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習慣を変えたい人の参考になるTEDの動画を紹介します。
タイトルは、Change anything! Use skillpower over willpower (どんなことも変える! 意志のパワーより、スキルパワーを使いなさい)
プレゼンターは、 コンサルタントのアル・スウィツラー(Al Switzler)さんです。
何でも変えられる:TEDの説明
How do you break down mental barriers and beat the willpower trap? Al Switzler, cofounder of VitalSmarts, researches methods for driving sustainable, measurable behavior change.
どうやったら心理的なバリアをこわし、意志のちからのワナを克服できるでしょうか?
VitalSmartsの共同設立者のアル・スウィツラーは、継続できて、測定可能な行動変化を促す方法を研究しています。
収録は2012年の11月。動画の長さは19分。英語ほか、数カ国の字幕があります。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの説明⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
行動に影響を与えるソース(影響の源泉)それぞれを、人間が演じているので、わかりやすいですね。
ranch は、農場や牧場のことですが、抄訳では、わかりやすいように、合宿としています。ダイエット合宿です。
変わりたいのに変われない
同僚と30年以上、行動を変える研究をしています。
リサーチをするとき、答えより、質問や問題を見つけることが難しいときがありますが、きょうお話しする問題は簡単にわかります。
個人的な習慣の問題は、すぐにわかりますよね。
自分の行動をコントロールできなくて、悲しんでいる人や病気になる人は何万人といます。
こういう人たちと、彼らの健康や幸せ、夢のあいだにあるのは、彼ら自身の行動です。
誰もそうしたいとは思っていませんが、自分自身が問題の一部になっているのです。
変わらなければならない、変わりたい、だけど変わらない。
こんな状態なのです。
タバコをやめられなかった母
5年前に肺がんで亡くなった私の母も同じ問題をかかえていました。
母は、4才で喫煙を始めました。孤児院にいるときです。
16才のとき、私を妊娠しました。私が9才のとき、母は結婚しました。
その4年後、私の義理の父が亡くなりましたが、そのとき母は4番目の子供を身ごもっていました。
シングルマザーとなった母は、ずっとストレスをかかえていて、タバコをやめたいと思いながらも、やめることができませんでした。
「いったんやめても、また始める」ということを繰り返していたのです。
悲劇は、母が死んだことではありません。
母はタバコをやめたかったし、やめるべきだとわかっていたのに、やめなかったことです。
無力で希望のない母のもとで、私は苦しみました。
ですが、きょうは、もっと希望をもてる研究についてお話ししますよ。
行動を変えられた人はほんの少し
行動を変えたいと思っている人を5千人集めてリサーチしました。
5千人のうち、4400人は変えることができませんでした。
まあ、これはかまいません。失敗例から、成功例を学ぶことができますから。
600人は、変えることに成功し、それは3年以上続きました。
成功した人と失敗した人には、少なくとも大きな違いが2つありました。
意志のちからのワナ
成功した人は明らかに、自分の行動をコントロールする能力があり、失敗した人にはそれがありませんでした。
違いの1つは、意志のちからに対する考え方と使い方です。
失敗した人は、意志力のワナにはまりました。
挫折したのは、自分ががんばらなかったから(コミットメントが足りなかったから)、意志が弱かったから、と考えることが、意志力のワナで、これは誤った認識です。
6つの影響の出どころ(six sources of influence)
綱引きを使って説明します。
強固な意志があれば、変わることができます。しかし、自分を変えさせないように引っ張る力が強ければ、その変化は、一時的なもので終わります。
元の状態にしようと引っ張る力を、「影響の6つのソース」と呼んでいます。
1番と2番は、個人的なやる気の能力です。「私はそうしたいのか?」「私はそうできるのか?」
3番と4番はピアプレッシャー。周囲にある社会的圧力です。
5番と6番は、モチベーションをあげるシステム(structial motivation 構造的なモチベーション)です。たとえば、動機づけや報酬、または環境そのものです。
ダイエット合宿へ行けばやせられる
私がやせたいと思っているとします。
やせるために、農場で行われるやせる合宿に行ったとしましょう。
やせたいとき、人がアドバイスすることはたいてい同じです。ヘルシーな食事をしろ、食べ過ぎるな、もっと運動しろ。
合宿に行けば、6つの影響のソースが、充分に私に働きかけ、私はやせることができるでしょうか?
