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決めることが苦手な人、自分のためになる意思決定をしたい人の参考になるTEDトークを紹介しますた。
タイトルは、Before You Decide: 3 Steps To Better Decision Making(決める前に:よりよい意思決定のための3つのステップ)
リーダーシップの専門家、 Matthew Confer(マシュー・コンファー)さんのトークです。
よりよい決断:TEDの説明
We all make thousands of decisions each day. How can you optimize your decision making by restructuring the steps you take before you decide?
私たちは、日々、何千もの意思決定をしています。
何かを決めるまえのステップを考え直し、いかに、意思決定を最適化できるでしょうか?
収録は2019年、動画の長さは12分50秒。字幕はないので抄訳を参考にしてください。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
とても構成がきっちりしていて、説得力のあるプレゼンです。
元手が5ドルのビジネスプラン
スタンフォード大学の起業を学ぶクラスで、チームごとに、5ドルを使って、収益を競い合う課題が出ました。
翌週、それぞれのチームが、この5ドルで何をして、いくら収益をあげたか発表することになったのです。
このコンテストで勝利したチームは、実は5ドルを使いもしませんでした。
クラスメートにプレゼンをする機会を、街のとある企業に売ったのです。
この企業は、スタンフォードの優秀な学生たちに、卒業後、自分の会社に就職してくれるよう話す機会に対して、喜んでお金を払いました。
コンテストに買ったチームが、アイデア出しにかけた時間はもっとも短く、収益はもっとも多かったのです。
こんな結果を出すためには、制限にチャレンジすることを求められます。
この課題の場合の制限は、各チームに配られた5ドルです。
制限は、革新的なアイデアを生み出す邪魔をします。
もし、うまく意思決定したいなら、制限に立ち向かうことから始めるべきです。
シミュレーションで意思決定のスキルを磨く
私は意思決定のプロセスに魅せられています。
私は、リーダーシップ能力を開発する会社で、よりよい意思決定をする戦略チームを運営しています。
ここでは、人々がチームを作って、模擬ビジネスを競い合います。
実社会でするであろう意思決定をシミュレーションしてみて、将来の課題に準備します。
過去3年の間、30カ国から、2万人以上のプロフェッショナルが参加しました。
世界でも、もっとも革新的な企業と働き、すばらしい意思決定がどんなものなのか、目撃してきました。
きょう私が紹介する3つのステップは、この体験から導きだしたものです。
意思決定をする前に何をすべきかにフォーカスしています。
このステップはどんなときにも使えますよ。
ひじょうに重大な意思決定をしようとしているプロ、渋滞の中、どの道を通って、子供を学校に送り届けようかと考えている親、進学先や専攻する学科を決めようとしている学生。どんな場合にも役立ちます。
私たちは、毎日、何千という意思決定をしています。みな、ベストの決断をしようとしています。
ステップ1:制限にチャレンジする
スタンフォード大学のエピソードからプレゼンを始めたのは、同様のことを、シミュレーションで何度も見たからです。
多くのチームが、早急に問題解決をしようとし、すべての制約をそのまま受け入れてしまいます。
よりよい意思決定をしたいなら、自分を押し留めているバリアを見極め、何が可能か考えてください。
最初のステップは、制約に挑むことです。
ステップ2:プレモータム(事前検死)
2つ目のステップを説明するために、そこまで驚きのない話をします。
シミュレーションをしている時間で、もっともインパクトがあるのは、その経験が終わったあとです。
人々やチームが、うまくいったことや、いかなかったことを振り返ります。
これは、実際の人生でも、私たちがよくすることですね。
このエクササイズを私たちは、ポストモーテム(postmortem 事後検証、死後の検視)と呼んでいます。
そのできごとが終わるのを待ってすることだからです。
世界のリーダーたちとシミュレーションをして、このポストモーテムアプローチを逆にすることを学びました。
