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やりたいことがあるのに、なかなか始められない人にやる気をくれるTEDトークを紹介します。
タイトルは、How to Achieve Your Most Ambitious Goals(とても野心的なゴールを達成する方法)。プレゼンターはスティーブン・ドゥニエ(Stephen Duneier)さんです。
彼の本業は金融業で、投資の顧問(インベストメントマネジャー)ですが、動画を見るとわかるようにほかにもさまざまなことに取り組んでいます。
目標をたてて達成する戦略について、講演をしたり本を書いたりもしています。
たくさんのことに挑戦してきた彼ですが、達成するコツは1つだけです。
それは、ごく小さなことを積み重ねること。
ゴールを達成する方法
収録は2017年。動画の長さは18分です。英語字幕あり。スライドがたくさん出てくるので、英語に抵抗のない方は見てください。
☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に
野心的なゴールをなしとげるのに必要なこと
このブラッド・ピットの写真を紙と鉛筆で再現できると思う人、手をあげてください。
やり方を教えましょう。
この灰色の四角を絵に描けると思う人は?
誰でもできますね。灰色の四角を1つ描けるなら、それを2つ、3つ、9つと描くことはできます。
四角を1つ描けるなら、先ほど見せた写真を再現することもできるのです。世界的なアーチストになるのに必要なスキルはこれだけです。
「そんなの本物のアートじゃないし、そんなことで世界的なアーチストになれない」と思っていますね?
チャック・クロースという人は、世界でも、もっとも収入の多いアーチストですが、いまお話したのと同じテクニックを使って作品を作っています。
もっとも野心的なゴールをなしとげるのに必要なのは、魔法のようなスキルでも才能でもありません。
その問題に対してどうアプローチするか、そして、それを解決する決断をするかどうかにかかっているのです。
私たちは、毎日何百万という意思決定をしています。そのときどきの意思決定が、後の結果に大きな影響を与えています。
ノバク・ジョコビッチが強い理由
その証拠の1つとして、ノバク・ジョコビッチのキャリアを見てください。
2004年、彼がプロのテニス選手になったとき、世界ランキングは680位でしたが、3年目に3位になります。
年俸25万ドルから、500万ドルになり、もちろん以前より試合に勝つようになりました。
2011年に、男子のテニス選手の1位となり、年に1400万ドル稼ぎ、試合の9割に勝利しました。
すばらしい業績ですが、ノバクはこうしたことを自分でコントロールしたわけではありません。
こうした業績を残すために、ごく小さな意思決定を積み重ねただけです。
テニスでの勝利は、1~3の意思決定で決まります。
彼が自分の意思決定で成功した確率は、昔は49%、そして、52%にあがり、偉大なプレイヤーになったときはたった55%でした。
「たった55パーセセント」と言いましたが、これは決して簡単なことではありません。
ただ、ごく小さな成功を積み重ねることは、この部屋にいる人、誰にでもできることです。
万年C(可)だった私が成績をあげた方法
幼稚園から高校を卒業するまで、私の成績表には同じことが書かれていました。
「スティーブンはとても賢い子どもです、落ち着いて、集中することさえできれば」。
私だって、集中したいと思っていたんです。ただ、できませんでした。幼稚園から大学2年まで、私の成績はいつもCかCマイナスでした。
大学3年になったとき、こんなのはもううんざりだ、と思い、自分を変えることにしました。
ごく小さな調整をしたのです。傍観者から実行者に変わりました。
その年から、ちゃんと腰を落ち着けて5分~10分以上勉強しようとしました。
しかし、そうできなかったので、アプローチを変えました。
すごく簡単なことをする
本を5章読む宿題が出たら、5章読もうとはせず、1章でもなく、自分ができる分量まで細分化しました。
5分から10分集中できれば読める量まで。3~4パラグラフだけです。
5~10分使ってそれだけ読んだら、立ち上がり、数分間バスケットにボールを投げ込んだり、絵を描いたり、ビデオゲームをしたりしました。
そしてまた本を読みはじめました。
ほかの宿題に対しても、5分から10分間でできる量を積み重ねていきました。
その時から卒業まで私の成績はオールAで、毎学期、成績優秀者のリストにのりました。その後、世界でもトップクラスの大学院に進学し、金融と経済の勉強をしました。
