大事なペンダント

ミニマム思考

「捨てられない」心理を味方につけてものを大事にする~授かり効果を活用するには?

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「このカップ、ずっと使ってないけど、なんとなく手放せないな」

「昔よく使ったバッグだから、捨てられない」

こんな気持ちになったことはありませんか?

それはもしかすると、授かり効果(Endowment Effect)の影響かもしれません。

授かり効果とは、自分が所有しているものの価値を、実際よりも高く感じる心理のこと。

何かを手に入れた瞬間から「これは私のもの」という意識が生まれ、手放すのが惜しくなります。

この心理があるからこそ、私たちは不要なのに「手放すのがもったいない」と感じると私は考えています。

しかし、この授かり効果をうまく活用すれば、今持っているものを長く大切に使うことにつながるのでは? そんな興味深い疑問を、読者の方からいただきました。

今日は、このご質問をもとに、授かり効果が、物を大切に使うことにどのように役立つのか、考えてみましょう。

まず、お便りを紹介しますね。ごうんさんからいただきました。



授かり効果をうまく使えるのでは?

件名:「授かり効果」について

筆子さん、こんにちは。

初めてお便りします、ごうんと申します。

先日の記事にも出てきました「授かり効果」について分からないことがあるので、もし可能でしたら記事で取り上げていただけるとうれしいです。

疑問に思ったのは、『「授かり効果」を利用して、「今あるモノを大切に長く使う」方向にマインドを強化することはできないか?』ということです。

『「授かり効果」は、「モノを手に入れた時のわくわく感」が少なくなっているが、0にはならずに低い数値でずーっと続いている状態』だとすると、「授かり効果」を正しい方向に強化すれば、モノを長く大切に使う、今あるモノに満足する、という方向に思考を変えられるのではないかと思いました。

もしこのような方向に思考を転換するためのヒントなどあれば、教えて下さい。

よろしくお願いします。





ごうんさん、はじめまして。お便りありがとうございます。

先日の記事はこちらでしょうか?⇒片付けを手伝うと家族とケンカになる理由、そしてそれを防ぐ方法

読んでいただき、ありがとうございました。

授かり効果は、通常、不要なものを手放せなくなる原因として語られますが、ごうんさんの言うように、今あるものを大切にする方向に活用できる可能性もなくはないですね。

ただ、私としては、あまり意識しすぎないほうが自然だと思います。

授かり効果は、人間の本能的な思考の癖(認知バイアス)なので、「こういうふうに働かせよう」と思うなら、客観的な思考を介入させる必要があります。

どうせ客観的な思考をするならば、「授かり効果があるから…」と考えるより、もっとストレートに、「これはまだ十分使えるから新しいものを買う必要はない。これをずっと大事にしていくことが節約になるし、リソースも無駄にならない」と考えて、それを長く使う行動を選択したほうがいいのではないでしょうか?

とは言え、これはあくまで私の好みの考え方であり、ごうんさんが「授かり効果を意識的に活用して、今あるものを大切に使いたい」と思い、実際にそうできれば、それは素晴らしいことです。

「授かり効果」がものを大切にすることにつながるか?

まずは、授かり効果を、ものを長く使うことに使う可能性から見ていきましょう。

授かり効果には以下のような側面があり、適切に意識すれば(繰り返しますが、こうするためには客観的な思考が必要です)ものを長く大切に使うことにつながるかもしれません。

所有=価値があると感じる心理

何かが自分のものになった瞬間、それを特別なものとして認識するので、今あるものに満足する思考につながる可能性があります。

たとえば、新しいものが欲しくなったとき、すでに使っているものと向き合って、改めてそのアイテムの優れたところについて考えてみると、買い替えをやめるきっかけになります。

授かり効果があるからこそ、他の人には思いつかないメリットが見えてくるかもしれません。

ものが思い出やストーリーと結びつく

人は長く所有しているものに愛着を持ちます。

その愛着はものにストーリーがあると強化されます。したがって、長く使いたいものには、自分でストーリーを作るといいでしょう。

先日、お父さんにもらった財布を捨てて、すごく後悔している読者のお便りを紹介しました⇒大切なものを捨ててしまった… その後悔を手放す考え方

この方にとっては、「この財布は大好きなお父さんがくれたもの」という物語があるので、ただの財布ではありません。

使っていない古いバッグでも、「このバッグを持って大学に4年間通った」と思うと、価値が増します。

逆に、今日衝動買いしたバッグには、たとえば、「ずっと欲しくてアルバイトをしてお金を貯めて買った」というストーリーがないため、すぐに別のバッグが欲しくなるかもしれません。

