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物事を自分の思い通りにしたい完璧主義の人(コントロールフリーク)におすすめのTEDトークを紹介します。
タイトルは、The Abundance of Letting Go(手放すことの豊かさ)。
プレゼンターは、ライフコーチのAlison Tan(アリソン・タン)さんです。
手放すと豊かになる:TEDの説明
DR. ALISON TAN is passionate about people. Overcoming her intense panic attacks gave her the courage to see her non-serving old beliefs, and helped shift her perspective to one of self-acceptance. Today, she supports senior executives to embrace whom they are, rather than whom they feel they have to be.
ドクター・アリソン・タンは、人々に情熱を傾けています。
強烈なパニックアタックを克服しながら、彼女は、自分のためにならない古い信念を見る勇気を出し、自分を受け入れるほうに意識を変えました。
現在は、彼女は、エグゼクティブに、自分自身を大事にするサポートをしています。「自分はこうあらねばならない」という気持ちになるのではなく。
長さは16分。字幕なし。動画のあとに抄訳を書きます。
☆TEDの記事の説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ユーモアのあるプレゼンです。
コントロールしようとする気持ち
忙しい人生の中でコントロールしようとする気持ちを手放すのは難しいことです。
私は、上級管理職のコーチとして、チームや部下、上司、クライアント、投資家をコントロールしようとしている人をたくさん見ています。
皆がハッピーになるよう長時間働いている人たち。他の人に仕事を任せられないから労働時間が長いのです。
目指す結果をめざしてがんばるだけでなく、良き母親、良き妻、良き娘であろうとします。
その気持ち、よくわかります。
かつて私もそうだったし、今もそうだから。
きょうは、私の人生を変えた体験をお話しします。結果をコントロールするのをやめても、人生という旅に意識を向けて、ベストを尽くせばいいのだと気づいた体験です。
思った結果にならなくても、たいてい、もっとい結果になるんです。
コントロールフリークだった私
私はいろいろなことをコントロールしようとしていました。
私のワードローブはほとんど黒か無地。花柄などの柄ものはダメ。気まぐれな感じがしますから。
エレベーターに乗ったら、ボタンのすぐとなりに立って、開閉するドアのスピードをコントロールできるようにします。
家では、家族をイライラさせます。果物は一定の切り方をしなければ気が済みません。そうしなければ、栄養分が失われてしまいます。
私は医者だから、ちゃんとわかっています。
子供にはうるさい母親です。宿題終わった? いつ帰ってくるの? テーブルでの会話も仕切ります。
すべてが、私の思うように進んでほしいのです。
それが安全なやり方だし、コントロールできていると思うと、自分は不可欠な人間で、無敵だと感じるのです。
トップに立った
1990年代は、そう思っていました。
キャリアのチェックリストを1つずつクリアして、トップに立ったと。
大きな医薬品会社で名誉ある仕事をし、北京にある5つ星ホテルのペントハウスを根城にし、ニューヨークをはじめとした大都市と北京を、ジェット機のファーストクラスに乗って飛び回る生活。
何よりも、私は中国ではじめて、西洋と提携した医療センターを、上海に共同で設立しました。誰もが、不可能だと思っていたときに。
「これこそ、成功。ああ、私は無敵よ」。
でも、私は間違っていたのです。
思いがけないできごと
母ががんになりました。これは、起こるはずではなかったこと。
「人生をちゃんとコントロールしているとき、悪いことは起きない」。そう言い聞かされて育ったから、母の病気がにわかには信じられませんでした。
母の治療に付きそうのは、苦痛でした。これからどうなるのかわからない不安は、私にとっては、なじみのないものでしたから。
数週間たって、私は、異常な症状に悩まされ始めました。心臓がどきどきし、息切れにめまい、そして失神。とても神経質になりました。
でも、「私は大丈夫、なんともない。ちゃんとコントロールできている。大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせていました。
「強くあらねばならない、やるべきことがわかっているのは自分だけ」。そう感じていました。
職場で倒れる
母が病気になって2ヶ月後、ある日、職場で、私は叫んでいました。「私の頭に血のかたまりがあるわ。気絶しそう。誰か、救急車を呼んで!」 そして私は倒れました。
病院の救急病棟で、私は叫び続けていました。「死んでしまう。死んでしまう。誰か、夫に電話して。牧師を呼んで。だけど、明日の仕事の締め切りを忘れちゃだめよ。誰か、オフィスに戻ってちょうだい」。
死にそうになっていたのに、何もかもコントロールしようとしていました。
