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ストレスの多い人、毎日が楽しくない人、自分が嫌いな人におすすめのTEDの動画を紹介します。
タイトルは、Know Your Inner Saboteurs(自分の心の中の妨害者を知りなさい)。プレゼンターは、スタンフォード大学の教授で、Positive Intelligence(ポジティブ・インテリジェンス)という著作がある、シャザド・チャミン(Shirzad Chamine)さんです。
saboteur は、辞書には、「サボタージュをする人、破壊工作員」とあります。本来の自分であることを妨げる存在です。幸い私たちの脳の中には、Sage(賢者)もいます。
自分を妨害している存在に気づきなさい:TEDの説明
Shirzad Chamine shows Stanford students how his research on positive intelligence can help them achieve their full potential for professional success and personal fulfillment.
シャザド・チャミンは、スタンフォード大学の学生に、彼のポジティブ・インテリジェンスの研究が、生徒たちの個人的な暮らしにおいても、職業的な成功においても、最大限の可能性を引き出す助けをすると話します。
ポジティブインテリジェンス(PQ)とは、妨害者のパワーを弱め、賢者のパワーを最大化し、PQの筋力をたかめることです。
これができるようになると、さまざまなパフォーマンスがあがるし、幸福度や満足度もあがるし、周囲の人ともうまくいきます。
動画の長さは20分31秒。英語とトルコ語の字幕があります。動画のあとに抄訳を書きます。
やや長めですが、チャミンさんは、ゆっくりしゃべっているので、情報量はそこまで多くありません。
わかりやすい構成ですし、内容もよいですから、時間があれば、動画をごらんください。
TEDが初耳の人はこちらをどうぞ⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
自分の素晴らしさを忘れてしまう私たち
まず1つのことを明らかにすることでこの講演を始めます。
私は、本当に、信じられないほど、完全に素晴らしい人間である、ということを皆様に知っておいてもらいたいです。
私が謙虚さに欠ける人間だ、と皆さんが考える前に付け加えておきますと、皆さんも同様に素晴らしいと信じていますよ。
ですが、私の研究結果によれば、80パーセントの人が、自分がどんなに素晴らしいのか気づいていないのです。はじめは知っていたのですが、忘れてしまいます。
なぜ、本来の自分や、その可能性を忘れてしまうのか、その背景にある科学についてお話しします。
そして、みなさんに、また思い出していただき、さらに能力を発揮できたり、幸せになれる方法をお伝えしますね。
素晴らしい自分を思い出すのです。
赤ちゃんのときは自分の素晴らしさを知っている
私は、ここスタンフォードで8年間講義をしています。私の仕事は、神経科学と心理学のリサーチをもとにしています。
皆さんも、昔は自分が素晴らしいことを知っていたという証拠をお見せします。
[赤ちゃんの笑顔の写真がスライドに映し出される]
ごらんください。彼女は自分が素晴らしいとわかっているでしょうか。もちろんそうですね。輝いていますから。
[別の赤ちゃんの笑顔の写真]
彼はどうでしょうか? 自分がいかにすごいか知っていると思いますか? 彼の髪の毛一筋一筋が、ちゃんとわかっていることを物語っています。
[笑顔で抱き合う男の子と女の子の写真]
この2人はどうでしょう? 2人とも知っています。私の子供ですから。ティサとキオンです。
みな、ユニークで素晴らしい存在として生まれており、誰もが最初はそのことを知っているのです。
この写真はどうですか? 自分の素晴らしさをわかっているでしょうか?
[ゆううつそうな男の子の写真]
彼はそんなことは知りません。昔は知っていたけれど、この写真が撮られるまでに忘れてしまいました。
ちなみに、この少年は私です。かわいいでしょ?
なぜ、私は本当の自分を忘れてしまったのか?
