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完璧主義に関するTEDトークを紹介します。いろいろなことに対して、期待値をあげてしまう人におすすめのプレゼンです。
タイトルは、Perfectionism – The Battle of Never Feeling Quite Good Enough(完璧主義:十分よいと決して感じないこととの戦い)
スピーカーは、Julia LeGallo(ジュリア・ルガロ)さん。ルガロさんはビデオゲームのプロデューサーです。
good enough は直訳すると、「十分いい」ですが、英語的な表現で、日本語にすると、結果に満足する、よくできたと思う、あたりの意味です。
完璧主義:TEDの説明
Through her own experience as a perfectionist, Julia shares what she’s learnt and implemented to make her life more enjoyable and to feel better about herself.
完璧主義者としての自分の体験を通して、ジュリアは、もっと楽しい人生にするために、そして、自分自身にいい感情をもつために学んだことや、やってみたことをシェアします。
動画の長さは11分18秒。字幕はありませんので抄訳を参考にしてください。
☆TEDの記事の説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
具体的でわかりやすいプレゼンです。
公私ともに順調だったのに
4年まえにコーンウォール(Cornwall)に引っ越してから、とても幸せでした。
パートナーと一緒に住み始め、夢見ていた仕事につき、猫を飼いはじめ、やさしい家族や友人に囲まれていました。
でも1年ほど前、もう死にたいと思ったのです。
恥の気持ち、無力感、自己嫌悪のせいです。
ある友人はこう言いました。
「そんなに幸せで恵まれているのに、どうして自殺なんて考えられるわけ?」
その理由の一部は、完璧主義にありました。
それまで私は、「これで十分いい」と感じたことはなかったのです。
どんなにすばらしいことを達成しても、十分ではありませんでした。
自分が期待しているどんなことも超えたいと思っていて、いつも次のチャレンジが待っていました。
私の幸せは、自分のパフォーマンスの質や成功で決まっていたのです。
疲れを感じたり、100%できなかったりしたら、罪悪感を感じました。
見た目も行動も完璧じゃないと、拒絶され、がっかりされると恐れていました。
燃え尽きてしまった
期待を越えようとすることが大きなプレッシャーになり、不安症やパニックアタックになりました。
自殺を考えていた当時、私はさまざまな変化の中にいました。やりたいと思っていた仕事を始め、難しいトレーニングを2つ受けて、はじめてペットを飼い、はじめてのマイホームの内装も手がけ、きびしいダイエットもしていました。
その結果、私は燃え尽きてしまい、自分がどれほど役立たずで、価値がなく、だめな人間なのか考えることに抵抗する力がありませんでした。
敗北感やプレッシャーから逃れるために、窓から身投げしたいと思ったのです。
きょうはこの体験について詳しくお話しします。
完璧主義とは?
リサーチによれば、完璧主義は、異常に高い目標を設定し、それを見事にやってのけることに固執してしまう資質です。
人の行動に対して、とても批判的になります。
細かいことにこだわり、きびしいルールを作り、失敗を嫌い、他人をなかなか信用しません。
完璧主義にはいい面も悪い面もありますが、極端な完璧主義は、しばしば、心の病気を引き起こします。
不安症やうつなど。
完璧主義の2つのタイプ
完璧主義者には2つのタイプがあります。
ある人達は、外部に対して完璧主義になります。自身の標準に照らし合わせて、ちゃんと行動していない人に対して、大きな不満を感じるのです。
ある人たちは、自分自身に対して完璧主義になります。
自分の行動が十分ではないと感じて、とても自分に厳しくなります。
私には両方の面がありましたが、どちらかというと自分自身に完璧を求めていました。
自分に対して完璧を求めていた
なんでも計画どおりに進んでほしいし、いつも100%できることを好みました。すぐれたパフォーマンスをし、目標をすべて達成したいと思いました。
でも人生はそんなふうには進みません。
私は時には疲れ、やる気がなくなるし、人の同意を得られないこともあるし、思い通りにいかないことはたくさんあります。
私はこうした事態にうまく対処できず、人間関係で苦労しました。
2年前、自分が完璧主義者だとよくわかりました。
自分で気づくことが、完璧主義を理解する鍵です。
それ以前は、完璧主義だなんて全く思っていませんでした。
自分に対して必要以上にきびしいとき、その状態に気づき、うまく対処する方法を考え、実践することがとても大切です。
きょうは、3つの対処法を紹介します。
対処法1:認知行動療法
最初は、認知行動療法(cognitive behavioral therapy、CBT)です。
これは、話をしながら、感情を制御して、助けになる考えや信念を得るセラピーです。
今考えている問題の対処法を見つけ、実践することにも役立ちます。
極端なまでに、高いスタンダードをもうけてしまう私に、CBTはとても役立ちました。
また、完璧主義のせいで、不安に陥ったときに、呼吸をするなどの対応策を見つけることにも役立ちました。
対処法2:バレットジャーナル
2つ目はバレットジャーナルです。
ライダー・キャロルというグラフィックデザイナーが考案したもので、空白の日記を、安全でジャッジしないスペースとして使い、自分自身を表現します。
バレットジャーナルのおかげで、自分の考えを整理し、一歩、後ろに下がって、大事なことに、時間やエネルギーを使うようになりました。
対処法3:瞑想とマインドフルネス
最後のツールは瞑想とマインドフルネスです。
ときには、人生がものすごいスピードで進んでいき、その場で起きていることや、自分が生きていることに感謝できないことがあります。
瞑想をして、批判的ではない目で、今の状態や感情を見つめます。
完璧主義とうまく付き合う
以上のツールが私を助けてくれました。
だからと言って、私の完璧主義がなくなったわけではありません。
私は、完璧主義を捨て去ることはできないと思います。
それに、完璧主義でなかったら、今の私が手にしているものを得られなかったと思います。
私にできる唯一のことは、完璧主義のよくない影響をできるだけ減らすことや、使う価値のあるときだけ、完璧主義を使うことです。
完璧主義に悩む人たち
なぜ、私がこんな話をしているのか、不思議に思う人もいるでしょう。
これはとても個人的な話で、私だけの体験ですから。
私はこれまでいろいろな人と会い、ソーシャルメディアもたくさん使ってきました。
それで気づいたのですが、完璧主義で苦労していたのは、私だけじゃないんです。
同じように苦しんでいる人がたくさんいます。
親として、十分ではないと、自分自身を痛めつけている親たちに会いました。
自分の作品を、ほかのもっと経験のある人の作品とくらべて、自分はだめだと思っているアーティストに会いました。
自分の標準とくらべて、仕事ぶりに満足できないからと、スタッフをいじめる上司たちに会いました。
自分にきびしすぎて、他人と共に働くことができず、引きこもる人たちも見ました。
私の話が、皆さんの知っている誰かや、皆さん自身に、あてはまるかもしれません。
完璧じゃなくてもいい
私の体験から、何が学べるでしょうか?