聞いてみましょう。
1番は個人的なやる気です。
- 私はやる気がありますか?
- はい、あなたはやせたいと思っています。
- 本当にそうですか?
- はい、本当にやせたいと思っています。
1番のソースは、私のサイド(綱引きの自分のいる方)です。
2番は個人的な能力です。
- ここにいるあいだ、私は、新しいスキルや知識を学びますか?
- もちろんですとも。
- 私は何を使いますか?
- スキルパワーです。
2番のソースも、私の味方です。
社会的圧力(social pressure)に行くまえに、友人と共犯者の違いをお話しします。
友人はあなたを助ける人たちで、共犯者は、あなたがトラブルにあうよう仕向ける人たちです。
この2つの区別が難しいときがありますよ。
農場に友人がいるでしょうか?
- 友人だよね? 私のために何をしてくれる?
- 応援して力づけます。
- それから?
- サポートします。勇気づけて、前に進めるようにします。
- ありがとう。私のサイドにどうぞ。
社会的にサポートしてくれるものを私はコーチと呼んでいます。
- コーチ、何をしてくれますか?
- スキルを教え、フィードバックして、やる気が続くようにします。
- 私のサイドにどうぞ。
5番目のソースは、報酬や動機づけです。
- それは効果がありますか?
- カラフルなリボンや金の星の効果に驚くでしょう。
- 私のサイドにどうぞ。
6番目のソースは、システムを作る能力です。
- どうやりますか?
- あなたのスペース(環境)をコントロールして、いい行動をするのを簡単にし、悪い行動をするのを難しくします。
– アイスクリームはどこにあります?
- アイスクリームなんてありません。ニンジンをどうぞ。
- なるほど、私のサイドにどうぞ。
合宿に行けば、成功率があがります。共犯者もいません。
よけいなカロリーや食べ物もないし。やせるための行動が簡単になり、私はやる気になり、望ましい行動ができます。
合宿が終わるとリバウンドする
問題は、家に帰ったあとです。いつかは家に帰らなければなりません。
- やる気が続くかな?
- もちろん!
- 意志力さん、私のサイドにどうぞ。
- 私はまだスキルや知識がありますか?
- いや、維持するのは難しいね。
- そちらのサイドにいてください。
- 家に帰ると友人や共犯者に会うでしょうか?
- 私はあなたの友人です。お祝いしよう。ビュッフェに行こう。
- ケーキを焼いてあげますよ。一緒にビールを飲みましょう。
- ああ、そちらのサイドにいてください。
- 動機づけや報酬はどうでしょう?
- そんなの子供のためのものですよ。
- そちらのサイドにいてください。
- アイスクリームはどこですか?
- 冷蔵庫の中にありますよ。一箱全部食べてください。
家に帰ると、私にあるのは意志だけです。ここで綱引きをしたらどうなるでしょう?
負けて、リバウンドします。
意志のちからのワナにはまります。数で負けてしまうのです。
私たちをコントロールするものをコントロールしないと、行動を変えられません。
分析し調整するスキル
成功者と失敗した人の2番めの違いは、成功した人たちは、より科学的だったということです。
彼らは、いくつかのことをしています。
最初からうまくいってはいません。計画をたてたら、科学的な試行錯誤をしています。
分析して、調整できるのです。
人の助言やプランをそのまま行うのではなく、自分に合うようにカスタマイズしています。
ゴールに達成するために、方法を考え、自分の強みや弱点も考慮します。
こうすると、成功しやすいのです。
分析と調整には、4つのステップがあります。簡単に紹介しましょう。
決定的な瞬間と肝心な行動
最初の2つは、決定的な瞬間(crutial moments)を見極め、その瞬間に肝心な行動(vital behaviors)をすることです。
依存をはじめ、人がするよくない行動に対して、常に誘惑が続いているわけではありません。
ある時、ある場所、ある人たちが、引き金となります。
体重をコントロールしたいときはとくにそうです。
いつも、誘惑があるわけじゃないですね。
私は朝食やランチをしっかり食べ、昼間は間食をしません。私がもっとも食べたくなるのは、夜の8時以降です。
執筆や読書、思索をするとき、1ページにつき、ピーナッツバターサンドイッチを半分食べると、より生産的になります。
もう1つ、何年も、甘い飲み物は1日1回だけ飲んでいました。2.4リットルぐらい。
さらに大好物を食べるときは、2杯も3杯もおかわりをします。
もっとも道をはずしそうになる時が、決定的な瞬間です。
決定的な瞬間にすることが肝心な行動です。
私にとってそれは、甘くない飲料を飲むことや、身体に悪いスナックを食べないこと。食べるとしても、1日1回、少しだけにすることです。
あくまで、私の場合です。
すべての行動が同じではありませんん。肝心な行動は、結果に直結していて、ほかの行動を引き起こします。
はじめにすることは皆同じです。なzyゴールを決めます。
次に、決定的な瞬間を見つけ、その瞬間にすべき行動を見つけます。
ここが、成功と失敗の分岐点です。
影響をうまく使う
成功する人は、影響の6つのソースをうまく使っています。
これは6つのソースのチャートです。
やる気、能力がベースにあります。本当にそうしたいのか、そうできる能力があるのか? そうする価値があるのか?
