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50代、60代と年齢を重ねるにつれ、自分のこれからの時間を何に使うか、考える機会が増えます。
派手な大成功はもう望めないかもしれない。
かといって、このままなんとなく終わるのも違う気がする。
そんな後半生の優先順位を考えるヒントになる、TEDトークを紹介します。
タイトルは What I learned from 2,000 obituaries(2,000件の訃報から学んだこと)。
インド出身の起業家でストーリーテラーでもある、ラックス・ナラヤン(Lux Narayan)さんのトークです。
訃報で目立っていたのは肩書きや業績ではなく、もっと素朴な一語でした。
朝食をとりながら訃報を読む人
ナラヤンさんは、ニューヨークで、過去のデータから未来を読み解く分析の仕事をしています。
ナラヤンさんには、毎朝、スクランブルエッグを食べながらニューヨーク・タイムズの訃報を読むという、ちょっと変わった習慣があります。
なぜそんなことをするのか。
新聞に並ぶのは、たいてい悪いニュースで、人の失敗が現れています。
一方、訃報のページにあるのは、亡くなった人が何を成し遂げたかという話です。そこがいいのです。
たとえば、ある日の訃報に載っていたのは、スタンフォード大学の数学者ジョセフ・ケラー(Joseph Keller)さん。
ジョギング中の女性のポニーテールはなぜ左右に揺れるのか、ティーポットはなぜ液だれするのか、ミミズはなぜくねくね動くのか。
そんな身近な不思議を、数学で解き明かした人です。
ナラヤンさんはこの訃報を読んで、ケラーさんという人の存在をはじめて知りました。
収録は2017年1月。
動画の長さは約6分。日本語字幕もあります。
■TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
ときどきジョークが交じるユーモアのあるトークです。
訃報を分析して見えたもの
ナラヤンさんの会社では、2015年から2016年にかけての20か月のあいだに、ニューヨーク・タイムズに掲載された訃報を2,000件集めて、データとして分析しました。
広告として有料で載せる訃報ではなく、編集者がこの人の人生は記事にする価値があると判断した記事です。
まず、職業ですが、少し意外な結果でした。
工学や医学、ビジネス、法律など、世間で成功への近道だと言われる職業ではありません。
映画、演劇、音楽、ダンス、アート。
芸術関係の人が、全体の40%を超えていました。
世界中の多くの社会が、子どもたちに工学や医学や法律を勧めて、それを成功だと教えているのが不思議です。
次に注目したのが、年齢のデータです。
訃報に載るような最初の重要な業績を残した平均年齢は、37歳。
そして、その人たちは、平均して81歳で亡くなっています。
つまり、生まれてから最初の業績まで37年、その後さらに44年の人生があるということです。
何かを成し遂げるまでに時間がかかるのはごく普通のこと。若いうちに成功できなくても、焦らなくていいのです。
よく生きた人生にある共通点
分析を進めるうちに、ナラヤンさんはもう一歩踏み込みたくなりました。
訃報を、有名な人と無名な人の2つのグループに分けて、それぞれ、第一段落の文章を解析しました。
有名な人とは、たとえばプリンス、モハメド・アリ、ザハ・ハディドのような、世界中に名前を知られた人たち。
無名な人とは、私たちが聞いたこともない人だけれど、それぞれの分野で素晴らしい働きをして、編集記事として訃報が載った人たちです。
分析の結果、両方のグループに共通して際立った言葉が、2つありました。
1つは John。
英語圏に多い名前で、これは半分冗談として紹介されています。
そして、もう1つが help(助ける)でした。
有名であろうとなかろうと、訃報の第一段落に書かれていたのは、その人がいかに人を助けたか、ということだったのです。
ナラヤンさんは、トークを次の言葉で締めくくりました。
If more people lived their lives trying to be famous in death, the world would be a much better place.
(もし、もっと多くの人が、死後に有名になることを目指して生きたら、世界はずっとよい場所になるだろう)
死後に有名になるとは、葬式に派手な花を並べてもらうことではありません。
亡くなったあとに誰かが、あの人には助けてもらった、と話してくれるような生き方をすることです。
後半生は大きな達成より小さな貢献
成功とは早く出世して、社会的に認められる肩書きを持って、何か大きなことを成し遂げることだと、思われています。
日本で会社勤めをしていたとき、私もなんとなくそんなふうに成功をイメージしていました。
しかし、ナラヤンさんが訃報の中に見つけたのは、肩書きではありません。
その人が誰を助け、どんな関係を築いたかという、もっと地味なことでした。
私は、シンプルライフと片づけをテーマにブログを書いています。
世界を変えるような大きな影響力があるわけではありませんが、長く更新を続けていると、読者の方からときどきメールをいただきます。
私の記事を読んで、家の片づけが進みました、暮らしが軽くなって気持ちまで明るくなりましたとか、そんな内容です。
そうしたメールを読むたびに、誰かの生活をよくするお手伝いができたかもしれないと感じます。
特別大きな成果ではないけれど、こんなちょっとした手助けの積み重ねが、トークに出てきたヘルプ(help)の正体だと思います。
役に立つ機会は、日常にある
人を助ける、と聞くと、ボランティアや寄付など、何か特別な活動を思い浮かべるかもしれません。
ですが、もっと日常的なところに人助けをする機会があります。
私は日本でもカナダでも、街を歩いていると、なぜかよく道を聞かれます。
ぼーっとのんびり歩いているので声をかけやすいのかもしれません。
道を聞かれたとき、自信を持って答えられた日は、なぜか自分まで気分がよくなります。
逆に、説明がうまくできないときは、もう少しちゃんと答えられたらよかったな、と少し悔やみます。
たかが道案内ですが、こうした小さな手助けをすると、相手はもちろんのこと、自分もうれしいものです。
後半生に大きなゴールに向かって何かに取り組むのはすばらしいと思います。
けれども、日々、ささやかな親切をするのも悪くありません。
目の前で困っている人にひとつ親切にする、メールで誰かの相談に丁寧に返事をする、家族の話をきちんと最後まで聞く。
そんな小さなことを積み重ねても、世界をよくすることにつながるのです。
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トークに出てきた訃報は編集者が書いたものですが、自分の訃報にどんなことを書いてもらいたいのか考えてみるのもおすすめです。
そう書いてもらうために、今日1日をどう過ごしたらいいのか決めるのです。
そうすれば、自分の人生も世界も少しだけよくなるでしょう。
ところで、私は37歳になる直前にカナダにやってきました。
それから30年経った今の暮らしは、30年前には全く想像していませんでした。
人生、次の瞬間は何が起きるかわからない。
予測がつかないところが人生のおもしろいところですね。














































