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ファストファッション(fast fashion)に関する質問をいただいたので、この記事で回答します。
ファストファッションとは、簡単に言うと、流行の服を早いサイクルで安価に提供するビジネスモデルであり、そういうビジネスで売られている服のことです。
では、まず質問をシェアしますね。きなこさんからいただきました。ご本人にはすでにメールで返答済みです。
ファストファッションの服の質について
件名:ファストファッションについて
たまに、楽しくブログを読ませてもらっておりますきなこです。
質問がありましてお問い合わせしました。
個人的には、ブログ内で回答いただければと思うような愚問ですが、「返信は必要」とさせていただきます。忙しいのに申し訳ありません。
こちらの記事⇒長く洋服を着る方法。服を使い捨てるのをやめたい人へにある、
3番目の項目に「あまりにもチープで、質の悪い服を買ってしまうと、どんなに大事に着ようと思っても、数回洗濯するだけで、だめになります。」とありますが、今はそんなに質の悪い服が出回っているのでしょうか?
ワタクシ、自分の着る服はほぼ手縫いで、ダブルガーゼという強度がそれほど高くない生地で作っているのですが、だとしても数回の洗濯でダメになるようなことはないので、「手縫いの自分の服より強度が弱い…嘘でしょ?ありえないでしょ、どんだけ手抜きして作ってるの?!」と思いまして、思わず質問させていただきました。
手縫いより弱い市販の服なんて、とても信じられなくて。
なお、今は筆子さんの記事に触発されて服の数を少なくしていまして、手縫いの服は洗濯をしつつヘビーローテーションしても、補修が必要になるまでには、よほど失敗したものではない限り1年半以上はかかります。
ご参考までに。
もちろん、ファストファッションの弊害を聞いてからは、補修できるところは補修しますし、補修が無理なものでも生地が問題ないならブラジャーにリメイクしたり、ふんどしおぱんつのパーツとして利用しています。
下着も手縫いで作ってます。ダブルガーゼの生地は下着としても適している生地なので全く問題はありません。
今までは「よりたくさんの服を作らなきゃ」と思っていましたが、それは必要ないことに気づいて、今は「本当に着心地が良くて必要な服を、好きな色で、必要最小限で」と気が楽になりました。
ありがとうございます。
素材が悪く縫製も雑
きなこさん、ご質問ありがとうございます。
自分の服を手作りできるなんてすばらしいですね。
愚問なんてとんでもないです。いいところついていると思います。
お便りを拝見し、「(ファストファッションの仕組みを嫌っているせいで)私は、ちょっと大げさに書きすぎたかもしれない」と反省しました。
しかし、やはり、ファストファッションの服(といってもいろいろありますが)は質が悪いと思います。
昔、娘の服を洗濯したり、修繕したり、処分した体験からそう感じています。
数回洗濯しただけで、服が崩壊してしまうことはありません。
しかし、わりと早い段階で難が出ます。
生地はポリエステルやナイロンが多いです。一見、Tシャツに見えるので、コットンなのかな、と思って品質を見ると、100パーセント化繊です。そのため、すぐに毛玉ができます。
さらに、すぐに首周りがよれてきます。
縫製も甘いので、「あ、糸が1本出てる」と思って、何気なく、その1本をつかむと、ぴろぴろぴろーっと、裾をかがっていた、ステッチが取れたりします。
素材がチープで、縫製も雑だからこういうことが起こるのだと思います。
そもそも、生地が薄っぺらいです。
化学繊維は天然繊維より、丈夫なはずですから、すぐに穴があいたりはしないはずですが、穴をかがった経験が何度かあります。
ミニマリストへの道シリーズにも書いていますが、私は1959年生まれで、若い頃、デザイナーズブランドの服や、ちょっと高めの服を着ていたことがありました。ユニー(スーパーの名前)で、安い服も着ていましたが。
わりと質のいい服をさわっていたせいかもしれませんが、私の感覚からすると、ひじょうに生地が薄いです。
縫製している糸も細いです。
縫い方も雑というか、最低限、という感じです。
ファストファッションを作っている人達は、劣悪な環境の中、最低賃金以下の報酬で、きびしい納期に間に合わせるために、1日18時間、働かされたりしますから(たぶん、今もそうだと思います)、丁寧に愛情をこめて縫っている暇も心の余裕もありません。
へとへとになりながら、ロボットのようにミシンをかけ続けるのですから。
そんなわけで、数回の洗濯でかなり傷んでしまう、というのは事実だと思います。
ただ、「だめになる」と言っても人によって、感じ方は違います。たとえよれよれでも、穴があいても、私のようにしつこく同じ服を着る人だっています。
洗濯の仕方によっても、服のコンディションは変わるでしょう。
消費者の服に対する態度を変えるファストファッション
きなこさんの質問に答えているとき、ファストファッションのメーカーは、消費者の服に対する態度を変えてしまう、と思いました。
次から次へと新しい服を販売するので、ちょっとへたったり、ボタンが取れたりした、難が出たりした服を、修理もせず、あっさり見捨てる(ゴミにするか、クローゼットの奥に放置する)ことを、正当なことである、そうすべきである、と思わせてしまうのです。
1回着て捨ててもらったほうが、メーカーとしては新しい服を売ることができるので好都合です。
ファストファッションの服はあまりに安いのです。北米には、スターバックスのラテより安いTシャツがあります。
こうしたメーカーは、1回着ただけで、充分元が取れるよ、1回着ただけで、その服はもう捨ててもいいんだよ、1回着るためだけに、服を買ってもいいんだよ、みんなそうしているし、それが普通なんだよ、それがおしゃれってものだよ、というあやまったメッセージを消費者に送っているのではないでしょうか?
