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もっと仕事や勉強、家事に集中したい、集中力をつけたい、という人の参考になるTEDの動画を紹介します。
タイトルは、What Makes Some Brains More Focused Than Others? (ある脳がほかの脳より集中できるのはなぜ?)
プレゼンターは認知神経科学と心理学を研究しているMarvin Chun(マーヴィン・チャン)先生です。
より脳をタスクに集中させる方法、TEDの説明
Faced with overwhelming amounts of information and an increasing need to multitask, how can our brains focus on important tasks and avoid distractions?
Cognitive neuroscience researcher Dr. Marvin Myungwoo Chun discusses why some people more attentive than others, allowing them to perform better at school, sports, and in the workplace.
He also reveals the difference in our brains that explain superior performance, and gives tips on how to enhance our focus.
情報があふれ、マルチタスクしなければならない状況のなかで、どうやったら、重要なことにフォーカスし、気を散らすものを避けることができるでしょうか?
認知神経科学者のマーヴィン・ミャンウー・チャンは、なぜ、ある人たちはほかの人に比べて、より集中力があり、学業、スポーツ、仕事においてパフォーマンスが高いのか説明します。
パフォーマンスがよいときの脳とそうでない脳の違いや、よりフォーカスする秘訣も披露します。
プレゼンはおよそ20分。英語字幕あり。日本語字幕はありません。抄訳を書きますが、人はいかに1つのことにしか集中できないのか、ビデオを使って証明しているので、お時間のある方は動画をごらんください。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
集中すれば生産性があがる
誰でも1日は24時間。学生も職業人も、生産性をあげたいと思っています。
生産性をあげる方法はたくさんありますが、このプレゼンでは1つだけお話します
つまり、いかに集中するか? いかに注意力をあげるか?
心理学と神経科学の研究をもとに説明しますね。
現代社会の2つの問題
問題1.情報が多すぎる
現代社会は、あまりにも情報があふれています。
それはありがたいことですが、大きな問題でもあります。
人類の叡智にスマホから指先1本でアクセスできます。大いなる恩恵ですが、情報が多すぎるせいで、何を選んだらいいのか、どこから始めたらいいのか迷ってしまいます。
問題2:気が散りやすい
さらに、私たちはひじょうに気が散りやすくなっています。よくあるのは、スマホをじっと見つめたまま、街中を歩いている人たち。
周囲の状況にはまったく注意を向けていません。
[スマホに夢中になってドアにぶつかったり、モールにある噴水に落ちる人のビデオが映し出されます]
これは、笑える例ですが、もっと深刻なことだって起こります。列車の運転手がほんの数秒注意をそらしたら、脱線する可能性もあるのですから。
どうやったらもっとフォーカスできるか?
ジョン・キャシディがニューヨーカー(雑誌)に書いたように、私たちの社会は「注意欠陥障害経済(attention deficit disorder economy)」「注意欠陥障害社会(attention deficit disorder society)」と呼べるものです。
昔より、集中できなくなり、すぐに気が散り、思考が浅くなっています。情報が多すぎて、生産性も落ちています。
こうした状況の経済的コストはアメリカだけでも2000億ドルにのぼると考えられています。生産性に対する深刻な問題です。
注意力のテスト
どのぐらい自分が注意を向けることができるのか知ってもらうためにある動画をお見せします。
パスの数を数えるテスト
白いTシャツを着ているプレーヤーが何回ボールをパスしたか数えてください。他の人の気を散らさないように静かに数えてくださいね。笑ったりしてもだめですよ。
[白い服のチーム4人と黒い服のチーム4人が、それぞれ自分のチームのメンバーにパスをする動画が映し出されます]
では、答えを教えてください。何回でしたか? 13回? そのとおりです。みなさん、すばらしい注意力をお持ちですね。
なかには、すでにこの動画をYouTubeでごらんになっている人もいるかもしれません。有名な動画ですから。
でも、はじめてこの動画を見た人は、ダンシングベアがいたことに気づきましたか?
