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ダイエットに失敗続きの人、片付けや貯金が続かない人に見てほしいTEDトークを紹介します。
タイトルは How to get healthy without dieting (ダイエットせずに健康になる方法)
講演者は神経科学者で食の研究家のDarya Rose (ダリヤ・ローズ)さんです。
ダイエットせずに健康になる:TEDの説明
Darya discusses how psychology impacts our ability to create healthy eating habits. Darya is a neuroscientist, author and popular blogger who has trained her sights and talents on solving the age-old problem of eating healthy and losing weight.
ダリヤは、いかに心理状態が、私たちの健全な食習慣を作る能力に影響を与えるか話します。
神経科学者、作家、人気ブロガーのダリヤは、ずっと昔からある、健康的な食事をしながら、体重を落とす問題を解決するために、洞察を続け、才能を駆使してきました。
収録は2019年1月、動画の長さは15分。英語ほか数カ国語の字幕があります。動画のあとに詳細を書きます。
☆トランスクリプトはこちら⇒Darya Rose: How to get healthy without dieting | Darya Rose | TEDxSalem | TED Talk
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
英語も構成もわかりやすいプレゼンです。
あらゆるダイエットをした15年間
私がはじめてダイエットをしたのは、11歳、小学校6年生のときです。
太り過ぎていたわけではありません。
ある朝、台所に行ったら、母が、自分の朝食にチョコレートのミルクシェイクを作っていました。
おいしそうなチョコレートシェイクだなと思ったところに、母が、「これは、ダイエットシェイクで、やせられるのよ」と言ったので、ますます、いいな、と感じました。
まだ子供でしたが、90年代のスーパーモデル文化に染まりつつあり、やせていることはいいことだと思っていたのです。
母のスリムファースト(ダイエットシェイクの名前)を飲み始めてから15年たったあとも、私は、毎日、食べ物や自分自身について満足できない日々を送っていました。
その15年間、私はあらゆるダイエットを試しました。高校生のときは、脂肪分が入っている食品はまったく食べませんでした。
大学時代は、糖質が禁断の果物でした。誰よりも、キャベツスープ、グレープフルーツ、ボンレス・スキンレスチキンを食べてきました。
ダイエットの問題点
こうしたダイエットは一応成功しました。これまで、20回は、10ポンド(4.5キロ)やせましたからね。だから、ダイエットがとても魅力的だということはよくわかっています。
やせるために何かをがんばって、皆に、「やせたわね。素敵ね」と言われると、どれほどいい気分になるかも。
でも同時に、ちょっとだけのズルが、何日も続き、しまいには何ヶ月にもなって、ダイエットを始めたときより、太ってしまい、「また失敗したんだ」とみじめな気持ちになることも何度も体験しました。
何かを制限するダイエットはとても効果的ですが、ほんの少しの期間だけです。ダイエットをしてやせることと、健康であることを長期的に両立させるのは簡単ではありません。
ダイエットのせいで悪い習慣がつきます。食べものに関して『足りないマインド』になってしまい、今度は過食傾向になり、そのせいで、生涯に渡って、代謝機能のバランスがくずれます。
真の解決策は?
特にダイエットをせず体重を落としたままでいることができる人々がいます。
全国体重管理登録所(National Weight Control Registry)のメンバーには、30ポンド(13.6キロ)体重を落として1年キープできた人がいますが、平均すると66ポンド(27キロ)落として、5年間、その体重をキープしています。
どうやってそんなことをしているのか?
