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人を特別な気持ちにさせたいとき、高価な贈り物や演出は必要ないと教えてくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、The Secret to Making Someone Feel Special(誰かを特別な気分にさせる秘訣)。
ホスピタリティ業界で18年の経験があり、旅行の専門家のSarah Dandashy(サラ・ダンダシー)さんのトークです。
人を特別な気分にさせる方法:TEDの説明
Award-winning concierge Sarah Dandashy reveals the true secret to making someone feel special—it’s not about extravagant, exclusivity, or expense. Instead, Sarah shares how the key lies in disrupting expectations. By taking an ordinary experience and infusing it with creativity and imagination, you can transform it into something extraordinary. This simple yet powerful approach demonstrates that making someone feel special is within reach for anyone, no grand gestures required.
和訳:受賞歴のあるコンシェルジュ、サラ・ダンダシーが誰かを特別な気持ちにさせる本当の秘訣を明かします。
それは、豪華さ、特別感、お金をかけることではありません。
彼女が語る鍵は、期待を裏切ることにあります。
何気ない日常の出来事に、創造性と想像力を加えるだけで、素晴らしい体験に変えることができます。
このシンプルながらも強力なアプローチは、誰にでも実践可能ですが、大げさな演出は一切必要ありません。
収録は2024年の10月、動画の長さは10分37秒、動画の後に抄訳を書きます。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
フレンドリーな話し方がされている親しみやすいトークです。
ホテルのコンシェルジュとして15年勤務
私はホスピタリティ業界の最前線で働いてきました。
そのうち15年間はホテルのコンシェルジュとして働きました。
つまり、5,475日間 ホテルのロビーにいたんです。そして様々な出来事を目撃しました。
びっくりするような光景もあれば、心が温まるような場面もありました。誕生日のお祝いや、新婚旅行中のカップルなど、あらゆる瞬間に立ち会ってきました。
真夜中に財布をなくしてしまったゲストや、急いでタクシーを呼びたい人の対応もしました。
私たちはまるで Google、Amazon Prime、Siri、占い師、メアリー・ポピンズ を掛け合わせたような存在です。
テディベアの素敵な体験
ある子どもが大切なテディベアをホテルに置き忘れたことがあります。
母親は慌てて空港からホテルに電話をかけてきました。飛行機は離陸するところで、子どもは涙を流しています。
そのテディベアは、その子が生まてからずっと一緒で、一晩も離れたことのない宝物だったのです。もう二度と手元に戻らないかもしれません。
母親が電話をかけたコンシェルジュは、私の親しい友人であり、同僚でした。
彼女は母親に、「必ずテディベアを見つけます」と伝え、すぐに行動を開始しました。
同僚が遺失物取扱所(Lost and Found)に連絡したらそこにテディベアがありました。
すぐに母親へ「見つかりました!」とメッセージを送り、普通なら、そのまま梱包して翌日FedExで送るところです。
しかし、単に落とし物を返すだけでは、夢のような体験にはなりません。
同僚はテディベアを「冒険の旅」に連れ出しました。
テディベアがプールサイドでくつろいでいる姿、スパでリラックスしている様子、予約が取りにくい高級レストランでランチを楽しんでいる姿、そんな様子を写真に撮りました。
翌日、テディベアを送り返す前に、一家が飛行機を降りる頃に届くよう写真をメールで送りました。
「ただ返ってきたこと」と「思いがけない冒険」の、どちらがより印象に残るでしょうか?
