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英語の勉強法に関する質問をいただきました。どうしたら英語のリスニング力が伸びるか、という主旨です。
たまに、英語の学習法を聞かれることがあるので、この記事でしっかり回答しておきます。
まず、メールシェアします。Sさんからです。
TEDの英語を聞き取りたい
筆子さんのブログを3ヶ月ほど前に知り、まとめ記事や過去のブログ(全部ではありませんが)や執筆された本2冊も読ませて頂きました。
ミニマリストやシンプルライフに関する提言、とても参考になります!実際に自分の所持品もかなり減らすことができました(まだまだ減らし方が甘いのですが)。
筆子さんのTED記事も大好きです。記事の選択も私にも興味深いものばかりですし、抄訳を付けて下さっているので英文を聴きながら抄訳を目で追っています。
筆子さんはカナダに住んでいらっしゃって英語も堪能ですしフランス語などの語学を趣味にされているので、英語の勉強法について質問させて頂けますか。
私は40代後半で、日本の大学を卒業後、日本企業で英語を使う部署にいたあと、国際法律事務所で契約書などの法律文書の英文和訳する仕事に代わりました。
この仕事は15年程度続けています。
英語の勉強は大学在学中から非常に好きで、英語圏の有名人への英語インタビューなどを「イングリッシュ・ジャーナル」のカセットテープやCDで何度も聞いてスクリプトと照らしあわせたりしていまいした。
就職後も趣味と実益を兼ねて英語の勉強を続け、通訳学校に2年程度通ったりもしました。
英検1級やTOEIC950点などもとってみました。
NHKの語学番組も利用したし、TEDも何年か前から随分聞きました。
でも、問題は、ちっともTEDなどのインタビューが聞き取れるくらいのリスニング力が身につかないのです!
大学時代から起算してかれこれ30年間も「英語が聞き取れるようになりたい」と思って地道に勉強を続けても、こんな状況です。
やはり、筆子さんのように英語圏に住んで、「英語で意思疎通しないと生活できない」というせっぱつまった状態にならないと語学の上達はないのでしょうか。
それとも「聞くだけでなくスクリプトを声に出して読む」など、もっと効果的な学習方法があるのでしょうか。
どうか教えて下さい。
Sさんお問い合わせありがとうございます。
本も読んでいただき、とてもうれしいです。
さて、Sさんは英語を長く勉強していて、15年、仕事で英語を使っているし、英検1級やTOEICの高得点も取得しているし、通訳学校に2年も通っています。
英語の勉強ということに関しては、私より先輩かもしれません。
英語の学習を長くしている人には、とくに目新しいアドバイスではないと思いますが、「こんなことをしたらいいかもしれない」ということを書いてみますね。
手順は断捨離と同じです。まずどんな状態になりたいのか自分で考え、目標を設定し、次に現状を調べ、到達したい地点と現状とのギャップを埋めていきます。
ギャップを埋める話⇒この先どうしたらいいのかわからないと悩んだらこれを読んでください。
順番に見ていきましょう。
1.目標の設定
まず自分が望む状況や目標を設定します。
Sさんの目標は、「TEDなどのインタビューが聞き取れるくらいのリスニング力」の習得かと思われますが、もう少し具体的に設定するといいかもしれません。
というのもTEDとインタビューは違うからです。
TEDはプレゼンなので、『イングリッシュジャーナル』にのっているインタビューよりやさしいのではないでしょうか?
TEDのスローガンは、”ideas worth spreading”(広げる価値のあるアイデア)です。つまり、プレゼンターは、何かを聴衆に伝えたい、と思って登壇します。
自分の考えを伝えるために、いろいろ工夫しているはずです。
ゆっくり話すだろうし、わかりやすい構成にするだろうし、誰もが知っている言葉を使うだろうし、身近に感じてもらうために、例え話やユーモアを盛り込むでしょう。
そんなわけで、TEDの英語の聞き取りは、気ままに話すインタビューよりはやさしいかと思います。
ただ、TEDにはいろいろなテーマのプレゼンがあるので、ものによっては専門的すぎて、とても難しく感じるかもしれません。もともと自分がよく知っている分野の話はわかりやすいです。
そこで、「環境関連のプレゼンなら8割がた聞いてわかる」といった具体的な目標を立ててください。
これはあくまで例です。到達地点はご自身で決めてください。ポイントは、今の自分に関係がある現実的な目標を立てることです。
自分が本当に望んでいないことを目標にしても意味がありません。
私は、中学生のときから、洋楽(アメリカやイギリスのポップス)が大好きで、ラジオにかじりついて、「これ、いったい何を歌っているんだろう? わかるようになりたい」と思っていました。
意味もわからず一緒に歌ったり、時々、歌詞をカタカナで書き取ってみたり、『明星』や『平凡』(雑誌の名前です)の歌本で歌詞をチェックして、辞書で調べたりしたものです。
『ミュージックライフ』や『音楽専科』(雑誌の名前です)を熟読し、背景知識(?)もしっかり仕入れていました。
このように強い興味を持っていると、いずれはだいたい聞き取れるようになります。
目標の立て方⇒新年の誓いをより効果的に立てる7つのコツ。確実に実現に近づくために。
TEDって何?という人はこちらをどうぞ⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
2.現状をチェックする
次に、現状をチェックします。
正直、Sさんのメールを読んで、英検1級を取得し、通訳学校に2年も行ったのに、TEDのプレゼンが聞き取れないって本当かしら?