私は、問題のある家庭に、ハッピーな子供として生まれました。スラム街の2ベッドルームのアパートに、4人きょうだいと両親とで住んでいました。
父は怒りっぽくて、突然暴力的になる怖い存在でした。母は、いつも、恐れて逃げていました。私はあまり愛情をそそいでもらえませんでした。
私は、両親といっしょにいたのだから、親に問題があると認めることはできませんでした。
その代わり、私の頭の中に、「両親は完璧で、彼らが自分を愛してくれない理由は自分にある、愛されるに足らない子供なんだ」という声が生まれました。
この声を、今の私は、「ジャッジ(Judge。裁判官)」と呼んでいます。
いったんジャッジが私をジャッジし始めたら、私の周囲の人もジャッジするようになりました。そうすれば、恐怖が和らげられますから。
自分では気づいていませんでしたが、私はいつも他人をジャッジする人間として成長しました。ジャッジが私の心を支配していたのです。
このことに気づいたのは、27歳になってから。スタンフォードでMBAのクラスをとっていた時です。
妨害者の存在に気づいた瞬間
12人ずつグループになって、輪になって座り、お互いの感情を分かちあっていました。
クラスメートの1人が、気まずそうにこう言いました。
「シャザド、とても言いにくいんだけど、僕、いつもきみにきびしくジャッジされてる気がするんだ。で、それがすごく嫌なんだよね」
私は彼に、「ジョン、教えてくれてありがとう。とても、助けになるフィードバックだよ」と言いました。
けれども、心の中では、こう思っていました。
「そりゃあ、ジャッジされてると感じるでしょ、バカなんだもん。こいつ、このグループの最低のルーザー(loser、だめ人間、使えない人)なんだから。ほかに、どう考えろっていうのさ?」
ところが、2人目の人も、3人目も、4人目も全く同じことを私に言ったのです。
私は、彼らに礼儀正しくお礼を言いつつも、「どいつもこいつもバカだ。自分の自信のなさ(insecurity)を人のせいにしやがって」と考えていました。
ところが、5人目の人が、同じことを言ったとき、突然、「なんてことだ。正しいのはみんなのほうだ。僕は、どんなことも、すぐにジャッジしていた。
このジャッジする性格は自分の頭の中にいつもいて、他人を残酷におとしめるだけでなく、自分自身も、さげすんでいた。
それは自分の中にいる目に見えないキャラクターだ。私は目に見えないめがねをかけて、現実を歪めていたんだ」。
この発見が私の人生を変えました。
どんな人の頭の中にも妨害者がいる
この目に見えないジャッジ性格は私の妨げになっていたので、私は彼を、Saboteur (妨害者)と呼ぶことにしました。
後になって、ジャッジ妨害者だけでなく、ほかにも9つの妨害者がいるとわかりました。たとえばコントロールする人(Controller)、細かいことに口やかましい人(Stickler)、被害者(Victim)です。
たとえ、幸福な子供時代を送っても、こうした妨害者は生まれます。無防備な子供が、現実と折り合いをつけるために。
たとえば、混乱した状況では、コントロールする人であれば、より安全に感じることができます。より注目を集めるために被害者になることもあります。
問題は、こうした妨害者が自分の頭の中で、目に見えない支配者になってしまうことです。私のジャッジがそうだったように。
こうした支配者は、自分自身のふりをしますが、実はそうではないのです。
こうして、みな、自分が誰であるのか忘れてしまいます。
頭の中で、妨害者と、本当の自分自身、私はこれを賢者(Sage)と呼んでいますが、両者の戦いが起きているのです。
妨害者と賢者の違い
妨害者と賢者は、脳のまったく違うところに根付いています。
妨害者は、サバイバル脳の領域(survival-brain region)にいます。多くは、脳幹(brain stem)や大脳辺縁系、そして左脳の一部です。
賢者は、ポジティブインテリジェンス脳にいます。多くは前頭前皮質、前帯状皮質、そして右脳の一部です。
ここに驚くべき発見であり、幸せの鍵があります。見てください。サバイバル脳の領域と妨害者はつながりがあります。
神経化学的につながっていて、ストレスや不幸な気持ちを生み出します。もし、いつも幸せな気分でいたいのなら、賢者を強くして、妨害者を弱めればいいのです。
神経科学の問題です。
どんなに成功しても幸せになれない人
私の経験から言えることですが、どんなに富と成功を手にいれても、妨害者がいる限り、幸せを感じられません。
100人以上のCEOや社長を相手に、リーダーシップのセミナーを行ったことがあります。
みな、ひじょうに成功していて、一見、とても幸せそうに見えました。
彼らに、匿名で、カードの裏に、自分がどんなふうに感じているのか、これまで誰にも言ったことのない秘密を書いてもらうワークをしました。
本人の承諾を得たうえで、ここでいくつか読みあげますね。
- 自分のビジネスのリーダーとして失格することを恐れている。
- 心が平安なことはめったにない。
- 働きすぎとストレスで早死することが怖い
- とても悲しくてさみしい。いま飲んでいる抗うつ剤は効果がない。
- 周囲の人間をいつも、ランク付けし、ジャッジしいる。
- 1人息子と気持ちを通じさせることがまったくできない
- 私の自信ありげな態度はにせものだ。
- 自傷傾向があり、その理由がわからない。
- 自分をあまり好きではない
- 誘惑や欲望に負けやすい
- 自分はペテン師だとよく感じる
- 自分の物質主義が、子どもたちに害を与えていると心配だ
- ストレスのせいで、ドラッグとアルコールを濫用している
- 1年だけでいいから逃げ出したい。1人になるために。
- 父親と似た最後を迎えそうで怖い。誰にも愛されず、たった1人で死んでいくことが。
これは、誰にでもあてはまります。私は、CEOから、高校を出ていない工員たちまでかかわってきました。
お金や成功のレベルは関係なく、妨害者がいれば、自分を苦しめてしまうのです。
以前、妨害者がいて、おかしいのは自分だけだと思っていましたが、ほかの人もそうなんだと知って安心しました。
妨害者の正体とは?