誰でも落とし物を返すことはできます。しかし、想像力と心配りがあれば、「ただのトラブル」を「忘れられない思い出」に変えることができるんです。
予想通りの対応ではなく、予想を超えた体験を提供すると、特別な瞬間を生み出せます。
お金をかける必要はない
私たちは、誰かにその人を大切に思っていることを伝えたり、感謝や愛情を示したりするには、高価で豪華なことをしなければならないと考えがちです。
その結果、高級ブランドの贈り物、豪華なディナー、特別な体験など、よくある「特別」の形を追い求め、疲れ果て、財布も空っぽになります。
高級ブランドの贈り物が悪いと言いたいのではありません。ただ、15年間ホテルのコンシェルジュとして働いた経験から言えるのは、特別なことは必ずしも高価なものではないということです。
実は、「特別なこと」はすぐ目の前にあり、私たち全員が「何気ないやりとり」を「忘れられない瞬間」に変える力を持っているんです。
それは、相手にしっかり注意を向け、いい意味で期待を裏切ること、平凡な出来事を特別な思い出に変えることです。
ホスピタリティ業界の現状
さて、現代のホスピタリティ業界について考えてみましょう。
Airbnbや格安航空会社のおかげで、これまでになく手軽に旅行できるようになりました。
しかし、その一方で、旅行業界はもうひとつの極端な方向にも進んでいます。
私たちはこれまでにないほどの豪華さに取り囲まれた時代に生きています。
今や、五つ星ホテルは10年前には想像もできなかったような豪華なサービスを提供しています。
パーソナルバトラー(専属執事)、枕の種類を選べる「ピローメニュー」、氷でできた「アイスホテル」、海中で食事ができる「水中レストラン」など、驚くような設備やサービスが次々と登場しています。
しかし、人々が本当に求めているのはそういうサービスではありません。
J.D.パワーの調査によると、ホテルの宿泊客の満足度は全体的に向上しているものの、最も重要視されるのは「スタッフの対応」と「チェックイン・チェックアウトの体験」 でした。
つまり、ホスピタリティの人間的な要素こそが、宿泊客の印象を左右するのです。
Deloitte(デロイト)の別の調査では、宿泊客の59%が「スタッフがマニュアル通りの対応を超えてくれれば、体験はもっと良くなる」と感じているとわかっています。
どれだけ贅を尽くした設備があっても、人間的なつながりや思いやりにはかなわないのです。
ホテル業界はこの教訓を学びつつありますが、私たちはどうでしょう?
高価で豪華なことを追求する傾向
私たちはインスタ映えする瞬間を作ることにばかり気を取られ、大切なものを見失っています。
その結果、「誰かを喜ばせるためには、派手な演出が必要だ」というプレッシャーを感じ、もっと意味のある、個人的で思いやりのあるやり取りを犠牲にするという悪循環が生じています。
ソーシャルメディアは毎日のように「もっと大きく、もっと豪華に、もっと高価に」というメッセージを私たちに浴びせています。
そのため、私たちは「完璧な瞬間」を作ろうと頑張りすぎて、気づけば疲れ果てているのです。
しかも、そういうことをする間に、本来大切にしたかった人とのつながりそのものを見失ってしまうことがあります。
では、どうすればこの考え方を変えられるのでしょうか?
どうすれば、本当の意味で「特別な瞬間」を生み出せるのでしょうか?