やる気と能力が、個人、社会(周囲のプレッシャー)、システム(人以外の要因)の3つのレベルでうまく働けば、成功できます。
自分を変えられた実例を3つ紹介します。
3人とも、影響の6つのソースを活用しましたが、それぞれについて、ソースを1つずつ紹介しますね。
やる気を維持したシャーマン
シャーマンは、127キロ以上体重がありました。
シャーマンは、これを恥じて、何度もやせようとしましたが、そのたびに失敗しました。
しかし、ある時、本気になったシャーマンは、自分が変わりたい理由をインデックスカードに書きました。
自分との約束を破りそうになる前に、彼女はこのカードを、ゆっくり考えながら読むようにしました。
これが、シャーマンのカードです。
「私は、より健康だと感じたい。鏡に映る自分の姿を好きになりたい。もっと体力をつけたい。健康的な生活をして孫たちの手本になりたい。夫に私の姿を誇りに思ってほしい」
シャーマンは、半分泣きながら、「神様が喜んでくれるような、人生の選択をしたい」とカードを読み上げました。
これはシャーマンのカードであり、皆さんのカードではありませんよ。
誰かの誕生日パーティに出て、ケーキを前にしたとき、シャーマンはカードを取り出して読みながら考えました。そうして、望ましい選択をしました。
対人スキルを使ったAJ
肝心な行動をするとき、感情的で個人的なこころのスキルや、物理的なスキルがあるかどうかが重要です。
テキサスに住んでいる看護婦、AJの例をお話しします。
AJが、「このままじゃまずい」と気づいたのは、1階にいたとき、8階の患者の容態が急変して、呼ばれたときです。
エレベーターが使えなかったので、彼女は階段をのぼりました。しかし、3階までのぼったとき、タバコを吸うため、いったん、座る必要がありました。
AJは、身長160センチで、体重は96キロ。
息を切らせながら、座ってタバコを吸っているとき、AJは自分をすごく恥じました。「タバコをやめなければ、そしてやせなければならない」と思ったのです。
決定的な瞬間に、AJが望ましい行動をするのをじゃましているのは、彼女の父親でした。
AJは父親っ子です。父親の家に行くと、彼が吸っているタバコの煙が充満していて、父親にタバコをすすめられるのです。
AJはそのたびに、タバコを吸ってしまっていました。
父親にちゃんと話すことは、AJが学ばなければならないもっとも難しいスキルの1つでした。
AJは共犯者を友人に変える必要がありました。
共犯者を友人に変えることは、そんなに難しくありません。
友人に変えてしまえば、社会的なモチベーションがあがるし、重要な行動をするときの支えになります。
AJは喫煙仲間といっしょに、休憩時間に外に行き、タバコを吸ったり、食事をしにいったりしていました。
そこで、AJは、皆にこう頼みました。
「タバコをやめたいから助けてほしい。もう休憩時間に私は外に行かない。
誘わないでほしい。タバコを吸っていない私をからかわないでほしい。
ほかの場所で会ったり、喫煙をはずしたつきあい方を見つけて、私がタバコをやめるのを助けてくれない?」と。
AJはお金を使う必要もありました。
ゴールを達成するために、自分への報酬にお金をつかいました。
この社会では、人を太らせるものや、身体によくないものは安く、身体にいいものは高いものです。
自分のためになる動機づけを助けるものを、見つけなければなりません。
AJは、やせて、手持ちの服のサイズが合わなくなると、みな、寄付しました。
「また太って、お金をだして、サイズの大きな服を買いたくない」という気持ちが、AJに望ましい行動をさせました。
環境を変えてやせたティム
ティムも太っていました。
彼はこう言ったものです。「やせるなんて簡単だ。ここ20年で、僕は180キロも体重を落とし、199キロ太ったんだ」と。
心臓が悪くなったとき、こんな冗談を言っている場合ではなくなりました。
このときはじめて、ティムは、真剣にやせようと思って計画を立てました。
ティムは自分のスペースをコントロールして、よい行動をするのを簡単にし、悪い行動をするのを難しくするべきだと思ったのです。