私は妨害者を、自立、承認、安全に対する欲求や、どんなふうに自信を得るか、獲得するか、無視するかというスタイルをもとに分けました。
この表は9つの妨害者を示したものです。
コントロールする人(Controller)、がんばりすぎる人(Hyper-Achiever)、心が落ち着かない人(Restless)、
細かいことにこだわる人(Stickler)、人を喜ばせる人(Pleaser)、たえず警戒している人(Hyper-Vigilant)、避ける人(Avoider)、被害者(Victim)、道理にこだわりすぎる人(Hyper-Rational)。
誰でも、この9人の妨害者のうち最低でも1人と、ジャッジする妨害者を持っています。
妨害者を弱くするに、まず、その存在を見つけなければなりません。
大事なプロジェクトの途中で、大失敗することがわかったと想像してください。
妨害者たちはこんな反応をします。
ジャッジ:私はだめな人間だ。バカだ。すべてが崩壊してしまう。
コントロールする人:でも私のやり方はいつも正しいはずだ。誰かがミスったに違いない。
被害者:ああ、やっぱりまたこんなことが起きた。次は、自分の頭の上に雷が落ちるはずだ。
細かいことにこだわる人:そうだと思った。あのレポートの表紙の青の色がまずかったんだ。
避ける人:まだ時間はたっぷりあるさ。お昼はどこで食べようかな。
たえず警戒している人:髪がむしりとられてしまう。もしまだあれば、の話だけど。
妨害者の存在がわかったら、それに「妨害者」というラベル付けをします。そして、その声を信用せずに、泳がせます。
「明日は失敗するんじゃないかな」と思うかわりに、「例のやっかいな妨害者ジャッジが、私は明日失敗すると言っている」と思うのです。
違いがわかりますか? 妨害者をさらけ出し、ラベル付けをすると、妨害者のパワーを弱くすることができます。
賢者のパワーとは?
賢者の考え方のすばらしいところは、どんな結果や状況も、チャンスになると考えているところです。
「プロジェクトの失敗をどうやったらチャンスに変えられるのか?」と自分に問いかけてください。
この発想がすべてを変えます。
こう考えることができれば、ポジティブインテリジェンス脳を活性化できます。
すると、賢者の5つのパワーにアクセスできます。
さて、賢者は、同じ状況にあったとき、どんな反応をするでしょうか?
1.思いやる(Empathize)
すでに状況が悪いときに、さらに自分を責めるのは、馬鹿げていると賢者は知っています。だから、弱い人間にすぎない、自分や他人にたいして、思いやりの気持ちを持てます。
するとエネルギーが出て、前向きになれます。
2.探検する(Explore)
プロジェクトが失敗した原因をぜんぶ発見しようとします。おろおろしたり、守りの姿勢に入っていては見つからない事実に気づくことができます。
3.革新する(Innovate)
ポジティブインテリジェンス脳は、創造性と結びついているので、発見したことを、新しい解決策へとつなげることができます。
そうこうするうちに、皆さんは、恐れのない、より大胆な道へ進むことになります。
たとえ、危機の中にあっても、賢者は活躍し、ポジティブでいられるのです。
賢者の筋力を鍛える方法
こうしたことは、賢者筋(Sage muscles)が強くないとできません。
脳のMRI検査からわかった、賢者筋を強くする方法の1つは、1時間に数回、10秒間、自分の意識を肉体的な感覚に向けることです。
たとえば、仕事のパフォーマンスをあげたかったら、新鮮なりんごをがりっとかむとき、その一かみをしっかり味わってください。
友だちの瞳をじっくり見て、そこにある何百もある色を見つけます。
愛する人をしっかり抱きしめ、相手の鼓動を感じてください。
そんなにうまい話はないと思うかもしれませんが、神経科学の証拠を見れば認識が改まるでしょう。
妨害者に対して、賢者のちからが強くなったかどうか、測定することもできます。24時間の感情をもとにします。
ポジティブインテリジェンスクオシェント(positive intelligence quotient, PQ)とうい方程式も作りました。
PQがあがれば、人は、より幸せでストレスが少ないし、パフォーマンスがあがる、と証明されています。
売上を40パーセントのばしたり、チームのパフォーマンスが1/3あがったり。
愛する人の賢者筋も鍛えることができる
少しの忍耐心があれば、誰でも賢者筋を強くすることができます。
愛する人の賢者筋を鍛えることもできます。息子のキオンは、くすぐられるのが大好きです。
そこで、私は、彼が正しい答を言うまで、くすぐり続けるというゲームを作りました。
息子をくすぐりながら、こんな質問をします。
「キオン、どうして父さんはおまえをこんなに愛しているんだろう?」
「わかんないよ。パパ」
「おまえがすごくハンサムだからかな?」
「違うよ、パパ。ハンサムだからじゃない」
「成績がよいからかな?」
「違うよ」
「スポーツが得意だからか?」
「違う」
こうやって、彼のすばらしいところをあげていくのですが、息子は、「違うよ、パパ、そうじゃない」と言い続けます。
最後に、私は、お手上げのふりをして、こう言います。
「じゃあ、キオン、なぜ、父さんはおまえがこんなに好きなのかな?」
キオンは、こう言うことを学んでいます。
「だってパパ、僕が僕だからだよ」
パパ、僕は僕だから!