特別な瞬間を生み出す3つの鍵
特別な瞬間を生み出す鍵は、たった3つのシンプルな原則にあります。
1. 日常のルーティンを壊す(最も重要)
相手の「いつもの流れ」を崩すチャンスを見つけて、単調な毎日の中に小さな変化を加えると、意外性のある驚きが生まれます。
重要なのは、「ちゃんと相手を見ている」というメッセージを伝えることです。
小さなジェスチャーでも、予想外の出来事なら相手に強く響きます。
2.相手をよく観察し、細かいことを覚えておく
心に残る特別な瞬間は、相手の細かいことに気づくことから生まれます。
大事なのは、お金をかけることではなく、相手の好み・嫌いなこと・ちょっとした癖・密かに楽しんでいることを理解し、覚えておくことです。
「ハートウォーミングなサプライズをしなきゃ」と身構える必要はありません。
ディテールが重要です。 相手のパターンを理解すれば、どのタイミングで驚かせればいいのか見えてきます。
3.創造力を発揮する
ちょっとした創造性と気配りを加えると、何気ない瞬間を忘れられない思い出に変えることができます。
大切なのは、「何をするか」ではなく、「どう考えて、どう気持ちを込めたか」です。
「気持ちが大事」なんて月並みな言葉ですが、本当にその通りなんです。
ただ、気持ちがこもっていれば何でもいいというわけではなく、相手を理解した上での思いやりある行動が大切です。
犬好きのお客さんへのサービス
あるコンシェルジュの同僚が、長期滞在している常連の客を担当していました。
そのお客さんは大きなプロジェクトに取り組む高レベルのエグゼクティブで、何ヶ月も家を離れていました。
普段はとても穏やかで感じのいい人でしたが、最近はどこか元気がなく、少し心ここにあらずといった様子でした。
そんなある日、コンシェルジュはお客さんが同僚に「家にいる愛犬が恋しくてたまらない」と話しているのを、偶然耳にしました。
これを聞いて彼女は、あるアイデアを思いついたんです。
翌日、いつものモーニングコール(目覚ましの電話) をする代わりに、地元のセラピードッグを彼の部屋に訪問させる手配をしました。もちろん、事前にお客さんの許可を得たうえです。
その効果は想像以上でした。
ドアを開けた瞬間、お客さんの表情は一変しました。
それまでの疲れ切った様子は消え、まるで別人のように生き生きとした笑顔を見せたのです。
それ以来、お客さんはとてもリラックスして、周囲と積極的に関わるようになり、何よりも、この思いやりのある同僚の行動に深く感謝していました。
この出来事にほとんどお金はかかっていません。
それでも、どんな高級サービスでも提供できないような、心のつながりと忘れられない思い出が生まれたのです。
同僚の行動は、お客さんに、「自分はただの宿泊客ではなく、一人の人間として大切にされている」 ということを伝えました。
誰かを喜ばせるチャレンジ
皆さんに、チャレンジしてほしいことがあります。
周りの人を特別な気持ちにさせる方法について、改めて考えてみませんか?
今週、身近な人を1人選んでください。
友人、家族、同僚、あるいは普段よく見かけるけれど、あなたの存在に気づいていないかもしれない人。
その人の一日を少し明るくするような、予想外のちょっとしたサプライズをしましょう。
派手な演出や高価な贈り物である必要はありません。
その人のために考えた行動であることが重要です。
大切なのは、相手を驚かせることではなく、つながることです。
ほんの少しの想像力と遊び心があれば、何気ない日常が特別なものに変わり、喜びとつながりがある瞬間を生み出せます。
誰かを特別な気持ちにさせるのに、大げさな演出や高価な贈り物は必要ありません。
大切なのは、小さな気配りや心遣いです。
相手の普段の行動や好みを知り、その人らしさを理解して、ちょっとした驚きを用意しましょう。
それこそが、誰かを特別な気持ちにさせる方法なのです。
//// 抄訳ここまで ////
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特別なことは高価なものではない
人を特別な気分にさせたいとき、ものやお金はそんなに必要ないと伝えるプレゼンを紹介しました。
このトークはホテルのお客さん、つまり誰か他の人を幸せにする秘訣を教えてくれますが、自分自身を幸せにすることにも応用できる考え方だと思います。
私たちは自分を幸せにするために、高価なものをたくさん用意する必要はないんです。
実は人を幸せにしてくれるのは、他の人とのつながり、楽しかった体験、何かを成し遂げて得た充実感など、目に見えない気持ちです。
まずは、ものより気持ちを重要視しましょう。
特別なものや体験を追い求めるのではなく、身近にある小さな喜びを見つけ、少しの工夫をほどこせば、もっと豊かに感じられるのではないでしょうか?
小さなことをイベント化してみたり(「好きな映画を見る日」「お気に入りのカフェに行く日」など)、自分へのプレゼントを引き出しの中に潜ませておいたり、自分自身に手紙を書いたり。
いつもの日常にもっと目を向けて、自分自身をしっかり観察し、喜ばせる工夫をしてみてください。
そうすれば、ものをたくさん買って、ほとんど使わず断捨離する生活から抜け出せるでしょう。