ティムが最初にやったのは、やせたい人なら、皆やるべきことです。
彼は、アイスクリームとポテトチップスを家から排除しました。
食べたくなったら、店に買いに行く手間をとるしかない状況にしたのです。
この方法はすべての依存症に効果があります。
行動に影響を与えるものをコントロールせよ
自分の行動に焦点を当て直すことができれば、3分や4分の衝動に負けず、よい行動をしたいと思います。
自分の行動をコントロールするもの(影響を与えるもの)をコントロールできてはじめて、行動をコントロールできます。
これが、6つの影響のソースを活用して、行動を変えた人のメッセージです。
ヨーヨーダイエットを繰り返していたAJはこう言いました。
「挫折したときの対処の仕方を考えておかない計画は、計画とは言えません」。
シャーマンはこう言っています。
「失敗したら、姉に電話していました。
姉は、『なぜ、そんなことをしたの? こんどの決定的な瞬間って何よ? どうして誘惑に負けたの? 影響が充分じゃなかったの?』
こう私に言うので、私は、『分析して調整するわ』、と答えたものです」。
「あのとき、知っていたらよかったのに」という言葉、聞いたことがありますよね?
きょうお話ししたことを、昔私が知っていたら、母を助けることができたのに、と思います。
3年禁煙していたあとに、たった1本タバコを吸っただけで、母は、次の10年を台無しにしてしまう人でした。
母には、悪い1日を、よいデータとして活かすスキルがなかったのです。
私たちは自分の行動をコントロールできます。
意志力のワナから逃れて、影響をうまく使い、大きな問題をそうでないものにできます。
そうやって自分の能力を高めれば、どんなことも変えることができます。
//// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
recidivism 常習的悪行
relapse 逆戻り
resuscitate ~を蘇生させる
code blue 心臓または呼吸の停止などの患者の緊急事態。患者の急変。患者の顔が青くなるのでこう呼ばれています。
アル・スウィツラーさんの本(共著)です。
行動を変えることがテーマのほかのプレゼン
どうやったら、行動を変えることができるか? 警告や脅しは効かない(TED)
悪い習慣を断ち切る簡単な方法(TED)マインドフルネストレーニングのすすめ。
スマホやYouTubeがクセになってしまう行動様式を知り、悪習慣を改める(TED)
習慣のループを知れば、どんな習慣も変えることができる(TED)
他力本願ではなく、自力本願で
望ましくない習慣を捨てて、よい習慣を身につけるためには、自分の意志だけでは不十分。
自分の行動に影響を与えるものを、うまくコントロールしなければならない、という内容のプレゼンをお届けしました。
そのとおりだと思います。
「うまくいかなかったのは、意志が弱かったからだ。今度こそ、がんばろう」と思っているだけだと、何度やっても挫折します。
成功した人と失敗した人の違いは、
1)6つの影響を活用したか?
2)結果を分析して調整したか?
この2つです。
禁煙やダイエットだけでなく、SNSやYouTubeをダラダラ見るのをやめたい、無駄遣いをやめたい、断捨離したい、というときにも使えますので、試してください。
読者の中には、断捨離セミナーに参加したり、片付けコーチの指導を受けたりして、部屋を片付けている方もいます。
セミナー中や、コーチと一緒のときは、部屋を片付けられて当然です。
あらゆるよい影響を受けていますから。
セミナーやセッションが終わり、1人になったとき、リバウンドするとしたら、自分の行動に影響を与えるものに対する配慮が足りないからです。
外的サービスを使う人の中には、「おまかせすればなんとかなる」という他力本願的な人がいますが、セミナーやコーチを利用するときも、つねに、自分の行動に影響を与えるものに意識を向けてください。
そうすれば、1人になったときも、影響をうまく使って、望む結果を得られるでしょう。