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最近、『The Gentle Art of Swedish Death Cleaning』(スウェーデン流・やさしい死のお片づけ)という本をオーディオブックで聴きました。
著者はスウェーデンの作家、マルガレータ・マグヌセン。
死ぬ前に自分の持ちものを少しずつ片づけておく考え方を紹介した本です。
年齢を重ねた人が、亡くなったあと家族が困らないように、そして自分自身も今を身軽に暮らせるように、日常の持ちものを見直すことをすすめています。
この本の中で特に印象に残ったのが、スローアウェイボックスという考え方です。
スローアウェイボックスとは?
スローアウェイボックスは、大事なものを入れておく小さな箱です。
箱の外側には Throw Away(捨てていい)と書いておきます。
こうしておけば、自分が亡くなったあと、遺族は中身をいちいち確認しなくてすみます。
箱ごとそのまま処分すればいいのです。
この箱に入れるのは、他人にはまったく価値がわからないけれど、自分にとっては、特別な記憶を呼び起こしてくれるものです。
本の中では、ドライフラワー、石、貝殻、小さな記念品などが例として挙げられていました。
どれも、金銭的な価値はほぼゼロでしょう。ガラクタと呼べるかもしれません。
でも、持ち主にとっては、見るたびにある場面や感情を思い出させてくれるものです。
遺族はこの箱の中身を確認せずに処分していいので、持ち主は安心して、自分だけの宝物を最後まで手元に置いておけます。
日本の場合はゴミの分別があるので、最終的には箱を開けるかもしれませんが、「これは中身を気にせずそのまま捨てていいものだ」と遺族に伝わることが重要です。
自分の大切なものを最後まで手元に置きつつ、家族を悩ませない。その両方を満たす方法だと思いました。
靴箱1つでいい理由
スローアウェイボックスが靴箱サイズなのには、理由があります。
残された家族が困らない量にしたいのです。
人は亡くなったあと、自分の持ちものをひとつひとつていねいに見てもらえるわけではありません。
遺品整理を体験したことがある方ならわかるでしょうが、つぶさに確認していたら、とても時間がかかります。
調べている最中に、感情的になって手が止まることもあるでしょう。
量があまりに多いと、途中で疲れてしまい、すべてを業者に任せて一気に処分することになるかもしれません。
それはそれで、遺族に罪悪感を抱かせてしまいます。
つまり、たくさんのものを残すことは、遺族に物理的にも感情的にも大きな負担を強いるのです。
その点、靴箱ひとつなら、遺族も気楽に処理できます。
気持ちの余裕があるから、箱の中にあるものから1つか2つを、そのまま形見として持ち続けてくれるかもしれません。
大事な思い出の品をコンパクトにまとめておくことは、自分のためにもなります。
持ちものが少なければ管理の手間も減るし、部屋の模様替えや引っ越しのときにも困りません。
ふとしたときに箱を開けて思い出の品を手に取れば、心が癒されるはずです。
箱に思い出を集めるという行為は、フィクションの中にも描かれています。
先日、韓国ドラマ『君がきらめく季節に』を見ていたときも、スローアウェイボックスを思わせるシーンがありました。
主人公は、好きな人がアメリカに行ったまま連絡が取れず、もう二度と会えないと覚悟して、その人との思い出の品をひとつの箱に集めます。
靴箱くらいのサイズのクラフト素材の箱に、彼の写真や小さなものを入れ、赤い紐で特別な結び方をしてふたを閉じるのです。
この箱は捨てるための箱ではありませんが、自分だけの思い出をひとつの場所にまとめて、気持ちに区切りをつけようとする点は、スローアウェイボックスとよく似ています。
少ないもので暮らす5つのコツ。ポイントは心のゆとりを持つこと。
残すものを選ぶときの質問~誰かを幸せにするか?
この本には、ものを残すかどうか迷ったときに使える問いが紹介されていました。
これを取っておいて、誰かが幸せになるか? と自問します。
ここでいう誰かには、自分自身も含まれます。
持っていて自分がうれしい、眺めるとホッとする。そういうものは、自分を幸せにしています。
反対に、なんとなく捨てられないだけで、見ても使っても特に何も感じないなら、それは誰のことも幸せにしていません。
そういうものは、今のうちに手放してしまったほうがいいのです。
たとえば、若い頃にもらったラブレターがあるとしましょう。
読み返すと当時のことを思い出して、ちょっとニヤリとする。
そういうものは、スローアウェイボックスに入れておけばいいです。
箱の外に「スローアウェイ(見ずに捨てて)」と書いておけば、遺族も余計な詮索をせずに処分できます。
一方で、古い家電の説明書、大量の紙袋、もう読み返すことのないパンフレット。
こういうものは、誰のことも幸せにしていません。
持ち主にとっても、遺族にとっても、ガラクタに近いものです。
取っておいて誰かが幸せになるか。
この問いは、終活に限らず、ふだんの片づけでも使えます。
迷ったとき、この一言を自分に聞いてみてください。
私がこの箱に入れたいもの
私自身がスローアウェイボックスを作るとしたら、何を入れるか。
本を聞きながら考えてみましたが、ふだん使っているもの以外で大事にしているものは2つしかありませんでした。
ひとつは、ペンギンのぬいぐるみ。
もうひとつは、娘の写真や、私が幼いときに母親と写っているモノクロの写真です。
どちらも、他の人にとってはなんてことはないものでしょう。
でも、私にとっては、見るたびにいろいろなことを思い出し、温かい気持ちになります。
思い出の品らしきものとしては、以前の10年日記を1冊持っています。
ただ、これは実用目的で残しているだけです。
娘に「あの時、あれをやったのっていつだったっけ?」と聞かれたときに、調べるために使っています。
最近はGoogle Keepにメモしていますし、重要なことはiPadのデジタルプランナーにも記録しています。
そのうち、娘からそういった問い合わせがなくなったら、この日記も手放すつもりです。
こんなふうに書くと、箱に入れるものが少なすぎると思う方もいるでしょう。
でも、箱に入れるものが少なくても、あるいはゼロでも、それはそれでいいのです。
量は関係ありません。
自分が納得しているかどうか。それが重要です。
※この本は邦訳も出ています。
Amazonへ⇒人生は手放した数だけ豊かになる 100歳まで楽しく実践!1日1つ“終いじたく”
英語版はこちら
Amazonへ⇒The Gentle Art of Swedish Death Cleaning
たくさん残すことだけが愛情ではない
子どもや孫のためにたくさんのものを残すのが愛情だ、と考える人もいるかもしれません。
食器、着物、家具、アルバム、手紙。
自分が大切にしてきたものを、次の世代にも持っていてほしい。
その気持ちはわかります。
ただ、受け取る側の立場を考えると、大量のものを残されるのは、必ずしもうれしいことではありません。
何も整理されておらず、どこに何があるのかわからない状態なら尚更です。
遺族にはふだんの生活があるし、それぞれが自分のものをたくさん持っています。
そこに故人のものの整理が加わると、やはり仕事が増えてしまうでしょう。
身軽にしておくことこそが、残された家族への思いやりではないでしょうか?
スローアウェイボックスを作り始めると、今の自分の生活の見直しもできます。
この連休には、そんな箱を1つ作ってみるのもいいかもしれません。
■生前整理について興味のある方は過去記事もどうぞ














































