ページに広告が含まれる場合があります。
睡眠に関するTEDトークスを紹介します。ラッセル・フォスターという科学者のWhy do we sleep?(なぜ私たちは眠るのか?)です。
私はよく、睡眠は大事だよ、とこのブログに書いていますが、50代ミニマリスト主婦が記事に書いてもあまり説得力がないようです。
なぜそう思うのかというと、日々いただくメールが日本時間の夜半から夜中に届くことが圧倒的に多いから。私が寝ている日本時間の昼間にはあまり届きません。
夜は、しっかり寝たほうがいいです。その理由をラッセル・フォスター先生に教えてもらいましょう。
「なぜ人は眠るのか?」TEDの説明
Russell Foster is a circadian neuroscientist: He studies the sleep cycles of the brain.
And he asks: What do we know about sleep? Not a lot, it turns out, for something we do with one-third of our lives.
In this talk, Foster shares three popular theories about why we sleep, busts some myths about how much sleep we need at different ages — and hints at some bold new uses of sleep as a predictor of mental health.
ラッセル・フォスターはサーカディアンリズムを研究する神経科学者です。彼は脳の睡眠サイクルを研究しています。
彼はたずねます。「睡眠について何を知っていますか?」人生の3分の1の時間を費やしているわりには、眠りについてそんなによく知りません。
このプレゼンテーションでフォスターは「なぜ私たちは眠るのか」「年齢による睡眠時間の違い」「睡眠で心の健康具合を知るヒント」を教えてくれます。
サーカディアンリズムは体内時計で、太陽がのぼると目がさめて、日が落ちると眠くなるリズムのことです。
この動画はいわば「睡眠入門」、睡眠についてのさまざまな基礎知識を得られます。動画は21分ほど。日本語字幕です。動画のあとに、抄訳をつけます。
フォスター先生はそこはかとないユーモアのある方で、いろいろジョークを言っていますが、情報量が多いため、すべてカットしました。できればプレゼンを見て味わってください。
スコットランドで行われたTEDです。フォスター先生はブリティッシュ英語を話します。
☆トランスクリプトはこちら⇒Russell Foster: Why do we sleep? | TED Talk | TED.com
☆TEDトークスの概要はこちらに書いています⇒もう自己啓発本を読む必要なし~成功するため8つの秘密とは?(TED
人は睡眠をないがしろにしている
人は人生の36%眠ります。90歳なら、32年間は眠っていることに。睡眠は大切なのに、みんな睡眠についてあまり考えません。
シェークスピアの時代は睡眠を讃える詩がありました。
Enjoy the honey-heavy dew of slumber. まったりとした蜜のような眠りを楽しみ給え。
Sleep is the golden chain that ties health and our bodies together. 眠りは健康と身体を結びつける黄金の鎖
ところが400年ほど前に調子が変わります。20世紀初頭、エジソンは睡眠は時間の無駄だと言い切りました。
Sleep is a criminal waste of time and a heritage from our cave days. 眠りは犯罪的な時間の無駄であり、原始時代の遺産である。エジソン
Sleep is for wimps. 眠りは弱虫のためにある。マーガレット・サッチャー
Money never sleeps. 金は眠らない。 ウォーレン・ゲッコー「ウォール街」より
エジソンは電球を発明し、その電球が夜を侵略。20世紀になってから、人は睡眠を敵のように扱かっています。眠りについてあまりに無知すぎます。
眠っているときは何もしてないように見えるけど
なぜ私たちは睡眠を顧みないのか?それは寝ているときは何もしていないように見えるからです。時間の無駄に思えてしまうのです。
違いますよ。
実は睡眠はすごく大切なのです。
寝てるからと言って脳はシャットダウンしません。起きているときより、寝てるときに、活発になる部分もあります。
睡眠中は、脳のどこかが単独で動いているのではなく、ネットワークを作って活動します。
(ここで先生は脳のモデルを手に持つ)
これは視床下部( hypothalamus)です。この下に体内時計があります。この部分は視床下部のいろいろな組織の連絡役です。
これらが一体となって、脳幹にプロジェクション(投射)を送り、脳幹は脳の前のほうの大脳皮質(しわしわの部分)を神経伝達物質で満たし、私たちを起こします。意識が戻るのです。
睡眠中は脳のいろんなところが相互に影響しあっています。睡眠は複雑で、人生の32年ぐらい使ってしまうわけです。
なぜ私たちは眠るのか?
