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カナダ在住10年の専業主婦の方から、カナダで年金をもらう方法を教えて、という質問をいただきました。
この記事で回答します。
このブログの読者の99%は日本に住んでいる人だと思うので、ほとんどの人には関係のない話です。
ただ、たまに「もっとカナダのことを書いてください」というリクエストをいただくので、そうしたリクエストに応える記事として、この質問を取り上げました。
老後の不安の解消法に興味がある方の参考にもなるでしょう。
ではまずメールをシェアしますね。ハリコさんからです。
老後がとても不安です
件名: はじめまして。ハリコです
ブログ読ませていただきとても共感しています。
48歳、ハリコです。
素敵なブログに思わずメッセージさせていただきました。
私もカナダ在住10年目になります。東部の小さな町です。
移住は夫の希望でほぼ決めましたが、私も一生に1回くらい海外生活もいいなと思い、2人とも富裕層ではないので何年もかけて貯金して、移住資金をためて移住してきました。
子供もつくりませんでした。移住後の3年後には移民権もとり、旦那の仕事もなんとか順調になりだして、いよいよカナダ暮らしも安定したかなという感じでした。
私はずっとカナダでほぼ専業主婦しております。
時々自分で製作デザインした服などを日本に製作発送を続けてきましたが、仕事といえるほどでもなく趣味に毛がはえたものです。
それでも年々カナダから日本へのモノの頻繁な発送が体力的にも厳しくなってきて、いつまでもできることではないと、ここ最近、イラストの在宅ワークにシフトしようかと思っています。
デザインの学校出身で挿絵などは昔していましたが、ずっと描くこともなくきていました。
ですがこれからの年齢や老後でもできることを考え始め、これでいこうかと思い、すでにストックフォトなどに登録しています。
これまでは専業主婦だったので仕事はカナダで1度もしていない状態です。
もともと絵を描いたりインドア派なので、ほぼ引きこもりです。人と会うのもごく身近なひとだけでいい感じです。
自分でもよく鬱にならないなあと思っています。ネットのおかげでなんとか心も元気にいられています。
筆子さまにご相談させていただきたくメッセージさせていただきました。
今 専業主婦なのですが、私のようなものでもカナダで年金をもらえるにはどうしたらいいでしょうか。
旦那は会社でしているのですが、私は自分のはまったくなにもしていません。
私も少ない金額でも、もらうようになれるには、自分で自営を立ち上げて、(さし絵などの在宅ワークのデザインなどの)売り上げなどぜんぶ出して税金や年末調整したらいずれ年金をもらえるのでしょうか?
もし在宅ワークで自分で独立した場合、(デザイン)どのように始めたらいいのでしょうか。
日本は海外行きの際、住民票を抜いてきています。
老後がとても不安です。突然のメッセージ失礼致しました。
筆子さんとお会いしてお話したいくらいとてもこのブログと出会えて救われたような思いでした。
ハリコさん、お便りありがとうございます。
「移民権をとった」とは、市民権はないが、永住権はある、ということですね。
老後資金に使える公的年金と個人的な貯金
カナダで支給されている公的年金は2種類あります。さらに、老後資金を積み立てるの便利な口座に貯金するのが一般的な形です。
■公的年金
1.OAS (Old Age Security pension)老齢年金
2.CPP (Canada pension plan) 日本の厚生年金みたいなやつ
■自分で老後資金を貯める貯金口座
3.RRSPとTFSA 日本の個人年金に似ているかもしれませんが、日本の年金のほうを知らないので違うかもしれません。
勤めている人は、雇用主がスポンサーになって貯めるタイプの年金もありますが、ハリコさんは雇用されていないので省きます。
現時点でハリコさんが受け取れそうなのは、ざっくり考えて3種類ある、といえるでしょう。これらをもう少し詳しく説明しますね。
OASとは?
