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暗い考え方をする人に典型的な思い込みを10個紹介しています。
これは、認知療法(のちに認知行動療法に拡大)の専門家、デビッド・D・バーンズ(David D. Burns)先生が体系づけた認知のゆがみ、10項目、と呼ばれるものです。
2回めのきょうは、
4.マイナス化
5.結論への飛躍
6.拡大解釈または過小評価
7.感情的決めつけ
この4つを例とともに紹介します。
4.マイナス化:Disqualifying the positive
英語を直訳すると、「ポジティブなことを勘定に入れないこと」となります。
ネガティブな思考に陥っている人は、よいことが起きていても、それを勘定に入れないのです。
しかも、なぜそれは勘定に入らないのか、その人なりの理由付けをします。
たとえば、平均点が60点の数学の試験で77点とったとします。これはかなりいい成績です。
ところが、マイナス化する人は、この成績はたいしたことはない、むしろ自分はだめである、数学ができない人間だ、という自己評価をします。
その理由は、たまたま問題が簡単すぎたから、友達のAやBもいい点をとっている(クラスの平均点は無視)、適当に選択した問題でたまたま正解したから、など。
この人は、自分は数学ができないんだ、という信念をもっているので、たとえよい点をとっても、これを勘定に入れるべきでない原因をどんどん思いつくのです。
汚部屋の人もよいことを無視しがちです。引き出しを1つ片付けることができたのに、「まだ片付いてない物が山ほどある。相変わらずとんでもない汚部屋だ」と、引き出しのクリアというポジティブな現象をマイナス化します。
この思考の持ち主は、どんなにポジティブなできごとがあっても、全部打ち消すので、なかなか前向きになれません。
5.結論への飛躍:Jumping to conclusions
証拠や裏付けがないのに、いきなり結論づけてしまう考え方です。
結論への飛躍には2つのパターンがあります。
人の心を読む(Mind reading)
ほかの人が何を考えているのか、その人に聞かずに決めつけることです。
私たちは、相手にいちいち確かめなくても、なんとなく考えていることがわかるから、それでうまく日常生活を送れます。
特に日本には、空気を読む文化がありますから。
ここで言っているのは、相手の気持ちを確認せず、独自に解釈して、自分がネガティブになってしまう思考パターンです。
たとえば、今朝、ママ友に会ったけど、挨拶してくれなかった。あの人、私のこと嫌いなんだ、と決めつけるようなこと。
マインドリーディングはひじょうによくあります。
相手に聞かずに、勝手に相手の考えを決めつけて、うじうじ悩むことって多いですよね。
この方の悩みも、マインド・リーディングのせいです⇒元彼が家に忘れていった物の処分に悩んでいます←質問の回答
この方もそうですね⇒職場の同僚に八つ当たりされて困っているときの対処法
人間関係に悩んでいるときに、陥りやすい思考です。
あやまった未来予測(Fortune telling)
裏付けがないのに、これから起きることを決めつける考え方です。
フォーチュンテリングは、占いや運勢判断のことです。
独身の女性が、「ああ、私、これからもずっと結婚できず、一生、おひとりさまなんだ」と暗くなるのは、あやまった未来予測です。
先のことなんて誰にもわからないので、そんな根拠はどこにもありません。
この人は、これまで出会いがなかった、ということを根拠に、これから死ぬまで、何十年も出会いがない、という結論を導き出しているのです。
実際、若い人から「結婚できそうにないです」という悩み相談をもらったことがあります。
自分の娘や息子の未来について決めつけることもありますね。
6.拡大解釈または過小評価:Magnification or minimization
ものごとの重要性を大きく拡大したり、逆に、ものすごく小さいものとして捉えたりすることです。
例をあげましょう。
職場でちょっとしたミスをしました。
