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スマホを使いすぎて、頭痛や目の疲れ、腕の痛みに悩んでいる人におすすめのTEDの動画を紹介します。
Lior Frenkel さんの、Why we should rethink our relationship with the smartphone(なぜ私たちはスマートフォンとの関係を見直すべきなのか?)
Frenkelさんはイスラエルの人です。名前を英語読みするとリオール・フランケルとなりますが、これで正しいかどうかは不明です。
スマホと最適な関係を保つには?
プレゼンの内容は、スマホ中毒の人が多いから、それに気づき、デジタルダイエットをすべきだ、というシンプルなもの。
シンプルですが、自分の生活の中心がスマホだと気づいていない人、あるいは認めたくない人が多いので取り上げました。
フランケルさん自身、IT系の人であり、以前は朝起きたら何をするよりも前に、スマホをチェックしていたそうです。
日本語字幕はありません。抄訳を書いておきます。
収録は2014年。動画の長さは15分15秒です。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
スマホのアプリ開発中に気づいたこと
きょうは、アディクション(中毒、依存、常用癖)の話をしにきました。
多くの人が中毒になっているのに、気づかないふりをしているスマホ依存の話です。
1年前、私はあるビジネスを立ち上げようとしていました。世界中からすばらしい動画を集めて紹介するアプリを作ろうとしていたのです。
みんなに楽しんでほしかったし、幸せになって、毎日わくわく暮らしてほしかった。
同時に、収益をあげる目的もありました。
収益をあげる最良の方法は、できるだけ多くの人に、できるだけ長い時間、このアプリを使ってもらうこと。
そこで、アプリの利用を増やす方法を学ぶワークショップに参加しました。
ワークショップで、寂しい、退屈、不満だ、といったユーザーのマイナス感情をうまく利用すれば、アプリの利用を増やせると聞きました。
このワークショップ中に、私の中で何かが変わりました。ワークショップに集まった80人は皆、私と同じ目的を持っています。
人を自分のアプリに夢中にさせることです。
私は、居心地が悪くなりました。というのも、私自身がスマホに依存していたからです。
私もスマホに依存していた
昔はこんなふうだったのです。
起きて目覚まし時計のアラームを止めると、スマホでたくさんのノーティフィケーション(通知情報)のチェックを始めます。
フェイスブック、インスタグラム、仕事のEメールなど。
1時間たっても、まだ窮屈な格好でベッドの中。歯も磨いてないし、シャワーも浴びていないし、コーヒーも飲んでいない。
いったい自分は何をしているのか?
この生活を変えることにし、UNDIGITIZE.ME(アンデジタイズ・ミー)というプロジェクトを開始しました。
スマホ依存に警鐘をならすプロジェクトです。
ほかの人も、私と同じ問題をかかえているのかどうか、調べてみました。
人々のスマホへの依存状況は?
一般的なユーザーは、スマホを1日に少なくとも110回チェックしています。
スタンフォードの調査では、4分の3の生徒が、財布を忘れるより、スマホを忘れるほうが困ると言い、同じぐらいの数の生徒が、スマホを持ったまま寝ると言っています。
1999年にパシフィック・ベル・ワイヤレス(電話会社)が、人々に、公共の場(レストラン、映画館、教室など)で、電話を使うのは無礼だと思いますか、と訪ねたら、90パーセント以上の人が、「ひじょうに無礼なことである」と答えています。
ところが、15年後のいま、公共の場所でスマホを使うのはひじょうによく見られる光景です。
こうした行為に、名前もついています。
phubbing (ファビング)です。
ファビングとは、すぐそばにいる人、ときには自分が会話をしている相手を無視して、電話を使うことです。
これは依存なのでしょうか?
それとも単に、「ひんぱんな使用」と呼ぶべきでしょうか?
スマホ依存とほかの依存に共通点があります。
喫煙者はタバコがないと、ストレスを感じ不安になります。
同様にスマホの場合も手元になかったり、バッテリーが切れそうになると不安になりますよね。
スマホの子供たちへの影響
私には8歳と3歳の甥がいます。私は技術者なので、彼らが、デジタル機器をさわっているのを見るのが好きです。
子供たちは、読み書きより先に、セルフィー(自分撮り)のやり方を覚えています。
同時に心配にもなるのです。
デジタル機器の過度の使用は子供たちの脳に悪影響があると、さまざまなリサーチが証明しています。
ひんぱんにデジタル機器を使っていると、脳細胞が減少する可能性があります。大脳皮質においてです。
特に前頭葉です。
ここは、優先順位をつけたり、計画を立てたりなど、何かをやりとげるのに必要なことを司っている場所です。
島皮質も影響を受けます。ここは子供たちが、感情移入したり、思いやりをもつ方法を学ぶ場所です。
大人も影響を受けている
脳が変わってしまうのは子供だけではありません。
ボストン・メディカル・センターが、アメリカのファストフードのレストランを利用している親子連れを観察しました。
たくさんの親たちが、子供と食事中に、スマホを見ており、そのうち3分の1は常に電話を使っていました。
自分の子供に邪魔をされると、ほとんどの場合、親はネガティブな反応をします。
なぜこんなに依存してしまうのでしょうか?
