女性の後ろ姿

TEDの動画

最終更新日: 2022.07.17

人生の大きな転換期をうまく乗り切る秘訣(TED)

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人生でつまづいたときにうまく乗り切るコツを教えてくれるTEDの動画を紹介します。

タイトルは、The Secret to Mastering Life’s Biggest Transitions(人生の大きな転換を乗り切る秘訣)。

ノンフィクション作家の Bruce Feiler(ブルース・ファイラー)さんの講演です。



転換期を乗り切る・TEDの説明

How do you navigate life’s growing number of transitions with meaning, purpose and skill? Writer Bruce Feiler offers a powerful way to handle uncertain, painful and confusing times — or “lifequakes”, as he calls them. Learn how to equip yourself with the essential tools and mindset to ride out (and rewrite) the toughest chapters of your life story, and turn unease and upheaval into growth and renewal.

どんどん増えている人生の転換期を、意味や目的、スキルをもって乗り越えるにはどうしたらいいのでしょうか?

作家のブルース・ファイラーは、不確かで痛みのある混乱した時期、彼の言葉で言えば、「人生の地震」に対処する強力な方法を伝えます。

あなたの人生のストーリーのもっとも困難な章を乗り切って(書き換えて)、不安や変動を、成長と再生に変えるために必要なツールやマインドセットを学びましょう。

TEDのサイトにアップされたのは2022年の6月、長さは18分。英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。

☆トランスクリプションはこちら⇒Bruce Feiler: The secret to mastering life's biggest transitions | TED Talk

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

構成がしっかりしているプレゼンです。





父への質問

ある日、母から電話があり、父が自殺しようとしていると聞きました。

私の父はアメリカ南部の出身で、海軍の退役軍人であり、市民のリーダー。これまで落ち込んだことは一度もありません。パーキンソン病になるまでは。

父は、12週間に6回も自殺をしようとしました。

自殺をやめさせるために、あらゆることを試しました。そして、ある日、父には人生の物語を再スタートするきっかけが必要だと思ったのです。

そこで、父に質問を送ってみました。

「子供のとき遊んだおもちゃについて教えて」

この質問は、父だけでなく、父の周囲の人全員を変えました。私は、人が、人生の意味や目的、喜びをどうやって作るのか再び考えるようになったのです。

きょう話すのは、次に何が起こったか、そしてそこから何を学べるかです。

自分の人生の物語

ちょっと立ち止まって頭の中で流れているストーリーを聞いてみてください。

それは初対面の人に、あなたが話す物語であり、毎日、自分に話している物語です。

自分が誰であるのか、どこから来たのか、これからどこへ行くのか。

あなたの人生の物語です。

脳のリサーチからわかったことですが、その物語は私たちそのものです。

人生とはあなたが自分自身に語りかける物語なのです。

でもリサーチではわからなかったこともあります。

道からはずれてしまった

物語の筋を見失ってしまったらどうなるのか? 落とし穴や、横道、パンデミックのせいで道からはずれてしまったら?

燃え尽きたと感じ、再出発しなければならないときはどうしたらいいのか?

私たちのおとぎ話がどこかへ行ってしまったらどうするのか?

これが、私の父に起きたことですが、その当時、私自身にも起きたことです。

誰でもそういうことはあり、森の中から出られなくなります。

でも、この時、私は抜け出す方法を学びたいと思いました。

父と同じで私はアメリカ南部で生まれました。

何年ものあいだ、私は直線的な人生を送ってきました。大学へ行き、執筆を開始。最初は、報酬を取らずに仕事をし、ある程度成功し、結婚し子供をもうけました。

しかし、40代になったとき、打ちのめされました。まずがんになり、双子の娘の新米のパパとなり、あげくに、破産しそうになりました。そんなときに、父が何度も自殺を試みたのです。

