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皆さんは「成功」をどのように定義していますか?
その成功を手に入れるためには何が必要だと思いますか? 才能やIQが鍵を握ると考える方も多いでしょう。しかし、心理学者のAngela Lee Duckworth(アンジェラ・リー・ダックワース)さんが伝えるのは、全く別の視点です。
彼女のTEDトーク、Grit: the power of passion and perseverance (グリット:情熱と粘り強さの力)を見て確かめてください。
grit は「やり抜く力」と訳されていますが、どんな苦難にも耐える根性や気骨、勇気、粘り強さです。
グリット:TEDの説明
Leaving a high-flying job in consulting, Angela Lee Duckworth took a job teaching math to seventh graders in a New York public school. She quickly realized that IQ wasn’t the only thing separating the successful students from those who struggled. Here, she explains her theory of “grit” as a predictor of success.
コンサルティングの仕事で活躍していたアンジェラ・リー・ダックワースは、ニューヨークの公立校の7年生に数学を教える仕事につきました。
彼女は、すぐにIQだけが優等生と劣等生の違いではないと気づきました。
このトークで、成功の鍵を握る「グリット」理論について説明します。
収録は2013年4月、動画の長さは6分。日本語字幕あり。動画のあとに抄訳を書きます。
☆トランスクリプトはこちら⇒Angela Lee Duckworth: Grit: The power of passion and perseverance | TED Talk
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
アンジェラさんはとてもわかりやすい英語を話すので、英語の勉強に向いているプレゼンです。
内容もやる気を高めてくれますね。
中学の数学の教師になった
27歳のとき、経営コンサルティングのきつい仕事をやめ、もっときつい仕事である教師の職につきました。
ニューヨークの公立中学の1年生(7年生)に数学を教え始めました。
小テストや試験を作り、宿題を出しました。
答案が戻ってきたら成績をつけました。
教育で必要なのは心理学的に学生を理解すること
IQだけが、優等生と劣等生の違いではないと気づき驚きました。
すごく成績がいいのに、それほどIQが高くない子がいました。
すごく頭がいいのに、成績がよくない子もいました。
そこで考えました。
確かに、7年生が習う数学は簡単ではありませんが、学べないコンセプトではありません。
どんな生徒も時間をかけてしっかり勉強すれば、学べる内容だと確信していました。
数年教師をして、ある結論にたどりつきました。
教育で必要なのは、生徒をもっとよく理解すること、それも動機づけや心理学的な観点からよく理解することだと。
教育において私たちが測定に使うのはIQだけです。でも、学校や人生において重要なのは、何かを早く簡単に学ぶ以外の能力だとしたらどうでしょう?
心理学の研究を始めた
そこで私は教師をやめ、大学院に行き心理学者になりました。
困難な状況の中にいるさまざまな子供や大人について研究を始めました。
どの研究においても、成功したのは誰で、その理由はなぜか追求しました。
ウエストポイント陸軍士官学校へ行き、どの士官候補生がやめずに続け、どの候補生がドロップアウトするのか、予想しました。
全国スペリング・ビー(単語のスペルを言うコンテスト)では、どの子供が勝ち残るか予想を試みました。
ものすごく教育が難しい地区で働く新米の先生を調べ、どの先生が学年末までこの場所にとどまり、誰が劣悪な環境の中で、一番、生徒の学習効果をあげるのか調べました。
民間の企業についても調べました。どのセールスマンが仕事を続け、誰が一番お金を稼ぐか?