ハーバード大学の心理学部のリサーチによれば、自分に関することをスマホを使ってシェアすると、脳の快を感じる部分が活性化されるそうです。
お金を得たり、食事をしたときのように。
同時に、私たちは置いてけぼりにされることも恐れています。だから、SNSを見て、他の人が何をしているのかチェックしたいのです。
ところが、実際は、スマホを利用しすぎて、現実世界で起きていることを見失っています。
考えごとをしない弊害
スキマ時間をすべてスマホで埋めていると、考えごとをしなくなります。
窓の外もみないし、木々も見ない。
歴史上、偉大な発見をしてきた人は、みんな思索にふけっていました。アインシュタインやニュートンのように。
木を見たり、窓の外を見ていたときに、素晴らしいアイデアを思いついたのです。
何もせずに、ただ考えることは、よりクリエイティブになることです。
考えごとをするのは、記憶にもよいです。短期記憶を長期記憶にするためには、脳を休ませる必要があります。
ぼーっと考えごとをしているときに、脳が休憩できるのです。
スマホを使わないときってどんなとき?
このようなリサーチ結果を知り、私は世界を変えなければならないと思いました。
スマホ依存について、人に知ってもらい、このことについて語ってもらいたいと思ったのです。
そこで、友だちに、生活の中で、スマホを使わないときって、どんなときかな、と聞いてみました。
写真をとったのでお見せしますね。
5枚こういう写真をとったら、すごく反響があり、他の人もどんどん写真を送ってくれて、500枚ほどになりました。2週間のあいだに、このキャンペーンはどんどん大きくなったのです。
イスラエルだけではなく、世界中で広まりました。
たくさん集まったエピソードの中で、もっとも印象に残っているのは、オーストラリアの男性から教えてもらった話です。
14歳の娘が部屋に入ってきたとき、彼と奥さんが、娘を無視して、それぞれスマホを見ていたら、娘が、「ママ、パパ、無視しないで(this is unsocial)」と言ったそうです。
それ以来、彼は、夕食の時間は、2時間、誰もスマホを使わないことにしました。
私たちのキャンペーンが彼の生活を変えた、と喜びのメールを送ってくれました。
☆スマホを置こう(Phone Faced Down)キャンペーンで集まった写真の例:
本を読んでいる時
学校に行くために起きる時
おいしい朝ごはんを食べている時
ヨガをしている時
言葉の意味を調べているとき
友だちと一緒にいるとき
子供と遊んでいるとき
スマホの使用を見直すほかのプロジェクトもやった
次に私は子供たちの状況を変えたいと考えました。
子供専門の精神療法士と共同で、デジタル機器に依存している子供たちのための本を作りました。
子供たちを怖がらせたり、スマホやタブレットを使っちゃだめだよ、という本ではありません。
もっと外に出てこの世界を見ることをすすめる本です。
今年の3月には、アンプラギング(unplugging)のイベントもしました。
数年前から、アメリカのサンフランシスコ、LA、ニューヨークで、年に1回、1日だけ、ネットに接続しない(アンプラギング)イベントが始まっています。
24時間、スマホをどこかに置いて、ほかのことをして楽しむのです。
同じ主旨のイベントをテルアビブでやってみたところ、大成功でした。
このイベントをやってみてわかったのですが、24時間スマホを使わないだけで、不安がなくなり、現実社会で、ほかの人とつながれるようになります。
デジタルダイエットのすすめ
私は、スマホやテクノロジーに反対しているわけではありません。スマホは本当に素晴らしいツールです。
私はスマホが大好きです。
技術者としても。
素晴らしいアプリもたくさんあります。人にポジティブな影響をもたらすアプリです。習慣化を助けるアプリとか。
とはいえ、いま、私たちが体験している変化は本当に急激なものです。
Google Glass(グーグルグラス)の開発が進んで、市販されるのも間近だし、Googleはコンタクトレンズ型コンピュータの特許も持っています。
ウェアラブルの技術の開発も盛んです。
そのうち、肉体に端末を埋め込む日が来るかもしれません。そうなれば、いまよりさらに、忙しく、のんびりできない日々になるでしょう。私たちが変化を起こさない限り。
私がおすすめしたいのはアンプラギングではありません。デジタルダイエットです。