と思いました。
英検1級を持っていても、しゃべるのは苦手、という人は多いのですが、聞き取りは英検の試験にもあります。それに、通訳するには、聞き取り力は不可欠なので、学校に行けば、かなりトレーニングするでしょう。
『イングリッシュジャーナル』で扱っているインタビュー音声は、ちまたにあるふつうの(加工してない)音声だし、聞き取り力を伸ばすコツみたいな特集はしょっちゅうありますよね。
Sさんは、もしかしたら、聞き取れているのに、聞き取れないと思い込んでいるのかもしれません。
日本人の常で、できないところに目が行き過ぎているのではないでしょうか? あるいは、「どんな話題のTEDも一言一句聞き取らなければならない」と思っているのかもしれません。
そもそも、「わかる」というのはひじょうにあいまいな言い方です。
そこで、実際に、TEDのプレゼンを聞いてみて、どの程度理解できるのか調べてください。
こちらにアクセスして⇒TED: Ideas worth spreading プレゼンを適当に選び、字幕なしで見てみます。
自分の好きなテーマのプレゼンを検索して探してもいいです。
見終わって、どんな話だったのか、自分はそれについてどんなふうに思ったのかノートに書いたり、そのへんの人に、「こんなTEDを見てね、こんな話だったのよね」と伝えることができれば、「わかった」と言えるのではないでしょうか?
どんなTEDトークも100%わかろうとするのは無理があります。
アメリカ英語に慣れていると、イギリス英語やオーストラリア英語は聞き取りにくいし、英語が母国語じゃない人の英語も聞き取りにくいです。
ただ、ネイティブじゃない人の英語は、単語や構文が簡単なので、その分、聞き取りやすさはアップします。
自分が慣れ親しんだ話題や、興味のある話は聞き取りやすいし、見たことも聞いたこともない話題や、全く興味のない話は頭に入ってきません。
それは日本語で展開されるプレゼンも同じですよね。
自分が慣れ親しんだ地域の英語を話すプレゼンターが、自分がよく知っている話題を語っているのを見ても、ちんぷんかんぷんの場合は、ギャップを埋める努力をします。
3.なぜわからないのか理由を調べ対策する
英語を聞いてわからないとき、わからない理由がいくつかあります。
考えられる理由と対策を書いておきます。
1.)内容にまったく興味がない
このようなプレゼンは別にわからなくてもいいと思います。いまの自分の人生に関係ないからです。
そのうち、何かの拍子に興味がわいて、その時聞いてみたら、わかるようになったりします。
英語を勉強している人は、「自分はネイティブみたいにならなければいけない、何でも聞き取れなければいけない、そうじゃない人は、英語ができない人」という思い込みに縛られがちです。
典型的な完璧主義、白黒つける思考です⇒なんでも白黒つける考え方をやめるススメ。思い込みを手放して可能性を広げるには?
ですが、日本語でだってそんなことできていません。それに、一口にネイティブといってもいろいろな人がいます。
2.)話者のアクセントに慣れていない
2番にも書きましたが、その人の英語のアクセントに不慣れだと、聞き取るのが難しくなります。この場合、そのアクセントに慣れれば大丈夫です。
スクリプトと突き合わせて何回も聞いたり、同じアクセントで話されている別の英語の素材を聞き込みます。日本語の方言と同じで、慣れると理解度がアップします。
3.)単語を知らない
あまりにも知らない単語が多すぎると、前後から推測するのが難しくなります。
この場合は、少し覚えたほうがいいです。
Sさんの場合は、基本的な単語は知っていると思います。専門用語に弱いのかもしれません。
「脳に関係のあるTEDのプレゼンを聞き取りたいのに、聞き取れない」と思うなら、脳の話をすると必ず出てきそうな単語を意図的に覚えてください。
こちらに、脳の部位を説明している動画を貼っていますが⇒人の行動に大きな影響を及ぼしている匂いの話(TED)
この手の、勉強系YouTubeの動画をたくさん見ているうちに自然に覚えるし、ノートにリストアップして覚えるとかすればいいです。
4.)単語の音や音のつながりを知らない
スクリプトを読んだらすらすらわかるのに、音で聞いてみるとわからない、という場合は、文字列と音を一致させるようにすれば、わかるようになります。
apple (りんご)を「アップル」とおぼえ、「アップル」と発音していると、英語でappleと言われてもピンときません。なぜなら、apple は「アポー」みたいな音だからです。
ほかにも、音のつながりや、強く発音されるところと、弱く発音されるところの波みたいなのに慣れていないと聞き取れません。
日本語は音節ごとに、均等に発音しますが、英語はどこかに強いアクセントがきます。たとえば、私の名前は筆子であり、日本人なら、「ふ・で・こ」と淡々と発音します。
しかし、英語話者はこれができません、「ふ」に強勢をおいたり、「で」に強勢をおいたりするので、自分の名前を呼ばれているのに、わからなかったりします。
このように、音に不慣れだから、聞き取れないなら、音と文字列のすり合わせや、発音の練習、英語らしく話したり読んだりする練習をすれば改善できます。
5.)文法を知らなさすぎる
日本語もそうですが、英語もこの単語が来たら、次はこれがくる、とか、こういう展開になる、と予測できます。
文法を知らないとこの予測がうまくできないので、基本的な文法は勉強しておいてください。
とはいえ、Sさんは文法は大丈夫ですよね?