成功を左右するのはグリット
いろいろな状況で調べた結果、成功を左右するある1つの特徴が浮かび上がりました。
それは社会的な知性ではありません。
外見でも身体的な健康でもIQでもありません。
グリット(やり抜く力)です。
グリットはとても長期的な目標に向けられる情熱や忍耐力です。
それはスタミナがあること。
グリットは、明けても暮れても、自分の夢にこだわり続けることです。
その週だけ、その月だけだけではありません。
何年も、求めている未来を現実にするために、一生懸命取り組むことです。
グリットは、まるでマラソンをするように、人生を生きること。短距離走ではありません。
学業の成功もグリットがものを言う
数年前に、シカゴの公立学校でグリットの研究を始めました。
何千人もの高校2年生(ハイスクール・ジュニア)にグリットに関するアンケートをとり、1年以上待って、誰が卒業するか調べました。
その結果、よりグリットのある子のほうがそうでない子供より、ずっとたくさん卒業までたどり着きました。
ほかの指標、たとえば世帯の収入、標準テストのスコア、学校でどれだけ安全に感じているかといったことが同じときそういう結果になったのです。
グリットが重要なのはウェストポイントや、スペリング・ビーだけではありません。
学校においても、とくに、ドロップアウトするかしないか瀬戸際にいた子供たちにも、グリットは重要なのです。
グリットを育てる方法はまだわからない
グリットに関して、ショックなのは、グリットをどう養うかについて、科学的にほとんどわかっていないことです。
毎日、親や先生たちに、「どうやったらグリットを養えますか?」と聞かれます。
どうすれば強固な勉強に対する姿勢を教えることができるか?
どうすれば長期に渡ってモチベーションをキープできるか?
正直に言うとわかりません。
わかっているのは、才能とグリットは違うことです。
とても才能があるのに、決めたことを最後までやれない人がたくさんいると、データがはっきり示しています。
実際、グリットは才能とは関係ないか、むしろ反比例しています。
成長マインドセットが関係ある
これまで聞いた中で、子供のグリットを育てるのに一番よいのは、「成長マインドセット(growth mindset)」です。
これはスタンフォード大学のキャロル・ドゥエックが提唱している説で、学ぶ能力は固定されているわけではなく、努力によって変えられるという信念です。
ドゥエック博士は、子供たちが脳に関して学んだとき、困難に直面すると脳が成長することができると知ったとき、その子どもたちは、失敗してもより辛抱できるようになります。
その失敗が、ずっと続く状態ではないと信じているからです。
だから、成長マインドセットは、グリットを育てるのにとても助けになります。
まだグリットの研究は続く
これだけではまだ不十分ですが、今、私たちはまだこの段階にいます。
ここからは、今後私たちが取り組む仕事です。
最高のアイデアや最強の直感を用いて、テストしなければなりません。
成功しているのか、測定する必要があります。何度も失敗し、間違えて、そこから学び、またテストをしなければなりません。
言い換えれば、子供たちが、よりグリットを持てるように、私たち自身がグリットを持ち続ける必要があるのです。
//// 抄訳ここまで ////
グリット・関連動画
自分の能力を自分で見限ることの恐ろしさ、できると信じることの素晴らしさ(TED) キャロル・ドゥエック博士の講演です。
上手になりたいと思っていることをきっちり上達させる方法(TED)
なぜセルフ・エフィカシー(自己効力感)が重要なのか?(TED)
どうやって私は刑務所で読み書きと株取引を学んだのか?(TED)
もう自己啓発本を読む必要なし~成功するため8つの秘密とは?(TED)
アンジェラ・リー・ダックワースの本です。
電子書籍もあります。
キャロル・ドゥエックさんの本です。
プロセスに意識を向ける
子供にグリットを持たせたいなら、成長マインドセットが重要なので、とりあえず、自分を信じることを、しっかり教えたほうがいいです。
今、失敗しちゃったし、まだうまくできないけれど、これは一時的なことで、まだまだ私は伸びることができると信じていないと伸びません。
最近は、そういう信念を育てるほめ方をしろと言われてますよね。
つまり、成績がいいことをほめるのではなく、努力したことををほめます。
結果ではなく、プロセスに焦点を当てるのです。
プロセスを見て、「ああ、こんなやり方をしてみたんだ。すごいね」とか、「新しいやり方を試したんだね。いいアイデアじゃん」とか、「どんなふうに考えてやってみたの?」などなど言ってみる。
そして、努力が続いていることや、挑戦したことをほめます。
考えてみると、私はそういうほめられ方をしたことは一度もありません。
グリットが育つほめ方をしない親は、自分に対しても同じことを言っているので、自分の成長が止まっているかもしれません。
「世の中、結果がすべて」とよく言われますが、本当の成功はの鍵はプロセスにあるのです。
もっとプロセスに光を当てて、あなた自身のグリットを育ててください。