それぞれ、自分に合う健康な習慣を身につけたのです。月並みな言葉になりますが、ヘルシーなライフスタイルを構築したわけです。
実は、これこそが、体重を落として、健康でいられる惟一の方法です。
多くの人がそうできないのは、実は、とても大変だから。
でも不可能ではありません。自分の時間とエネルギーを、上手に使う方法がわかっていたら、できる人は増えるでしょう。
きょうは、ヘルシーなライフスタイルを手に入れる3つのコツを紹介します。
1.楽しめる習慣を取り入れる
新しく身につけたい習慣は、自分が楽しめるものにします。「やればできる」とか、「なんとかがまんできる」という習慣ではなく。
健康的な習慣を手にいれようとするとき、やりがちな失敗は、さほどやりたくないことを選んでしまうことです。
体力を無視した運動プランを立てたり、健康的だからという理由だけで、味気ない食べものを食べたり。
このやり方は、脳が習慣を作る方法と真逆なので、長続きしません。
習慣づけするには、きっかけやリマインダーが必要です。何かを見たり、聞いたり、感じたり。
淹れたてのコーヒーの匂いをかぐと、コーヒーを飲むという行動をしたい欲望が生まれます。
コーヒーを飲めば、何らかの報酬があると期待しているからです。おいしいコーヒーの味や、ちょっとばかり元気になれること、これが報酬です。
ある行動をしたとき、こうした報酬(満足感)が、ないと、その行動は、決して、強化されず、自動的にできるまで、くりかえすことができません。
自動的にできないなら、それは習慣ではありません。
つまり、その行動そのものの中に、楽しめることがあるべきです。
今日は走ったから、寝る前に1時間ネットフリックスを見よう、という報酬はだめです。
その活動に直接関係のない報酬は、長期的に見るとやる気を失わせると、リサーチからわかっています。本当なら楽しめたはずの活動(=新しく習慣にしたいこと)を、「やらねばならないこと」だと思わせてしまうからです。
だから、その行動そのものを好きになり、それが報酬である必要があるのです。
私のごほうび
私の報酬は、ファーマーズマーケットに行くのが好きになることでした。にんじんやきゅうり、トマトのような素朴な食べ物があんなにおいしいなんて、それまで知りませんでした。
ビーツや芽キャベツなど、嫌いだった食べ物まで好きになりました。突然、料理に興味がわきました。それまで、これっぽっちも興味がなかったのに。
一夜にして、健康的な食事は、私の喜びになり、それは私のデフォルトで、生涯続く、新しいアイデンティティとなったのです。
これこそ、自分が楽しめる習慣です。
もし、あなたが走るのが嫌いだったら? 走らないで、べつの自分が好きなことで身体を動かしてください。
運動不足でどんなこともしんどいと思うなら、ごく小さなことから始めてください。
夜、そのへんをちょっと散歩するとか。その散歩でどれだけカロリーが燃焼できるか、なんてことは考えず、自分の好きな新しい習慣を身につけることを考えてください。
2.マインドフルネス
2つめのコツは、自分の思考や行動、感情に気づくことです。専門的な言葉を使えば、マインドフルネスです。
現在の習慣は、完全に自動的に行われているので、マインドフルネスが重要になります。
知らないうちに、休憩室にあったポテトチップスを持ってきて、パソコンの前で食べてしまう、これは自動的な行動で、習慣です。
マインドフルネスは、自分のいまの心理状態に気づくスキルです。
マインドフルでいられると、ちょっと立ち止まって、行動する前に自分の価値観を振り返り、新しい行動を選択したほうがいいと考える柔軟性が生まれます。
ピザかヘルシーなご飯か?