OASは大人(18歳)になってから、10年以上、カナダに居住したことがある人なら誰でも65歳になったらもらえる年金です。
65歳になるちょっと前に自分で申請します。
ただ、今は65歳ですが、数年前に支給の開始が67歳に引き上げられました。2023年からそうなるので、1958年の4月1日以降に生まれた人は、67歳で開始です。
この年金は、仕事していたとか、いなかったとかは、いっさい関係なく、居住さえしていれば誰でももらえるものです。
ただし、誰でももらえるので、そんなに額はありません。
いま現在(2018年)、満額で、$589.59です。この金額は、政府が常に見直しをしているので、ハリコさんがもらえるときは、物価に合わせて、上昇しているとは思います。
600ドルは、6万円ぐらいの感覚なので(厳密にはきょうのレートで49000円ぐらいですが)、高額ではありませんね。
満額支給されるのは、カナダに最低40年いた人です。40年に満たない人は、自分がいた年数を40で割ったものに、満額をかければ金額が出ます。
たとえば、10年住んだ人なら、10/40x満額=月々の支給額、となります。
OASには、GISと呼ばれる補助所得年金があります。
あまりに年収が低いとか、家計を支える配偶者が死んでしまったとか、夫婦2人なのに、片方しかCPPがないといった場合に、条件にあてはまれば、申請し、受け取ることができます。
OASでもらうお金は課税対象になります。
CPPとは?
CPPは働いて収入があると、強制的にそのうちの何%かおさめなければならないお金がもとになっている年金です。
カナダに住む18歳以上の人で、年間3500ドル以上の収入のある人は、CPPのお金をおさめなければなりません。過去に1回でも、CPP用にお金を払っていたら、払った額に応じて、受け取ることができます。
いくら保険料を払うかは、その人の収入によって違います。2012年のCIBC(カナダの銀行)の記事によると、収入の9.9%とのこと。雇用主がいる人は、雇用主が半分負担しましが、自営の人は全額払います。
CIBCの記事⇒Canada Pension Plan vs. Old Age Security – the differences explained | CBC News
CPPの支給額は、その人の生涯収入や、働いていた期間で決まります。
支給額の1つの目安として、上記の記事にある、カナダ政府の発表を紹介すると、
If you have lived and worked in Canada most years between age 18 and 65 and earned about the average Canadian wage ($39,100 in 2002), at age 65 you would receive a CPP retirement pension of about $788 a month.
「18歳から65歳のあいだ、ほとんどカナダで就労し、平均的な収入(2002年の数字で年間39100ドル)を得ていた人は、65歳にCPPとして月788ドル支給される」
とあります。
学校を卒業してずっとカナダで働きながら、まじめに保険料を積み立ててきた(勝手に給料から引き落とされるのですが)ごくふつうのカナダ人は、65歳になるとOASとCPPをあわせて月1400ドルの年金をもらえる、と言えるでしょうか? あくまで、現時点の数字です。
平均的な人たちは、たぶんマイホームを持っているので、自分1人だったら充分なのかもしれません。
CPPの支給をいつ開始するかは、60歳から70歳のあいだで、自分で選べます。早く受け取りを開始すれば金額が少なくなります。
70歳になったら、たとえ働いていても、もうCPPにお金を積み立てることはできません。
CPPを受け取っていた配偶者が亡くなったら、残された配偶者がその分を受け取ることができます(いろいろ条件あり)。
自分で積み立てる老後資金
OASとCPPだけだと、たぶん足りない人が多いので、不足分を補うために、若いときから、老後資金として個人的に貯金できる、政府が用意したシステム(アカウント)があります。
代表的なのがRRSPとTFSAです。
RRSP(Registered Retirement Savings Plan)とは?
これは信託財産のようなもので、若いとき、RRSPの口座にお金を積み立てておき、老後に引き下ろして使います。
RRSPに積み立てた分の金額は、税金で控除される、というメリットがあるので、節税としてRRSPを利用する人がたくさんいます。
いくらでもお金を積み立てられるわけではなく、前年の収入の額によって、次の年に積み立てできる限度額が決まります。
利子やRRSPを運用して得たお金には、積み立てているときは、課税されません。
けれども、年をとって、RRSPをおろしたら、おろした分すべてが収入として課税されます。
TFSA(Tax-Free Savings Account)とは?