長い間、こうしたできごとに対して私は恥の気持ちと恐怖を感じていました。

どうやってその物語を語ればいいのかわからなかったし、語りたくもありませんでした。

話してみてわかったのは、誰もが自分の人生がひっくり返ったと感じることがあることです。

予定外に軌道からはずれ、自分が思っていたのと違う人生になってしまった、と。

混乱した人生を生きているのです。

こうした人たちを助けたいと思いました。

ライフストーリープロジェクト

3年以上、全米を横断して、50州のアメリカ人から何百ものライフストーリーを集めました。

家を失った人、手足を失った人、仕事を変えた人、性別を変えた人、酒をやめた人、まずい結婚から抜け出した人。

最終的に、1000時間に及ぶインタビューと、6000ページの原稿を作成しました。

12人のチームで、1年かけて、これらの物語を57の変数を使って、変化のときにいる人を助けるのに役立つパターンを探しました。

これを「ライフストーリープロジェクト」と呼んでいます。

こんなことがわかりました。

教訓1:直線的な人生はもうない

1つの仕事、1つの人間関係、思春期から高齢者になるまで、1つの幸せの源(みなもと)があるという考え方はとても時代遅れです。

歴史的にみてもこの考え方は、ふつうではありません。

あまり話題にのぼりませんが、世界をどう見るかが、人生をどう見るかに影響を与えます。

古代では、直線的な時間はありませんでした。

農耕のサイクルに合わせて、人々は人生は循環すると考えていまいた。

中世では、人生は中年まで階段をのぼり、その後、下るものだと思われていました。

60歳で新しい恋をすることも、退職後、70歳でAirbnbを開くこともなかったのです。

150年前までは、人生は、工場のように、一連のステージを進むと考えられていました。

フロイトの心理性的発達理論、エリクソンの道徳性発達の8つの段階、悲しみの5つの段階のように。

これらは皆、直線的な構成です。

このモデルは1970年代にピークを迎えました。誰もが20代で同じことをし、30代でも同じことをし、中年の危機は39歳から44歳半のあいだに起きるという考え方です。

この考え方はとても強力です。ただ、1つ問題があります。

この考え方は間違っているのです。

今日、私たちは、世界の見方をアップデートしました。

カオス、複雑さ、ネットワークがあると私たちは知っています。しかし、人生の見方はアップデートしていません。

教訓2:直線的でない人生にはたくさん転機がある

実施したインタビューに目を通し、人生の方向が変えてしまう要因すべてのリストを作りました。

人生を変えてしまうできごとを私は、破壊するもの(disrupor、ディスラプター)と呼んでいます。

ディスラプターは全部で52個あります。足首の骨折やちょっとした事故のような小さなできごとから、失業や引っ越しのような大きなできごとまで。

平均的な人は、人生で3ダース(36件)のディスラプターと出会います。

1年から1年半のあいだに1回の割合です。

たいてい、わりと簡単に乗り越えることができますが、10回に1回は、私がライフクエイク(人生の地震)と呼ぶ、大きな変化があり、それは、激動や移行、再生の時期につながります。