大学院でも同じアプローチをして、同じ結果を残しました。
仕事でも小さなことを積み重ねた
卒業後、仕事につきました。大きな課題を自分ができるところまで細分化してやっていけば、望む成功に確実に近づくと思ったので、職場でも同様のアプローチを試してみることにしました。
その結果、クレディ・スイス銀行のデリバティブのトレーダーから、バンク・オブ・アメリカの通貨オプションを扱うトップとなり、AIGインターナショナルでも、仕事をしました。
12年間、グローバルマクロヘッジのファンドマネジャーをつとめ、著名なヘッジファンド2つの創設をし、最高責任者にもなりました(筆子注:投資について無知なので、よくわかりませんが、ようするに仕事でめざましい成果を出し、出世したということです)。
同じ方法でドイツ語をマスター
2001年のことです。学校でも職場でもうまくいったから、プライベートでもこの方法を使ってみることにしました。
これまで「できたらいいな」と思っていたことを達成するのに試してみたらどうだろう、と思ったのです。
当時、ロンドンで、歩いて通勤していました。ハイドパークのはしからはしまで歩いていて、片道、45分かかりました。
片道45分、1日に90分、1週間に7時間半、一ヶ月に30時間、1年にすると360時間です。
そのあいだ、アイポッドで音楽を聞いているのは、時間の無駄だと感じました。あるとき、ピンズラーのドイツ語のコースのCDを33枚買って、中身をアイポッドに入れました。
これだけではありません。
自分は、自制心がないから、アイポッドにドイツ語のコースを入れても、また音楽を聞いてしまうと思ったのです。
そこで、誘惑の元である音楽をすべて削除しました。
こうすると、私に残された選択肢は1つだけです。語学コースを聞くしかありません。10ヶ月かかって、ドイツ語の99枚のCDをそれぞれ3回聞きました。
その後ベルリンに行き、16日間のドイツ語の集中コースを受けました。
コースが終了したとき、妻と子どもを呼び、街を散歩しました。ドイツ人にドイツ語で話していたので、子どもたちはびっくりしていました。
ですが、私は特別なことをしたわけではありません。日々の習慣を少し変えただけです。そして、ドイツ語をしゃべれるようになったのです。
新しいことにどんどん挑戦
仕事をリタイヤしたらやろうと思って先延ばししていた、野心的なゴールはほかにないか考えてみました。この方法を使えば達成できそうなゴールです。
そしてこんなことをしました。
自動車レースのライセンスを取得し、ヘリコプターの操縦を学び、ロック・クライミングをし、スカイダイビングをし、アクロバット飛行をマスターしました。
2007年、ロンドンから戻ったとき、25ポンド(およそ10キロ)太っていたので、体重を落とすことにしました。
ジムに申し込んで、行かないままになるとか、大好きなものを2度と食べないと誓うといった、よくあるルートをたどることもできましたが、そうした方法はうまくいかないとわかっていました。
日々のちょっとした習慣を変える方法をとることにし、この年、サンタバーバラのフロントカウンティにある33のトレールをハイキングすることにしました。
それまでハイキングは1度もしたことがありませんでした。
大事なのは、33トレールを制覇することではなく、望む結果に近づくために、小さな決断をしていくことです。
それはほんとに小さな意思決定です。
デスクで仕事をして最後にほんのちょっぴり時間を使うか、ソファーに寝転がって、テレビのリモコンを握ってチャンネルを変えたり、フェイスブックを見たりするか?
フェイスブックを見るかわりに、ハイキング用の服に着替え、ドアの外に出る。車まで歩いて、車に乗り込み、トレイルヘッドまで運転する。
車から出て、1歩踏み出す、2歩目、3歩目と歩く。
こうした小さな行動をする決断が、めざましい成果につながります。
33トレールを制覇したいというと、人は、山にのぼっているときの決断について考えるものです。
しかし、大事なのは、ソファーに寝転がっているときにする決断です。それがなければ、山の頂上にたどりつきません。
この年の終わりまでに、フロントカウンティの33トレールをハイキングしました。それぞれ、何回か歩きました。
バックカウンティも少し歩きました。25ポンドやせ、年末には、世界でも大変だと言われているピヤツーピーク(Pier to Peak)というハーフマラソンに出場しました。
1年に本を50冊読む
2009年には、本を50冊読むことにしました。
ここでも重要なのは50冊読むことではありません。1冊でもありません。1章でも、1パラグラフ、1行読むことでもありません。
1日の終わりに机に向かうか、ソファーに寝転がるか、フェイスブックを見るか?