仕事から戻るときのことを想像してください。
疲れておなかがすいているし、渋滞の中で、絶好調とは言えない気分です。
朝、帰宅したら、ヘルシーな食事を作るつもりだったとしても、もうそんなことはしたくありません。疲労、空腹、イライラのせいで、すぐに用意できる、高カロリーな食べ物に手が伸びるでしょう。
フリーザーの中にあるピザとか。
何も考えず、ピザを食べることや、その気持ちに無理やりに抵抗することより、このときの自分の気持ちに気がつくことが重要です。
そうすれば、その気持ちのまま、ピザを食べるほうがいいか、ちょっと大変ではあるけれど、健康的なものを用意するほうがいいか、自分に問いかけることができますから。
たとえ、このときは、ピザを選んだとしても、自分の気持ちに気づいていれば、将来、ピザを食べずにすむよう、対策を立てることができます。
会社を出る前に、ナッツを少し食べて、空腹になりすぎるのを防いだり、簡単にできる献立を考えておいたり。
新しい習慣を身につけるときは、ちょっと努力が必要です。けれども、その行動の中に報酬があれば、そのうち、そうすることが一番簡単になります。
習慣づけをするとき、マインドフルネスが助けてくれます。
日常、マインドフルになる練習をしておくといいですよ。ごく簡単な深呼吸でも効果があります。
さしせまっていないときに、マインドフルネスを練習しておくと、ギリギリの状態のときにも、マインドフルでいられるものです。
3.成長マインドを培う
3つ目のコツは、もっとも大切なものです。成長マインドになりましょう。
成長マインドセット(growth mindset)は心理学者のキャロル・ドゥエックが作った言葉で、粘り強く、努力すれば、壁を乗り越えることができるし、スキルをのばすことができるという信念です。
成長マインドセットの逆は、固定化マインドセットで、これは、自分の才能や特徴は生まれつき固定化されていて、努力しても変えられないという信念です。
私の経験では、健康は、成長マインドセットになるのにとてもむずかしい分野です。ダイエットをたくさんしたのに、体重が増えて、健康が損なわれてしまうと、問題は自分にあると信じてしまいますから。
自分には運動は向いていない、私は高カロリーの食べ物から離れられないんだ、と自分に言い聞かせるようになります。
いったん「私はこういう人だ」という物語を信じ始めると、それを変えるのは難しいものです。これが、固定化マインドセットのわなです。
誰でも成長マインドになれる
幸いなことに、成長マインドセットは、自分で育むことができます。人間なら誰でも、学んだり、スキルを磨いたりできると理解すればいいのです。自分も例外ではありません。
料理を学べるし、子供のとき大嫌いだった食べ物を好きになれるし、体育が嫌いでも、アクティブになれます。
長時間仕事をし、家庭を持っていても、セルフケアを優先することができるのです。
学びのプロセスの中には、失敗もある、とわかっていなければ、成長マインドセットになれません。
後戻りをしても、それが自分という人間を決めるわけではないし、むしろそれは、自分やこの世界がどんなふうに動いているのか学んで成長するチャンスなのです。
歩く練習をしている赤ちゃんが転んでも、失敗ではないですよね?
成長マインドの人は、うまくいかないことや、自分では変えられないことに目を向けるのではなく、自分でどうにかできそうなことにフォーカスします。
失敗しても、次は違う結果になるように、自分の行動や、自分がコントロールできることに意識を向けているのです。
成長マインドセットを育むのに、ラス・ハリス(精神科医)の提案が役立ちます。
3つの質問をします。
うまくいったことは何?
うまくいかなかったことは何?
次は、何を違うふうにできるだろうか?
この質問をすると、失敗に意識を向けることから、前向きな行動をすることにうまくシフトできます。固定化から成長へのシフトです。
エネルギーを最適な場所に注ぐ
信念や習慣を変えるのは、簡単ではありません。
マインドフルになる練習をするのは努力がいります。
自分が楽しめる健康的な習慣を見つけるためには、自分について何度も振り返り、うまくいく確信がなくても、新しいことを試さなければなりません。
けれども、どんな分野でも、進歩することができます。自分のエネルギーを正しい場所に注ぎこめば。
15年間、私は、食事をしても満足できなかったし、運動してはみじめな気分になっていました。よけいな体重をかかえて、自分の姿にイライラしていました。
いったん戦略を変えたら、効果が出るまでに、ほんの数ヶ月かかっただけです。
リバウンドもせず、数年後には、自分のゴールより上に行きました。
でも、その時にはもう、そうしたことは問題ではなくなっていたのです。私は実際に幸せだったから。
これまでずっとあがいていたことが終わりを告げ、私の生活は大きく変わりました。
たくさん野菜を食べ、加工食品にはめったに手を出さず、まめに料理して、毎日身体を動かしています。しかも、こうしたことが皆、楽しいのです。喜びと満足感があります。
健康的な習慣は、自分が好きだという気持ちの現れです。
ダイエットに費やしてきた15年間とほぼ同じ期間、幸せに健康に生きてきました。
変わることは、ある意味大変でしたが、一方で、とても簡単で一番自然なことでした。ずっと前からそうなることになっていたと思えるのです。
自分の心に逆らうのではなく、それにそって生きることですから。
//// 抄訳ここまで ////
単語の意味など
scarcity mindset 何かが足りない、不足しているという考え方。詳しくは⇒こんな考え方が貧乏を引き寄せる。お金がたまらない恐怖のマインドとは?