まず言えるのは、オーケーじゃなくても、オーケーだということです。
ネガティブな感情はポジティブな感情と同じくらい価値があります。ガティブな感情を感じるのは人間らしいことです。
疲れてもいいし、クッキーをもう1枚食べてもいいし、コンフォートフードを食べてもいいし、なまけてもいいし、怒っても、悲しんでもいいのです。幸せな気持ちでいてもいいのと同じように。
もう1つ言いたいのは、完璧じゃないことは、完璧であることよりずっと大事です。
何が完璧かは、人によって違うし、すべてが自分の思い通りに行ったらものすごく退屈ですよね。
子どものときポケモンカードを集めていました。私が1番好きだったカードには、ほんの小さな傷があって、ほかのものと違っていました。
完璧じゃないことは、このカードの傷のようなものです。ちょっと違っているから、ユニークで、弱点があるから、愛すべき存在となります。
最善を尽くせばいい
3つ目に言いたいことは、人生はグレーだということです。いいことも悪いことも起こります。
人生は、いろいろなことが混沌としている世界で、私たちは、その中をベストを尽くして歩んでいこうとしています。手持ちのものをつかって、最善を尽くそうとするのが人生です。
先ほどもお話ししたように、私は完璧主義を完全に攻略したわけではありませんし、ときにはそのことにがっかりすることがあります。
でも、私は幸運でした。セラピーを受けることができたし、いつも支えてくれるパートナーがいるし、マインドフルで柔軟性のある職場で働いています。
それ以上に私はコンフォートゾーンを出ようとする決断ができました。内面を見つめて、変わる選択ができました。
自分をほめよう
私のようにラッキーじゃない人もいます。自分が完璧主義だと気づいていない人、改善するための行動をとろうとしていない人、助けを得られない人がいます。
現在、いろいろな産業で、メンタルヘルスの重要性が唱えられ、スマホで、瞑想やセルフケアのアプリを利用できます。
私はマインドフルネスがコアになるゲームを作りました。エンターテイメントを通して、私ほどラッキーでない人たちを手助けしたいと思ったからです。
自分で自分を「よくやった」とほめてあげましょう。自分にやさしくしましょう。私たちはベストを尽くしているのですから。
自分を毒するのはやめましょう。誰もが愛される価値のある、十分な存在なのですから。
//// 抄訳ここまで ////
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コントロールの手をゆるめるすすめ
TEDトークで、完璧主義の話をする人は、筋金入りの完璧主義者であることが多いですが、そこまでいかなくても、物事が自分の思い通りにならずに、大きなストレスを感じて、そのことに気づいていない状況は、よくあります。
モーニングページを朝、ちゃんと書くことができないからどうしたらいいか、とか、子供が小さいから、書く時間がありません! というメールを何通ももらいました。
たとえばこのようなメールです⇒モーニングページを書いていると睡眠不足になります←質問の回答。
無理にモーニングページを書かなくても人生はふつうに過ぎていきます。
ところが、多くの人が、「ちゃんとモーニングページを書く自分」「モーニングページからすごい効果を得ている自分」というスタンダードを自分で作って、そうできない自分に対して、大きなストレスを感じてしまうのです。
そういう完璧主義的な強いこだわりのある人にこそ、モーニングページ(に類したもの)が助けになると思っているので、「ちゃんとやらなきゃ!」と気張らず、できるところから、やってほしいと思っています。
モーニングページにかぎらず、ほかのことに対しても、物事を思い通りにしたい(コントロールしたい)とがんばりすぎること、最大限の効果を得たいと欲張ること、手持ちのリソース(使える時間や体力など)を無視して、あれもこれもやりたいと力みすぎることがあると思います。
しかし、人生は思い通りにいかないことのほうが多いので、どんなにがんばっても、思ったようにはできず、ストレスが増えます。
このストレスが無駄な買い物につながると私は本気で信じています。
ストレスが多い人は、「私は完璧主義じゃない」という確信があったとしても、時々は、自分で勝手に高いハードルを設定していないか、状況をコントロールしようとしていないか、考えてみてください。
今の状況を違った目に見ることができ、ストレスが軽減すると思います。