意識的にそうしているかどうかは別にして。
これが、この記事で私の伝えたかった、ファストファッションの罪です。
いくら大量生産でも、服の原価はそこまで安くなりません。
ファブリックを使って、さまざまなデザインの服を完成させるために、機械ではなく人間がミシンをかけています。
私は裁縫が嫌いなので、自主的に服を作ったことはありませんが、中学校の家庭科の授業で、ノースリーブのブラウスを作ったことがあります。スカートも1着作ったような気がします。
難しいところは、母に頼みましたが、授業中、先生の前では、縫っているふりをしなければなりません。
何度やっても、足踏みミシンの糸車は逆にまわるし、布地の裏に糸がぐしゃぐしゃにからまったまま縫い付けられ、うんざりしたものです。
家庭科の時間は、今でも思い出すぐらいトラウマになっています。
まあ、裁縫の下手すぎる私の特殊事例かもしれません。しかし、たとえ縫い物がうまい熟練した人がやっても、服1着作るのは、それなりに手間がかかると思います。
いろいろ付属品もつけなきゃいけないし。
コーヒー1杯より、安い服なんて、ちょっと信じられません(スターバックスのコーヒーが高すぎるとも言えますが)。
服はそれなりの値段がして当然のものであり、1着買ったら、手入れしつつ、ときには補修もして、長く大事に着ていくのが、本来あるべき姿だと思います。
ファストファッションに関する過去記事
ファストファッションのほかの問題点については、過去記事をごらんください。
「真の代償」The True Costはファストファッションの真実を暴く映画 ~これでもあなたは安い服を買い続けますか?
『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』11月日本で公開。服を買い過ぎる人は必見です
死ぬほど素敵なファッション(TED)おしゃれで安い服の大きな代償。
服を使い捨ててはいけない。着ているものがあなたの生き方を表している(TED)
エシカルファッションの追求と節約を両立させる方法はある?私は買わない選択をした
スローファッションとは? 非おしゃれ系おばさんミニマリストの取り組み
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久しぶりにファストファッションの記事を書きました。
エシカルファッションの記事は、世間的にみると、人気がありません。
消費者は、おしゃれでかわいい服がたくさん出てくる、「これ買いました~~~!」と見せる記事のほうが絶対好きです。
スローファッションという生き方もなかなか根付きません。
でもね。
服を使い捨てるような生き方はいい加減やめないと、本当にまずいと思います。
ろくに着られなかった服のゴミの量、すごいですからね。
消費者が捨てた服だけでなく、メーカーが売れ残りを捨てた分もあるんじゃないでしょうか?
ファストファッションではないのですが、去年の夏、バーバリーが、40億円以上の売れ残り商品(洋服、香水、アクセサリー)を燃やしたことが話題になりました。
ブランドを守るために、安く売ることはしないのです。
ほかの高級ブランドも、よそで安く売られたりするのを防ぐために、廃棄処分することはよくあることだそうです。
こういうニュースを聞くと、ファッション業界って競争が激しいなあと思います。それだけ、うまみのあるビジネスだから、たくさんのメーカーが参入するのでしょう。
消費者側には、「いろいろな服を着ておしゃれにしたい(おしゃれ至上主義)」「服を使ってもっと自分を美しく見せたい」という潜在的な欲望があります。
ファストファッションは、この欲望をさらに刺激して、環境に負荷をかけ、発展途上国の労働力を搾取し、ゴミを増やしているのです。