平均的な人は、人生で3~5回、こうした地震に出会い、それぞれ5年続きます。

私たちは25年間、つまり大人になってから半分は、移行する時期を過ごすのです。

こうしたできごとは中年のときだけに起きるのではありません。

ある人たちは地震の中で生まれ、20代や60代で地震にあう人もいます。

中年の危機なんてありません。私たちはいつでも、人生の危機に直面するのです。この現実が大きな不安を呼びます。

私たちは今も、人生の地震が、予想できるタイミングで起きてほしいと思っています。

人生はまっすぐ進むと考えているので、そうでないとうろたえます。

もはや存在していない理想と、自分を比べて、そうできない自分を自分で責めます。

パンデミックはこの状況を悪化させました。

私はすべての人生の地震を、自発的なものとそうでないもの、個人的なものと集団に起きるものに分けています。

人生の地震のうち、集団で外発的に起きるものは8%です。たとえば災害や不況など。

現在、地球全体で、ここ100年で初めて、同じ集団的で外発的な地震に見舞われています。

私たちは全員、過度期にいるのに、どう生き抜くべきか誰も教えてくれません。

教訓3:過度期を乗り越えるのはスキル

変化の時期をうまく生きるのは、習得できるし、そうしなければならないスキルです。

私のリサーチをベースに、人生の過度期を乗り切るコツを5つお伝えします。

1)スーパーパワーから始める

人生の地震は物理的な打撃と考えることができます。

かかとをひっくり返され、つま先で立つような。

しかし、多くの人は、その打撃に圧倒されてしまいます。

やることでいっぱいのTo-doリストを作って、週末に追いつこうとしたり、横になって、降参したり。

どちらのやり方も間違っています。

人生の過度期には3つの段階があります。

・長いお別れ:もう戻らない過去を嘆く

・混乱した中間部:ある習慣を捨てて新しい習慣を身につけようともがく

・新たな始まり:新しい自分として始める

重要なのは、このプロセスがこの順番では起きないことです。

人生が直線的でないように、人生の転機も直線的ではありません。

私たちは、自分の得意なフェーズに引き寄せられ、苦手なフェーズで埋もれます。

私たちの半分は、混乱した中間部が嫌いです。しかし、この段階が得意な人もいます。

リストを作って、選択するのが得意なら、ここから始めてください。

10人に1人は、長いお別れが嫌いです。私たちは人を喜ばせるのが好きなのかもしれないし、困難な状況に置かれるのが嫌なのかもしれません。

しかし、この段階で、うまくやれる人もいます。もしそうなら、ここから始めましょう。

ポイントは、移行は難しいということです。得意なことから始めて、自信をつけて先へ進んでください。

2)感情を受け入れる

私は、3つの段階のほかに、人生の過度期をうまく渡る7つのツールを特定しました。

それは感情的な経験であると受け入れることから始めます。

何百人もの人に、変化の時期に苦しんだ最大の感情を聞きました。

1番は恐怖でした。

どうやってこれを乗り切る? どうやって支払いをする?

2番めは悲しみです。

愛する人に会いたい、歩けなくなって悲しい

3番目は恥の気持ちです。

助けを求めるのが恥ずかしい、飲みすぎた自分が恥ずかしい

これらの感情を書き出して対処する人がいます。私のように、力で乗り切ろうとする人もいます。

しかし、私たちの80%は儀式に頼ります。

歌い、踊り、抱き合います。メイナード・ハウエルは、大手の製薬会社をやめたあと、腕に入れ墨をいれました。「こうしたら、もう会社員には戻れない」と言って。

リサ・レイ・ローゼンバーグは、失業し、母親と喧嘩をし、恋愛もうまくいかない最悪の1年を過ごしたとき、変化が必要だと感じました。

彼女の一番の恐怖は、高所だったので、彼女は飛行機から飛び降りました。1年後、彼女は結婚し子供をもうけました。

こうした儀式は、自分自身や周囲の人に、「私は困難な時期を乗り越え、次に来るものへの準備ができています」というメッセージを送ることになるので、長いお別れの時期には効果的です。

3)新しいことを試す

混乱した中間部は本当に混乱しており、気分が落ち込み、進む先わからなくなります。

こんなとき、2つのことをすると効果的です。

まずこれまでの考え方、ルーティン、習慣を捨てます。人格の一部を捨てるのです。

強迫性障害のジェフリー・スパーは、家業を離れてアートセラピーを行う非営利団体を設立する際、定額の給料への依存を捨てることになりました。

がん、離婚、転職を同時に経験したリー・ウィントは、帰宅すると必ず冷蔵庫を開けるという習慣を捨てました。そして、やせたのです。

捨てることで、次に到来するものへのスペースができます。

それはびっくりするほど創造的な行為です。

人生のどん底で、私たちは踊っって、歌って、ガーデニングを始め、ウクレレを弾き始めます。

ザック・ヘリック軍曹はタリバンに顔を吹き飛ばされ、鼻とあごの間を31箇所も手術しました。彼は、自殺したいと思ったときもありましたが、母親の勧めで料理を始め、詩や絵も始めました。

