思い込み

ミニマム思考

最終更新日: 2022.07.28

思い込み(認知バイアス)に注意する:決断するコツ教えます(その5)

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日々、断捨離をしているけれど、捨てる物と残す物を決めるのにすごく時間がかかっています。

もっとスピーディに決めるにはどうしたらいいですか?

読者、えむこさんのこの質問に答えるために書いているシリーズ、その5です。

今回は、決断は認知バイアスにかなり影響を受けていることを知るすすめです。

認知バイアスは、思い込みや先入観、思考の偏りのことです。



あなどれない認知バイアスの影響

程度の差こそあれ、どんな人も、先入観にもとづいて生きているので、人は合理的な決断や、理性的な意思決定をしません。

認知バイアスの例⇒無駄遣いの原因は心理的な思い込み。認知バイアスを知って上手な買い物を。

感情に流され、思い込みの中で、いろいろなことを決めています。

不用品を捨てることも例外ではありません。

考えてみればそうですよね?

もういらない物をいつまでも家の中に置いて、狭くて、息苦しい空間を作っているのに、その元凶をいつまでも捨てません。

冷静に考えたら、こうしたガラクタは即捨てしているはずです。

「私は認知バイアスの影響を受けている」と知り、少しでも冷静に考えて決断すれば、もっと簡単に捨てることができます。





ロス・アバージョン

認知バイアスには、いろいろな種類がありますが、不用品を手放すとき、もっとも問題になるのは、ロス・アバージョン(loss aversion、損失回避バイアス)だと思います。

ロス・アバージョンは、何かを手に入れるうれしさより、何かを失う痛みのほうを、強く感じることです。

簡単に言うと、人は、何かをなくすことや、失うことがすごく嫌いなのです。

損失回避バイアス⇒物を捨てられないのは恐怖のせい~損失回避と、授かり効果の心理をさぐる

この気持ちはすごく強烈です。

失うのが本当に嫌

私たちは、すでに手に入れたものを失うのが嫌なだけでなく、実際にはまだ手にしていないけれど、心の中で、「手に入るかもしれない」「もう半分手に入ったようなもの」と期待している、「手に入れられるはずのもの」や、「もらえると思っていたもの」を手にできないときも、大きな痛みを感じます。

期待していたものが、手に入らないとすごくがっかりしますよね?

あなたもそういう体験をしたことがあるのではないでしょうか?

お花見の場所取りに、情熱を燃やす人がいますが、桜をしっかり見たいというより、「いい場所を失いたくない」という気持ちが強いからではないでしょうか? 去年も確保したあの場所を今年も絶対ゲットするんだ、とか。

以前も書きましたが、セール会場で、「あ、あれ、よさそう」と目をつけたもの(まだ買っていないから誰のものでもない)を、誰かが手に取ると、「あ、私のなのに!」とかーっと頭に血がのぼるのも、手に入れたと思ったものを奪われたと思うからです。

いったん手に入れたものを失うのはすごく嫌なので、私たちは、なんとかして失わないように、がんばります。

たとえ、実質、損をすることになっても、大きな犠牲を支払うことになっても、とにかく、失う状況だけは避けたい、と思うのです。

失わないですむようにがんばる

不用品(ガラクタ)も、自分が手に入れたものですから、私たちは失いたくないのです。

全部捨てて、新しい人生のスタートを切ればいいのに、そちらの選択はしません。

どんなものも、「とにかく失わないですむように」画策します。

何かを捨てようとするとき、こんな言い訳をしますよね?

・あればそのうち使うかもしれないし

・捨てるなんてもったいないじゃない。だって、すごく高かったんだよ。苦労して自分のお金で買ったのに

・これは作家さんの一点もの。捨てたらもう2度と手に入らない

・これは大事な友人からの贈り物。捨てたら、友情を無下(むげ)にすることになる

・私は使わないけど、そのうち、子供が使うかもしれない。親戚の誰かが欲しいと言ってくるかもしれない

・小さなときからずっと大事にしてきた私の分身なのに

・これを捨てたら、楽しかった体験を全部否定することになるんじゃない?

・捨てると、がんばった自分の証(あかし)が消えてしまうわ

・今は全然使わないけど、定年退職後(まだずっと先)に使うんじゃないかしら

こんな言い訳をしているとき、別にその品物が大事だから言っているのではないのです。

それが大事かどうかなんて関係ありません。

とにかく、それを失わないですむ状況を作りたいだけなのです。

だから、「こう思うのは全部バイアスだ、偏見なんだ」と思って、全部捨ててしまえば、何も困ったことは起こりませんよ。

むしろ、ノイズになっていたガラクタが一層されて、生活の質があがります。

ロス・アバージョンに惑わされないコツ

ロス・アバージョンは強烈ですが、一息いれて、自分の今の状況を客観的に見ることで、その影響を最小限に抑えることができます。

現実には何が起きているのか?

