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仕事や片付けが停滞している人の参考になるTEDの動画を紹介します。タイトルは Why we procrastinate(人が先延ばしする理由)、プレゼンターは Vik Nithy(ヴィック・ニッシー)さんです。
ニッシーさんは20歳のときすでに会社を3つ作った若きアントレプレナーです。
これはTEDxYouthのプレゼンです。スコッツカレッジはオーストラリアのシドニーにある私立高校。
TEDxYouthは高校生、大学生など若い人向けのコンファレンスなので、試験勉強や宿題を先延ばしにしない方法が語られていますが、断捨離や家事にも応用できます。
ニッシーさんは司会者の紹介によると、HSC(Highly Sensitive Child)だったそうです。
HSCは感覚的な刺激に人一倍敏感な子供のことです。すぐにパニックになったりもします。ADHDと似ているのですがちょっと違います。
なぜ私たちは先延ばしするのか?
動画は9分ほど。日本語字幕はありませんが英語は出せます。動画のあとに抄訳を書きます。
高校生のときはいつも先延ばししていた(導入)
2年前に高校を卒業しました。良い成績でしたが、先延ばし癖に悩んでいました。
試験勉強も宿題をやるのもいつもギリギリでした。
私たちが先延ばしするのは勉強だけではありません。やらねばならない用事とか、将来について考えること、お金を貯めること、健康になることも後回ししてしまいます。
先延ばしはひじょうに深刻な問題です。自分がやりたいことをやれなくなってしまいますから。
今夜は、なぜ人が先延ばしをするのか、どうやったら先延ばししないですむのかお話します。
先延ばしするとき脳内で起こっていること
ものごとを後回しにするのは病気ではありません。それは意思決定です。今やるべきことをあとでやろうと決めることです。
心理学の学生である私は、先延ばしをしているとき脳内で何が起きているのか知ることができました。
大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)と前頭前皮質(ぜんとうぜんひしつ)が戦っているのです。
前頭前皮質は、「今宿題をしなければならない。提出期限は明日だ」と自分に言います。ここは脳の高度な部位です。
大脳辺縁系は、原始的な部分で、勉強をする前にテレビを見たがります。
ではなぜ、大脳辺縁系がいつも勝ってしまうのでしょうか?
その答えはこの小さな扁桃体(へんとうたい)にあります。扁桃体は、恐怖や不安を司り、恐ろしい刺激に対して「戦うか逃げるか反応」を起こす場所です。
私たちはジャングルでライオンにあったときも、宿題をやっていない時、先生がやってきたときも同じ反応をします。
体が固まって、手に汗をかき、心臓の鼓動が早くなります。すると意思決定をする前頭前皮質がシャットダウンしてしまうのです。
ライオンにあったときに、「宿題やらなきゃ」なんて考えていたら、ライオンと戦ったり、その場から逃げたりできません。
先延ばしをしているとき、わたしたちは、宿題のような嫌な刺激に対して、不安を感じているのです。
目の前のタスクに恐怖を感じているから後回ししてしまう
では、私たちは何を怖れているのでしょうか?
私たちの心の中にサルがいます。このサルが宿題の恐怖に反応しているのです。
宿題がありすぎてどこから手をつけていいのかわからず恐怖を感じているのかもしれません。
やりたくないという気持ちでいっぱいなのかもしれません。自分にはできそうにもないから、失敗を怖れているのかもしれません。
完璧主義者は、敗北感を感じたくないので、先延ばしをセルフ・ハンディキャッピングの道具に使います。
試験準備を余裕をもって始めず、一夜漬けすれば、点数が悪くても、自分は勉強ができないわけじゃない、単にちょっとなまけてギリギリに勉強したからだ、と言い訳できるのです。
前頭前皮質は、先延ばしするのは馬鹿げた意思決定だと知っています。なぜなら失敗は、ポジティブな学びのチャンスだし、勉強をなまけて後悔するより安全な道を行ったほうがいいのですから。
けれども扁桃体は無意識に反応してしまうのです。
どうやったら先延ばしを防げるか
脳内でサルが私たちの代わりに意思決定をしているとしたら、どうやって後回しを克服したらいいのでしょうか?
答えは、メタ認知と呼ばれるものです。自分の考えていることを考えることです。
自分の頭の中の怠惰で気まぐれなサルが決断をしていることを認めます。これを防ぐために、前もって計画を立てておくのです。
Plan goal ゴールを決める
まずゴールを決めます。
何をすべきか考えて、それを小さいタスクに分ければ、頭の中のサルはもうそんなに怖がりません。
Plan time 時間を決める
いつ何をどのぐらいやるのか決めます。勉強するたびに、こんなことを考える必要はありません。
やるべきことがあるとき、自動的に考えられるようにしておいてください。
Plan resources 道具や資料を集めておく
宿題や勉強をやる前の10分間に、必要なものをすべて机の上に出しておけば、あとでGoogleを見たりFacebookde何かを調べる必要はありません。
Plan the process プロセスを思い浮かべる
何かをやるまえにそのプロセスを思い浮かべておくと、そのタスクをやりやすくなります。
目を閉じて、これからやることについて考えてみると、脳は、すでにやったものだと判断し、実際にやるときずいぶん簡単になるのです。
Plan for distractions 邪魔をするものについて考えておく
心の中のサルが5分ごとにFacebookをチェックしたがっても、やるべきことに集中し気を散らしてはいけません。
Plan for failure 失敗してもすぐにあきらめない
数学の問題をやっていて、うまく解けないとき、みんな5分間、休憩をとります。
“Don’t give up”(あきらめるな)は使い古された言葉ですが、何か障害に出会ったときには、この言葉を思い出すべきです。
これは勉強だけに限りません。人生のあらゆる局面で言えることです。
困難に出会ったとき先延ばししてしまうと、どんな問題も解決できないと思います。がんばって乗り越えるしかありません。
ちょうどよいタイミングを待ってはいけない
“Don’t wait. The time will never be just right.”