mindfulness いま、目の前にあるものに意識を向けること。詳しくは⇒マインドフルネスで実現する。今この瞬間を生きて幸せになる4つの方法。
growth mindset 成長マインド。詳しくは⇒自分の能力を自分で見限ることの恐ろしさ、できると信じることの素晴らしさ(TED)
ダリヤさんの本です。
ラス・ハリスさんの本です。
人間関係に悩んでいる人向きの本は翻訳も出ています。
ダイエットや習慣づけに関するほかのプレゼン
結果的に太っている。なぜダイエットは成功しないのか?(TED)
なぜ運動するのを面倒に感じるのか?あるいは断捨離を始められないのか?(TED)
スマホやYouTubeがクセになってしまう行動様式を知り、悪習慣を改める(TED)
悪い習慣を断ち切る簡単な方法(TED)マインドフルネストレーニングのすすめ。
片付けにも応用してみる
最初に書いたように、食習慣を変える3つのコツは、片付け習慣をつけるときにも役立ちます。
1)自分の楽しめることを始める
捨てることが苦手なら、いきなり、大規模な片付けに着手せず、ごく小さな片付けから始めます。
それも、すぐに成果がわかる物や場所を選ぶといいでしょう。
たとえば、財布やバッグの中など。
数分で終わるし、きれいになるとスッキリします。
2)マインドフルになるには?
マインドフルになることについては、過去記事で何度も書いています。
たとえばこちら⇒落ち着いて、注意を向けて、ありがとうと言う、その方法(TED)
いま、自分はどんな気持ちなのか、自分の気持ちに目を向けるようにしてください。
モーニングページを書くときだけでも⇒ネガティブ思考改善にモーニングページがいい~今月の30日間チャレンジ
3)成長マインドセットを意識する
成長マインドセットは、要は、「努力すれば自分は変わることができる」ことを、心から信じることです。
私はだらしないから、もともと片付けられない人だから、お母さんが、片付けられない人だったから、私も、その血を受け継いで、もうずっと片付けられないのだ、と考えるのは固定化マインドセットです。
口癖に注意する、決めつける言葉を言わない、メタ認知(自分の考えについて、考えること)など、成長マインドにシフトするやり方もいろいろ書いています。
おすすめ⇒ポジティブ思考は学習できる。前向きになる4つのポイント教えます。
「そういう考え方もあるのか」、「筆子がしつこいから信じてみるか」で始めても大丈夫です。
何度もそう信じて、行動しているうちに信念が書き換わります。
ただし、人によっては時間がかかります。
同じ人から何度もメールをいただきますが、いったん、成長マインドになったかのように見えて、次のメールでは、固定化マインドに逆戻りして、できないことばかり書いてくる、こういうことよくあります。
マインドフルネスを組み合わせると、「あ、またいつものパターンで、後ろ向きなことばかり考えている」「自分ではどうすることもできないことばかり悩んでいる」と気づくことができますので、気長に変えていってください。
該当する過去記事も一度読むだけにせず、時期を変えて、何度も読むといいですよ。
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体重をあと5キロ落としたい、10キロ落としたいと言って、がんばることがあります(私にもありました)。
ですが、この5キロ、10キロに科学的な裏付けみたいなものはたいていありません。
ただ、単に体重がこれだけ落ちればいい、そうしたら、問題はすべて解決する、と盲目的に思っているだけです。
そうやってがんばって、少し体重が落ちて大喜びをすることもあれば、食べたいものをがまんして、ストレスをためることもあります。
いい加減な数値目標に、振り回されるわけです。
ロジカルに考えて、無理のない目標を立て、楽しみながら習慣を変えていったほうがいいでしょうね。
現在、私は、何度目かのナッツを食べすぎない挑戦をしていますが、めずらしく続いています(といっても、18日ぐらいですが)。
これが長続きしたら、続けるコツをまた記事にしますね。