彼が本当の自分であり、賢者でいるから。
皆さんはどうですか? もし、本当の自分、賢者を救うことができたら、人生はどんなふうになるでしょうか?
自分自身や愛する人たちに、どんないいことが起きるでしょうか?
みなさんは、特別で素晴らしい存在です。そろそろ思い出す時ですよ。
単語の説明など
brain stem 脳幹。
大脳と小脳をのぞいた、中脳、間脳、延髄部分の総称。反射作用と、生命維持に必要な役割をはたします。
limbic system 大脳辺縁系
シャザド・チャミンの Positive Intelligence という本は翻訳版が出ています。
キンドル版もあります。
生きづらさを感じている人におすすめのプレゼン
本当はすごいのに、なぜ私たちは「だめだ」と思ってしまうのか?(TED)
成功すると幸せになるのではなく、幸せだから成功する~ショーン・エイカー(TED)
幸せはすぐそこにある:自然と美と感謝と~ルイ・シュワルツバーグに学ぶ(TED)
言い訳を作り出してしまう私たち:あなたに夢の仕事ができない理由(TED)
幸せは自分の心の中にある、幸せをアウトソーシングしてはいけない(TED)
反応と思考を切り離す
シャザド・チャミンの話す、妨害者と賢者は、先週紹介した動画で語られていた、感情的な反応と賢明な思考の関係に似ていますね。
先週のTED⇒感情的な反応から賢明な思考にシフトさせ、最良の決断をうながす方法。
人間の脳にある古い部分は、より動物的に、自分の安全を第一に考えて反応します(サバイバルモード)。その反応に従うことが、長い目で見た時、自分の幸せにつながるとは限らないわけです。
たとえば、甘いものをみると、「つぎ、いつまた食べ物にありつけるのかわからないからとにかく食べておこう。おいしいしね」と古い脳は言います。
飢饉が多く、交通の便も悪く、加工食品がなかった昔なら、見つけたときに食べておいて正解だったでしょう。
しかし、食べ物があふれる現在、見るものすべてを食べていたら、生活習慣病になり、死期を早めてしまいます。
こういう発想をするのが、新しい脳の部分です。
つまり、思考はざっくりわけても、二層にわかれているから、大事な決断をするときは、自分の反応をそのままうのみにしないほうがいいのです。
これは、断捨離をするときも同じです。
動物的な反応:失いたくない
理性的な思考:捨てるべきだ
こうして人は、「捨てたいけど捨てられない」状況に陥ります。
もし賢者筋が強かったら、不用なものはやはり捨てるんじゃないでしょうか?
マインドフルネスが大事
賢明な思考をうながす賢者筋を鍛える方法が、肉体的なセンセーションに意識を向けることである、というのはおもしろいですね。
これはマインドフルネスと同じです⇒暮らしにマインドフルネスを取り入れてより自由になる(TED)
いま、この瞬間、自分が肉体的に感じていることに意識を向けるのですから。
考えてみると、現代人は、「今ここ」に意識を向けることが少ないです。
マルチタスクがもてはやされているし、過去の後悔や、先の心配で心はいつも忙しい。
食事のときも、スマホに心を奪われ、自分の食べているものを見もしない。忙しいから味わいもしない。
そういう生き方をしていると、本来の自分を失ってしまうのです。
スローダウンして、自分の思考を外から眺め、1時間に数回、自分がやっていることに意識を向ける。
すると、賢者筋が鍛えられ、本当の自分を思い出すことができます。
こうするのは、そんなに難しいことではないですね。早速、きょうから試してください。