スマホを見る女性

TEDの動画

なぜデジタル機器の画面を見て過ごしていると幸せから遠のくのか?(TED)

スマホを使いすぎる生活を改めたい、と思っている人の参考になるTED動画を紹介します。

タイトルは Why our screens make us less happy (なぜモニターは私たちをより不幸にするのか?) プレゼンターは心理学者の Adam Alter(アダム・オルター)さんです。

邦題は「なぜ画面を見て過ごしていると幸せから遠のくのか?」

screen は 日本語でいうところのモニター、電子機器の画面のことです。モニターばかり見ていると人は不幸になるので、やめたほうがいい。この生活から抜け出す方法もある、こんなことを教えてくれるプレゼンです。



なぜ画面を見ていると幸せから遠のくのか? TEDの説明

What are our screens and devices doing to us? Psychologist Adam Alter studies how much time screens steal from us and how they’re getting away with it. He shares why all those hours you spend staring at your smartphone, tablet or computer might be making you miserable — and what you can do about it.

画面やデバイスは私たちにどんな影響を及ぼしているのでしょうか?

心理学者のアダム・オルターは、画面を見ることにどれだけ時間を奪われているのか、どんなふうに奪われてしまうのか研究しています。

なぜスマホやタブレット、PCの画面を見て過ごすと、人はみじめになるのか。この問題に対してどうすべきか、伝えます。

収録は2017年の4月。動画の長さは9分30秒です。日本語字幕あり。ひじょうに聞き取りやすいプレゼンだと思います。動画のあとに抄訳を書きます。

☆トランスクリプトはこちら⇒Adam Alter: Why our screens make us less happy | TED Talk

☆TEDの説明はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

ドッグフーディングという戦略

数年前、興味深いうわさを聞きました。

とある大きなペットフード会社の社長が、定時株主総会に出るとき、ドッグフードの缶詰を持参し、食べるそうなのです。

自分で食べるほどだから、株主のペットにもふさわしいドッグフードなんだと、説得するのです。

この戦略は、今では「ドッグフーディング(dogfooding)」と呼ばれ、ビジネスの世界でよく使われます。

みながドッグフードを食べるという意味じゃありませんよ。ビジネスパーソンが自社の製品を使って、「これ、いいですよ」と身を持って示すのです。

これはよく行われているのですが、このやり方をしない業界が1つあります。





自社製品を使わない業界とは?

自分たちの扱っているものを本人たちは使わないケースです。ある業界では自分たちでは使わないのがあたりまえなのです。

その業界とは、電子機器の画面を扱うハイテク産業(screen-based tech industry)です。

2010年にスティーブ・ジョブズがiPadを発売するとき、「桁外れにすばらしい」デバイスだと説明しました。

「これまで経験したことがないほどすばらしいブラウジングを提供し、ノートパソコンやスマホよりずっといいですよ」と。

スティーブ・ジョブズ家のルール

その数カ月後、ニューヨーク・タイムズのジャーナリストが、電話でジョブズを取材しました。

インタビューの最後に、記者は、何気なくこんな質問をしました。

「お子さんたちも、iPadを大好きでしょうね?」

ジョブズの答えは記者を驚かせました。

「うちの子供たちはiPadを使っていません。家ではテクノロジーを使う時間を制限していますから」。

これはこの業界ではごくふつうのことなのです。

シリコンバレーの中学校の話

シリコンバレーのすぐそばにある、ウォルドルフ・スクール・オブ・ザ・ペニンシュラという学校では、8年生(中学2年)になるまで、画面のあるもの(コンピュータ)を使いません。

とても興味深いことに、この学校の生徒のうちの75パーセントの親が、シリコンバレーのハイテク産業の幹部なのです。

この話をきいて、驚きと興味を感じ、電子機器の画面が私の家族や大事な人たち、さらには人類全般に、どんな作用を及ぼすのか考えるようになりました。

そこで、過去5年の間、ビジネスと心理学の教授として、私は画面を見ることが人の生活にどんな影響を与えるのか研究しました。

人はどんなことに時間を使っているか

まず、どれだけの時間が、画面を見ることに使われているのか、そして、この時間はどんなものなのか、お話することにします。

この表は平日24時間のごく平均的な使い方です。10年前の2007年、その8年後の2015年、そして先週集めたデータをグラフにしました。

1日の時間の使い方

大部分はたいして変わっていません。

睡眠は、だいたい7時間半から8時間。多少減ってきているという人もいますが、そんなに変わっていません。

1日8時間半から9時間が働く時間です。

そして、サバイバルアクティビティーの時間、生きていくのに必要な時間があります。

食べたり、お風呂に入ったり、子供の世話をする時間ですが、これが1日およそ3時間です。

残りは、白いスペースで、パーソナルタイム(個人的に使う時間、自分時間)となります。

ここは、人にとってとても貴重な時間です。

自分らしくあるために、さまざまなことをする時間です。趣味にいそしんだり、人との絆を深めたり、人生について考えたり、創造的な活動をする時間ですね。

一歩さがって、自分の人生が意味あるものかどうか考えたりする時間でもあります。

仕事に価値を見出す人もいますが、死ぬ前になって人生を振り返るとき、多くの場合、この白い個人的な時間で何が起きたのか、語るのではないでしょうか。

この時間は神聖で大切な時なのです。

自分の時間のうちどれだけスクリーンタイムになっているか?