パンデミックが始まったとき、大勢の人がパンを作り始めました。

パン作りや絵を描くこと、詩を作ることで新しい自分を作ることをイメージできるのです。

4)他の人に知恵を求める

人生の転機でもっとも辛いのは孤独です。

孤独感が増えているのは、人生の転機が増えているからです。

1人で抱え込んでいけません。他の人と経験を共有しましょう。

友人、隣人、恋人、他人でもかまいません。

ここで注意すべきなのは、誰もが同じ種類の反応を求めているわけではないことです。

私たちの3分の1は慰められるのが好きです。4分の1はいろいろ指示されるのが好きです。6人に1人は、平手打ちのようにはっきり言われることが好きです。「自分で乗り越えなさい!」と。

アドバイスをする前に、相手が何を求めているのか聞いてください。

5)物語を書き換える

人生の転機は、意味づける体験です。

それを私は「自伝的な機会」と呼んでいます。

人生の地震で学んだことを生かして、自分の人生の物語を見直し、書き直し、語り直す機会です。

私の父もそうでした。子供のとき遊んだおもちゃについてたずねたら、当時の父は指を使えませんでしたが、父は聞いたこともない飛行機の模型の話を書きました。

それから、自分が育った家、どうやって海軍に入ったのか、どうやってママと出会ったのか、などなど父に質問しました。

はじめての質問を送ってから8年後、それまでメモより長いものを書いたことのない父が、実に6万5千語の回想録を書き上げたのです。

1度に1つの質問、1つの物語、1つの人生を肯定する思い出。

これこそが、物語を語るパワーになります。

どんなに暗い物語になっても、ハッピーエンドをあきらめることはできません。

自分を語る物語は、もっともつらい部分の話でも、自分でコントロールできます。

だから、人生の転機について再度考えて、この時期を苦労して乗り切らなければならない悲惨な時間としてではなく、あるがままに見るのです。

それは人生の傷ついた部分を、修復し始める癒やしの時です。

人生はおとぎ話

イタリアにすばらしい言葉があります。

Lupus in fabula.(話の中に現れる狼、うわさをすれば影)。

「おとぎ話の中の狼と」いう意味です。

人生がうまく行っているときに、悪魔、ドラゴン、ダウンサイジング、パンデミックが出てきます。

おとぎ話が現実になりそうなときに、狼が現れ、おとぎ話をこわそうとします。

でも、それでいいんです。

もし狼を追放してしまうと、ヒーローも現れないから。

私たちは皆、自分自身の物語のヒーローにならなければなりません。

だからおとぎ話があります。おとぎ話を、何年も語り継ぐのは、悪夢を夢に変えるからです。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

wallop  打ちのめす

upend  根本からひっくり返す、打ち負かす

off kilter  不調で

assisted living  高齢者向けのケアがついている住宅

fender bender.  自動車のフェンダーがへこむ程度の軽度の衝突事故

ファイラーさんの著書です。

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「恐怖」が教えてくれること:カレン・トンプソン・ウォーカー(TED)

物語を書き換える

先日、結婚してから環境が変わって、生きづらくなって買い物して物が増えた、という方のお便りを紹介しました。

たくさん物があって、処分するのに苦労しています。どうしたらいいでしょうか?

この方の場合は、結婚による引っ越しが大きなディスラプター(破壊するもの)で、その影響は、5年以上続いていると思われます。

こんなできごとがあったときに、「私ばっかり、何でこんな目にあうの?」と、悲劇の主人公になる人がたくさんいますが、こういうディスラプターは誰にでも起きます。

ディスラプターに出会う平均の回数は、一生涯あたり36回。10回に1回はものすごくおおきなディスラプターなので、生涯に3~4回、とてつもない激震にあうわけです。

さらに、揺り動かされて、次の段階に移行する時期をうまく乗り越えるスキルもあります。

それは、「どんどん買い物すること」ではなく、自分や自分の人生のストーリーを書き換えることです。

このことを知っているだけで楽になれるのではないでしょうか?





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