つまり、プレモーテム(事前の検証、検視)です。
始める前に、どんな失敗が起きるのか、考えるのです。
人は、事前に、成功しそうなあらゆるシナリオを考える習性があります。
もちろん、成功をイメージすることは素晴らしいことだし、よい結果になりそうなことを決めていくべきです。
でも、皆が、成功するシナリオを考えるのにたくさんエネルギーを使うわりには、どんな失敗が、どんなふうに起きるかはあまり考えないのを見てきました。
ここで、プレモーテムをしておけば、もっといい結果になったと思われるエピソードをお話しします。
コブラ効果
植民地時代のインドで、コブラの増加に頭を悩ませた英国政府が、さまざまな施策を出して失敗したあげく、殺したコブラを持ってきた者に報奨金を出すことを決めました。
はじめはうまくいきました。でも、クリエイティブな人たちが、わざとコブラを繁殖させ、殺してお金を得ようとしたのです。
政府はこれに気づいて、すぐに報奨金制度をやめましたが、コブラを繁殖させていた人たちは、もはやお金を生み出せなくなったコブラを、街に放ったのです。
その結果、野生のコブラの数は、以前より増えました。
解決策に見えたやり方が、状況を悪化させたのです。
コブラ効果と呼ばれているこの現象は、プレモータムのパワーをよく表しています。
何かを決めるとき、私たちは、どんなふうに成功するかイメージしますが、失敗しなかったかどうかを考えるのを、そのできごとが終わるまで待ってしまうのです。
そして、詳細なポストモータムをします。
事前に、今自分が思いついたことが、失敗に終わる可能性についても考えてください。
第2のステップは、プレモータムを大事にすることです。
火星探査機の事故
3つめのステップを説明するために、1999年のできごとをお話しします。
火星の気候を調べるNASAのミッションがありました。1億2500万ドルのコストをかけて、10ヶ月宇宙を飛んだ火星の探査機は、ナビゲーションのミスのため、燃えてバラバラになりました。
興味深いのは、この事故はじゅうぶん防ぐことができたということです。
このプロジェクトには複数のチームがかかわっていました。
あるチームは計算するのにメートル法を使い、べつのチームは、重要なデータにインチ・ポンド法を使いました。
世界でもとりわけ優秀な、本物のロケット科学者たちが、お互いのチームが同じ計測法を使っているかどうかチェックするのを怠ったのです。
その結果は、悲惨でした。
ここまで私は、最初のステップとして、大きく考えるために、制約に挑むことを話し、次に、決める前に、失敗についても考えておく話をしました。
この2つのステップを取ると、より独創的な思考ができます。
しかし、3つ目のステップは、とても重要です。しかも、よく見逃されるんです。
ステップ3:基本的なことをチェックする
基本的なことをチェックするのを決して忘れてはいけません。
フォーチュン500の企業のトップリーダーたちが、いくつかの段階を経て、成功するはずの本当にすばらしいプランを考えるのを私は見てきました。
しかし、多くの場合、ささいなディテールが原因で、失敗してしまうのです。
シミュレーションの最中、私たちは参加者に、たくさんの課題を突きつけます。予測できない外的なできごとです。
製品のリコール、SNSでの広告の失敗、自然災害。
こうしたできごとが、従業員を危険にさらします。
しかし、多くの場合、そのチームをつまずかせるのは、製品を市場に出すという、ごくシンプルなタスクなのです。
製品を市場に出すステップは、シミュレーションの最中、変わることはありませんし、とても基本的なことです。
ところが、障害になるできごとが起き、締め切りの時間が迫ってくると、この基本的なタスクをするのに、皆、苦労します。
決断するための3つめのステップは、基本的なことをチェックすることです。
小さなできごとに足を引っ張られてはなりません。
サレンバーガー機長の決断
スタンフォード大学の5ドルの課題、次にインドのコブラの話、そして、火星探査機の話をしました。それぞれのエピソードが、意思決定に必要なステップを示しています。
2009年1月15日のできごとをお話しして、このトークを終えたいと思います。
150人を乗せた飛行機がニューヨーク市から、ノースカロライナ州のシャーロットに向けて離陸しました。
離陸から3分後、パイロットがあとで語ったことによれば、彼はこれまで聞いたことのない音を聞き、世界が足元から崩れ落ちるように感じたのです。
カナダガン(鳥)の大群とぶつかったせいで、両エンジンとも止まってしまったのです。
