服を修繕する

TEDの動画

最終更新日: 2024.12.15

ファストファッションが地球に与える影響とシンプルな解決策(TED)

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シンプルライフを実践する上で、私たちは「ものを減らす」ことに注目しがちです。しかし、その先にある真のゴールは、「すでに持っているものを大切に使い続けること」ではないでしょうか。

今回は、その考え方を掘り下げるヒントとして、ファッションの観点からサステナビリティを考えたTEDトークをご紹介します。

タイトルは、The Simple Solution to Fast Fashion(ファストファッションのシンプルな解決法)。

起業家のジョセフィン・フィリップス(Josephine Philipsさん)のトークです。

フィリップスさんは、衣類の修理や仕立て直しを手軽に行えるプラットフォーム「SOJO」の創設者兼CEOです。

このトークから、私たちの日々の選択のパワーをうかがい知ることができます。



ファストファッションの解決法:TEDの説明

Your favorite pair of jeans — the ones you refuse to throw out — are actually a part of a global climate solution, says fashion entrepreneur Josephine Philips. When you value your existing clothes instead of chasing the latest trends, you help reduce waste and protect our planet for generations to come. Learn more about the impacts of what you wear — and the incredible power of repairing your clothes.

あなたの好きなジーンズ、捨てたくないその服は、実は世界的な気候変動の解決法のひとつなのだとファッション起業家のジョセフィン・フィリップスは言います。

最新のトレンドを追い求めるのではなく、すでに持っている服を大事にすることは、ゴミを減らし、未来の世代のために地球を守る助けになります。

着るものの選択が与える影響と、服を修理する驚くべき力について学びましょう。

収録は2023年の7月、動画の長さは8分25秒。日本語字幕あり。

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

☆トランスクリプトはこちら⇒Josephine Philips: The simple solution to fast fashion | TED Talk

フィリップスさんの英語はとても聞き取りやすく、録音の状態もいいです。

英語、日本語とも字幕が揃っているし、さほど長くなくわかりやすいコンセプトのトークなので、英語の勉強素材におすすめです。

祖母が何度も着たワンピース

今、93歳の私の祖母は、1950年代、シエラレオネで私と同年代でした。

フリータウンに住んでいました。そこは暑く、祖母は美人でした。

ある日、祖母は黄色いストライプのワンピースを買いました。オレンジ色のタイがついた美しいドレスです。

祖父は、このドレスを気に入っていました。ほかのドレスより短いので祖母の足がよく見えたからです。

祖母はこのワンピースを自分と夫のために何度も着ました。1960年代にイギリスに移住したときも、持ってきました。

その60年後の2018年の夏、祖母はこのドレスを私にくれました。60年の歴史と一緒に。

そうやって祖母は私に大事なことを教えてくれました。自分の持ち物を大事にする価値について。

私にとってこの教訓はとても重要なものとなり、私は、古着を扱うテック企業で仕事をすることになりました。

この会社をやめ、SOJOというスタートアップを作ったときも、祖母に教えてもらった教訓が生きていました。

SOJOは、衣類を修繕し、業界そのものを立て直す革新的な解決法です。

服を使い捨てる時代

手持ちの服を大事にすることは、一般的ではありません。

私はファストファッション世代です。それは服の過剰消費と使い捨て、つまり、たくさん買っては、無造作に捨ててしまうこと。

「インスタの写真で1回着たからもう着たくない」とか、「このシャツはちょっと破れたから捨てて新しいのを買おう」「金曜にデートがあるから、新しい服を買わなくちゃ」。

私たちは、こんなふうに服と付き合う文化の中で育ちました。かつて、私もそう考えていました。

でも、このように服と付き合うと、壊滅的なコストが生じます。ろくに着ないまま捨てて、チャリティショップに行った服は、毎週ガーナの海岸に行き着く1500万着の服のひとつになります。

衣料品の廃棄物

もしくはチリのアタカマ砂漠にある服の山に埋もれるかもしれません。

この服の山はとても大きいので、宇宙から見えるほどです。

衣料品のゴミは、9200万トンにもなります。

ヨーロッパに住んでいる何百万もの人を全員集めて、巨大な体重計に乗せても、私たちが毎年作っている衣料品のゴミほど重くはありません。

それだけではありません。

大量の服を製造するため、ファッション産業が出している二酸化炭素の排出量は、すべての国際便が出している量より多いんです。

解決法は服を大切に着ること

衣料品のゴミや製造する服を減らすにはどうしたらいいのでしょう?

私にとってこの問いの回答はシンプルです。

服をちゃんと大切にすればいいのです。大事にして、修理して、体型が変わったら、身体に合うように直せばいい。

捨てて、新しく買うのではなく。

ではどうすれば、服を使い捨てるマインドセットを変えられるのでしょう?

妹がいつも履いているジーンズ

私の妹が大好きなジーンズがあります。

15歳のときに、コペンハーゲンに旅行する前に、両親に買ってもらって以来ずっと着ています。

妹はアーティストです。

妹はこのジーンズを履いて絵を描きます。着心地がいいし、丈夫ですから。このジーンズで絵筆を拭くこともあります。

ジーンズはデニムでできています。天然素材ですが、たくさんの水と時間、手間暇かけて作られます。

ジーンズには価値があります。でも、その価値は時が経つにつれて、さらに大きくなりました。

ジーンズについた絵の具が世界中の絵とマッチするからです。

たとえば、黄色は韓国のギャラリーにある絵、赤はマイアミにある自宅の絵の色です。

すばらしいですよね?