ほとんどの人が、ダンシングベアに気づかないのです。もう1度、数えることをせずに、動画を見てみましょう。
☆パスした数を数える注意力のテスト(1分8秒)
たいていの人は、白い服のメンバーのボールの行方を追っているとき、ムーンウォークをしているベアに気づきません。
このことは、みなさんの注意力の素晴らしさを証明しています。私が命じたタスクに関係のないことは見えなかったのですから。
しかし、私たちがこの世界を見たり体験しているとき、注意を向けているのは、とても限定されているという事実も表しています。
脳には限界があるのです。
形を覚えるテスト
エール大学の研究所で同様の実験をしました。ある形を2秒で覚えてもらうごくシンプルな実験です。形の数は、1つ、2つ、3つと変わります。
形を覚えてもらうとき、脳波もチェックしました。
1つだけ覚えるときは、脳はそんなにがんばらなくてもしっかり覚えられます。ところが、形の数を2つ、3つと増やすとより脳に負荷がかかります。しかも、しっかり覚えられません。
つまり、基本的に脳は同時に1つのことしかできない(one thing at a time)のです。
もちろん、2つや3つのことをやろうとすることはできますが、生産性やパフォーマンスは落ちます。
車のCMでわかる人の注意力
もう1つ別の注意力(attention)のテストをしてみましょう。
ある車のCMですが、心理学と認知科学をうまく使っています。
☆車のCM(1分15秒)
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☆車のCMの説明(筆子の注)
「新しいシュコダ・ファビアのデザインがどれほど人の注目を集めるのかお見せするために、ウェストロンドンのごくふつうの街路に駐車してみました」。
というナレーションから始まり、真ん中にある青い車のデザインの特徴が順番に語られていきます。
実は、人々が車に注目しているあいだに、周囲の状況が変わっていきます。しかし、それに気づく人はほとんどいません。
それほど、この車のデザインはすごい、とアピールするCMです。
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というわけで、脳は同時に1つのことしかできない、とわかっていただけたと思います。
集中する3つのコツ
脳は1度に1つのことしかできませんが、その理由は脳をオーケストラだと考えればわかります。
オーケストラの演奏を聞くとき、個々の楽器の演奏を聞くのではなく、全体のハーモーニーを聞いています。脳もオーケストラと同じように、さまざまな部位がコーディネートして働いています。
脳がうまくコーディネートできているときほど、人の集中力は増します。
このことをふまえて、もっと集中できるコツを3つお伝えします。
1.単純化 Simplify
まず、自分がやろうとしていることをできるだけシンプルにしてください。
ちまたにはあまりにたくさんの情報が流れているので、自分が注意を向ける情報の量をコントロールします。
もしあなたが物を売ったり、何かを教えたり、紹介するなど、誰かにメッセージを伝えたいときは、できるだけシンプルにするといいです。
消費者の立場なら受け取るものをシンプルにします。
ステーブ・ジョブズがiPhoneを市場に紹介したやり方です。彼は、金額とメモリの容量と最低限の情報しか提示しなかったので、人々は、重要な情報にフォーカスできました。
ジョブズががアマチュアだったら、よけいな情報をたくさんのせたスライドを見せたことでしょう。
情報はシンプルにするべきです。消費者はそんなにたくさんの情報を処理できません。
2.リラックス Relax
「がんばろうとすればするほど、パフォーマンスはあがる」と考えている人が多いのですが、それは違います。
もちろん、これから行うことに対して、意気込む必要はありますが、あまりにストレスが多すぎると逆効果です。
リラックスしてタスクをすれば、パフォーマンスが向上します。
リラックスする方法として、2つだけお伝えしておきます。
まず深呼吸すること。深呼吸は気持ちをリラックスさせますし、そもそもリラックスしないと深呼吸できません。瞑想、祈り、ヨガなどでもリラックスできます。
もう1つは運動することです。特に散歩がいいです。散歩をすることは、気分を落ち着かせるだけでなく、注意力や認知のスキルにもよい影響があります。
公園や森など自然の中を散歩してください。
街中を散歩した人と森の中を散歩した人を比べたリサーチによると、森の中を散歩した人のほうが、その後注意力や集中力が増しました。
3.シングルタスク Unitasking
集中力を高める秘訣、3つめは1つのことだけをすること(ユニタスキング)です。
3つの中でもっとも重要なコツです。
「生産性をあげるためにはマルチタスキングをしなけらればならない。できるだけたくさんのことをやるべきだ」と人は考えがちです。
しかし、実際のところは逆なのです。1つのことに取り組んでいるときのほうが脳はうまく働きます。
何か重要なことをやっているとき、たとえば、レポートを書いたり、仕事の計画をねっているとき、スマホをチェックする人は何人いますか?