「待ってはいけない。ぴったりなタイミングなんて永遠に来ない」
ナポレオン・ヒルの言葉です。
なぜみんな先延ばししてしまうのかというと、「それをするのに最適な状況ではない」と思ってしまうからです。
作文を書くのに週末まで待ったり、クリエティブになことをするのに、その気になるのを待ったり、寄付をするのに、お金ができるのを待ったりします。
計画をたてたり、自分の考えについて考えたり、やるべきことをすぐにやる習慣を持てば、この世界は思いのまま。未来はずっと豊かなものになるのです。
//// 抄訳ここまで ////
動画をより理解するために:専門的な言葉の説明
limbic system 大脳辺縁系
prefrontal cortex 前頭前皮質
amygdala 扁桃体
fight-of-flight response 戦うか逃げるか反応、闘争か逃走か反応
self-handicapping セルフ・ハンディキャッピング
失敗しても自分は悪くなかったとか、それは自分のせいではない、と言えるように、前もってハンディキャップ(不利な条件)を用意しておいたり、わざわざハンディキャップを作りだすこと。
要するに言い訳を見つけておくことです。
セルフ・ハンディキャッピングの例はいくらでもあります。
たとえば大事な試験の前に外出することです。試験の点が悪くても、「前の晩出かけていたからね。でもちゃんと家で勉強してたらもっといい点とれたよ」と考えることができます。
仮に試験の点がよかったら「前の晩出かけていても、こんな点が取れるなんて」と良い気分になれます。
metacognition メタ認知 自分がものごとを認知するプロセスを認知すること。
自分の思考や行動を客観的に見られる、もう1人の自分がいればメタ認知することができます。
何も考えず、自動的に、外部の刺激に反応して何かを行い、毎回同じ失敗をしているとしたら、メタ認知ができていません。
Napoleon Hill ナポレオン・ヒル
アメリカの自己啓発の書を書いた作家。成功哲学の祖。Think and Grow Rich(考えて豊かになれ)邦題「思考は現実化する」 という本はとても有名です。
The world is one’s oyster. 世界は~の思いのままだ。
シェークスピアの「ウィンザーの陽気な女房たち」に出てくるセリフより。
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プランニングする癖をつけて汚部屋を脱出
やらなければならないそのことに恐怖や不安、嫌悪を感じてしまうから、前頭前皮質が機能しなくなる、だから、本能的に後回しにする、というわけです。
そこで、あまり恐怖を感じないように、タスクを軽いものにすればいいのです。
ニッシーさんの、先延ばししない方法を片付けにあてはめるとこんなふうになります。
1.ゴールを決める
場当たり的に片付けないで、やるべき片付けのゴールを決めます。
大きな場所からやらず、小さな場所からやるのがおすすめです。
2.スケジュールを決める
いつ片付けをするのか決めます。手帳やカレンダーに書いておくとよいです。
カレンダーの使い方⇒上手なカレンダーの使い方。スケジュール管理のコツを押さえて汚家を脱出
3.道具を集めておく
ゴミ袋や軍手など必要なら出しておきます。
4.イメージトレーニング
片付けているさまを思い浮かべます。一度脳内でシミュレーションしておくとうまくいくのでやってみてください。
イメトレのやり方⇒イメージトレーニングを利用して断捨離に成功する方法(汚部屋改善)
5.妨害するものを排除
片付けを邪魔されないように、テレビやパソコン、スマホの電源は切っておいたほうがいいです。
6.ちょっと失敗してもくじけない
何十年も片付けられなくて汚部屋になったのですから、1つ、2つ捨てられないものがあっても、また何かを捨てて後悔することがあっても、そこでめげないことが大事です。
何事にも失敗はつきものです。
続けるうちに、うまく片付けられるようになっていきます。
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シンプルなプレゼンですが、わかりやすいし、先延ばしするのをやめたい人にはとても有用ですね。
高校生の時、こんなプレゼンを聞いておけば、私の人生も変わっていたでしょう。私が彼の言っているようなことを考えるようになったのは50歳過ぎてからです。
たとえ今50歳をすぎていても、今日から始めれば遅くありません。
ベストなタイミングを待たず、今すぐ片付けを始めてください。