スマホを置いて、本を持って、1語だけ読むのです。
1語読めれば、2語、3語と進むことができます。1行が1パラグラフ、1章、1冊へとつながります。
それが10冊、30冊、50冊へ。
24個の新年の目標
2012年はさらに野心的になり、新年の目標を24個、立てました。
そのうち12個は、あげること(giving resolutions)です。
お金を出さない慈善を12個するのです。うまくいかないこともありました。
献血しようとしましたが、あなたは、イギリスに住んでいたから、と断られました。
精子を提供しようとしたら、年をとりすぎているからだめだと言われました。
髪を寄付しようとしたら、白髪を欲しがる人なんていないとわかりました。よかれと思ってやっても、うまくいかないことがあるものです。
残りの12個は、新しいスキルを12個学ぶという目標です。
ユニサイクル、パルクール、スラックライニング、ジャンピング・スティルト、ドラムを学びました。
妻は、わたしに編み物をすすめました。
編み物なんて興味がありませんでしたが、サンタバーバラで、40フィート(およそ12メートル)のユーカリの木を見た時、「その木を毛糸でおおったら、かっこいいかも」と思いました。
帰宅してGoogleで調べたら、そういうことをする人がいるとわかりました。
ヤーンボミングを始める
ヤーンボミング(Yarn Bombing)と呼ばれもので、公共の建物を編み物でおおうのです。82日後に、第2回国際ヤーンボミング大会が開催されると知りました。
それから82日間、どこにいても、株主総会でも、トレードする場所でも、飛行機でも病院でも、私は編み物をしました。
1度にワンステッチです。82日後に私の初めてのヤーンボミングができあがりました。
評判がよかったので、さらに複雑で大きな作品にチャレンジしました。
2014年には山の頂上にあるロスパドレス国立森林公園にある、6つの巨大な石を作品でおおうことにしました。
このときは他の人の助けが必要でした。The YarnbomberというSNSで数千人のフォロワーがいて、彼らが毛糸を送ってくれました。
結局、18の石をおおうことができました。
その後も、新しいプロジェクトに挑戦しました。ファイバーグラス、木、金属など新しいマテリアルを使うこともしました。そうした挑戦の結実が、ここ、トゥーソンの子ども病院をおおう作品です。
その後、私は編み物をやめました。べつに好きじゃなかったのです。
グラニースクエアのギネスレコードを達成
ですが、かぎ針編みは好きです。
かぎ針で7インチ(およそ18センチ)のグラニースクエア(四角いモチーフ)を編みました。それが、グラニースクエアの標準的なサイズだからです。
でも、もっと大きな物を編みたくなり、ある日、出張から戻ってものすごく大きなグラニースクエアを編みました。
ギネスレコードのサイトに行き、世界最大のグラニースクエアの大きさを調べてみました。
すると、そんなカテゴリーはなかったので、申し込んでみましたが、断られました。
再度申し込んだら断られ、また申し込んだら、10メートル四方のグラニースクエアを編んだら、新しいカテゴリーとして登録し、あなたを記録保持者とします、と言われました。
その後、2年7ヶ月17日かけて、1度にワンステッチずつ編み、毛糸を30マイル(およそ4万8300メートル)使って、50万ステッチ以上編み、,世界一大きなグラニースクエアを編んだ人としてギネスレコードを獲得しました。
特別な才能は必要ない
当時、いろいろな雑誌の取材を受けました。
ですが、私はいまも、Cマイナスの生徒です。10分以上、じっと座っていられなかった子どもです。
特別な才能もスキルもない男です。
人々が驚くようなプロジェクトをしてきましたが、いつも、もっともシンプルなところまで細分化して、達成するために、毎日少しずつ、行動を積み重ねただけです。
きょう、私がここでお話ししたのは、いつかはやりたいと思っている夢があるのに、やらずにそのままになっている方たちに、インスピレーションを与えたかったからです。
日々のルーティンを少しだけ変えて、その夢を叶えてほしいのです。
//// 抄訳ここまで ////
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1日1個だけでも捨てないよりはマシ
ドゥニエさんは、長時間集中できないと自覚しており、大きなプロジェクトを自分にでもできる小さなタスクにまで細分化して、数々のことをなしとげてきました。
この方法は断捨離にも使えます。物だからけの実家や、すごい汚部屋を片付けるとき、とくに威力を発揮すると思います。
細分化は過去記事でも紹介しています⇒モノを持ちたくないあなたへ~こんなものはキッチンには不要です
また、仕事や家事で忙しくて片付ける暇がないという人にもおすすめです。
疲れて、テレビの前でだらっとするその前、途中、後に、何か1つでも捨てれば、きれいな部屋に近づきます。
片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんは、祭りのように、一気に徹底的に捨てることをすすめています。
しかし、べつに、一気に捨てなくても、毎日少しずつ捨てれば、結局は同じ結果になります。
「ある程度時間があるときじゃないと片付けなんてできない」「勢いがないと捨てられない」というのは思い込みにすぎません。
本当に部屋をスッキリさせたいなら、今日、少しでいいからとにかく捨てる。
それしか、汚部屋解消の道はありません。
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ヤーンボミングはストリートアートの1つだそうです。
編まない毛糸がたくさんある人におすすめかもしれません。一気に使い切ることができそうです。