1時間に1~2回、スマホをチェックする人は?
誰もがそうしますよね? 心理学と認知科学のリサーチによれば、これは効果的な仕事のやり方ではありません。
ここで実験をしてみましょう。
青い色の数字には、7を足し、ピンク色の数字は7をひいてください。
まず左側の列をやってみてください。
次に右側です。
左側は途中で1回タスクをスイッチするだけなので、より速くできます。しかし、青とピンクの数字を交互に計算するときは、難しくなり時間がかかります。
実は、右も左も同じ数字です。
違うのは、左側はユニタスキング、右側マルチタスキングだということ。
電話をチェックしながら、勉強や仕事をやるのは、右側のやり方をしているとになります。自分で自分の仕事を難しくしているわけです。
実験の結果では、右側の計算をすると左側に比べて、30パーセント速度が落ち、正確さも30パーセント落ちます。しかも、脳はよりいっそう働いているのです。
わざわざ自分にハンディを与えるべきではないですよね。
1つのことをやるのが、生産性をあげるコツなのです。
べつに、スマホをチェックしてはいけない、と言っているわけではありません。30分とか1時間仕事をしてから、チェックしてください。
単純化、リラックス、ユニタスク、この3つを行うことで、あなたの生産性はより向上します。
//// 抄訳ここまで ////
脳力や集中力アップの参考になる記事、厳選7つ
「脳が冴える15の習慣」(築山節著)から学んだこと:便利すぎるから不幸せになる
マルチタスクが脳に負担をかけ仕事の効率を落とす理由。1つのことに集中しよう
集中できないのはぐしゃぐしゃの部屋にいるから。ガラクタは脳にも悪影響を与えています
ADHD(注意欠陥他動性障害)の原因と行動の特徴は? 汚部屋に関係あるの?
レス・イズ・モア
さまざまな実験結果を盛り込んだマーヴィン先生のプレゼンを見ると、「やはりシングルタスクのほうがいい」と納得できます。
集中するために、やることを少なくしたり、シングルタスクをしたほうがいい、という話は過去記事でも書いています。
たとえばこれ⇒だらだら家事や片付けで1日が終わるあなたに。目の前のことに集中するには?(前編)
ですが、多くの人は、シングルタスクのほうがいいらしいと知っても、なかなかマルチタスクをやめないものです。
その理由の1つは、技術が発達して、万能感のあるスマホを持っているから。便利なツールを持つと、自分のパワーもアップした、と人は感じるのではないでしょうか?
現実には、人間は時間や体力、知力の限界があります。それなのに、スマホを持つと、そういう限界を超えられる、と無意識に感じてしまうのでしょう。
だから、やたらとたくさんのことに手を出したり、スケジュール帳をタスクでいっぱいにするのです。
ごく自然に、「多ければ多いほどいい(モア・イズ・モア)」という発想になっていると思われます。
しかし集中して生産性をあげるためには、レス・イズ・モアなのです⇒レス・イズ・モア(Less is more)の真の意味とは? 何もない部屋に住むことがミニマリストの目的ではない
人は現実のごく一部しか見ていない
白い服チームのパスの数を数えるテストを見てわかるように、人は、何かにフォーカスしているとき、ほかのすべての情報を切り捨てています。
そうしないとフォーカスできないのです。
自分が何かに焦点をあてているとき、「世界にはそれしかない」と思いがちであると言えます。
汚部屋が片付けられない、実家が片付かない、人から物を押し付けられるなどなど、種々の相談ごとをメールでいただきます。直メールや記事で返答していますが、たまに私の答えに納得しない人がいます。
「そう言われても、実はこういう事情があって、できないんです」と返事をくれる人たちです。
もちろん私の答えが万能だとは言いませんし、生活するうえでいろいろと難しい状況はあるでしょう。ですが、ある提案に対して、「でも、できないんです」と次々と障害を思いつく人は、「できないこと」にフォーカスする癖があるとも考えられます。
自分が何かに焦点をあてているその裏で、全く別の可能性がたくさんあることを知っておくといいんじゃないでしょうか?
自分の脳は、今見ているものが世界のすべてであると考えがちなので、何を見るか、どこにフォーカスするかはとても重要です。
焦点や視点を変えてみると、意外と簡単に問題を解決できるかもしれません。