次に、この白い時間が、どれだけ画面を見ることに奪われいるのかお見せします。

画面を見ている時間の増殖

2007年はこれだけです。この年、アップル社が初代iPhoneを発売しました。

その8年後はこのぐらい。今はこれだけです。

自由時間のうち、これだけ画面を見ることに費やしているわけです。

となりのごく細い黄色い部分が、魔法の起こる時間帯。人間らしくいられる時間です。今や、こんなに小さくなってしまいました。

では、どうすればいいのでしょうか?

スクリーンタイムの質について考える

まず考えるべきことは、この赤い時間(画面を見ている時間)の質です。

画面を見ている時間は、いろいろな意味ですばらしいとは言えます。

私はニューヨークに住んでいますが、家族の大部分はオーストラリアに住んでいるので、1歳になる息子を画面を通じて、皆に見せています。

15年~20年前にはできなかったことです。

画面を使うメリットもたくさんあるわけですね。

1つできるのは、自分にこんな質問をすることです。

「画面を見ている時間に何が起きているのか?」「そのアプリを使うことで、どれだけ豊かになっているのか?」

生活をよくしてくれるアプリ

役立つアプリもあります。

役立つアプリを使っている最中の人に、「いまどんな気分ですか?」とたずねれば、「とってもいいよ」と答えるでしょう。

リラクゼーションや運動、天気、読書、教育、健康を扱うアプリですが。

こうしたアプリを使うのに、それぞれ1日平均9分使われています。

人を不幸にするアプリ

一方、こちらのアプリを使うと、人は、不幸になります。

使っている最中に、「どんな気分ですか?」と聞かれると、半分ほどの人は、「あまりいい気分ではない」と答えます。

おもしろいことに、この、気分を悪くさせる、出会い系、SNS、ゲーム、エンターテイメント、ニュース、ネットサーフィンのアプリの1日の使用時間は、それぞれ27分です。

自分を幸せにしないアプリに、3倍長い時間を使っているのです。

あまり賢いとは言えません。

なぜ自分を不幸にするアプリを使い続けるのか?

人を不幸にするアプリにこんなに時間を使ってしまう理由の1つは、やめるきっかけ(stopping cue)がないことです。

20世紀には、どんなものにもやめるきっかけが組み込まれていました。

「やめるきっかけ」とは、「次の行動に移る時間だ」と教えてくれる合図です。

何か新しいことや違うことをするタイミングだ、と。

新聞なら、最後まで見たら、たたんで脇によけます。雑誌や本も章の終わりにきたら、読み続けるかどうか考えることになります。

テレビ番組も、いつかは終わり、次の回まで1週間待つことになります。

やめるきっかけはどこにでもあったのです。

けれども、いまのメディアと接するときは、こうしたきっかけがありません。

新着情報がどんどん流れてきます。ツイター、Facebook、インスタグラム、Eメール、テキストメッセージ、ニュース。何もかも、終わりがありません。

ほかのソースをチェックするときも、いつまでも見てしまうのです。

仕事をやめるきっかけを設けている会社

どうやったら、やめるきっかけを得られるか、西ヨーロッパでの例を紹介します。

職場でいろいろなアイデアが実践されていますよ。

こちらはオランダのデザイン事務所です。この事務所の机は、天井から吊るされています。毎日午後6時になると、誰にメールをしていようが、どんな仕事をしていようが、デスクは天井まであがってしまいます。