これを考えてください。

どれも、皆、大事なものや素敵なもの、大好きなものに見えるかもしれませんが、実際は、そうした物がたくさんあるせいで、日々の暮らしが大変になっているんじゃないですか?

手狭になり、部屋はぐしゃぐしゃ。毎日探しものをして、掃除も大変。

何より、自分の物をちゃんと管理できない自分が情けなくて、自己肯定感がどんどん下がっている、というようおに。

そして、長期的視点に立ってください。

全然使っていない物をたくさん持ち続けることが、どんなふうに自分の人生に役立つのか?

失うのは怖いことではありません。

だって、不用品なのですから。

これまでに書いた決断するコツ

1.)一番大事にしたい物やことの確認⇒捨てられないのは決められないから。決断するコツ教えます(その1)

2.)決断疲れを避ける。長々と考え込まない⇒決断疲れを避ける:決断するコツを教えます(その2)

3.)完璧主義を手放す。ベストの選択肢にこだわらない⇒完璧主義を手放せばいい:決断するコツを教えます(その3)

4.)他人の機嫌を取ろうとしない⇒他人の機嫌を取るのもほどほどに:決断するコツを教えます(その4)

えむこさんの質問⇒自分で管理できる量まで、物を減らす近道とは?

えむこさん、このシリーズ、読んでいるでしょうか? 真面目に取り組めば、少しずつ成果があらわれるので、自分を信じてがんばってください。

*****

失いたくないという気持ちは、人生のあらゆるところで発揮されます。

私が通った高校は、音楽と美術はどちらか一方しか選択できませんでした。しかも音楽を専攻できるクラスは、何組もあるうちのたった1クラス。

一般的な科目より、音楽と美術のほうがずっと好きだった私は、どちらを選択しようか迷いましたが、結局美術を専攻しました。

音楽を専攻できるのは1クラスなので、そのクラスは3年間、ほぼ顔ぶれが変わらず、結束が強い感じでした。

3年生のとき、そんな音楽クラスに、美術専攻の生徒が数名、一緒に混ぜられてしまい、私がその1人でした。

来たくもなかったのに、よその国に来たみたいで、居心地が悪かったのですが、特に嫌だったのは、合唱コンクールでの優勝に、音楽専攻の生徒たちが異様にこだわったことです。

音楽を専攻しているというプライドがあるせいか、前年優勝しているせいか、「自分たちは優勝すべきだ」と皆、思いこんでいて(皆、というよりも、一部の声の大きい生徒が、と言うべきかもしれません)、今年も絶対優勝すべきだと、選曲のときから、もめにもめて、練習もきつくて大変でした(筆子的には)。

私は、「たかが高校の合唱コンクールで、なぜこんなにがんばらねばならないのだ。賞金がでるわけじゃなし」と思っていました。

結局、その年私たちは優勝しませんでした。2位だったと思います。

たぶん、曲が難しすぎたせいです。このクラスが前年歌った曲は、冒頭、インパクトがあって、一般受けする曲でしたが、この年のは、そうではありませんでした。

それでも、2位だったので、コンクールの最後にもう1度歌いました(入賞したクラスはまた歌うことになっていました)。

このとき、皆、がっかりしたのか、冴えないパフォーマンスだったのです。私はいつもどおりに歌いましたが。

そして、そのことを担任から叱られました。

担任は数学の先生で、合唱コンクールでのパフォーマンスにろくに貢献していなかったのに(生徒たちが勝手にがんばっていた)、「なんだ、最後のあの歌い方は」とかなんとか言われました。

これまた不愉快でした。2位で十分でしょ? 担任なら、「みんな、よくやった! がんばったな」とか、言うでしょ、ふつうは、と思いました。

音楽クラスの面々は嫌いでしたが、あんなにがんばって優勝できずにかわいそうだな、という気持ちもありました。

まあ、進学校に通っていたので、生徒も教師も、ロス・アバージョンと足りないマインドでがんじがらめになっていたのでしょう。

この状況は学校を出てからも続くかもしれません。

それに気づいて、振り回されないようにするだけで、幸福度があがります。





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