アプリの中にはジャンクフード的なものもありますが、健康にいいオーガニックフードのようなアプリもあります。
食べ物に気を使うように、スマホについても、何をどれだけ使うか、気にするべきなのです。
さっそく今日からやりましょう。
//// 抄訳ここまで ////
単語の補足
phubbing ファビング
人と一緒にいるとき、相手に注意を向けず、自分の電話(スマホ)を見て、相手を無視する(snubbing)こと。
phone + snubbing からできた言葉です。
phone フォーンは 電話
snub スナブ は 人を鼻であしらう、無視する、という意味の動詞。
grey matter 灰白質(かいはくしつ)
神経細胞が密集して灰白色をしている部分。大脳皮質。
frontal lobe 前頭葉
insula = insula cortex 島皮質(とうひしつ)
感情にかかわる刺激を察知して、感情の反応をする部位と連携したりします。
miss out 逃す、見逃す、失う
置いてけぼりにされる恐怖、FOMO(Fear Of Missin Out)については、以前記事にしています⇒SNS依存に注意。FOMO(フォーモー:取り残される不安)を捨てる方法
daydream 夢想する、空想にふける
swell 波
hitting up the swell サーフィンする
unplugging アンプラギング
ネットの接続を切ること。あるいは、デジタル機器を全く使わないこと。
Google Glass メガネの形をした端末
販売されましたが、一般販売は中止されました。この動画は2014年収録なので、「これから販売」と言っています。
wearable ウェアラブル
身につける端末のこと。衣服や腕時計などの形にして、身につけたまま使う小さなコンピュータです。
デジタル機器との付き合い方を考えるのに参考になる記事
スマホ疲れしてませんか?~簡単デジタルデトックスで心の余裕をとりもどす
スマホ依存のミニマリストは要注意~減らしたつもりが不用なモノを抱え込むことに
YouTubeの見過ぎをやめる9つの方法。本気で依存から抜け出したい人へ。
スマホの利用は自分でコントロールするしかない
スマホは目的をもって使い、貴重な時間をスマホに奪われないようにするのが一番です。
このプレゼンでは、特にSNSを問題にしていますが、中にはスマホでするゲームが止まらないとか、YouTubeばかり見てしまう、なんてケースもあるでしょう。
いずれも時間を失う行為です。
薬物依存やギャンブル依存、アルコール依存は反社会的な依存なので、リハビリ施設があり、本人もがんばって依存から抜けようとするし、周囲の人も助けてくれます。
ところが、スマホ依存とかコーヒー依存、甘いもの依存、買い物依存は、行為そのものは、べつに犯罪じゃありません。
アプリを開発している人、コーヒーや甘いものを販売している人は、どちらかというと、みんなにもっと消費してもらいたい、依存してもらいたい、と考えています。
だからこそ、自らが自覚して、使い方を考えなければなりません。
流されたままでいると、事態はかえって悪くなるか、よくてもそのままです。
スマホの場合、スマホを使っているつもりが、スマホに使われる日々になってしまいますね。
部屋や、壁、収納スペースに余白が必要なように、日々の時間にも余白が必要です。
暇さえあれば、スマホを手にして、スキマ時間を埋めてしまうと、本当にやりたいことができないし、体調も悪くなるし、かえってストレスがたまります。
きのうも書きましたが、自分の暮らしがよくなることをめざして使うのがいいと思います。
スマホは目的意識を持って使おう⇒座りっぱなしが健康によくないなら、寝ながらスマホをするのはいいの?←質問の回答
ときどき、スマホのおかげで、望む暮らしに近づいているのか、それともその逆なのか、考えてみるといいですね。
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ミニマリストの中には、スマホを多用する人と、逆にスマホを捨てる人、持たない人がいます。私は使っています。
家の中に電話機がないので、通話にはiPhoneを使用。
ですが、そんなにヘビーユーザーではありません。なければないで生きていけそうです。
以前は出かけるときも、あまり持ち歩かなかったので、スマホを家の中に入れたまま、自分を締め出したことが2回あります。これ以後、出かけるときは持ってでるようにしています。