サボテン

TEDの動画

最終更新日: 2021.02.15

他人の不機嫌やイライラに感染しない方法(TED)

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その場のできごとやムードに簡単に影響を受けない方法を教えてくれるTEDの動画を紹介します。

タイトルは、How to avoid catching prickly emotions from other people(他の人のイライラを受け取るのを防ぐ方法)。

プレゼンターは、ジェシカ・ウッズ(Jessica Woods)さん。

ジェシカさんは、スポーツとパフォーマンスの心理学者でコンサルタントです。

prickly は、「トゲだらけの、ちくちく刺す、人が怒りっぽい」という意味の形容詞。



人の不機嫌をもらわない方法:TEDの説明

Difficult emotions can get under your skin if you’re not careful. Sport and performance consultant Jessica Woods calls this the “jumping cholla effect,” inspired by a sneaky kind of cactus that detaches and burrows its spines into unsuspecting passersby.

In this empowering talk, she shares four mood-regulating strategies to help you gain self-awareness of your feelings, avoid catching other people’s emotions and perform at your peak — whatever the prickly situation may be.

気をつけていないと、やっかいな感情にさいなまれることがあります。

スポーツとパフォーマンスのコンサルタントである、ジェシカ・ウッズは、この現象を、『ジャンピング・チョウヤ・効果』と呼んでいます。

知らないうちに、人にくっついて、痛い思いをさせるサボテンからつけた名前です。

この元気の出るトークで、彼女は、自分の感情を自覚して、人の感情をキャッチせず、最高のパフォーマンスをする4つの戦略を伝えます。どんなにイライラする状態のときでも。

収録は、2020年の9月。動画の長さは、10分50秒です。英語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。

☆トランスクリプションはこちら⇒Jessica Woods: How to avoid catching prickly emotions from other people | TED Talk

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

2020年の収録なので、観客は入れていませんね。





イラク戦争のエピソード

私は、スポーツとパフォーマンスの心理学者で、優秀なアスリート、プロの軍人、政府のトップエージェントとよく仕事をします。

彼らの安全は、自分のパフォーマンスにかかっていますから。

イラクに赴任していたある兵士の話を、私は忘れることはないでしょう。

2000年代のはじめ、合衆国の軍が、イラクとアフガニスタンに派遣されていたときのことです。

この頃、地元の人は、アメリカ軍に危険が及びそうなことがあったら、その情報を、積極的に軍に知らせるよう、呼びかけられていました。

ある日、イラクの男性が、アメリカ軍の基地に、情報を伝えにきましたが、兵士は彼を協力者としては扱わず、敵意をもって応対しました。

というのも、数日前に、別の班の兵士が、突然の攻撃で殺されていたからです。

情報を提供しようとした男性とアメリカ兵との話は、スムーズに進まず、話半ばで、インタビューは打ち切られ、その翌日、別の2つの班が、道端に埋められた爆弾で攻撃されました。