この時点で、副操縦士から操縦を変わった機長のサレンバーガーが、メイデーコール(生死にかかわる救援コール)を出しました。
このときの、機長と管制官の会話ほど、制限に立ち向かった例はないと思います。
はじめ、機長は、離陸した飛行場や、近くの飛行場に飛ぼうとしましたが、「どの滑走路を希望しますか?」と聞かれたとき、「ハドソン川に着水する」と答えたのです。
管制官は、「なんですか? もう1度言ってください」と言いました。
この事件のあと、サレンバーガーは、世界でも特に人の多いニューヨーク市の上空を飛んでいたから、極端なオプションではあったけれど、ハドソン川に着水することが、もっとも安全な結果になるだろうと思ったと言ったでしょう。
つまり彼は制限に挑戦し、川に着水することにしたのです。
彼は、プレモータムを行い、水上でも、機体は大丈夫だと信じていました。
次に、機体がどのぐらいの時間浮いていられるか考え、厳寒の1月の水温の中、救援隊の活動がどんなものになるか考えたのです。
いくつかの成功のシナリオと失敗のシナリオについて考えたあと、機長は、水上に降りることを決めました。
着水する直前、機長は、副操縦士に機体のスピードと高度を聞き、重要な基本事項を確認したうえで、150人全員を生還に導きました。
着水後、乗客が避難しているとき、機長は、機内を端から端まで2回歩いて、乗客全員が機体から出たことを確認してから、外に出ました。
毎日、私たちは、何千もの意思決定をしています。皆さんが、あの寒い1月のある日、サレンバーガーが直面したような事態に遭遇しないことを祈っています。
しかし、今決めようと思っていることの深刻さがどの程度であろうとも、決断するまえに、まず制限に挑み、次に、プレモータムをし、最後に、基本的なことをチェックしてください。
///// 抄訳ここまで
補足
コブラ効果:ある問題を解決しようとして、かえって問題を悪化させること。
コブラのエピソードは、このプレゼンでも登場します。
プレモータムについてはは、このプレゼンで、詳しく説明があります。
決断に関するほかのプレゼン
決断に悩むときこそ大きなチャンス。重要な選択をする方法(TED)
決断する力をアップする。自分で決められない理由とうまく決める方法(TED)
我々は本当に自分で決めているのか?ダン・アリエリーに学ぶ、選択のミス(TED)
選択をしやすくするには~シーナ・アイエンガー(TED)。選択肢の海の中で生きる技術。
よりよい決断をする3つの方法、コンピュータのように考える(TED)
よりよい決断をするには?シーナ・アイエンガーの選択術(TED)
制限に挑む
今週、何がお宝で何がガラクタなのか決められない、という相談をいただきました。
お宝なのかガラクタなのか判断できず、断捨離が進まないときはこうしよう。
断捨離も重要な決め事の1つなので、意思決定に関するトークを紹介しました。
このトークによれば
1.制限にチャレンジする
2.プレモータムをする
3.基本はきっちりおさえておく
事前にこの3つをすることで、よりよい意思決定ができます。
捨てるものを選ぶとき、多くの人は、直感で決めていると思います。
ときめくか? とか。
しかし、論理的かつ戦略的に思考することで、もっと上手に決められるのです。
ここでは、1番の「制限にチャレンジする」を考えてみましょう。これは、どういうことかというと、制限をそのまま、「ああ、こんな制約があるんだ」とあっさり受け入れないことです。
その制限を乗り越えて、大胆な思考をします。
「これ、売ればお金になるよね~」と思うのも、制限の1つです。
この思考があるから、求めている結果(捨てて、部屋をスッキリさせること)を得られないのですから。
こうした制限に屈してはいけません。クリエイティブな発想をすれば、制限に囚われなくなります。
私は、「お金にこだわるな」という、あまりおもしろみのない解決策を提示しましたが⇒不用品を捨てるメリットを考えれば、「売ればお金になるから取っておく」という呪縛から解放される。
あなたは、もっと大胆でおもしろい発想をして、ぜひ、この制限を乗り越えてください。
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ハドソン川に着水した、USエアウェイズ1549便の事故、私はリアルタイムでニュースを見ていました。
機長は終始冷静でしたが、副操縦士やフライトアテンダント、乗客もみな冷静だったようです。
結局、想定外のできごとが起きたときに、いかに冷静でいられるかが生死を決めます。
私たちは、冷静でさえいれば、すばらしい解決策を思いつき、それを実行できるのです。