あいたスペースは、週のうち4日間はヨガのスタジオ、1日はダンスクラブになります。

やめるきっかけが生じる、すばらしい方法ですね。1日の終わりが仕事の終わりとういうわけです。

ダイムラーというドイツの自動車メーカーでは、別の戦略を使っています。

休暇になると、「担当者は休暇中です。戻り次第、連絡します」と言うかわりに、

「担当者は休暇中ですから、あなたのメールは削除しました。送っていただいたメールを担当者が見ることはありません。

数週間後にまたメールいただくか、別の者にメールしてください」と答えます。

つまり、休暇をとったら、それは本当に休みなのです。

ただ、こうした方法は、家では使えませんよね。そこで、いくつか提案します。

自分でやめるきっかけを作る

「夕方5時から6時まではスマホを使わない」と口で言うのは簡単ですが、日によって、5時から6時の過ごし方が違いますよね。

もっとずっといい方法があります。

毎日、必ずやることがあります。たとえば、夕食をとる、とか。

1人で食べるときも、ほかの人と食べることもありますし、レストランで食べるときも、自宅で食べるときもあります。

私のルールは、「食卓では絶対電話を使わない」。これです。

スマホは、できるだけ遠くに置きます。人は誘惑に弱いですから。

夕食がやめるきっかけなので、夕食を食べるときはいつも、私のスマホは遠い場所に置かれます。誘惑を遠ざけるのです。

はじめは苦痛ですよ。私はひどいFOMO(フォーモー)にさいなまれました。

でも、じきに慣れます。

薬を断つのと同じです。禁断症状を耐えれば、もっとカラフルで豊かな人生が待っています。

会話の質もあがります。その場にいる人たちとより深くつながれるのです。

これはすばらしい戦略です。

それに効果があります。このやり方を試した人たちを追跡調査しましたが、人の輪が広がっていました。

ほかの人もやるようになるのです。皆、このやり方を気に入り、朝起きて、最初の1時間にもスマホを使わにようにしていました。

週末に、スマホを機内モードにすることも始めています。

すると、電話ではなくカメラになります。とても効果的なアイデアです。

こうすると、日々の暮しがもっと快適になります。

ブレーキをふんで立ち止まってみる

このプレゼンでもっともお伝えしたかったことは、確かに画面を使うのは素晴らしいが、いまの使い方は、長い道をスピードいっぱい走り抜けるようなものだ、ということです。

アクセルをどんどん踏み込み、ブレーキをかけることはありません。

この時点で選択できることがあります。

A. 走りながら、窓から美しい海の写真をとる。

B. 車を脇に寄せ、ブレーキを踏んで止めて、外に出る。靴と靴下を脱いで、砂の上を歩く。足の裏に砂を感じながら、海まで歩き、足首まで海に入る。

こちらのほうが、もっと豊かで意味のある人生になるでしょう。

体験の中に身をおいて、息をしていますから。それに、スマホは車の中です。

//// 抄訳ここまで ////

単語の意味など

a sort of softball  つまらないもの、ささいなもの

zoom back  後ろに動く、一歩下がる

be baked into  織り込まれる

prompt  引き起こす

rig  ~に装具を取り付ける

FOMO フォーモー 取り残される恐怖
詳しくはこちらをどうぞ⇒SNS依存に注意。FOMO(フォーモー:取り残される不安)を捨てる方法

ウォルドルフ・スクール・オブ・ザ・ペニンシュラ(Waldorf School of the Peninsula)

この学校では、本当にパソコンもスマホもiPadも使いません。今どきめずらしいのでニュースにもなっています。

3分22秒。この学校は保育園から高校まであります。

1分59秒あたりから紹介されている中学校では逆に、テクノロジーを駆使した教育をしています。

アダム・オルターさんは、Drunk Tank Pink(2014)、Irresistible(2017)という2冊の著書があります。Drunk Tank Pinkのほうは「心理学が教える人生のヒント」というタイトルで、翻訳されています。

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白い時間の使い方が人生の質を決める

このプレゼンで、「よいアイデアだ」と思ったのは、時間の使い方を調べるとき、睡眠、仕事、サバイバル、パーソナルタイムの4つに色分けすることです。

細かい時間のログをとるより、こういうふうに大ざっぱに分けるほうが全体像がつかみやすいですね。

そして、自由時間を「白いスペース」「白い時間」としているところも、気に入りました。

白い時間は、また手つかずの空白の時間であり、自分でどうとでもできる時間です。白紙なのです。

この時間を、自分をあまりいい気分にさせない何かををだらだらと見ることで汚してしまっていいのか、どうか。

そう考えると、おのずから、スマホに代表されるデジタル機器とのつきあい方が変わるのではないでしょうか?

また、その時間、自分がどんな気分でいるのか、自分に正直になって、ふりかえってみるのも、必要なことですね。

スマホに使われている人は、何も考えず、きわめて自動的に、だらだら見ているわけですから。

自分の人生や生活をサポートしてくれるものだけを残す、と考えたとき、自分を不愉快にする時間の使い方は、まっさきに捨てるべきでしょう。

画面を見ることで、心が鍛えられる、というわけでもないですから。

****

私はあまりスマホを使わないほうですが(とはいえ毎日使っています)、娘は完全に依存しています。

娘にスマホを持たせたのは、貧乏ゆえに、高校に入ってからでしたが、またたくまにスマホばかり使うようになりました。入力もとても早いです。

若者はあっというまにスマホを駆使するようになるので、そんなに小さいうちから持たせなくてよいです。

小さいうちは、リアルな体験をいっぱいしたほうがいいです。そういうことをのんびりやっている暇のない大人になるのは、わりとすぐですから。

そういう意味では、私は、昭和30年代半ばに生まれてよかった、と感じています。





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