TFSAはその名のとおり、まったく税金のかからない貯金口座です。TFSAは2009年から始まりました。
18歳以上で、社会保険番号を持っている人なら、誰でもTFSAの口座を開くことができます。
RRSPとは違って、TFSAに積み立てた金額は税金の控除には使えません。ですが、TFSAの利子や、TFSAを運用して得たお金は、おろしたときも、税金がかかりません。
だから、タックスフリー(税金なし)という名前です。
TFSAは、その年ごとに積み立て可能金額にリミットがあります。2018年は5500ドルです。
2009年から2012年まではずっと5000ドルでしたが、その後5500ドルになりました。2015年だけは、なぜか1万ドルまで貯金できました。
これまで、TFSAにまったく貯金したことがない人は、過去の枠もさかのぼって使うことができます。
つまり、きょうの時点で57500ドルまで、TFSAに貯金できます。
この枠を越えて貯金してしまうと、ペナルティがかかりますので気をつけてください。
年金に関しては、カナダ政府のサイトを見るのが一番だと思います。
公的年金の最初のページです⇒Public pensions – Canada.ca
政府のサイトには、最新の情報があります。
私がもらえるかもしれない年金についてはこちらに書いています⇒50代で貯金のない主婦が、老後のためにできる3つのこと
ハリコさんにおすすめしたいこと
ハリコさんは中年になってからカナダに移住し、その後ほとんど専業主婦をしていたので、たくさんの年金は期待できません。
けれども、ご主人がしっかり働いているし、子供にかかる費用が皆無なのでそんなに心配することないと思います。
とりあえず、以下のことをやってみてはどうでしょうか?
今年の分から確定申告をする
たとえ収入がゼロでも1ドルでも、確定申告をしておいたほうがいいです。カナダの年金システムは、税務署とダイレクトにつながっているので、申告をして、自分のアカウントを作ったほうが何かと都合がいいです。
いまは、オンラインで簡単に申告できます(私はマニュアルでやっておりますが)。収入が少ない人は、書くらんも少ないのですぐに終わります。
私もカナダに来て、3~4年は、申告してなかったのですが、その後、過去の分もさかのぼって申告しました。
どこまでさかのぼったのか忘れましたが、留学生の頃、学校に支払った授業料を、15年以上あとになって税金控除に使うことができました。
カナダ政府は、収入の少ない家庭にリベートをくれることがあります。収入の少ないほうの配偶者の口座にお金が振り込まれます。
まったく期待していないときに、ふっと150ドルぐらい振り込まれているのを見るのはうれしいものです。
今後20年、しっかり働いてコツコツ老後資金をためる
まだ70歳まで20年以上あるので、この間、がんばって仕事をして、必要だと思う分だけためてください。
とりあえず、もしまだやっていなかったら、とりあえずTFSAに貯金するといいですよ。
日本で働いていたときに積み立てた日本の年金を海外から請求することもできますね。書類を集めるのが大変かもしれませんが。
それと、可能なら、パートでいいので外で働いてはどうでしょうか? イラストの仕事と二足のわらじを履けば、よりたくさん貯金できます。
長期的ゴールを設定し、達成するために必要だと思うことを順番にやる
老後の不安が大きいのは、今後の方針がたっていないからだと思います。
20年後のゴール⇒10年後のゴール⇒5年後のゴール⇒3年後⇒1年後⇒半年後⇒3ヶ月後⇒1ヶ月後、というように、最終目標に到達するために、いまなすべきことを逆算して考えて、実際に行動を起こせば、もうそんない不安にならないでしょう。
こちらの記事も参考にしてください⇒この先どうしたらいいのかわからないと悩んだらこれを読んでください。
>もし在宅ワークで自分で独立した場合、(デザイン)どのように始めたらいいのでしょうか。
ご質問の意味がよくわからなかったのですが、自営で働くときの確定申告の方法を質問されているのでしょうか?
日本だと、個人事業主の開業届けを出しますが、私の知る限り、カナダにはそのような届けはありません(会社を作るときは登録します)。
自分のビジネスから得た収入は、ビジネスインカムを記入する専用のフォームに記入して、ほかの基本的なフォームと一緒に税務署に提出します。
以上、参考になれば幸いです。