、より多くの人たちが、経済的依存について学び、自分自身のストーリーを語り、お互いにつながって、この隠された問題に光を当て、誰もが経済的自由を得られることを願っています。

//// 抄訳ここまで ////

ギブソンさんの著書です。

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めんどくさくても直面する

エステルさんのように、お金に関することを何もかもご主人に任せっきりで、離婚後、お金に苦労する人や、経済的虐待の中にいる人は、そんなに多くないかもしれません。

しかし、自分のお金の管理を放棄している人はいますよね?

自分がいくら稼いでいて、何にどれだけお金を使っているのか全く把握していない人は、お金の管理を放棄しています。

このような人は、結婚したり、パートナーができたり、実家に戻ることになったりといったちょっとしたことがきっかけで、経済的依存状態になりやすいと思います。

だから、お金を稼ぎ始めたその日から、お金の管理を始めたほうがいいですよ。

私自身も、お金の管理が苦手で、できればお金の管理などはせず、「税理士にまかせています」と言える立場になりたいと思っていましたが、今は自分でぼちぼちやるほうがいいと思っています。

「どうせ、少ししかお金がないから現状を知りたくない」と思う気持ちはよくわかります。しかし、手持ちのお金が多い、少ないは関係なく、自分で管理しているかどうかが重要です。

お金にまつわることは、ストレスの元になりやすいので、ぼちぼち管理して、よけいなストレスは取り除いておきましょう。

*****

エステルさんが、「家庭の誰か一人がお金を管理するべきだ」と思っていたのは、マネーシェイムの一つですね。

(マネーシェイムについては、関連記事の一つとして紹介した、「自分のお金の問題についてもっと正直になろう(TED)」に書いています。

以前、読者からいただいたメールに(引用不可)、ある心理カウンセラーが、お金は定期的にパーッと使うようにしているエピソードが書かれていました。

自分の持っているお金には、クライアントの悩みのエネルギーが含まれているからだそうです。

この考え方も、マネーシェイムの一つだと思います。

そのお金がネガティブかどうかなんて、自分が感じることにすぎませんから。

しかし、このように、禊(みそぎ)みたいな意味合いで、お金をパーッと使ってもいいことにしている人は多いかもしれません。

その結果、貯金ができず、物が増えているなら、マネーシェイムを疑って、考え方を変えたほうがいいですよ。





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