手放す痛みを意識する

「これを手放すのはもったいない」という気持ちが強ければ、「新しいものを買わなくてもいいや」という考えにつながる可能性があります。

授かり効果を利用して、手放す痛みにフォーカスすれば、「無駄に買い替えるのを減らし、長く使おう」という発想を強められるかもしれません。

ものに愛着が生まれる心理は他にもある

人がものに愛着を持つ理由は、授かり効果だけではありません。

例えば、

思い出補正:ものを使っていたときの楽しい記憶が価値を高める⇒思い出が詰まっているから大事だ

IKEA効果:自分で手をかけたから特別な気がする⇒手作り品の価値があがる

サンクコスト効果:お金や時間をかけたものを手放すのが惜しくなる⇒ほとんど着ていない服でも高かったという理由でクローゼットにずっとある

アイデンティティの同一化:ものが自分らしさや価値観と結びつく⇒この本棚は、私の知的な一面を象徴していて、私自身だ、だから手放すべきではない

このような心理も影響して、ものに対する愛着が生まれます。

私としては「授かり効果があるから大切にしよう」と考えるのではなく、「本当にこれが今の私に必要か?」と客観的に考えるほうが効果的だと思います。

そのほうが、断捨離に関しては有効ですし、断捨離をすれば、必然的に大事なものだけが残るので、残ったものを大事にする生活につながります。

以上を踏まえて、それでも授かり効果という現象を、ものを大事にすることに利用したいのなら以下のようにするといいでしょう。

授かり効果を活かしてものを長く使うヒント

・何かを買う前に「所有した後の気持ち」を想像する

「新しいものを買ったら、どれくらい満足が続くか?」と考えてみます。

買った直後のうれしい気持ちは長続きしないと知るだけで、無駄な買い替えが減り、手元にあるものを大事に使います。

メンテナンスをしっかりする

ものの手入れをすることで、より愛着がわきます。

たとえば、靴を磨く、バッグを拭く、洋服の毛玉を取るなど、まめに手間をかけると、「このアイテムをもっと大切にしよう」と思う心理が働きます。

持っているものに新しい価値を与える

もう捨てるしかないと思うものでも、使い方を変えると、長く使えます。

たとえば、古いTシャツを部屋着にする、マグカップをペン立てにするなど。

こんなふうに、今あるものに新しい役割を与えると、それを使い続けることに対する満足感が高まります。

授かり効果のせいで不用品を増やさないコツ

授かり効果の存在を意識しないと、捨てられない心理が強まり、ものが増えすぎてしまうこともあります。そのため、次のような点に注意が必要です。

ただ持ち続けるだけにならないようにする

ただ持っているだけでは、それを大切にすることにはなりません。

「大切にする」と「捨てられない」は別のことです。

使っていないのに、捨てられないという気持ちが強いときは、「本当に役立っているか?」と自問してください。

新しいものを増やさない口実にならないようにする

今あるものを大切にすることが、新しいものを増やす理由にならないよう注意しましょう。

たとえば、「これをもっと効果的に使うためには、あれもいる」「このシリーズで揃えればもっと愛着が持てるかも」といった発想は危険です。

あくまで、すでに持っているものを活かすことに意識を向けてください。

ものに執着しすぎない

「これは自分のものだから大切!」と過剰に思いすぎると、かえって生活が窮屈になります。

ものに愛着を持つことや、その愛着を大事にすることはいいことですが、最優先するべきなのは、快適な暮らしだと思います。

認知バイアス・過去記事もどうぞ

授かり効果のせいで捨てられない物を捨てられるようになる考え方

物を捨てられないのは恐怖のせい~損失回避と、授かり効果の心理をさぐる

お金を貯めたい時、気をつけたほうがいい認知バイアス(思考の偏り)

思い込み(認知バイアス)に注意する:決断するコツ教えます(その5)

ついつい新しいものが買いたくなる9つの理由

*****

読者の質問に回答しました。

授かり効果は、意識的に活用すれば、ものを大切にすることにつながるかもしれません。

でも、やはり、「こういう心理があるから捨てられなんだ」と考えたほうが、シンプルライフにはつながるでしょう。

というのも、特に意識しなくても、私たちは、ものと自分を同一視したり、ものに思い入れを感じたりして、必要以上に愛着を持つからです。

愛着を持つことが、それを大事にすることではありません。

ちゃんと使っているかどうか。心理的に今の自分を支えてくれているかどうか(足かせになるのではなく)。

そんな視点で、ものを見てみるといいでしょう。





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