睡眠の理由について、科学者のあいだで意見が一致していません。たくさん学説があるのですが、3つ紹介しますね。
1.restoration(回復)
昼間の活動で使ってしまったものを睡眠中に回復している。
この考えは2300年前のアリストテレスの時代からありました。
脳内の遺伝子の多くが睡眠中だけ活性化され、回復と代謝機能を促すので、説得力があるし、現在も有力な説です。
2. energy conservation(エネルギーの温存)
寝ているあいだにカロリーを節約している。
しかし、睡眠で節約できるカロリーはホットドッグ用のパン1個と同じぐらいの110カロリー。
たった110カロリーの節約のために、脳がこんなに複雑なことをしているとは思えません。
3.brain processing and memory consolidation(脳が情報を処理し、記憶を定着している)
私はこの説が有力だと思います。眠らないと物が覚えられません。また複雑な問題に対する新しい解決策を思いつく能力は、一晩眠ると大幅にアップします。
3倍アップすると考えられています。夜眠れば、よりクリエイティブになるのです。
眠る理由はたくさんあります。私が言いたいのは「睡眠は怠慢ではない」ということ。また簡単に理解できるものでもありません。
むかし、眠りは飛行機のエコノミークラスからビジネスクラスへのアップグレードにたとえられました。ですが、眠らないとそもそも飛ぶことができないのです。
現代人はみんな睡眠不足
現代社会では、みんな睡眠不足です。必要な睡眠はこのぐらいなんですよ。
(スライドを見せる)
1950年代の平均睡眠時間は8時間、2013年は6.5時間。5時間しか眠らない人も大勢います。
ティーンエージャーは9時間眠る必要があるのに、平日は5時間ぐらいしか寝ていないので、全く足りていません。
年配になるとまとめて眠る能力が衰えるせいもあり、多くが5時間未満しか寝ていません。
労働人口の20%にあたるシフトワーカー(交代勤務をする人)は、眠りの質が悪く、その時間も5時間ぐらい。体内時計は夜勤でも変わらず、昼間しっかり眠ることができないからです。
さらに大勢の人がジェットラッグ(時差ぼけ)に悩まされています。
危険な睡眠不足
脳はマイクロスリープ(micro-sleeps)をします。自分の意志には関係なく、眠ってしまうことです。いわゆる居眠りです。
マイクロスリープは恥ずかしいけど、危険でもあります。ドライバーの31%が生涯に1度は居眠り運転をします。
アメリカの統計によると、高速道路で起こった事故のうち、10万件が疲労や、注意不足、居眠りと関係があります。10万件はとんでもない数字です。
チェルノブイリの事故や、スペースシャトルのチャレンジャー号の事故も、きついシフトワークのせいで疲労が重なったスタッフが、注意散漫になり、判断をあやまってしまったことが原因だとされています。
睡眠不足で疲れているとこんなことが起こります:
●記憶力が衰える
●創造性(クリエイティブティ)が発揮できない
●衝動的に行動しがち
●全体的に判断力がにぶり、まずい判断をしてしまう
実はこんなのは序の口でもっと悪いことがおこります。
●興奮剤を求める
脳が疲れると、何か覚醒してくれるものを強く欲します。
そこで、ドラッグや、興奮剤、たとえば西洋ではカフェインが一般的ですが、こういうものが使われるのです。1日中カフェインが必要。心底疲れてしまったときはニコチンです。
こうした刺激を与えるもので覚醒していても、夜11時になると、脳は「もう寝なくちゃ」と思います。そんなとき、興奮していたらどうしますか?
そう、当然アルコールですね。
アルコールは短い間なら、ちょっと落ち着かせてくれます。入眠を助けてはくれますがそれだけです。
むしろアルコールは記憶を定着したり、思い出したりする神経の活動を邪魔するんです。
アルコールを使って眠ろうとすることは短期的で強引な方法。いつもそれに頼っていてはだめですよ。
●体重増加
睡眠不足は体重も増加させます。毎晩5時間以下の睡眠だと50%の確率で肥満になります。
睡眠不足だと、グレリンという、食欲を起こすホルモンが分泌されるらしいのです。グレリンが脳に行くと、脳は「炭水化物が必要です」とからだに言い、人は、炭水化物、特に砂糖を求めます。
よって、疲労と体重が増える代謝の傾向は関係があるのです。
●ストレス増加により病気に
疲れている人はストレスでいっぱい。ストレスがあると物忘れしてしまいます。
一時的なストレスはまあいいとして、いつもストレスでいっぱいだと睡眠不足になり、問題が生じます。
ストレスが続くと免疫力が低下するので病気にかかりやすくなります。シフトワーカーのがん発生率が高いという研究があります。
血糖値もあがります。血液中のグルコースが増えるのです。その結果、グルコースの耐性がなくなり、2型糖尿病を引き起こします。
ストレスは心臓病の原因でもあります。血圧が上昇するからです。
睡眠不足からこのようにいろいろなことが起きます。単に、脳の機能がちょっと衰えるどころではないんです。
こんな人は睡眠不足
自分の睡眠が足りているかどうかは、こんなことからわかります。
●目覚まし時計が必要
●起きるのに時間がかかる
●興奮剤(カフェインとか)がたくさんいる
●イライラしている
●同僚から疲れて、いらついているね、と言われる
こういう人は睡眠不足です。周囲や自分の声をよく聞いてください。
ぐっすり眠る方法(sleep for dummies)
●寝室をできるだけ暗くして、ちょっと涼しくする
●眠る30分前から光をあびる量を減らす
光があると覚醒してしまいます。多くの人が寝る前にやたら明るい洗面所に行き、歯を磨きますが、これは寝る前にする最悪のことです。
●携帯電話、コンピュータを消す。脳を刺激するものはすべて消す
●昼食後はカフェインを取らない
●朝、しっかり光をあびる
●自分のからだの声に耳を傾ける
睡眠にかかわる事実や神話
●ティーンエージャーは怠け者か?