インタビューがふつうに行われていたら、この攻撃を阻止することができたかどうかはわかりません。

しかし、このインタビューは、最良の行動をとることを邪魔されてしまう、いい例です。

人のパフォーマンスは、感情をうまく整えることができるかどうかで、変わります。

気持ちを整えるには、人の感情に感染しないことが重要なのです。

人は、他人の感情の影響を受けやすい

私たちは、人の感情をすぐにキャッチして、自分の感情にしてしまいます。

他人の気持ちに左右されやすく、ほんの少しでも、影響を受ければ、仕事や、競技場、家庭でのパフォーマンスが変わります。

自分自身の感情をうまく制御できれば、他人の感情の影響を避けることができます。

この、大きなテディベアみたいな、低木をごらんください。

ジャンピング・チョウヤ

アリゾナで、初めてこの木を見たとき、やわらかそうだったので、さわろうとしました。

手を近づけたら、いきなりトゲが私の手に飛んできて刺さったのです。

手がトゲだらけになりました。トゲを取ろうとすればするほど、それは、肌の奥のほうに、入っていったのです。

この木は、ジャンピング・チョウヤ( jumping cholla 飛ぶウチワサボテン)という名前です。

サボテンのトゲがくっつく

知らないうちに、他人の感情の影響を受けることを、私は、「ジャンピング・チョウヤ・効果」と呼んでいます。

ジャンピング・チョウヤは人間とよく似ています。人にはトゲがあり、気をつけていないと、あなたの肌の奥深くまでそのトゲが刺さるのです。

これを理解するために、感情とは何か知っておきましょう。

感情がどこから来るのか説明する、2つの説があります。

認知的評価

まず、認知的評価(cognitive appraisal、コグニティブ・アプレイザル)と呼ばれる説です。

そのときの状態が、自分のゴールや期待に合致しているかどうか、自分で評価するとき、感情が生まれる、という考え方です。

いい知らせがあるので、家族に伝えようと、わくわくしながら帰宅したとしましょう。

家に入ったら、家族はソファーに座っていました。でも、「お帰り」と言う代わりに、皆、何も言わず、部屋に行ってしまいました。

これは、あなたが期待してい展開ではないので、「むっとする」という感情が生まれるのです。

生理的な知覚

もう1つの説は、生理的な知覚(physiological perception、フィジオロジカル・パーセプション)と呼ばれます。

体の物理的な変化と、感情が結びついている、という説です。

人前でしゃべることを考えるとわかりやすいでしょう。

プレゼンをする前、私は、とても緊張します。

前に、人前で話したとき、同じ肉体的な反応をして、そのスピーチがうまくいったとします。すると、私は、スピーチの前に起きたことを、「わくわくするする感情」だと解釈するでしょう。

しかし、前回のスピーチがさんざんのできだったら、同じ感情を、「緊張や恐怖」と解釈するのです。

ふつう、私たちは、過去の経験をもとに、いまのできごとを解釈します。

脳は周囲のできごとをどんどん取り込む

おもしろいことに、2つの説はともに、私たちが、他人の感情をどんなふうに判断するか説明しています。

感情と記憶を処理する脳の部分である辺縁系は、オープン・ループ・システムだと考えられています。つまり、外部のどんな要因にも影響を受けます。

誰かが何も言わずに、通りすぎたとき、みなさんは、「あの人は、不機嫌なのか、興奮しているのかのどちらかだろう」と感じるでしょう。すると、自分も、不機嫌か、興奮状態のどちらかを感じるかもしれません。

脳は、このような、周囲のちょっとしたできごとをピックアップするようにできています。だから、人の感情が自分に乗り移って、くっついてしまうのです。

お互いに影響を与え合う

多くの人は気づいていませんが、私たちは、オープン・ループ・システムで動いています。

同じ職場やチームの人間は、お互いに、感情の影響を受け合っています。嫉妬、羨望、心配、喜びなどの感情すべてを。

つながりが強ければ強いほど、気分も共有されます。スポーツの世界でよく見られることです。

ときには、これがよい方向に働く時もあります。

チーム全員が浮足だっているとき、キャプテンが、落ち着いていたら、チーム全体が落ち着くこともあるでしょう。

しかし、チームのうちたった1人が、ネガティブな感情になれば、いとも簡単に、全体がそうなってしまいます。

いつまでも続く不機嫌

皆さんが、不機嫌になったとき、その感情はどのぐらい続きますか?

特に、不機嫌な人のせいで、不機嫌になったとき。

数日、数週間、数ヶ月?

不機嫌な上司の下で働いていたとき、その感情が、よく私に乗り移りました。そのとき、私は、1年も、不機嫌なままでした。

今思うと、ぞっとします。

その1年、生産的でなかったし、大きなストレスをかかえていたのですから。

それも、たった1人の上司の不機嫌のせいで。

上司の不機嫌が私に移り、私の不機嫌が上司に移り、お互いに不機嫌をキャッチボールして、そのループから抜けられなかったのです。

理想は、誰もが、自分の気持ちを整えて、いい感情を送り合うことです。

研究によれば、これからお話しする2つの感情の整え方が助けになります。私も、いつも使っている方法ですよ。

認知的再評価

最初の方法は、認知的再評価(cognitive reappraisal)と呼ばれるものです。

気持ちを整えるために、解釈をし直します。

ジャンピング・チョウヤを避けるために、ハイキングする道を再検討するようなものです。

例をあげます。

尋問官になる訓練を受けている兵士と仕事をしたことがあります。

彼はフィードバックを受けるたびに、自分の行動を弁護し、正当化しようとしていました。

「指導官が、自分を嫌っているからそうしている」と彼は言いました。

この場合、認知的再評価をつかうと、彼はちょっと立ち止まり、自分の解釈や状況に対する期待を変えることができます。

もし、「指導官は僕のことを嫌いだ。いつも、機嫌が悪い」と思っていたら、その解釈を再検討して、「彼は機嫌が悪いように見えるかもしれないが、時間をとって、僕の悪いところや、変えるべき点を教えてくれている」と思うことができるのです。

再考できるように、脳をトレーニングするのは時間がかかるし、簡単ではありません。どんな考えにも、一理あるからです。

ですが、いつも、再評価を試みているうちに、不機嫌な人間と過ごしても、その気分に影響を受けないですむようになれます。

受け入れる

気持ちを整えるもう1つの方法は、受け入れること(acceptance)です。

その時の状況をそのまま受け止めます。自分の思い通りになってほしいとは思わずに。

3つのステップを使って受け入れます。

1)わかった

2)それが、何? 