そのミスに虫眼鏡(英語で magnifier マグニファイヤーと言います)をあてて、大きく拡大し、このミスが自分の職業人生を決めてしまう、と落ち込むのは拡大解釈の1つです。
友達の結婚式でスピーチをしました。
途中ちょっと言うことを忘れて、30秒ぐらい沈黙してしまいましたが、すぐにもとの調子に戻って、わりと感動的なスピーチを披露できました。
拡大解釈する人は、スピーチ全体のできではなく、途中の30秒の沈黙に虫眼鏡をあて、「ああ、友人の結婚式を台無しにしてしまった。もっとしっかり練習すればよかった」と罪悪感を感じます。
過小評価は、ことの重要性をあまり自覚しないことです。
ポジティブなできごとを過小評価してしまうこともあるし、考慮に入れたほうがいいことを無視することもあります。
認知(思考)がゆがんでいると、ものごとをありのままに(ニュートラルに)受け取るのが難しくなります。
7.感情的決めつけ:Emotional reasoning
自分の感じていることを根拠にして、物ごとを判断してしまうことです。
何かがいい、悪い、正しい、正しくないの根拠はすべて自分の感情なのです。
たとえば、こんなふうに考えます。
・私はスキーをするのが怖い。だから、スキーは危険なスポーツだ。
・私はきのうのできごとに対して、罪悪感を感じている。だから、私は何か悪いことをしたはずだ。
・私は夫にすごく怒っている。だから、夫は私に対してひどいことをしたに違いない。
・私は悲しい。だから、世の中は悲しいことしか起こらない。
・私は心配でしょうがない。だから何か悪いことが起きるはずだ。
こうやって書くと、「そんなばかな」と思うかもしれません。
けれども、自分が感じていることをもとにして、現実を推測、判断してしまうことは、ひじょうによくある認知のワナです。
たとえば、フェイスブックを見ていて、自分が知らないうちに友達数人がどこかに遊びに行ったのを知ったとします。
「誘ってくれなかった。寂しいなあ・・・」と思ったその感情を根拠に、「みんな私のこと嫌いなんだ」と決めつけるようなこと、あるんじゃないでしょうか?
自分がさみしいのと、友達が自分を嫌っているかどうかは、2つのまったく切り離された現象なのに、感情をもとに判断している人は、この2つを巧妙に結びつけます。
最近、恋人の様子が変だし、あまり連絡が来ない。なんか不安だわ、と思うその感情のせいで、「彼、浮気しているんだわ」と決めつけます。
自分の感情をもとに、物ごとを決めつけがちな人は、その思考のパターンのまま、現実のできごとを解釈するので、どんどん思考のゆがみにはまっていきます。
汚部屋の住人は、汚い部屋を見るたびに、うんざりだ、疲れた、という気持ちになります。
この気持ちのせいで、「この部屋が片付くなんてありえない」と結論づけるのです。そのため、いつまでたっても腰を上げません(典型的な先延ばし)。
自分がうんざりしているのと、部屋が片付くかどうかは別の問題です。たとえうんざりしていても、コツコツ片付けていけば、いつかはきれいになります。
☆この続きはこちら⇒誰もが無意識のうちにやっているマイナス思考:10の認知のゆがみ、その3(終)。
認知行動療法に関する過去記事もどうぞ
今すぐ捨てたい根拠のない思い込み:10の認知のゆがみ、その1
認知行動療法(CBT)を使って片付けられない思考を手放す方法。
心配性は自分で克服できる。恐怖と向き合うことを学ぶ(TED)
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自分の人生は自分の認知(思考)が作っています。「思考を変えれば人生が変わる」なんて本の題名がありますが、これは、あたりまえのことなのです。
家族4人で夕食にお母さんが作ったこくまろカレーを食べているとき、カレーを食べている、というその現実は、4人に共通しています。けれども、その現実をどういうふうに解釈しているかは、4人ともてんでんばらばらなのです。
その解釈がそれぞれの人生を形作っています。解釈を変えれば、生きづらくも、生きやすくもなります。
それでは、認知のゆがみ、その3をお楽しみに。