いえいえ、10代の子供は遅く寝て、遅く起きるようにできていますので、そのようにさせましょう。
●睡眠は平均8時間必要
これは平均なので、人によっては短い睡眠でいいし、また別の人はこれより長く必要です。自分のからだに聞くことが大切。
●年をとった人はそんなに眠らなくてもいいか?
必ずしもそうではありません。年をとるとまとめて眠りにくくなりますが、必要な睡眠の量は変わりません。
●早寝早起きだと健康でお金持ちになるか?
大間違いです。そんな証拠はどこにもなし。朝型人間と夜型人間に違いがあるとしたら、私の経験では朝早く起きる人は、うぬぼれが強いことぐらいです。
最新の神経科学の発見:不眠症とメンタルヘルスの関係
130年前から、ひどい精神疾患の背後にはいつも睡眠障害があるとわかっていましたが、ほとんど無視されてきました。
1970年代でも、統合失調症の人は、薬を飲んでいるから睡眠障害になるのは当然、と考えられていました。
薬がない時代でも、睡眠障害になっていたのに。
最新の研究により、統合失調症の人は夜起きていて、昼間眠っているとか、24時間の周期が損なわれているということがわかりました。
体内時計がうまく働かない場合もあります。
精神疾患と睡眠は相関関係があるだけでなく、脳の中で物理的にも関係があるのです。
眠りを引き起こす神経のネットワークと、メンタルヘルスを司るネットワークが重なっているのです。
睡眠をとるために大事な遺伝子が、突然変死すると、精神の問題を引き起こすのです。
睡眠障害はある種の精神疾患の前兆であり、躁うつ病の危険が高い若い人たちのあいだによく見られます。薬を処方される前から、正常な睡眠ではなかったのです。
睡眠の乱れは精神疾患をさらに悪くする可能性があります。眠りを安定させたら、患者の症状が軽くなった研究もあります。
睡眠とメンタルヘルスの関係がわかったので、こんな流れになってきています:
1.眠りや精神疾患が脳内でどんなふうに起きて、制御されるのか解明されつつある
2.睡眠障害を病気の前兆ととらえれば、早期治療ができる
3.脳内の睡眠をコントロールしている場所を、精神疾患を治すときの治療対象にできる
*********
昔の人(産業革命以前の人)は眠りの大切さを本能的に知っていました。眠るのは健康になるための実践的方法なのです。
眠りの質があがれば、集中力、決断力、創造性、社会性、健康、すべてアップします。イライラしませんし、ストレスや怒り、衝動も抑えられ、飲酒や薬に頼る必要もなくなります。
ファンタジー作家のジム・ブッチャーはこう言いました。
Sleep is God. Go worship. 眠りは神さま。崇拝せよ。
皆さんもそうすることをおすすめします。
・・・・・ 抄訳ここまで ・・・・・
睡眠不足が人を衝動的にさせる
今回の動画は、21分間に睡眠に関する情報がてんこ盛り。睡眠と精神疾患の関係以外はすでにこのブログに書いています。
⇒見逃しがちな睡眠の7つのメリット。若さを保ちたいなら夜はしっかり寝よう
今回、特に注目したのは、睡眠不足だと、衝動的になって、判断力がにぶるということ。
買い物が止まらない人、特に衝動買いが多い人は、睡眠が足りていないかもしれません。
人間がもともとどのぐらい衝動的なのかはわかりませんが、少なくとも夜、しっかり寝ておけば自分の衝動を最低限におさえることができるでしょう。
あとは時々、自制心を鍛えておけば万全です。そうすれば、ガラクタもたまらず、節約もできます。
自制心の鍛え方⇒人生で成功したいなら自制心を持て~マシュマロ・テストに学ぶ成功法則(TED)
睡眠不足がストレスを増加させる
フォスター先生は睡眠不足だと疲れてストレスがたまり、血糖値があがる話をしていました。
なぜそうなるのか、部屋のガラクタがストレスホルモンを分泌し「逃走か闘争モード」になる記事で詳しく書いています。
こちら⇒ title=”集中できないのはぐしゃぐしゃの部屋にいるから。ガラクタは脳にも悪影響を与えている”集中できないのはぐしゃぐしゃの部屋にいるから。ガラクタは脳にも悪影響を与えている
部屋にガラクタがいっぱいで、さらに睡眠が不足している人は、本当に病気になるかもしれないので、気をつけてください。
夜はしっかり眠りつつ、断捨離をしましょう。
*******
自分の衝動や欲望がコントロールできない人は、前頭葉の働きが鈍っているから、とよく聞きます。前頭葉のパフォーマンスを向上させるために、睡眠は不可欠です。
自分の思ったように行動できず焦っている人は、本を買って読むとか、筋トレするとか、からだにいい食べものを食べる前に、まずしっかり睡眠をとったほうがいいかもしれませんね。
お金もかかりませんし、よけいなものも増えません。
木枕にして、敷布団を断捨離して床に寝れば、さらに睡眠の質はあがることでしょう。