3)で、どうする?

(OK; so what; now what)

「オーケー」と言うことによって、相手や状況に対して、ジャッジするのを止めます。そして、自分の生理的反応や、起きていることに対する解釈を受け入れるために、距離をとります。

思考や感情から、距離を取ることができたら、「それが、何?」と言います。

すると、今起きていることは、できごとの1つに過ぎないと思うことができます。

すると、「で、どうする?」と反応できます。

「できごとに反応するための情報は充分得た」という意味です。

距離のとり方

たいていの人は、「オーケー」と言うことはできます。しかし、「だから、何?」の境地になかなか立てません。

その状況に対する自分の生理的な知覚を切り離すことがむずかしいからです。

コツがあります。

受け入れるとは、「今、起きていることに対して、私は同意するし、それが続いてもいいのだ」と思うことではありません。

そのできごとを俯瞰(ふかん)して、刺さると痛いトゲのあり場所を見つけ、トゲを自分にくっつける価値があるのかどうか、判断することです。

自分の思考や感情に気づこう

この2つの方法、ともにとても効果的です。特に、人生や人間関係に対処するときに。

ある研究によると、認知的再評価は、ネガティブな状況において、より速く、気分を楽にしてくれるとわかっています。

一方、受け入れることは、不快な状況に対する、生理的な反応を、短期的に軽減するのに向いているでしょう。

特にいいのは、この2つのやり方を、区別しなくてもいいことです。

感情を制御したいとき、受け入れることと、認知的再評価は、取り替えて行うことができます。

うまくやる鍵は、ほかの人や、できごとによって、感情が動いたときに、自分で気づくことです。

自分の思考や感情、生理的に感じていることを認識したら、どちらかの方法を使ってください。

両方とも、目新しい方法ではないかもしれません。

でも、実際にやっている人は、そんなにいませんよ。

「ジャンピング・チョウヤ効果」を覚えておけば、自分でもっと感情を制御できるし、不機嫌な人に刺されることも防げるのです。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

have(get) butterflies in my stomach ドキドキする、緊張する、ザワザワする 直訳は、おなかの中に蝶がいる

play into  あてはまる

open loop system 開ループシステム。アウトプット(結果)はあまり気にせず、出力を制御するシステム。結果のチェックはせず、制御すればおしまい。

この逆の、closed loop system は、結果のフォードバックを考えながら制御するシステム。

aerial shot  航空写真、空撮

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ネガティブな人のトゲに要注意

なかなか物を捨てない人や、不用品をためこむ人は、どちらかというとネガティブだと私は思います。

「捨てると、こんなことやあんなことが起きるかもしれない」と心配して捨てないのですから。

たまたま、周囲にネガティブな人がいて、その人の、感情の影響を受けて、ネガティブでいる可能性もあります。

私の夫はネガティブなほうで、古い書類やガラクタをいつまでも捨てません。

それは、すでに習慣(いつものパターン)になっているので、自分がなぜ捨てないのか、夫は考えたこともないでしょう。

夫は、自分あての封筒をすべて取っておきます。

(ためこみすぎて、しんどくなったのか、最近は、書類と一緒にシュレッダーにかけて捨てています)。

なぜ、捨てないかというと、個人情報がもれるのが心配だから。

誰かがゴミ袋の中をあさって、自分あての封筒を取って、自分の名前や住所を知ってしまうのが心配らしいのです。

この話を聞いたとき、「え~~~~っ!」とびっくりしました。

私は、封筒に自分の名前や住所がついていても、そのまま、ぼん!とまるごと捨てます。

アマゾンで物を買うと、箱や封筒に私の名前や住所のシールが貼られて届きますが、封筒は、そのままで、ゴミ箱はつぶして、リサイクル用のゴミを入れる袋に入れて、ゴミ箱置き場に出します。

これまでずーっとそうしていますが、特にトラブルにあったことはありません。

誰かがごみ袋の口を開いて、わざわざ、私あての封筒を探し出し、それを何かに悪用するなんて、いったいどんな状況のときなんでしょう?

私は資産家でも何でもないので、だましとるお金もありません。

幸か不幸か、夫は極端にネガティブなので、私や娘は、「え、何言ってるの、この人、わけわかんないですけど」という反応をして、大々的な影響を受けないですんでいます(と、信じたい)。

しかし、そこそこマイルドにネガティブな人が相手だと、影響を受けやすいのではないでしょうか?

不用品をなかなか捨てられないのは、誰かのトゲが刺さっているのかもしれません。

一度、振り返って、トゲが刺さらないようにしてください。





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