基本文型や動詞の基本的な変化(過去の話は過去形になるとか、完了形があるとか)、こんな前置詞があるとか、関係代名詞で前の言葉を説明するとか、名詞節や副詞節というものがある、といったことです。
名前は知らなくてもいいのですが。
それと、句動詞(動詞+前置詞やらがセットになって特定の意味を示す言葉。例:come on)を意識的に勉強するといいかもしれません。
上に書いたように、英語にはほとんど発音されない言葉があります。
たとえば、a やthe とか yourなど。theのような機能を担っている言葉は一呼吸おいているぐらいに聞こえます。このような、ろくに発音されていないけど、実はそこにある言葉を補うには、文法の力と語彙力が必要です。
theを1つ聞き落としても、体制に影響はないでしょうが、前置詞や短い言葉がいくつかつらなっていて、重要な意味をになっている場合があります。その多くが句動詞です。
6.)背景知識がない
よく知らない世界の話題は日本語で聞いても、ピンと来ません。
自分が聞き取りたい分野の背景知識を日本語でいいので仕入れてください。
子どもむけにやさしく書いてある本や新聞を読むといいでしょう。
もし、「どんなTEDもある程度聞き取れるようになりたい」と思うのなら、新聞をばりばり読み、内容をまとめたり、読んだことを人に伝えたり、自分はそれについてどう感じるのか、言語化する練習をおすすめします。
7.)英語の処理速度が遅い
文法も単語もイディオムも句動詞もそれなりによく知っているし、音の変化にも慣れている。だけど聞き取れない、という場合は英語の処理速度が遅いと思われます。
スクリプトを話者が話すスピードと同じくらいの速さで読んで、すんなり頭に入ってこれば、聞き取れるわけです。
読んですらすらわからないものは、絶対聞き取れません。
時間を測って読んでみて、ちゃんと理解しながら、プレゼンと同じくらいの時間内に読み終わるかどうか調べてください。
「ゆっくりならわかるけど、早くは読めない」ということなら、早く読めるように練習します。
TEDを英語の字幕つきで表示させて視聴し、字幕を読みながら理解する練習をします。
この練習は目が疲れるので、少しずつやってください。あと、小さい画面より大きな画面でやったほうがいいです。
早く読めないのは、語彙を知らない、文法が弱すぎる、読むのに慣れていない、意味のかたまりごとにさっさと処理していない、といった要因のせいです。
処理速度が遅い場合は、フルーエンシーをあげるために、簡単な素材を大量に読み、大量に聞くことが有効だと思います。
中学校の教科書あたりの超簡単な素材を大量に読むのがいいんじゃないでしょうか?
日本人は大学受験の影響で、難しい素材をやりすぎる傾向があります。
ですが、難しい素材で扱っている内容は、あまりに他人事すぎます。ふだん、日本語でもそういうものを読んだり、そういう話をしているのなら別ですが。
自分の人生で英語をいかしたいのなら、自分の生活レベルに合ったものを使って練習したほうが実用的です。
それと、もしかしたら長さのある英語を聞くのに慣れていないのかもしれません。
TEDは15分ぐらいですから。試験や教材で聞く英語は、ひとつ5分ぐらいですよね?
短いものは大丈夫だけど、長いものは集中力が続かない、という場合は、ある程度長さのある英語を聞けば慣れていきます。
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3番に書いたことは、べつに日本国内で充分できます。
英語圏に住んでいても、英語がいっこうに上達しない日本人は山ほどいます。
自分はどんな力をつけたいのか確認し、現在の状況を調べ、ギャップを埋める対策をたて、実践し、それを継続する。よければお試しください。