医者は、私の脳のCTスキャンは正常だと言いました。これはパニックアタック(パニック障害の発作)だと言うのです。
医者の診断が受け入れられない
「パニックアタックですって? コントロールできている人は、パニックになんかならないわよ。この医者、いったい何を言ってるのかしら。侮辱しないでほしいわ。私は医者なのよ。これはパニックアタックなんかじゃないわ」。
それから2年間、入退院を繰り返しました。私の診断と同じ意見の医者を求めて、何人もの医者に会いました。
首の痛み、膝の痛み、腎臓や心臓の不調はある。だけど、これはメンタルの問題ではない。そう思い込んでいました。
そして、人生が変わるできごとが起きたのです。
タクシーでのできごと
下の息子2人とタクシーに乗ろうとしていたとき、また気分が悪くなり、自宅の住所を忘れてしまいました。
どうやって家に帰ったらいいのかわからない。パニックになり泣き叫びました。
息子たちもパニックになって泣き始めました。
怖くなったタクシーの運転手は、車をスタートさせました。
何万人という人がいる蘇州の街の真ん中で、家に帰る方法が思い出せません。でも、夫に電話することはできました。
このとき、パニックアタックだと気づきました。自分はコントロールできていないとわかったのです。
実際は、コントロールしていたことなど何もなかったのです。
症状をコントロールしようとした
こうして、自分自身のことに気づき、それを受け入れましたが、また、「良くなるためのチェックリスト」を作ってしまいました。
「このパニックアタックをコントロールしてみせる。医者と話して、必要な薬は全部飲んで、復活してみせるわ」。
でも、症状をコントロールしようとすればするほど、パニックアタックに襲われました。
自分の人生が変わったと気づきました。
公園での体験
医者に公園へ行くことを勧められたので、高齢者むけの太極拳のグループに参加しました。
ゆったりした音楽の中で、呼吸や動作の流れに意識を向け、私はその場にいると感じました。そこにいるのは自分自身で、他の誰でもない、と。自由になりました。
自然の中にいると、パニックアタックが減ることに気づきました。
花々が咲き、木々が芽吹く春という季節を好きな人がいますよね。
私は違います。
私にとって木は、散らかったものです。それは視覚的な混乱。
でもこの時はそう感じませんでした。木が自然に成長しているさまを楽しみました。
木はそうなる運命だったからそうなっているだけ。とてもきれいでした。
エネルギーがわいてきました。そして、人々の表情に気づきました。
それまでは、皆、顔を持っているだけだったのです。
子供、健康な人、車椅子の人。楽しい、悲しい、満足している、イライラしている。それぞれの表情に気づきました。
みんな病気になるときはなるし、いつか死にます。でも、それが人生。
もう自分が無敵だとは思いませんでした。
私は小さな存在。弱くて、何もコントロールできない。私は謙虚な気持ちになりました。
でも、自分は感情をもって生きている。
自分を受け入れる
以上は、10年前に起きたことです。
幸い、母は回復し、人生を楽しんでいます。私は医者をやめ、エグゼクティブのコーチになりました。
そして人々が人生の豊かさを見つける手助けをしています。
つらい体験を通して、人生をコントロールしようとすると、大きな代償を払うことに気づきました。
自分自身を麻痺させ、生きているという感情をなくします。
だから今は、毎日、自分に意識を向け、物事をコントロールしようとしている自分を見るようにしています。
踊って、歌って、コントロールを手放します。
欠点がある自分を受け入れることから始まると気づきました。
間違えてしまったとき、自分にやさしくすること。
それが今、自分ができる最良のことだから。
皆さんも、自分がコントロールできないことを、手放す一歩を踏み出してください。
簡単ではありません。息を深く吸って、すべてを出してください。
そうすれば、皆さんの人生は、より豊かで楽しいものになっていきます。
//// 抄訳ここまで ////
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とりあえず受け入れる
このブログを開設して、たくさんの方のお便りを読んで気づいたことがいろいろあります。
その1つが、完璧主義の人が多いということ。1人や2人ではありません。
どうにもならないことをコントロールしようとしすぎて、ストレスをため、買い物しすぎて汚部屋になる。
そのことに気づいたあとは、汚部屋解消のために、ハードルの高い目標を立てて、がんばってまたストレスをためる。
目標のスタンダードが高すぎて、うまくいかず、「どうしたらいいでしょうか?」とアドバイスを求めるのです。
そういう方は、タンさんの言うように、とりあえず、今の自分や現状を受け入れて、今日を楽しく生きることにフォーカスしたほうがいいと思います。
こう書きますと、「それは自分に対する甘え」「それでは何も向上しない」と、いうメールをもらうのですが、自分で自分の首をしめていると、そのうち病気になってしまうかもしれません。
完璧主義の人は、いつも「見てください。私はこんなにがんばっています」というメッセージを発しています。
すべてのがんばりは、誰か(または自分)に認めてもらうためなのかもしれません。
自分で自分を認めてしまえば、もうそんなに落ち込みません。