好きな服を修理して着続ける

妹は、何度もこのジーンズを履いたので、SOJOを使って2回も修理しています。直すたびに、ジーンズはますます妹にとって大事なものになりました。

服を修理しながら大事に使うことには、たくさんの美とパワーがあります。

サステナビリティというと、何かをあきらめることと思われがちです。

でも、私にとってサステナブルなファッションは、何かを失うことではありません。

自分の持っている服から、より深い、真の幸せを得ることです。

もっとつながって、もっと大事にして、もっと意図的になって、個人的に楽しくなること。

妹はこのジーンズを捨てるべきではないですよね。

誰でも服を大事にできる

ジーンズはひとつの例にすぎません。

今私が着ているパンツは、自分に合うように仕立て直しました。このパンツも捨てるべきではありません。

数年前の夏の天気のいい日に、カムデンのチャリティショップで、親友と一緒に買い物していたとき買ったサマードレスも。

父がほめてくれたセーターも。

服は服に過ぎないとも言えます。

簡単に気分をあげてくれるものであり、流行を追うためのもの。1度着て、忘れ去られてしまうもの。

でも、服はもっと意味のあるものにもなります。自分にあった素材、スタイル、形のものなら。

何度も何度も着たいと思うもの。私たちの人生のストーリーや体験を物語っているもの。

服が語る物語を知ろう

誰もが服を着ます。

だから、皆さんにもちょっと考えてほしいんです。今着ているトップスやボトムスについて。

その服は世界のどこから着たか知っていますか?

どんな家族のいる女性、どんな人生を歩んでいる女性が縫い上げたのでしょう?

どこでその服を着ましたか? その服と一緒にどんな体験をしましたか?

60年後もそれを持ち続けていますか?

なぜ持ち続けないのでしょう?

もし、何かを手放そうとする時にそれがどのように作られてきたか、すべての過程が見えるとしたらどうでしょう?

さらに、それを身に着けたすべての瞬間を思い出すことができたらどうでしょう?

服を着る消費者にパワーがある

サステナブルではない衣料品のシステムの責任は、政府、法律、企業、ブランドにあることは明らかです。

でも、あきれるほどたくさんの服を買い、捨てているのは私たちだということも否定できません。

だからこそ、買っては簡単に捨てる文化から、買ったものを愛して大事にする文化に変わろうとするとき、私たちにはたくさんのパワーと機会があります。

今日は衣料品の話をしましたが、過剰な消費と廃棄の問題は、ほかのどんなものにもあてはまります。

私たちは買いすぎをやめ、買ったものの面倒を見るべきなのです。

そうすれば、世界的にゴミが減り、製造も減り、地球に対する悪影響を減らすことができます。

持っているものを大事にすることは、気候問題の解決策です。

次に何かを買う時は、

「これが必要か?」

「この服が私の手元に来るまでどんな過程を経てきたか?」

「このアイテムと私はどんな物語を作ることができるか?」

「私はこれを本当に大事にできるか?」

そう問いかけてください。

//// 抄訳はここまで ////

SOJOについて

SOJOは、ユーザーがアプリを通じて修理や仕立ての依頼を行うと、衣類を回収し、修理後に自宅まで届けるというサービスを提供しています。現在ロンドンで展開されており、今後は英国全土や海外への拡大も計画されているとのこと。

SOJO | Door-To-Door Clothing Alterations and Repairs

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本当に必要な分だけを買う

きのう、洋服を買いすぎる読者のお便りを紹介したので、今回はファッションに関するトークを選びました。

最近は環境への関心が高まっているので、服をたくさん買う人は減ってきていると思いますが、それでも衣類のゴミはあまり減っていません。

フィリップスさんの言うように、買った服を大事に長く着れば、服の廃棄物は減りますが、そもそもメーカーが売れ残りの服を大量に捨てています。

この記事によれば⇒日本で「15億着の衣服」が捨てられている事実 SDGsの取り組みはどれくらい進展しているのか | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン

日本では年間約29億着の衣服が供給され、そのうち約半分の15億着が売れ残り、その多くが新品のまま廃棄されているそうです。

あまりにリソースがもったいないですよね?

私たち消費者が新品の服を買えば買うほど、売り手側は製造しようとします。一人でも多くの人が、「まあ、これぐらいあればいいな」という線で、買うのをやめるといいなと思っています。

何もミニマリストのように極限まで服を減らす必要はありません。

「これぐらいあれば十分」と感じられる適量を意識することで、私たち一人ひとりの行動がファッション業界を少しずつ変える力になります。

******

フィリップスさんはお祖母さんから服を譲り受けましたが、私は、最近、ずっと娘のお古を着ています。

このTシャツは、娘が高校生のとき自転車に乗って資金集めをするイベントで着たものですが、着るたびにその頃のことを思い出します。

娘からもらった服

夜通しするイベントだったので、私が持っているたった1枚の毛布を娘に貸したことを覚えています。

Tシャツを着ている私の写真は以前、2年前の5月、エッセオンラインの記事のために撮影したものです。

衣替えはしなくていい。60代が実践する5つのクローゼット習慣 | ESSEonline(エッセ オンライン)

この記事には、まだ以前の家に住んでいたときに撮った写真がのっているので、読んでなつかしい気分になりました。

あなたにも、フィリップスさんや私のように、今も現役で、思い出がいっぱいある服がありますか?

よかったら、あなたの物語も聞かせてください。





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